喫茶ステラ ―異邦人と蝶の残滓―   作:コクーン√

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天神乱漫もう一回プレイし直そうかなぁ……、逆移植フルHD版が個別で出てたから良い機会だし。




第3話:役

 

 

「なるほどのぅ……それで妾を呼んだと」

 

「すまん。と言うか、連絡して次の日に来るとは思わなかった」

 

「そろそろこの店の味が恋しくなる頃だったからの、丁度いいタイミングじゃ」

 

明月さん達に相談した次の日、休憩時間に今は使用者が居ない間借り部屋で卯ノ花姫と対面していた。

 

昨日の内に連絡だけはしておこうかと考えてナツメから連絡先を聞いてメッセージを送った。『俺の魂の事で確認したい事があるから暇な時に返信を頼む』と。

 

返事が来て『明日店に行くから時間を空けておけ』とだけあったので休憩時間を書いて置いた。

 

「おぬしについては、上役の神からは特に何も言われてなかったから問題無いはずじゃが……」

 

「だと思うけど、念のためにな。この後の行動の為にも一度診て欲しい」

 

「理由を聞こう」

 

「少しこちら側で問題……とまでは行かないけど、蝶関連で動きがありそうなんだ。そこで俺が蝶に触れられた方が好都合だと思ってさ。以前は負の感情に耐性があるって聞いていたが今はどうなんだろうって気になって」

 

「ふむ……まぁ良かろう。どれ、一度妾が診ておこう」

 

「助かる」

 

「そのまま目を閉じ、気を楽にしてよい。……では失礼するぞ?」

 

目を閉じて気を抜くと、俺の胸元に手が当たる。……なんだろう、これ?なんて言うか……冷たい?……違うな、透き通る様なこの感覚……。

 

「……む、やはり貴様の魂はちと厄介じゃのぅ」

 

「……それは、俺だけのじゃ無いからか?」

 

「そうじゃな。じゃが心配せずとも直ぐに終わる」

 

何か分からないが……身体がそのものが落ち着くような……暖かみ?なんて表現するのか分からないが……これが神の力的な何かなんだろう……。

 

「もう目を開けても良いぞ」

 

手が離れると確認が終わったのかそう告げる。

 

「それで、どうだった……?」

 

「うむ、そうじゃな。あくまで妾で解った範囲じゃが……おぬしの魂そのものの性質は以前と似た様な感じじゃな」

 

「耐性があるってことか?」

 

「そう思って良い。これが人間に成る時に取り入れた蝶のせいなのか、おぬし自身の性質かまではハッキリと分からん」

 

「いや、それが分かるだけでもめっちゃ助かる」

 

「で、じゃ。混じっているナツメの魂は極々普通の魂と見てよい。前の様に穢れに対しての耐性そのものは低くなってるはず」

 

「なるほど……じゃあ前回みたいにガンガン行くのは控えた方が良いって感じか」

 

「それが安全じゃな。結局試してみないとこればかりは何とも言えん」

 

「いや、ありがとう。事前に知れただけでも気が楽になった」

 

「試すのか?」

 

「んー……相談してみてからになるかも?確認なんだが……もし俺が感化された時、ナツメにも被害が及ぶ可能性ってある?」

 

「恐らく……可能性は高い。とは言っても普段なら問題無いはずじゃ。互いに強く想ったり、相手の心を見てなければ大きな問題にはならないと見ている」

 

「ああ、やっぱりそんな感じか」

 

相互に繋げようとしなければ相手までに影響が出にくいんだろう。けど警戒はしておいた方が良いだろうなぁ。こっちが隠してもナツメから無理矢理覗こうとすれば多少は気づかれるし。

 

「んー……何か対策を考えた方が良いかもな」

 

「保険は欲しいとこじゃが……そうじゃ、妾が何とかしてやろうか?」

 

どうしようかと案を考えていると、面白そうな事を思いついた顔でこちらを見る。

 

「……大丈夫なのか?」

 

仮にも神だし、あまりそういった力の手助けはしない方が良いと思って遠慮していたんだが……。

 

「まぁ、問題無いはずじゃろう」

 

「因みにどういった内容で?」

 

流石に不幸を吸い取る時みたいにキスはごめんだぞ?ナツメに殺される。

 

「何、お守りを渡すだけじゃ。安心せい」

 

「お守り……?」

 

それは……あれか?閣下のお守り的なやつか?

