喫茶ステラ ―異邦人と蝶の残滓―   作:コクーン√

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本日は明月栞那と買い物編にしようかと思ったのですが、その前に予期せぬ先客が来店したのでその話から進めます。


第12話:来客

「……ん?…あー、朝か…、起きるか。」

 

カーテン越しの太陽の日差しに目を覚まし軽く体をほぐす。今日は寝坊せずに自力で起きれた様だ。

 

「ってまだ約束の時間には余裕ありまくりだな、と言っても二度寝は危険だし…。」

 

時間を潰そうにもすることが無いから暇になってしまう。

 

「取りあえず、シャワー浴びてから考えるか。」

 

寝ぼけた頭を覚醒させる為に風呂場へと向かった。

 

 

 

 

 

(さて、朝飯の為に部屋を出たが…。)

 

結局することが無くコンビニで朝ご飯を求め、手軽なものを買べながら自然と足は店に向かっていた。すれ違う人は大体が出勤に向かっている人であろう。その中で歩いている自分に謎の優越感を感じていた。

 

(お勤めご苦労様です。私はこれから女の子と買い物の予定をしているんですよ…。ま、それも仕事の一環なんですけどねー。)

 

(駄目だ。暇すぎて詰まらない事を考えてる。これなら店でメニューについて考えた方が有意義だ。よし、店に向かおう。)

 

店に向かうと入り口前で閣下と遭遇した。

 

「おはようございます、閣下はこれからどこかへ?」

 

「む?澤田達也か。これから用事で少し出かけることになったのでな。帰るのは夕方頃になると思う。そっちは栞那との件か?それにしては待ち合わせの時間より随分と早いようだが…。」

 

「暇を持て余していたから、早めに来てメニューについてもう少し詰めておこうかと。店で待たせてもらっても大丈夫?」

 

「ああ、既に開けて入るからな。好きに使うと良い。メニューの件は決まり次第こちらに連絡を頼む。仕入れやら価格を調査せねばならんからな。それ以外は任せておく。」

 

「了解。恐らく今日はお試しで飲む予定だけだからすぐ決まる訳では無いと思う。」

 

「わかった。それでは吾輩はそろそろ行ってくる。」

 

「お気をつけてな。」

 

閣下を見送り、店に入る。中には既に明月栞那が居た。

 

「澤田さん、おはようございます。どうかされましたか?昨日決めた時間にはまだ余裕はありますが。」

 

「おはようさん。いや暇だったからな、店で待ちながらメニューについて色々試しておこうかと思ってね。」

 

「それはそれは…、仕事熱心な事で。部屋でゆっくりしていても大丈夫でしたのに。私の方もミカドさんを見送って時間が空いたことですし準備してきましょうか?」

 

「なんか急かしたみたいですまないな。席でゆっくりさせてもらうから急がなくて大丈夫だから。あと紅茶とかコーヒーを練習がてら使かってみたいんだけど…?」

 

「コーヒーの方は多くはありませんが、紅茶の方は確か今はナツメさんが持ってきてた紅茶の余りならまだあったと思いますからそれを使いましょうか。」

 

「ポットとかの道具は勝手に使っても大丈夫?」

 

「はい。大丈夫ですよ。一応一通り物は揃っている筈です。」

 

「了解。場所さえ教えて貰えれば後はこっちで適当に入れとく。」

 

明月栞那から場所を聞き、飲むために必要な道具を出していく。

 

(ええと、ポットとカップ…今回は砂糖やミルクは要らないとして、茶葉は……あった。計量のスプーンもちゃんとそれ用の奴なのだな。)

 

以前にも店をやっていたという事もあり道具自体はそれなりに充実していた。

 

「茶葉は…、多分ダージリンか?これは…。結構量余っているな。」

 

缶の蓋を開け中身を確認する。こんだけあれば多少使っても大丈夫だろう。

 

「朝から優雅な時間でも満喫しましょうかね。」

 

独り言を呟きながらヤカンに水を入れ準備を進めて行く。

 

暫くしてからお湯が沸いたのを確認し、ポットに移す。

 

「あ、ポット温めて無かったわ。……まぁ今回は練習なんでノーカンにしておこう。」

 

重要な工程を省く、割と適当であった。

 

