喫茶ステラ ―異邦人と蝶の残滓―   作:コクーン√

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夢の内容って覚えている時はしっかり覚えているのに、忘れた時は全く思い出せませんよね。けど後々になってふとしたきっかけで思い出したり……。

主人公にも異世界転生特典が付くようです。




第11話:一時の逢引

 

「ここ?うーん、なんて言えば伝わるのかしら。夢の中?人の記憶の断片と言うのかしら」

 

目の前の彼女は俺の問いかけにそう答える。

 

「夢の中……。此処が……?」

 

「そんな感じかしら、分かりやすく表現するとだけどね」

 

辺りを見るが、夢の中と言われても信じる事が出来そうにない。意識ははっきりとしている。体の感覚もある。夢の中特有の自分の体の制御が上手くいかないなんてことも無い。

 

「正確には違うと思うけどね。私も未だに全貌を把握出来ている訳じゃないから勉強中よ。今はそうねぇ……、貴方が寝ている間に夢の中にお邪魔して場を貸して貰っている様なものね」

 

「此処は俺の夢の中という事でしょうか……?」

 

こんな景色は現実で見た覚えは無い。記憶の整理とよく言うが見る景色は寧ろ新しい。

 

目の前に居るこの人が誰だか知らないが、この場を支配……把握しているように見える。なるべく反感を買わないように穏便に話したほうが良さそうだ。

 

「ま、今はそのような認識で大丈夫よ。これから追々知っていく事になるでしょうし」

 

「これから追々……?」

 

こんな摩訶不思議体験が何度もあってたまるかと頭の中で愚痴る。既にキャパは溢れ返っている。

 

「そうね。今回は私が把握できている所を一緒におさらいしていきましょう。貴方がよくやるゲームのチュートリアル。物語序盤の説明回と考えてくれていいわ」

 

そう言って彼女は机から降り、こちらに背を向けて歩き出す。

 

「付いて来て、実際に体験しながらの方が分かりやすいと思うから」

 

付いて来いって……、どこに行く気なんだ?道なんて無いし……地面が見えるのはこの場しか……。

 

歩ける道すら無いのにと思い、言い返そうとすると彼女の歩く先に徐々に道が形成されていく。バラけたパズルが組み合わさるように道が整っていく。

 

「ほら。ぼーっとしないで、早く来なさい?」

 

「あ、ああ。ちょっと待ってくれ。今行く」

 

もう頭が追いつきそうにないが今は従った方が賢明だろう。後ろを付いていくが自分たちが歩いている道以外は何も見えず暗闇しかない。少しでも足を踏み外すと奈落に落ちていきそうな感覚に陥る。

 

下を見ずに真っ直ぐ前を見た方が良さそうだ……。

 

少し歩いていると気持ち的にも多少余裕が出来てくる。周囲を改めて確認すると、暗闇だと思っていた空間には無数の光の点があった。

 

星空……みたいに見えるが、こんなに綺麗に見える場所なんて見たことないな……。相変わらず明るいのは周辺だけだけど―――

 

ふと、後ろを振り返った時、先ほどまで歩いて来ていた道がなくなっていた。まるで最初から無かったかのように……。

 

「どうしたの?……って、ああ……道が無くなっていることに驚いているの?」

 

俺が驚いている事に気づいたのか、こちらを向く。

 

「夢の中って曖昧じゃない?それを維持するのって大変なのよね……。ほら実際に夢でも記憶を保つの大変なの。それだったら必要無くなったら消せば良いかと思ったのよ」

 

その大変さは分からないが、感覚は何となく理解できる。

 

「……それじゃあ、落ち着いてきたことだし、そろそろ始めましょう」

 

どうやら、俺が落ち着くまで散歩をしていたらしい。有難い気遣いだこと。

 

「貴方が居るこの空間は人の記憶……、その断片を集めて読み解くための場所……と言うのかしら?簡単に言うと他人の思い出を覗き見することが可能な場所ね」

 

最後の説明で非常に分かりやすかったが、まるで変態扱いだ。

 

「人の記憶を見る……。思考盗聴……」

 

「間違ってはいないのだけれども……今回は私の記憶で代用しておくわね。体験した方が理解しやすいでしょう?」

 

すると彼女は振り返り、左側を向く。少しすると奥に青い光が集まり、次第に大きくなっていく。

 

「あれは……?」

 

「うーん。最初だから少し時間が掛かるわね。もう少し効率的に出来るようにしておくわ」

 

暫くすると何かが見えてくる……。そこに見えるのは赤ん坊……?誰かが上から見下ろしている景色だった。

 

「あら、いつ見ても可愛いわね……」

 

隣でそう反応するという事は……。

 

え?貴女のお子さん?いやどう見ても高校生位にしか見えないのですが……。

 

「も、もしかしてなのですが……。この子は貴女の?」

 

「そうよ。とっても可愛いでしょう?。あの頃は行動全てが愛おしかったわね……。まぁ今でも可愛いけど」

 