 

「尻尾を円形脱毛症みたいな?」

 

「?何を言っておるのじゃ?」

 

「いや、すまん何でもない」

 

「要はおぬしに穢れが付いても祓えれば良いだけじゃ」

 

「ほぉー……」

 

持ってる扇子みたいな何かを渡す感じなのかな?

 

「そうじゃな……数日時間をくれ」

 

「そこは全然大丈夫だけど……時間が掛かりそうなのか?」

 

「ちと知り合いの場所まで行く必要があるからの。穢れの事なら妾より専門がおる」

 

「………、へぇー……」

 

それって……いや、祠壊れて目覚めてるって事で良いのか?それだとルート確定しちゃう事になるんだけど?

 

「……一つ聞いても良いか?」

 

「なんじゃ?」

 

「えっと……千歳春樹って、誰と一緒に居る感じ?」

 

どう聞けば良いのかよく分かんないっ!だってどう聞いても怪しいんだろこれ!

 

「……唐突な質問だが、意図を汲み取って答えるのなら……あやつは今佐奈と共に過ごしている」

 

「……そうなのか」

 

……ははーん、混在しちゃうパターンかこれ?千歳佐奈エンドだけど宍戸若葉ルートも齧ってます的な?アクセサリーは買ったのか?どうなんだろ?ただどっかのタイミングで祠に行っただけ?

 

「その言い方、妾が何処へ行くつもりだったのか知っている様じゃな?」

 

「あー……まぁ、はい。穢れって言われたからさ。ある神様が思い浮かんだだけ」

 

「……まぁよい、今の問題はそこじゃ無いからの。それにおぬしは知っていてもおかしくないやつじゃったからな」

 

「助かります」

 

「では、また連絡を寄越す。それまで達者でな」

 

「よろしくお願いします。それじゃあそろそろ休憩も終わるから俺は戻るよ。この後店に来るんだよな?」

 

「当然じゃ、今日は何がオススメじゃ?」

 

「ケーキ類なら全部だが……しいて言えばブラウニーかザッハトルテかも。あっ、それと近い内に新しいイベントを期間限定でやるつもり。その時はまた招待するよ」

 

「ほほぅ?新たな試みとは精がでるのぅ。分かった、楽しみにしておるぞ?」

 

「ああ、今日も含めて楽しんでくれ」

 

軽い挨拶を交わしてお店に戻る。

 

「ねぇ、ちょっと良い?」

 

厨房に戻ろうとするとナツメに呼び止められる。

 

「どうした?」

 

「えっと、なんて聞くのかよく分からないんだけど……さっき何かあった?」

 

どう表現すれば良いのか分からない表情で俺を見る。

 

「なるほど、ナツメにも来ていた感じか?これは……」

 

「え?やっぱり何かあったの?」

 

「いや、大したことじゃ無いから安心してくれ。昨日話した通り神様に魂を見て貰っただけ」

 

「あ、なるほど……だからかぁ」

 

原因が分かったからか安堵のため息を吐く。

 

「……それって、俺が休憩中に何してるのか覗こうとしていた、で良いのか?」

 

「っ!??!」

 

すっごく分かり易い反応どうもありがとうございます!体がビクッ!!って跳ねたぞ今。

 

「……あ、あぁ~……そろそろ伝票の商品を届けないといけないやー……」

 

視線は泳ぎ、声は震えていた。そして逃げるようにこちらに背を向ける。

 

……ふむ、今は見逃してやろうではないか。

 

