喫茶ステラ ―異邦人と蝶の残滓―   作:コクーン√

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次の日から。

ナツメには遭遇したその日に直接会って説明をしています。話した際に『自分が言ったから……』と謝って来たので、その口を塞いで黙らせました。世の中最終的に力業が勝つ。




第2話:作戦会議と言う名の……

 

 

次の日の営業後、店終いをしてそれぞれが帰った後にナツメと明月さんと閣下を集めて昨日の出来事を説明した。

 

ナツメには昨日の内に状況を話したので、二人に改めて火打谷さん関連の事と、その友人がどう関わるのか、その結果及ぼす影響……を軽く濁して。

 

「ああは言ったけど、まさかほんとにバッタリ出くわすなんてね……」

 

「これはもはや運が良いと言ってもよいのでは……?」

 

俺の説明を聞いた二人が苦笑いで目を逸らしていた。

 

「出会ってしまったのだ、仕方あるまい。それで、貴様はどうする気だ?」

 

「んぁー……どうしたもんかと迷ってるのが正直な感想。一先ず、助言?手伝いはしておいた方が良さそうだから……手助けをする気では……ある。助言になるかは分からないけど」

 

そう、昨日話しかけて来た件の少女は……何を思ったのか俺に泳ぎのアドバイスが欲しいとか言い出した。

 

いやね?言われた最初は、はい?ってなったよ?なんで俺?ってさ。諦めて詳しく話だけでも聞いてみると、どうやら案の定タイムに悩んでいるらしい。そして教えているコーチは根性論的なのを言っている。知っている展開で少しだけ安心した。変な理由じゃ無い事にな?

 

んで、今日部活は?と聞いてみると、『コーチが休みだったから気分転換に平日にジムに来た』らしい……。そこで俺が泳いでいる所を見て素人じゃないと目を付けて話しかけて来た……。これが経緯。

 

何だよ休みって……気分転換ってなんだよぉ……と天を仰ぎたくなった。

 

正直このまま知らぬ存ぜぬ無関心で逃げ切ればそこで終わりだった。けどよぉ!詳細を知っている身からすればそのまま逃げるのは……こう、無理だった……。良いタイムが出せないって言っている時の顔を見たら誰でもそうなるってっ!

 

「……はぁ、あの時聞こえない振りでもして帰るべきだったのかねぇ?」

 

「達也にあのまま知らない振りして帰れるの?」

 

「……難しい、かも」

 

「でしょうね」

 

「まぁ、澤田さんだからこそ無視は出来なかった、と言えばそうなのですが……」

 

「ぐぬぬ……」

 

「過去を蒸し返しても変わるまい。丁度良い機会だったと切り替えるしかないだろう」

 

「良い機会?」

 

「愛衣の瞳の件については、いつかしておかねばならないと思っていたからな」

 

「まー……確かに。火打谷さんの為にもどこかで話を持ち掛ける必要はあったけど」

 

それでもこのタイミングかなぁ……?今はアフタヌーンティーの計画に精を出してるからあまり他にリソースを割きたくなかったんだが……。

 

「……でも、そうだな、変なタイミングでバッタリ二人が出くわすよりかは、こっちである程度把握してコントロール出来た方が気が楽か」

 

ま、知っている範囲で火打谷さんの友達がお店に来るイベントは無いけどな!

 

「よし、プラスに考えて切り替える事にする」

 

「そうね、何も悪い方向って決まったわけじゃないし……」

 

「私達に何か手伝えることはありますか?」

 

「あー……今の段階は特に無い……かも?少し記憶を掘り返してる途中だから」

 

「分かりました。何かあればいつでも仰って下さい」

 

「すまん、そっちも新しい生活で忙しいのに」

 

「お気になさらず、私達の方は既に落ち着いていますから。それに、澤田さんお一人にしておく方が心配なので」

 

「……心配って、んな小さい子供みたいな」

 

「以前に生後一ヶ月未満とご自分で仰っていたではないですか」

 

「……確かに」

 

「変に罪から逃げようとしたツケが回って来たみたいね」

 

「ここには敵しか居ない様だな、助けてくれミカドさん」

 

「勘違いするな。我輩も栞那の意見に同意だ」

 

「四面楚歌かよぉ!」

 

「達也の場合、今までが今までだし……ね。疑われても仕方ないでしょ」

 

「そう言われると……否定が出来ないなぁ」

 

「だから私達も当然手伝います。それに蝶に関する事ですから」

 