景色の赤ん坊を見ている彼女はとても優しい顔をしていた。心の底から愛おしく、愛していると伝わってくる。

 

「見たところ学生に見えるのですが……。随分と若い内に産んだのですね」

 

「え?ああ……、この容姿?違うわよ。これは身体が一番元気な状態。全盛期の時の姿をしているだけ。実際に生んだのはもっと後よ」

 

「そうだったのですか……納得しました」

 

頭の中の疑問が解消されていると、今度は反対側に景色が見えてきた。

 

「今度は……何かを勉強している所……?」

 

次に見えてきたのは、必死に参考書などを読み書きしている場面だった。

 

「これは……恐らく私が高校受験の合格の為に頑張った時ね。これと決めて思い浮かべた訳では無いのだけれども……、どうやら記憶の中で感情とかが強く出た時のが表れやすいみたいね」

 

「こんなに必死になっている所を見られるのは嫌ね。次に行きましょう」

 

そう言って景色は消え、次が現れる。

 

今度は……ん?暗いな。夜なのか……?誰かの部屋みたいだが……ベッドには誰かが寝ているようだな。気づかれないように近づいている感じなのか?この様子だと。

 

目線は次第にベッドに近づき、遂に手がベッドに乗る。寝ている人はまだ起きていないようだ。目線の主は寝顔を暫く見つめ、徐々にその距離を詰めていき―――

 

すると突然景色が消えた。隣を見ると頬を赤らめ少し気まずそうな表情で顔を逸らしていた。

 

察するに今のは……夜這いなのだろう。寝込みを襲うとはこの人中々……。

 

「ま……まぁ、大体こんな感じかしらっ。理解は出来た?」

 

さっきの事を流そうと話を進めようとしているので突っ込まないでおく。藪蛇を突きたくない。

 

「何となく分かってきました。その人物の特定の記憶。特に思い出深い出来事を見る事が出来る……感じでしょうか」

 

「そうね。まだ序の口だとは思うけれど、今分かるのはこれ位でしょうね」

 

目の前の人もまだ把握しきれてなく顎に指を当てながら考えていた。

 

暫くすると後ろの景色に光が射し始める。

 

「あら、もう目覚めるのね。丁度良いタイミングだし今回はここまでね」

 

そう言って彼女はこっちを向く。

 

「何かと気になることがあるでしょうけど、それは次回にしてそろそろ終わりとしておきましょう?」

 

「また次がある。で良いのでしょうか?」

 

「恐らくね。貴方がこの世界をちゃんと謳歌しようとするならば……だけど」

 

次第に光が強まり、目が開けられなくなっていく。

 

「それじゃあまた会いましょう。次も楽しみに待っているわ」

 

彼女の声を最後に世界が光に覆われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アラームの音に目を覚まし時計を見ると、10時を指していた。

 

「やべ……寝過ごした。いや別に待ち合わせとかしていないけど。こんな時間まで寝てしまうとか……昨日は疲れていたのか?」

 

よくよく考えると昨日まで寝ていなかったので当然でもあった。

 

「今日は朝からお店に明月さんと四季さんが居るって言ってたし、早めに合流しておかないとな。今日メニューについて話し合いたいとかなんとか……」

 

まだ少しぼんやりとしている頭で昨日話していた内容を思い出す。

 

「その前に昨夜入れなかった風呂に入って、さっぱりしていくか……」

 

備え付けのバスタオルを手に取り、浴槽へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

店に到着し、ドアを開ける。店内には既に明月栞那と四季ナツメがおり、何か話し合っている様だ。

 

恐らく昨日言っていたメニューについての相談だろう。

 

「おはようございます。すみません寝坊して遅くなってしまいました」

 

「澤田さん、おはようございます。全然大丈夫ですよ、寧ろ何事も無くて安心しました」

 

「おはよう。昼前になっても来ないから明月さんが心配し始めてたから丁度良かった。それにしても大層な重役出勤。まぁ時間の指定はしていなかったのけれど」

 

いや、自分でも驚いていますよ。まさか朝に起ききれないなんて……普段ならありえないのに、やっぱり疲れていたのかね?

 

昨日まで異常事態の連続だった。流石に疲れも溜まっていただろうと判断した。

 

そして……夢の事はさっぱり忘れていた。

 

「はは……、その分頑張って役に立ってみせますよっと。今日は店のメニュー案についてで当たってる?」

 

「今ナツメさんと話していた所なんです。ドリンクの案を幾つか出し合っていました」

 

机に置いてある紙に目を通す。紅茶の種類が幾つか書かれており、他にもパスタ、サンドイッチ、ご飯もの。更に下にはデザート類も書かれていた。

 

だが……、喫茶店というのにコーヒー類は全く無い。これはもしやと思い聞いてみる。

 

「お二人方……、喫茶店なのにコーヒーがメニュー欄に無いのはもしかして……」

 

そんなわけが無いのは分かっている。察するに飲めないからどれが良いのかよくわからず後回しにしているのだろ。

 

「なるほど、飲めない、もしくは美味しさが分からないから書いていないだけなのか」

 

俺がそう言うと四季ナツメは目を逸らし、明月栞那は恥ずかしそうに笑っていた。

 

「お恥ずかしいながら……。飲むこと自体は大丈夫なのですけど味の良し悪しの判断ができなくて……。澤田さんは……?」

 

期待した目をこちらに向けてくる。分かってる、俺が飲めるなら味の評価を頼みたいのだろう。飲めないことも無いが……。

 

あれ?これは確か……原作で高嶺昂晴が頼まれることじゃ無かったっけ?