なるべく茶葉が動く様に高さを取り、勢いを付けて入れる。冷めないように待ち時間はティーコージを被せ放置。

 

「最近のカバーは見た目にも気を使ってニット製のオシャレなのを使っているらしいがここのは普通だな。」

 

特にデザインは無く、シンプルに丸い型のものだった。今の店の雰囲気には合ってはいる。あくまで今の雰囲気だが。

 

時間が空いたためティーポットから意識を外すと、席に座りこちらの様子を面白そうに見ている人が居た。いやさっきから視界にはちらちらとは入っていたが。

 

「明月さん…、なにか楽しい事でもあったのか?こっちを見ているだけの様だが。」

 

「いえ、手慣れていると感じただけです。後は人が淹れている所を見ているのは飽きませんから。」

 

「そつなく出来るように練習はしたからなこれでも。」

 

懐かしいあの日々…紅茶を教わりに叔父の店に行ったはずなのに結局始めれたのは半年過ぎた頃だった。

 

(やめておこう。トラウマを思い出す必要は無い。)

 

「どうされたのですか…。急に死んだ目をしていましたけど…。」

 

「気にしないでくれ、思い出で振り返っていただけだから。それより明月さんも飲む?と言っても適当だから味が変かもしれないがと思うけど。」

 

「いいんですか?それと気になったのですが、味が変わるのは、その…蒸す?時間で変化するのでしょうか?」

 

「多少はね。今淹れた茶葉は大きめの奴だったから蒸らす時間は少し長くなると思う。小さい茶葉だったら4~5分程度で紅茶になると思うけどな。」

 

大体そんなもんだと思う。個々の差もあるだろうけど。

 

「個人的に長く置いた方が濃いような気がしているけど実際には言うほど強くなってないらしいし、それなら茶葉を変えた方が早いと思う。」

 

今回はダージリンだしクセもそんなに無く飲みやすいだろう。

 

「紅茶にも沢山種類がありましたし、選ぶのが大変そうですね。」

 

その心配はしなくて大丈夫だろう。紅茶はダージリン、アールグレイ、アッサム。この3つは原作でも出ていた。これらを選んでおけば問題は無いと思う。

 

(アイスティーとミルクティーに向いてるのもあることだし有名な3つを言っておけば外れはしない。)

 

「よく聞く有名な奴を3つ位選んでおけば大丈夫だと思うが。」

 

「澤田さん的にはどれが良いですか?」

 

「ダージリン。アールグレイ。アッサム。この3つが取りあえず候補だと考えている。」

 

「……因みになのですが、それは経験から来る判断ですか?それとも…。」

 

変な勘繰りをして来る。

 

「今回はどっちもと言っておくよ。さっき言った3つは王道だし外れないからな。」

 

そうこう話している内に時間が経ち、ポットに被せていた布を取り、カップにストレーナーを置き余計な茶葉が入らないように注いでいく。2つ目のを淹れ終えて自分のを味見する。

 

「うーん。まぁ悪くは無いのかな?及第点だと思う。」

 

味は大丈夫と判断してもう一つを差し出す。

 

「お待たせ致しましたお嬢様。ダージリンのストレートでございます。お熱いのでお気を付けください。」

 

音を立てないように丁寧に置き、それっぽい接客対応をする。

 

「ありがとうございます。って、急にどうしたんですか執事の真似をされて。」

 

「いや、どうせ提供するならそれらしい振る舞いした方が雰囲気味わえるかと思ってな。」

 

「私にそれを求められても難しいのですが…。」

 

「大丈夫。客にそんな対応を求めることはない。好きに飲んでくれ。」

 

「それじゃあ頂きますね。」

 

一言断りを入れ紅茶を飲む。少し驚いた顔をしたから口には合ったらしい。

 

「どう?まずくは無いとは思うけど。」

 

「いえ、全然美味しいですよ。少し驚きました。」

 

「あー…、でも必要な工程を少し省いてしまっているから味というか紅茶としての楽しみは落ちていると思う。」

 

「そうなのですか…?このままでも十分と思うのですが。」

 

「個人的に楽しむなら俺はこのままでも良いけど、客に出す奴はなぁ…。完璧にしておかないとな。」

 

しっかりとしていないのだからか少し罪悪感を感じる。

 

「今回は練習がてらだからこれで妥協してくれ。その内改めて淹れるから。」

 