「そう言えば、今の明月さんってどんな立ち位置なんだ?死神の鎌は扱えるけど人だろ?仕事は続けるのか?」

 

「それについてはまだ決定はされておらん……が、少なくともいつかは死神の仕事からは降りるだろうな」

 

「私としてはあくまでお手伝い、という形で暫くは続けるつもりではありますけど」

 

「死神の鎌が使えるし、後継者が見つかるまでの一時的な話って感じか」

 

記憶が正しければ確か……アフターの方で高嶺が就活の時に動いていたし、少なくとも春までには見つからないのが確定してるな。

 

「そうなるのですかね?あ、そうです、澤田さんもどうですか?」

 

「どうですかって?」

 

「死神の仕事、やってみませんか?」

 

ニコニコと可愛らしい笑顔に似合わない言葉が出てくる。

 

「それは手伝い、では無くて死神代行的な話になるのか?」

 

「その言い方は少し誤解を招きそうですが……概ねそうなりますね」

 

「……一応聞くけど、第一俺に出来るのか?それ」

 

隣のミカドさんを見る。

 

「……正直、分からん。素質はあるだろう。蝶も見えるしな。資格があるかは試してみないと何とも言えん」

 

「そんなお手軽に出来るもんなのか……」

 

もっとこう……一度死んだ人間が神の元で認められて~みたいな流れがあるでしょうが。

 

「まぁ元々、死神の仕事は手伝うってあの偉そうな神様と約束を交わしているしな」

 

俺のイメージとしてはサブとして協力する感じを考えていたけど……、このまま明月さんにさせておくのもどうかと思うのはその通りだし。

 

「直ぐって訳では無いけど、その話前向きに考えておきたいと思うのだが……どう?」

 

俺達の話を驚きながらも静かに聞いていたナツメに確認してみる。

 

「ぶっちゃけ、そこ辺りの内容深くまで知って無いから口出し出来ないけど……達也がしたいって言うのなら、応援はしたい……かな?」

 

困惑と不安半々のご表情。

 

「一応確認するんだけど、危なくない……で良いの?」

 

「そこんとこ、どうなんですか?先輩?」

 

「時と場合に寄る……としか言えないですね。ですが、基本的にはそうなる前に対処するのがお仕事ですから」

 

「らしいぞ?」

 

「蝶が集まる前に回収するのが我輩達の役目だからな。ナツメから見れば、澤田達也が蝶に関わった時は大抵碌な目に遭って無いから心配になるのは当然だ」

 

「あー……それについては、自業自得と言いますかぁ……」

 

あれらは結局俺が原因で引き寄せられていた様なもんだからなぁ……。

 

「達也のアレはしょうがないでしょ?自分じゃどうしようも無かったんだから」

 

「まぁ、そうですね」

 

「結果的に全部自分で解決したんだからプラマイゼロって事で。それで?ジムの件はどうするの?通うの?」

 

「それなんだよな。今後もお店の休みの日だけ通おうと思っていたんだが……そうすると遭遇する確率はものすっごく減る」

 

「それもそうよね、向こうも偶々休みだったからであってまたそうなる訳でも無いし」

 

「基本部活だろうし、学生の休みは土日だ」

 

「澤田さんもお休みを休日に変更します?」

 

「それはちょっとお店に申し訳ない。それにようやく新人を抜けて軌道に乗って来た時に休日を休みたいとか言った日には涼音さんに殺されかねない」

 

「んな大げさな……」

 

「だから、来週の休みまで考える時間が欲しい。少し整理してみる」

 

「承知しました。何か必要な時は言って下さいね」

 

「助かります」

 

「なら今日の所は解散としよう」

 

ミカドさんの言葉でこの場は解散として店を出る。

 

「……それで?結局どうするつもりなの?」

 

店を出ての帰り道、俺の腕を組んで歩くナツメが問い掛けてくる。

 

「幾つか考えてはいるけど……ちょっとタイミングが悪いなってのは正直な感想」

 

「んー……それってお店の事?」

 

「だな」

 

「イベントの件は私の方でも進められると思うし、達也はそっちに集中しても大丈夫じゃない?」

 

「いや、そっちは外せない。絶対に」

 

「頑なだなぁ……」

 

「あたぼうよ。好きな人が喜んでくれるのに頑なにもなるってもんよ」

 

「もぅ……すぐそう言って……、それならどうするの?」

 