『仕方ないなぁ……』と許す雰囲気の感情を向ける。それを感じ取ったのかホッと肩を下ろした。

 

『と言うとでも思ったかマヌケめっ!!!!』

 

『ッ!!!?』

 

すかさず特大の声をぶつける。すると面白いぐらいに固まる。

 

『あーあ……俺には勝手に覗くのはダメって言ってたのに、自分は簡単に約束破っちゃうんだぁ~……あ、ふーん。そうなんだぁ?』

 

『まぁでも?それもこれも俺が心配って可愛い可愛い恋人の気持ちとして汲み取ってやるのが出来る彼氏ってもんだよなぁ……。仕方ないよなぁ……、だって、それほど俺の事が気になって、心配で!好きで好きでどうしようも無いって事だもんなぁ……?』

 

固まったナツメがロボットの様に、ギギギ……とゆっくりこちらを振り向く。その顔は真っ赤で恥ずかしさを誤魔化す為に俺を睨んでいる。

 

たはぁー!なんて最高な表情だ!これだけで酒がもっと美味くなるってもんだっ!はっはっは!!

 

プルプルと肩を震わせる可愛い生き物を見ながらニヤリと笑う。

 

『ま、でも?優しい俺は?後で言い訳とやらを聞いてあげなくも、ないかもしれないなぁ?くっくっく……』

 

「ッ……!!」

 

あー、これ楽しいぃ!後で仕返しが怖いけど!だがっ、仕返しが怖くて悪戯が出来るかってもんよっ!たとえ後々地獄が待ってようと今この瞬間の快感に身を任せるねっ!

 

「ぅうう……!!」

 

変な唸り声を上げながらもフロアへ戻っていく。ま、読まれるのは全く気にしてないんだけどな!ナツメもなんやかんやで分かっているからこそしているだろうし。けど、今後の為に注意はしていた方が良いかもな。

 

「達也、あんた何してんのさ?」

 

ひとしきり楽しんで口元を緩めていると、後ろから涼音さんの声がする。

 

「あ、いえ、何でもありませんよ?」

 

「休憩終わっても戻って来ないからどうしたかと思ったけど……ナツメさんと何か話してたの?」

 

「いえいえ、少しイタズラされたのでそのお返しをしただけですのでお気になさらず~」

 

「はぁ、程々にしておきなよ?後、あまりイジメすぎて嫌われないように気を付けること」

 

「ご安心を。しっかりと引き際は心得ていますので」

 

「なら良し。それじゃあ入って貰って良い?その間休憩に行って来るから。詳しくは昂晴に聞いておいて」

 

「了解です姉御っ、お任せください!」

 

「誰が姉御だ」

 

 

 

 

 

 

「お先に失礼しまーす」

 

「それじゃあお疲れー」

 

「お疲れ様でーす」

 

「火打谷さん、ちょっと良い?」

 

「はい?なんでしょうか?」

 

女性陣の着替えが終わり、帰ろうとしている所で呼び止める。

 

「この後時間あったりする?」

 

「全然大丈夫ですよ!」

 

「良かった。ちょっと……大事な話があるんだ、火打谷さん。俺に時間をくれないか?出来れば人気の無い場所が望ましいんだけどさ」

 

大丈夫だと分かったので少し周りに聞かれたくない感じの小声で話しを続ける。

 

「大事な話、ですか……?」

 

「ああ、一世一代の……それこそ人生を左右するような大切な告白が……!」

 

「ひょえ!?ここ、告白っ!?そ、それも……人生を左右するようなっ!?」

 

相変わらず良い反応してくれるなぁ、この子は。

 

「そうなんだ、それを是非とも火打谷さんにきいっ!?った!痛った!!?」

 

悪ふざけを続けていると、背後に迫る気配がいると思ったら背中をつねられた。

 

「……なんだ、ナツメか。何か問題でもあったのか?」

 

