喫茶ステラ ―異邦人と蝶の残滓―   作:コクーン√

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夢の人と再会です。


第13話:記憶の残滓ー大家ー

「盗み聞きとは感心しないな明月さん。様子見しないで出てきてくれても良かったんじゃないか?」

 

そう問いかけると奥から苦笑いを浮かべながら明月栞那が出てきた。

 

「あらら、バレていましたか。」

 

「一瞬姿を出して引っ込んだのを見たからな。」

 

「すみません、何らや真剣なお話をされている様でしたので、タイミングを伺っていました。」

 

まぁ、こちらの話を聞くための言い訳だと思うが、、聞かれても大きな問題にはならないと思う。聞かれてもあくまで頭の中で考えている予定と言えば済む話だからな。

 

「それなら仕方ない。確かに人が話している時は入りにくいよな。」

 

特に追及はせずに片付けの続きをする。ポットを持ち上げた時中身が半分ほどまだ残っていた。

 

勿体ないと思い、新しいカップに淹れて飲む。

 

(やはり先ほど淹れた紅茶よりおいしく感じる。適当にすると味はしっかり出ないな。)

 

自分で味を確認し、片付けを再開しようとした時、視界に一頭の蝶が飛んできた。

 

「明月さん、この蝶は…。」

 

「はい。恐らくは大家さんのだと思われます。ちょっと待ってください。今回収しますので。」

 

明月栞那が回収しようとしている横で飛んでいる蝶がこちらに近づいてくる。いつ見ても幻想的な色と見た目だと思い、何気なく手を蝶へと持って行った。

 

「あっ、澤田さん。それは。」

 

明月栞那が何かを言おうとしたが、その前に指が蝶に触れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え?ここは…?」

 

気が付くと見知らぬ空間に立っていた。先までステラの店内に居たはずなのに、今は夜の様に暗い場所にいた。正確に言えば薄らと月明かりが照らしている様な明るさはある。

 

「俺は確か蝶を触って…。」

 

訳が分からずに周囲を見ると少し先に一か所だけ明るく照らされている場所があった。そこには高校生ほどの少女が机に座っており、誰かと話している様に見える。

 

(彼女は一体…。それに誰と話しているんだ?)

 

不思議に思いそこへ近づく、お互いの距離が近づくと向こうもこちらに気づいたのか、顔を向け少し驚いた表情をした。

 

「あら?もう来たの?想定より随分と早く記憶に触れたのね。」

 

どうやら向こうはこっちの事を知っている様な話し方だった。

 

「私の事を知っている様に見えますが、貴方は一体誰なのでしょうか…?」

 

「覚えていないの?まぁ仕方ないけどね。夢の中の出来事だったし、起きたら大半は忘れてしまう事だもの。」

 

「以前にも会っているのですか?それに夢…?」

 

「そうよ、確か一昨日から昨日の朝までの夢の中でね。思い出してこない?ここで私の記憶を一緒にみたのだけれども。ほらチュートリアル的なのを。」

 

目の前の少女に言われ頭の中に何か引っかかった。

 

(そう言われれば、ここと似たような夢を見たような。)

 

そう思った瞬間、紐が解けるように次から次へと記憶が蘇ってくる。確かに以前にも会っている。

 

「その顔はちゃんと思い出せたようね。面倒な手間が省けて安心したわ。」

 

「しっかりと思い出したよ。気になったのだが、さっきまで誰と話していたんだ?誰か居る様には見えないのだけど…。」

 

「それはね、、彼と話していたの。」

 

そう言って、右肩に乗っていた蝶を指す。

 

「青い蝶、誰かの記憶とかなのか?」

 

「違うわ、ここに居るのは私の大切な人の魂ね。暇だったからお喋りしていたの。」

 

「大切な人の魂が……。」

 

「そう、愛しい人の…ね。」

 

そう言って彼女は優しく蝶に触れる。蝶もそれに答えたのか羽を動かした。しかし、魂になっているという事は死んでいる事を意味する。

 

「って、私の事は今は置いときましょう。今回は触れた記憶について解説していきましょうか。」

 

彼女が手を前に出すと、奥で光が集まり、以前の様に何かが見えてくる。

 

「これは、高齢のおばあちゃんかしら?……なるほどね、お店の大家さんだったの。」

 

そこには今より少し若い大家さんが何やらお店で話し合っているのが見える。次第に景色が切り替わり、今度はまた別の人と話している様に見えた。

 

「恐らく、このお店を貸し出したのでしょうね。それが上手くいかなくて閉店。また別の人に貸し出している感じかしら。」

 

何度か似た景色が続き、次第に大家さんから諦めの念が出ている様に感じた。最後は四季ナツメと話し込んでいる場面だったが、その時は既に諦めかけており、期待を持っていなかった。

 

すると光は弱まり、散って行った。どうやら見えるのはここまでの様だ。

 

「大体把握できたわ。この人はもう期待をせずに諦めてしまっているのね。何度も失敗を見ているから。だから今回も駄目だと思っていると。」

 

「確かにそうだな…。大家さんは四季ナツメに断念して欲しいのだろう。けど、主人との思い出のこの店を何とか形として残したい。そんな葛藤があるはず。」

 