「イベントの件は既にある程度進められているから後は経過次第。始める前に作法の練習があるから、そっちは大変かもしれないけどな」

 

「それって私もするやつだよね?」

 

「まぁな。後は念の為の要員として高嶺とか……必要となれば明月さんもかも?」

 

「分かった。お互いにがんばろ?」

 

「はは、筋肉痛にならないように気を付けないとな」

 

それと高嶺の方で進めて貰っている昔馴染みの集会、これについては染井さんを主導に汐山弟に手伝って貰っている。今の所、大山さんと衣笠さんの二名とは連絡が取れたらしい。

 

これらは時間で解決出来るだろう。

 

「そえば、ナツメの方はどうなってる?親御さんと連絡は取れた?」

 

「あー……ごめん、そっちはまだ連絡してない」

 

「気まずい感じ?」

 

「そこまでじゃないけど……、ちょっと後回しにしちゃってた」

 

と言っているが、少し気後れ気味な感じか……この表情は。

 

「……親御さんを招くには充分だと思うけどなぁ、自信無い?」

 

「むぅ……勝手に心を覗かない」

 

「違う違う、顔に出てた」

 

「マジかぁ……、正直、自信が無いかも」

 

「……確認しておくが、ご両親がカフェを諦めた理由は知ってるんだよな?」

 

「うん、それは達也の記憶でぼんやりと……?私が入院したせいじゃないって事くらいは」

 

「勘違いも解けてることだし憂いは無いと思ったが……」

 

「そこは大丈夫、今まで少し遠慮していたから……接し方に戸惑ってるだけなのかも」

 

「ふっ、そっちがしないなら俺が勝手に連絡しておこうかなぁ?」

 

「何?急に。それに連絡先知らないでしょ?」

 

「電話番号などどうとでもなるさ!閣下に頼んで緊急連絡先を聞いても良いっ、大家さんに頼んで聞くも良し!俺に不可能は無いっ!!!」

 

「わかったわかった、そこまで無理矢理背中押さなくても自分で出来るから」

 

「そう?ナツメは変なとこで遠慮する側面があるからなぁ、これは俺なりの優しさってやつかもしれない」

 

「なんて押し売りな優しさなんだが……。ちゃんと招待するから安心して?」

 

「おうとも、大切な恋人の言葉だからな。たとえ世界中が信じなくとも俺だけは信じてる」

 

「またそうやって大袈裟に励まして……ほんとにもう……」

 

そりゃ、大事な彼女で生涯唯一の伴侶だからなっ!元気になってくれるなら靴でも何でも舐めるってもんよ!

 

「だから、それだと私が靴を舐められて喜ぶ変態になるでしょうが……」

 

「俺は別にそんな性癖があっても愛せる自信がある。いやっ!自信しか無いっ!!」

 

「あるわけないでしょーが……はぁ、全く。それより、達也の方はどうするの?」

 

何を聞きたいのかは、口に出さなくても直ぐに伝わって来た。

 

「火打谷さんの件を進める良い機会って考えるとして、まずは瞳の件を今週中にでも話そうかと思ってる」

 

「前の世界みたいに手伝って貰う?」

 

「可能性は高い。自分の中にある不安な力の使い方が定まるだけで精神的にも安定出来ると思う。それと瞳の中にある蝶の回収方法だよなぁ」

 

「あれ?以前は達也が回収していたんじゃ……?」

 

「そう、けど今もそれをやって本当に大丈夫かの保証が無い」

 

「あ、そっか……前は達也のお母さんが関わっていたんだよね?」

 

「そ、だから平気だったらしい。俺の魂自体も染まりにくい体質だったけど、今は人間だしな」

 

以前ミカドさんに聞いた感じだと人間だとは言われている。……けど、魂を構成する質までって分かるのかね?前の魂を見抜けなかったのなら今回も分からないのでは?とふと思う。

 

悪いのは全部母上が持って行ったと言ってはいたが……、それは魂にある負の感情を呼ぶ面なのか、魂自体を浄化した感じなのか……。

 

……一度、あの偉い神か卯花之佐久夜姫に確認しておくか。念の為。

 

実は残ってました!なんてことがあれば一生モノの後悔だからな。そうなると俺一人の問題じゃ無くなる。

 

「達也」

 

「ん?どうした?」

 

「いや、どうしたか聞きたいのはこっち。今、何を考えてたの?」

 

「すまんすまん。ちょっと自分の魂の中身に疑問が出てさ」

 