 

思い返してみるが、原作で働く決断をした日にコーヒーが飲めるかの話が出ていたはず。

 

俺が飲めるかどうか位でどうこうなるとは思えないしな……、手伝うと言った手前だしここは協力しておかないと。

 

「得意ほどではないけど……味の判別位なら出来るぞ?これでも喫茶店で働いてたからな」

 

「本当ですかっ!良かったです。それならコーヒーの方もある程度纏まりそうですね」

 

「因みにどれにするかとかは決まってたりするのか?」

 

紙には紅茶は、ダージリン、アールグレイ、アッサムと書いているがコーヒーは何も書かれていない。

 

「それが……、なにが良いかすら分からなくて……ナツメさんとどうしようかと悩んでいたところなんです」

 

そこで救世主が来たとなる。逆にタイミングが良かったようだ。

 

「澤田君がコーヒー飲めるならメニュー決めをお願いしたいのけど、頼める?」

 

「期待させない程度には頑張ってみるから任せてくれ」

 

「何、その中途半端な返事……」

 

「失敗した時の保険だから気にしないでくれ。それと一応二人にも可能な限り飲めるように努力して欲しい。店員が味が判らないでは話にならないと思うから」

 

自分だけ飲めても意味が無いため二人も巻き込む形にする。

 

と、言っても……明月栞那はいずれ飲めるようになる。四季ナツメはなぁ……子供舌だから苦い物無理だし。そこも可愛い所だから許す。

 

「コーヒーについては承った。紅茶については四季さんに任せておくよ。明月さんは出来ればこっちのサポートをして欲しい」

 

「了解。味見とかして欲しい時はお願いするからよろしく」

 

「私の方も大丈夫です。それで澤田さん、サポートと言っても具体的に何をするのでしょうか?」

 

「そうだな……、まずはどのコーヒーに選ぶか決めないといけないけど俺も正直わかっていない。だから複数買って飲み比べとかしてみたいのだが……」

 

「確かに……、産出や物によって違いがありそうですもんね。試してみるのはありだと思います」

 

「近くにそれらしき専門店がないか調べてみたいのだが……」

 

期待を込めた目で四季ナツメを見る。何を隠そう、この場には検索ツールが使える機器を所持しているのは一人だけなのだ。

 

「え?私に調べろって事?」

 

「残念ながら……その通り。自分も明月さんも検索する手段を持っていないという衝撃の事実がありまして」

 

「この現代社会でどうやって生きてきたんだが……」

 

呆れながらも携帯を取り出し検索をし始めた。

 

「明月さんはともかく俺は所持しているのは無理があるぞ?なんせ、推定年齢3日目だからな!スマホはおろか金や服すら無かった始末だった」

 

「死神には今まで必要と感じる時がありませんでしたから……」

 

「はいはい。分かったから。あ、近くにあるみたい……といっても数駅隣の場所にだけど」

 

横から検索結果に出ている店を見る。どうやら大型ショッピングモール内にあるらしい。

 

原作で何度か出ていた近くの場所には無さそうだな。少し時間はかかるが行ってみるか。

 

「まぁ、そこまで遠い場所でも無いし、明日辺りに行ってみようかと思うのだが……?」

 

二人にどう?と聞くように目線を向ける。

 

「ごめんだけど、パスで。明日は朝から大学の講義があるから」

 

「それでは私がお供いたします。サポート役なので」

 

「おっけい。四季さんは大学が終わって時間があったら顔出しに来てほしい。飲み比べしてみるから」

 

「分かった。飲めるか分からないけど……」

 

「いやいや、無理に頑張ろうとしなくて良いから……。最悪横で見ているだけでも十分だからな?」

 

申し訳なさそうに言う四季ナツメにフォローを入れつつ、明日の予定と買う物について話すのであった。

 

あ、予備の服も明日のコーヒーが終わった後についでに買っておかなければ……。

 

 

 





四季ナヒュメさん

「そもそもコーヒーは苦い物ばっかり。苦い物は毒なのに。毒を飲むなんておかしいと思わない?」

……子供の言う屁理屈。



「……出てこないんだけど……もしかして壊れてる?」

「あっ……」

勘違いで恥ずかしがった後の飲んで吹き出して高嶺昂晴を睨む。

序盤から飛ばしてると感じたシーンでした。
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