「分かりました。楽しみにしておきましね。」

 

 

 

次の約束を取り、少しの間、紅茶の香りの中雑談を続けた。

 

 

 

 

 

 

カップが空になったのを頃合いに明月栞那はそろそろ準備をすると席を立ち片付けをしようとするが、こっちでしておくと言いフロアから追い出した。

 

「さってと、来るまでに片付けでもしておくか。」

 

飲み終えたカップを厨房まで持っていこうとした時に入口のドアが開き、チャリンと音が鳴る。

 

(ん?四季ナツメが来たのか?でも講義はまだあるはずだが。)

 

不思議に思い、入口に向かう。そこに立っていたのは高齢の女性だった。

 

「あら?ナツメちゃんが居ると思ったのけれど…、あなたは新しく来た人かしら?」

 

(この人は…、なるほどね。大家さんか。しかし今のタイミングでも店を見に来るとは…。)

 

確か原作では高嶺昂晴が来た次の日と、店の許可を判断してもらう10月の2回だけだったはず。それより以前の情報は無かった。

 

(恐らく四季ナツメの様子を見に来たのだと思うけど生憎今は大学なんだよなぁ。)

 

明月栞那は準備中で呼び出すわけにもいかないので対応をする。

 

「初めまして、今月頭からこのお店を開くために協力する事になりました、澤田達也と言います。お探しは四季さんですか?」

 

「そうねぇ、けど、この様子だとお店には居ないようね。」

 

「今は確か大学で講義中ですのでまだしばらくは戻られないかと…。」

 

「そうなのね。なら仕方ないわね。様子を見に来たのだけれどもまた今度にしようかしら。」

 

(やっぱり様子を見に来たのか。それにしても折角来たのにもう帰るのか。念のため確認しておきたい事もあるし一杯位飲んで行ってもらおう。)

 

原作では店を開こうとする四季ナツメを心配し何度も足を運んでいたはず。学生にこの商売は難しいと思い諦めさせようとしていたが…。

 

「折角来られたので紅茶でも入れましょうか?自分で良ければですが。」

 

「あら?いいの?…そうねぇ折角だし一杯だけご馳走になろうかしら。」

 

そう言って大家さんは席に着く。

 

(さて、ここからは接待だ。聞きたい事もあるし真面目に行こう。)

 

「紅茶は何か希望はありますか?おすすめはダージリンになりますが。」

 

さっきまで飲んでいた茶葉だから問題はない。因みに他のだと探す所から始まるため、おすすめをしておく。

 

「特に希望はないからそれを頂こうかしら。」

 

「分かりました。少々お待ちを、直ぐに淹れてきます。」

 

大家さんから離れ紅茶を入れる準備をする。先ほどは適当だったが今回は人に出す用だ。手抜きせずに真面目に進めて行く。

 

(まさか大家さんに淹れるとはなぁ…。てかさっきからこっちを見ている、居心地悪いぞ。)

 

何かチェックでもしているのかこちらの工程をじっと見ていた。

 

「お待たせしました。ダージリンのストレートです。お熱いので気を付けてください。」

 

居心地悪い中、ミスなく淹れ終え紅茶を持っていく。

 

「ありがとう。それじゃあ、いただくわね。」

 

そういって紅茶を口にする。さっきの明月栞那には無かった緊張感が少し出ていた。

 

「あら?美味しいわね。この紅茶。」

 

「ありがとうございます。それなりに練習をしてきているのですが、お口に合い安心しました。」

 

「以前にもどこかのお店で働いていたのかしら?」

 

「そうですね。叔父が経営していた店で働かせていただいていました。」

 

「だから慣れていたのね。」

 

更に一口紅茶を口にする。沈黙が訪れる。こっちから仕掛けるべきだろう。

 

「少しお聞きしたい事があるのですが、良いですか?」

 

「あら、もしかしてナツメちゃんの事かしら。」

 

「そうですね。大家さんとしてはやはりお店は諦めて欲しいと考えていますか?」

 

「そうなのよね…、正直大学に専念して欲しいと考えているわね。」

 

「まぁ、そうですよね。売れる儲かるか分からない水商売ですし、まだ大学の方が安定して大家さんも安心できますしね。」

 

「貴方は、お店を開く事に賛成ではないのかしら?」

 