「いや、問題しか無いでしょうが……。どうせこんなことだと思ってたけど……はぁ」

 

「な、なな、ナツメ先輩!?ち、違うんですよ?急に達也先輩が言い始めて……!」

 

「安心して。いつもの悪ふざけって分かってるから。あ、でも私も含めて火打谷さんに話があるのはほんと」

 

「ナツメ先輩からもっ!?せ、正座した方が良いですか……?」

 

「違う違う。別に怒ったりする様な話じゃないから。お互いあまり人に聞かれたくない話ってだけ」

 

「は、はぁ……」

 

「一応ミカドさんと明月さん、俺とナツメが同伴する予定」

 

「むむぅ?四人も……?ちょっとよく分からない組み合わせですね」

 

「まぁまぁ、ちゃんと説明するから。そうだな……一時間くらいあれば充分かな?」

 

「分かりました。じゃあ親に連絡しておきます」

 

「頼んだ」

 

後ろを振り返り、入口で待っている墨染さんと涼音さんに視線を向ける。

 

「ということで、すまんが火打谷さんをお借りします」

 

「分かりました。それじゃあ愛衣ちゃん、バイバイ」

 

「うん、また明日ね!」

 

「涼音さんもお疲れ様です」

 

「お疲れ。昂晴は帰んの?」

 

「はい、栞那は澤田さん達と話があるので」

 

「それじゃあ、一緒に帰ろうか。栞那さん、彼氏連れてくよー」

 

「畏まりました。お疲れ様です」

 

「ではまた明日ー」

 

お店を出て行く人達を見送り、ドアが閉まったのを確認してから振り返る。

 

「さてと、それじゃあ始めようか」

 

「そうですね。それとどうします?澤田さんの方からお話されますか?」

 

「いや、一応蝶の事だし閣下と明月さんにお願いするよ」

 

「分かりました」

 

「あのー……話が見えないのですが……一体何のお話があるのですか?」

 

「まぁまぁ、怪しい壺を売るとかじゃ無いから気を楽にして座ってくれ」

 

テーブル席の椅子を引いて促す。

 

「はぁ……」

 

分からないが言われるがままに大人しく座る。

 

火打谷さんの横にナツメが座り、正面に明月さんとミカドさん。俺は一人誕生日席側に椅子を持って来て座る。

 

「火打谷さんにとっては色々と驚きの内容だと思うが……最後まで聞いて貰えると助かる」

 

頭に疑問符を浮かべている火打谷さんを見ながら、二人から説明が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お話の内容は……何となく分かりました。そうなんですね……アタシ左目にそんなものが……」

 

「直ぐに全部を理解しろとは言わん、一先ず自分の目がどういった物かを分かっていれば大丈夫だ」

 

「虫喰の瞳……そんな名前だったんですね」

 

「我輩からの説明は以上だが……何か補足しておく点はあるか?」

 

火打谷さんの瞳の事だけを説明して一区切りとすると、俺に聞いて来る。

 

「あー……そうだなぁ、まず大前提として言える事は、その目にある力は悪いものじゃない。寧ろ逆ってことかな?物騒な名前をしてるけど、それは本質を知らなかった昔の死神達が勝手に付けた名前だからあまり気にしなくていいかも」

 

「そうなの、ですか?」

 

「そうそう。ミカドさんもさっき言っていたけど、人を良い方向へと導くことが可能な凄い力だな。だよね?」

 

賛同を得る為に明月さんに会話を投げる。

 

「はい。死神だった私が言うのですから間違い無いです。愛衣さんのその力はあくまで蝶を一時的に捕らえるだけですから」

 

「もやもやは……アタシの目の中にあるんですよね?」

 

「はい。と言っても愛衣さんに影響は無いのでご心配なく」

 

「そうですか……」

 

悪いものじゃないと分かり安堵する。

 

覚醒すれば逆に蝶に影響を及ぼして尚且つ短時間なら言う事を聞かせられるらしいが……今は関係無いか。

 