「魂の……中身?」

 

「本当にちゃんと大丈夫かって少し気になっただけ」

 

「大丈夫じゃないの?もし問題があったら神様が言って来そうなもんだけど……」

 

「それもそうか」

 

「でもまぁ、あの神様だしね……私達に全部教えて無いって事も全然ありえる」

 

「そこも不安要素だよなぁ……」

 

あの性格極悪神だ。ひっそりと楽しんでいてもおかしくない。

 

「ま、それは後で確認しておくとして……ダメな場合は火打谷さんに覚醒してもらう必要が出てきてしまうのだが……」

 

「覚醒……?」

 

「力を完全にコントロール出来るようにって感じだな」

 

でもなぁ……あれって暴走してからの高嶺の覚悟があってのだからなぁ。好きな人を死なせない為だからこその覚醒だし、この世界じゃ起こりえない状況だし……。

 

覚醒の条件って結局何だったんだろう……?解明されてたっけ?あの場面では愛の力と言えばそれまでだし……やっぱり強い意志と覚悟なんだろうか?

 

「この場合、地道に経験値を稼いだら時間が解決してくれるのか……はたまた」

 

「ちょっと、私を放置しない」

 

一人で耽っていると、ナツメに腕を引っ張られる。

 

「ごめんごめん、取りあえずは閣下と相談して火打谷さんに打ち明ける事からになりそうだな」

 

「ん、そこは分かった」

 

「そこからは要相談で。臨機応変な対応で行こう」

 

「つまり……行き当たりばったりって事ね」

 

「そうとも言う……かもな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さてと、それじゃあ私も帰るとしましょうか」

 

「待て」

 

「どうしました?」

 

「どういうつもりだ?あやつに死神の仕事をやらせるなど」

 

「閣下、私思うんです」

 

「何をだ」

 

「澤田さんもこちら側に就いた方が慎重に動くんじゃないかと……」

 

「……そうか?」

 

「まぁ勿論、今の澤田さんは私と同じ人間ですし、安易に蝶に触れる危険性は理解していると思います。ですが死神としてのルールや蝶をどう扱うかをしっかりと知ることが出来れば、落ち着いてくれるのではないかと」

 

「……まあ、なんだ?言いたい事は分かるが……」

 

「役職を与える事で身動きをガチガチに固めてしまえば、下手に動く事も出来なくなってナツメさんも安心出来るのではないでしょうか?」

 

「あれです。若い頃ブイブイ言わせていたヤンキーが仕事や家族が出来て真人間になるあれですよ」

 

「なると思うか?あやつが?」

 

「……正直怪しいですが、そこはナツメさんにしっかりと手綱を握って貰いましょう」

 

「……で、ほんとの理由はなんだ?」

 

「……宙ぶらりんにしておくのは、何か起きた時に危険が伴いますから」

 

「ふむ……、確かに責任の所在をハッキリさせておくのは重要だが」

 

「今の澤田さんってこちらの管轄に居るのですか?」

 

「一応な、だが契約では神の元になっている」

 

「難しい立ち位置ですねぇ……」

 

「もしかすると、わざとそうさせているかもしれないがな」

 

「と、言いますと?」

 

「いちいち我輩の許可を取らず、直接上に直談判しに行けるようにしているかもしれない……とな」

 

「あー……前科ありますもんね」

 

「こちらに責任や被害が及ばないようにしている可能性もあるが……その辺り含めて正確にさせておく必要があるかもしれんな」

 

「そうですねぇ……結局、澤田さん自身の謎もまだ分かっていませんし……」

 

「企業秘密と言って神にすら頑なに話さんからな。諦めた方が気楽だろう」

 

「ナツメさんはその辺りどう認識されているのでしょうか……」

 

「分からんが……あの様子だと信頼して黙っているように見える」

 

「あつあつですねぇ……にひひ」

 

「おぬしらはどうなのだ?」

 

「昂晴さんとですか?変わらずいつも通りですよ」

 

「ふむ、順調であるならそれでよい」

 

「ありがとうございます。澤田さんからも知っている範囲では大丈夫とは聞いていますので、私達の方はお気になさらず」

 

「……もしやあやつ、負の感情を持った蝶を引き寄せる代わりに、問題事を引き寄せる体質になっていたりしないだろうな?」

 

「それは流石に笑えませんよ……」

 

 





卍・解!!……このネタ、カウントダウンであったなぁ。

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