不思議そうにこちらに聞いてくる。今の会話だと俺も大家さんに近い考えと思ったのだろう。けど、店をオープンするのは絶対だ。賛成も反対も無い。

 

「今の状態なら反対ですね。このままだと失敗すると予想しています。」

 

「それなら、貴方からも説得して貰えないかしら?お店を開くのは難しいって。」

 

それは違う。あくまで()()()()ならだ。

 

「すみません。私としてはこのお店を開くつもりで動こうとしているので説得は出来ません。」

 

「どういうことかしら?失敗するのに開こうとするの?」

 

「それは今のままの状態でお店を開こうとしたらですよ。それなら、開店が可能となるように変われば良いのですから。」

 

「貴方はそれが可能だというのかしら?お店を開こうとするのは簡単ではないのよ?」

 

「分かっています。今からお店を開く為には必要なものが足りな過ぎています。けど四季さんは貴方に味で合格が出ると勘違いしてしまっています。そこからまずは正していけないと思っています。勿論味は大事ですが、問題はそこでは無いと。」

 

「このお店に必要なことが貴方はわかるというのかしら?」

 

「そうですね。これから何が必要で何を用意しなければならないか。既にオープンするまでの計画は一応私の頭の中で作っています。」

 

「なので大家さんに頼みごとがあります。」

 

「…何かしら?」

 

「四季さんはこのお店を開きたいと思っています。私もそれには賛成です。このようなお願いは失礼なのですが、様子を見る期間を10月まで待って欲しいです。」

 

「それは10月までにはお店を開けるからという事なの?」

 

「はい。自信があります。とは言いっても大家さんも信用は出来ないと思いますから、何度か確認していただくことになると思いますが。」

 

「それは今までと変わらないから問題は無いわ。」

 

「ありがとうございます。恐らく本格的に動き出すのが今月末、9月29日からになるはずです。そこから必要なものを揃えてお店が開けると判断出来たら、大家さんを招待します。その時に承認の可否を出して頂ければ…と考えています。」

 

「貴方はこの店をどう変えようと考えているのかしら?」

 

「まだ確定では無いのですが、まずは人を増やします。それからお店の雰囲気も変えたいと考えています。今の流行や時代に合ったお店を出して行かないと思っていますから。」

 

「それに合わせてメニューも色々と工夫していきます。狙う層や年代を決めて話題として広がるように。」

 

「それはナツメちゃんには話しているの?」

 

「いえ、まだこの話はしていません。彼女がご両親のこのお店を大事にしたくて変化を好んでいないのは承知しています。けどこのままでは駄目だと考えていますので…、彼女はなんとか説得して見せます。」

 

好き勝手言っているが、全部原作知識の内容だ。四季ナツメも変わっていく店にこのままでは駄目だと気づき、決意する。これから起こると分かっているからこその言葉だ。

 

「貴方のその自信は以前にも働いていたからこそ来るものなのかしら?」

 

「多少はそれもありますが、私自身このお店に可能性を感じているのです。本気で開きたいと思うく位には。それと…、四季さんの想いを、夢を叶えてやりたいという気持ちがありますので。」

 

ほとんど後者が理由だろう。この店は彼女の夢そのものなのだから。

 

「そう…取りあえずは分かったわ。まだ時間はあるし、元々ナツメちゃんともそう約束していたもの。これからも様子を見に来るわ。」

 

「ありがとうございます。その時はまた紅茶を淹れますので是非来てください。」

 

そう言うと大家さんは紅茶を飲み切り、席を立った。

 

「それじゃあそろそろ帰るとするわ。紅茶、ご馳走様。」

 

「いえいえ、お気をつけてください。」

 

チャリンとなりドアが閉まる。

 

(やはり大家さんは心配をしているだけの様だ。余計なことをしたのかもしれない。まぁ、どの道することは変わらないのだけど。)

 

そう決め、席に戻り紅茶を片付けようとする。……が、その前に。

 

「盗み聞きとは感心しないな明月さん。様子見しないで出てきてくれても良かったんじゃないか?」

 

 

 

 

大家さんと話していた途中から察していた気配にそう問いかけた。

 

 

 

 





大家さん地味に登場が少ないような気が…。お店への2回と、ショッピングモール、新年の神社辺りに少しだったかな。


次回に何とか買い物が終わればいいなぁ()
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