「えっと……お二人は死神のお仕事をしてて、その……蝶?を回収している、でいいですか?」

 

「そうなるな」

 

「達也先輩はそのお手伝いで、ナツメ先輩も付き添いで……?」

 

「ワタシはそこまで関わっていないけどね。この人が悪さしないように見張ってるくらいかな?」

 

「悪さとは失礼な」

 

「あはは……」

 

「一応、他にもお店の人で高嶺も蝶が見える。ぶっちゃけ、このお店はそういった関係者が集まっている」

 

「そんなに……それじゃあアタシがここに来たのって偶々……?」

 

「運良くな。奇しくも自分と同じものが見えるかつ、その事情を知っている人達のバイト先に来てしまったわけさ」

 

「なんと……。あの、気になったのですが、アタシ以外の人達はどういった事情が……?」

 

「まぁ気になるよな」

 

チラッと明月さんを見る。俺の視線に気づいたが『ご自由にどうぞ』と返された。……俺主導のまま話して良いのか?これ。

 

「と言っても既に解決済みの話になるんだが……」

 

俺とナツメの事情を軽く説明する。高嶺については明月さんの方から説明してもらった。

 

「ほえぇ……そんな事が……」

 

「どう?驚いたか?」

 

「そりゃ!ものすっごくっ!!」

 

「頭の整理は?」

 

「ぜんっぜん!さっきはああ言いましたが、今も混乱してます!」

 

「はは、だよな。取りあえずはここには変わった人間たちが自分以外にも居るから安心して良いぞ、っての覚えていれば良し!って感じだな」

 

「……そうですね。自分のこの目ことで昔からずっと悩んでいましたけど、こうやって話せる事が出来て……なんだかスッキリしています。胸の疲れが取れたって言うんですかね?」

 

「そりゃ良かった。……で、ここからが本題なんだが……」

 

少し気取った声に変えて立ち上がる。俺が何をするのか分かった女性二人は呆れた表情をしていた。

 

「その力、正しく使いたくないか……?」

 

流し目の様な視線で見下ろし、流れるような動作で手を差し出す。

 

「………」

 

当の本人は『え?急にどうしたの、この人……?』といい感じのリアクションをしてくれている。

 

「……はぁ」

 

「澤田さん、あなたって人は……」

 

「人生で一度は言いたいじゃん!!『力が欲しいか?』ってさ!今言わないでどこで言えるのさ!!」

 

「二度目でしょうが……」

 

「飽きないものですね」

 

ふーむ、やはり女性陣にはウケが良くないらしい。

 

「と、冗談はここまでとして……火打谷さんもこれまで自分の力に悩まされていたんだろ?誰にも言えずに一人でさ。だから力になりたい。こう見えて俺はちょっとだけ事情に詳しいからな。ある程度助けれられると思う」

 

「勿論、愛衣さんの助けになりたいと考えているのは澤田さんだけじゃありませんよ?」

 

「えっと……」

 

どう返そうか迷ってる様に視線が泳ぐ。

 

「返事は今日じゃ無くても大丈夫だ。情報の整理が必要だろうし帰ってからじっくり考えてからでも問題無い。で、良いよな?」

 

「ああ、そうだな。大事なのは本人の意思だからな」

 

「あ、いえ……そうじゃなくて、私が手伝っても良いのですか?」

 

「当然だ、愛衣の力は大いに役に立つ」

 

「火打谷さん自身も使い方が分かれば、その力は訳の分からないものじゃ無くなる。未知を既知とすればそれすなわち、自らの力であり恐れるに足らずってな」

 

ゆっくりと手を持ち上げて目の前で拳を握り、大袈裟に振る舞う。

 

「……なるほど、確かにそうですね」

 

「こちら側としては是非とも仲間になって欲しい。そして!存分にその力を振るいたまえっ!!!」

 

バッ!っと手を前に突きだして宣言をする。

 

「ちょくちょくキモイ役になるの止めてくれない?」

 

「断るっ!!!」

 

「まぁまぁ、澤田さんですから諦めましょう」

 

ふん!場の雰囲気を和ませる為にやってるのだ。二人もそれが分かっていて乗っかってるくせに!