「そうね…。けど、あなたはお店を開くつもりなんでしょう?今後このお店で働く人達の為に。」

 

「それは勿論。このお店を開かないと始まりにすら立てない。止めるつもりはない。」

 

というよりか俺が何もしなくても店は開くだろう、これは個人的な意見になる。

 

「なら、特にいう事は無いかしら。頑張って青春を取り戻せることを期待しているわ。」

 

それをするのは高嶺昂晴であって彼では無い。

 

(というより何となく分かってはいたけど…この人、恐らくはある程度俺の記憶を読む、もしくは共有しているのだろう。)

 

今のやり取りで疑問に思われないのを見て確信に近いのを得た。

 

「今回はこんなもんかしら。触れた記憶もほんの一部だったし、大したものは見れないわ。」

 

「それじゃあ、またここで会いましょう?女の子とのデート。楽しんでらっしゃい。」

 

こちらを揶揄う様な顔で手を振ってくる。既に彼女の後ろには光が射しこんでいた。

 

(デートでは無い。仕事の一環でただ買い物をするだけだ。)

 

声には出さずに反論をしていると、光は強まり、現実に戻ろうとしていた。

 

 

 

 

 

「澤田さん!大丈夫ですか!?」

 

気が付く目の前に明月栞那の顔があり、肩を揺らされていた。

 

「ああ、明月さん?どうしたんだ?切羽詰まった顔をして。」

 

「どうしたも無いですよっ。蝶に触れたかと思えば、急に固まってしまって…!」

 

どうやら先ほどまでの間、ぼーっと立ってしまっていたらしい。

 

(今回はちゃんと内容を覚えているな。夢の中だと言っていたが…。寝てないからなのか?前回と今回の違いは…。思い当たるならそうなのだが。)

 

「澤田さん?ちゃんと聞こえていますか?大丈夫です?」

 

「あ、すみません、考え事をしていました。」

 

こちらが謝ると、安堵したようにため息を出した。

 

「因みに、どの位の時間固まっていたんだ?」

 

「え?ええっと…。大体10秒無い程度でしょうか?それより体に異常や違和感などはありませんか?」

 

「ん?いや、至って健康だが?」

 

「本当ですか?先ほど澤田さんが蝶に触れたら吸われるように消えたので、恐らくは澤田さんの魂に取り込まれる形になったと思われますが…。その場合に蝶の影響を受けてしまいますので心配しているのですが…。」

 

(ああ、なるほど。それでそんなに慌てていたのか。確かに大家さんの蝶は良くない影響を及ぼす可能性があったもんな。けど…。特に感情の変化は感じないな。取り込んだ所を見ていないが本当か?)

 

何気なく蝶が出ないかなと手をかざすと、手のひらから先ほどみた蝶と同じのが出てきた。

 

「うぉ。なんか出た。え、この蝶。」

 

「これは…。先ほどの蝶の様ですが…。今のは意図的にでしょうか…?」

 

「何となく出てこないかと考えたら出てきたな…。多分意識的に出来ると思う。何度か試す必要はあるけど。」

 

「そうなのですか…。っと、ちょっと待っててください先に蝶を回収しますので。」

 

飛んでいる蝶に鎌を振るう。

 

 一薙ぎで蝶は消えていった。回収したのだろう。するとこちらを振り返り、今度は目を覗き込むように見てくる。

 

(恐らく虫喰の瞳かどうか疑っているのだろう。)

 

少なくともそれはあり得ない。俺は手で触れ、手から出てきた。あれはあくまで目で見ることで捕えることが出来る能力。

 

「残念ながら、虫喰の瞳では無いからな?俺のは手から出ている様に見えたぞ。」

 

「えっ?、……よく分かりましたね。今思っていたことが。」

 

そんなに熱烈に目を見られれば何となく察せれる。それにその能力を持っているのは()()()無い。

 

「俺の目を覗き込んでたからな。蝶を回収しているからそれを持っているのを疑っているかと思ったんだけど、正解みたいだな。」

 

「確かに澤田さんのは虫喰の瞳では無いようですね…。それと、そんな事まで知っていたのですね。」

 

「偶々その能力を持っている人を知っていただけだ。詳しくは企業秘密になるけど。」

 

「出ましたね、企業秘密。便利な言葉ですね、それ。…というか持っている人が知人に居るのですね…。」

 

「それより片付けて買い物に向かわないか?このことは後でミカドさんにでも相談すればいいと思う。」

 

「なんですかそのあからさまな話題替えは…。でも…そうですね。考えても仕方ないですし、今はコーヒーを買いに行きましようか。」

 

疑いの目を向けられまくったが強引に話を終わらせた。

 

(そう勘ぐらなくても遠くない内に出会うことになるけどな。その人物に。)

 

 

 

紅茶を片付け、目的地へ行く電車に乗るため、2人は駅へ向かった。




瞳で蝶を捕えるって超かっこいいと思います。

個別ルートの専用BGM「瞳の覚醒」はテンション上がりまくりでした。


次回はコーヒーを買って、主人公の服を適当に買って、それから…って感じですね。
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