 

「あはは、でも……先輩の言う通りですね。正直、まだ理解出来ていませんけど、アタシのこの力が役に立てるのなら、手伝いたい……ってのが今の気持ちです。意味があるのなら、その役目を果たしたい、と……思います。少し大げさな言い方ですけど、あはは……」

 

「いいや、大袈裟ではない。恐らくこの出会いは運命的な物であろう」

 

「そうですよ。それにもっと大袈裟な人がそこに居ますから。ね?ナツメさん」

 

「そうね、ある意味いつも通りとも言えるけど」

 

「ふ、火打谷愛衣よ。我らは君を歓迎する。ようこそこちら側へ」

 

それで火打谷さんが気楽になるなら道化でも何でもなってやろうでは無いか。天丼になってしまうのはご愛敬ってやつだ。

 

「ありがとうございます。……達也先輩って、いつもこんな感じなのですか?」

 

「まぁ、大抵は?だから火打谷さんも、ウザくなったら遠慮せず無視してもらって大丈夫だから」

 

「大丈夫です!アタシ的にはぶっ飛んでて面白いのでっ」

 

「なら良いけど……」

 

「火打谷さんからの了承も得られたことだし、今日は解散としようじゃないか。遅くなると親御さんにも申し訳ないからな」

 

「そうだな。今日の所はここまでとしよう。詳しい話は明日に改めよう」

 

「分かりました!よろしくお願いしますっ」

 

火打谷さんの元気な声でその場はお開きとなり、それぞれ解散となった。

 

「そんじゃ、帰りますか」

 

「ん」

 

いつも通り隣を歩くナツメに腕を差し出すと、迷いなく自分の腕を絡めて歩き出す。……よし、これで逃げられないな。

 

違和感なくスムーズな動きに普段通りを感じているのだろう。

 

「順調?」

 

「今の所は……かな?」

 

ある程度言いたい事が解るので口数が少なくとも成立が出来る。

 

「いつ火打谷さんと試してみるの?」

 

「少なくとも明日以降かなぁ?対象を探す必要もあるし……」

 

タイミング良くお店に蝶を連れた人が来るとは思えないからなぁ……あのファンシーショップの人、まだ進展無いとかあるのかね?

 

「ん、分かった」

 

「少しずつ信頼を築いて、友達の話になったらこちらとしても動きやすくなるけど……」

 

最終的にはあの二人が仲直りしてもらうのが最も収まりの良い終わりだろうし、なんとかそこまで頑張らないとな。

 

あと友人の方を監視……動向を観察しておく必要が出てくるかもしれないからまたルリにお願いをする必要が出てくるな……。

 

「……記憶って引き継いでるのかね?」

 

「どうしたの?」

 

「いや、竜胆ルリって前の世界の記憶引き継いでるのかなってさ、卯ノ花さんと上司の神は覚えていたけど」

 

「あー……どうなんだろうね。してなさそうな感じがする……」

 

「俺もそう思う」

 

また一からでも大丈夫だろ。最悪うみゃい棒で釣れば聞いてくれるだろうし。

 

「ふふ、報酬忘れてまた嚙まれないように気を付けないと」

 

「ほんとそれ」

 

あれはめっちゃ痛かった。普通に痕付いたし……まぁ、血が出ない程度に調整してくれたんだろうが……。

 

「その時は可哀そうだから手当してあげる」

 

「お優しい事で」

 

「だって、腕怪我してたらこうやって出来ないでしょ?」

 

揶揄い50、嬉しさ50、可愛さ100で組む腕の力を込めて自分の方へ引く。

 

「おいおい、そうされると歩きにくいだろ」

 

「なに?嫌なの?可愛い彼女が言ってるのにー?」

 

揶揄う様に笑う。

 

「まさか。むしろ対抗心が芽生えるくらいだ……な!」

 

負けじとこちら側へ引っ張る。いきなりだったからか、組んでいた腕が少し外れた。

 

「ちょっとー?」

 

「これは勝負だ、外れないようにしっかりと掴んでおかないそっちが悪い。ま、無理なら放しても良いけどな!」

 

「なんの勝負だか……全くっ」

 

外れた腕を絡める。さっきよりも強めに組み、離れないように更に密着してくる。……ふむ。

 

「これで満足?」

 

「大いに」

 

「ま、そっちが放せって言っても放す気は無いけどね」

 

俺に負けないように自分の方へと体をくっつける。……そろそろいいか。

 

「そういえば、ナツメに話があったんだった」

 

「んー?なにー?」

 

イチャイチャして嬉しそうに聞き返す。

 

「休憩中の俺の思考を読もうとした件についてなんだけど」

 

「………」

 

甘い雰囲気を出していたのに一瞬で消え去る。そして無言で組んでいた腕を解いて離れようとする。

 

「逃がすか」

 

逃げようとする腕を絡み取りがっちりロックする。

 

「……放してくれない?」

 

「やだね」

 

「もしかして、さっきワタシに腕を組むように誘ったのはこれの為?」

 

「今更気づいてももう遅いわ」

 

「……はなして」

 

「悲しいなぁ……さっきまでは嫌って言っても放さないって宣言していたのに……」

 

「くっ……!やっぱり嵌められた……!」

 

組んでいる腕から何とか逃れようと力を入れるが、逃がさないように完全に掴んでいる為徒労に終わる。

 

「……何が望み?」

 

「ルールを破ったからには、それ相応の罰が必要だとは思わないか?」

 

「……何が言いたいの?」

 

悔しそうに俺を見上げる。今もなお腕から逃れそうと四苦八苦している。

 

「そうだなぁ……?心の中と言う恥ずかしい部分を覗いたのだ。そっちも恥ずかしい思いをして貰わないと不平等じゃないか」

 

「そもそも……!覗かれて恥ずかしがることなんて、ない、でしょ……!」

 

「なんと、自分の罪を棚に上げてとんでもない事を主張し始めるとは……!」

 

「……勝手に読もうとしたのは謝る。ごめん」

 

「ふむ、素直に謝れるのは良い事だ」

 

「ごめんね?ほんとに……凄く申し訳ないと反省する」

 

「うんうん、反省出来るのも素晴らしい事だ」

 

「だから……ね?放して、くれる?」

 

うるうる……と音が付きそうな瞳で俺を見つめる。可愛い。

 

「それとこれとは話が別だ」

 

「ちぇ……騙されてくれなかったか……」

 

「はいギルティ。判決。有罪。一発実刑」

 

「それで?何する気なのー?」

 

逃げられないと諦めたのか、拗ねた声と表情でこちらを見る。

 

……俺には分かる。この顔、期待してるな?ちょーっとエロいことされるんじゃないかと期待しとるな?この小娘は。

 

「そうだなぁ……刑罰は懲役刑か禁固刑辺りが妥当かもしれんなぁ……?」

 

「禁固……」

 

今、禁固って聞いて束縛とか拘束系を想像したな?すけべぇな思考回路だ。

 

「それじゃあ一緒に、法廷に向かおうか?」

 

「……無罪を主張する」

 

「もう判決は出てるが?」

 

「控訴する」

 

「あくまでも争う姿勢か、良いだろう」

 

「あとおまわりさんって叫ぶ」

 

「それはチートだからダメ」

 

ぶーぶー文句を言うナツメを引き連れながら、家まで送り届けた。

 

 





仕返しは、手足を縛って目隠し+耳栓で音も消してからのイタズラ(意味深)で済ませました。



※高嶺には明月さん経由で必要な事情を説明しております。

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