喫茶ステラ ―異邦人と蝶の残滓―   作:コクーン√

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なんか書いている内に区切りが見当たらずいつもより文章が多くなってしまいました。

※少し痛い描写になるかもです。一応戦闘シーンが含まれます。


第17話:隙と油断

 

ーーー大人しく帰ってくれないか。

 

その言葉聞いた瞬間、反射的に体が強張った。静かに告げた筈なのに、突き放そうとしてくる感覚と怒りが言葉に籠っていた。彼の顔を見ると目を細め、冷たくこっちをじっと見ている。

 

(なに…これ…。)

 

怖い。

 

今の彼を見ていると、頭の中でそう考えてしまう程に雰囲気が変わっていた。

 

「心配してくれた事は正直嬉しい。たかが数日しか知り合っていない人の為に後を追いかけて来て止めてくれようとしてくれる。俺が危ない目に遭わないように…。だけど、まず自分の身を第一に考えて欲しい。俺はともかく、四季さんに何かあったら今後が大変だからな。」

 

「だから今日は何もせず家に帰って欲しい。そんなに心配しなくても大丈夫。何も起きないから。明日は明月さんも含めて3人で買ってきたコーヒーの飲み比べする予定だしな。まぁ四季さんは飲めないかもしれないけど。」

 

彼は冷たい表情から、今度は何かを見守るような優しい目をして安心させるように語り掛けてくる。

 

「でも…。」

 

「ここで引き返してくれると、こっちとしては物凄く助かる。けど、付いて来てしまうと俺に凄く迷惑が掛かってしまう。としたらどうする?四季さんの嫌う人に迷惑やワガママをすることになるかもしれない。付いてくるという自分の意思を通そうとする。それで人を振り回すことになりかねないとしたら?」

 

彼にそう言われ、心の中が痛む。過去の記憶が蘇り無意識に後ずさる。

 

(私が付いてく事で迷惑が掛かってしまう…?)

 

小さい頃の様に自分の事でこれ以上、人を振り回すのはもうしたくはないと思っていた。既に彼にはお店の事に巻き込んでしまっているのだから。けど、それより気になった事がある。

 

(どうして彼は、私がそう思っている事を知っているのだろう…。)

 

彼と顔を合わせ会話をしてのはたった数回程度なのに。確かに閣下や明月さんには迷惑を掛けても構わないと思っていた。けれど彼は普通の人間なのだから二人とは違うと。会話や顔などに出した憶えは無い。

 

(目の前に居るこの人は、一体何者なのだろう…。)

 

そう考えてしまう。

 

最初は普通の男性に見えた。明月さんを庇い怪我を負った時の話を聞いた際は、人を良く観察していて咄嗟に行動が出来る人ぐらいの印象だった。

 

けれど今はよくわからない…。こっちは何も知らないのに向こうは知っている。そんな不気味さを感じて彼を見る。

 

「あー、中々強情だなぁ…。四季さんって意外と負けず嫌いとか反骨精神だったりしたのかな…。こう言ったら引き下がってくれると思ったんだけどな…。」

 

何か小さく呟くが聞き取れなかった。頭を搔き、困った顔でこっちを見る。

 

「そんなに猶予がある訳じゃないし…。はあぁぁぁぁ…。仕方ないか…。」

 

彼から長い溜息が出る。

 

「確認するけど、犯人を追う俺に四季さんは付いて行きたいって事で良いのかな?因みにこっちは引き返すって選択肢はするつもりは無い。」

 

こちらが見ている内に彼の中で結論がついた様で、確認として私に問いかけてくる。

 

「放っておくと危険な事をするのでしょう…?」

 

「するかどうかは向こう次第だからなぁ…。こっちとしては穏便に終わって欲しいと願ってる。」

 

「それなら一人より二人の方が良いんじゃないの?」

 

「普通はそうかもしれないな…。ってそろそろ行かないとどうなるか分からなくなるし…。付いてくるなら一緒に行こうか。」

 

「ここまで来たら付いていく以外の選択肢は無いと思うのだけど…。」

 

彼の隣まで追いつき、恐怖を隠すように強がって見せる。

 

「それと、四季さんに付いてくるにあたっての条件があるのだが…。」

 

「何かあるの?」

 

「まず俺の手が届く範囲に居るようにしてほしい。あと仮に犯人を見つけても俺より前には出ない。どう?守れそう?」

 

「私は小さい子供か。」

 

「はは、確かにそう聞こえるな。念のためという事で。最後に、もし俺に何かあった時、例えば刺されたり行動が出来ないと分かった時は構わずに逃げるように。」

 

「え…。」

 

驚いて彼を見るが、至って真剣な顔だった。ふざけて言っている様には見えない。

 

「それは…。澤田君を見捨てて逃げろって言っている?」

 

「そうなるな。逃げた後はステラに行ってミカドさんと明月さんを頼ると良い。二人なら何とかしてくれるはず。って、あくまでその場面になった時はだからなっ?最悪の想定だからそんな顔をしないで欲しいのだけど…?」

 

心配をするように慌てて言ってくる。私が不安な顔をしていたのを察したのだろう。

 

「ま、そうならないようにするから。それじゃ、行きますか。」

 

彼の後を私も続く。歩いていると少し先に青い光が浮いている。恐らく蝶なのだろう。澤田君の方を見ると彼は蝶に近づき、捕まえるように手で蝶を握る。捕まった蝶は手の中に消えていった。

 

「…やっぱりこの方角で当たってるのか。」

 

「この先に犯人は居るって事?」

 

「今の所はな。追いつくまでに移動したり犯行に移る可能性があるからなるべく急ごうか。」

 

少し歩くと、また先に蝶が見えた。同じように捕まえる。

 

「……多分、この道の先に居ると思う。四季さん。最終確認だけど…、今から帰るって選択は?ここから先はセーブも引き返すことも出来なくなってしまいますが。」

 

少し冗談っぽくこちらを向く。確かに危険に巻き込まれないならここが分岐地点なのだろう。けれど返事は変わらない。

 

「答えはノーって事で。」

 

「…はぁ。はいはい、了解です。」

 

呆れながらも頷いて先に進もうとする彼からは緊張感や恐怖心が感じられない。強がっているのだろうか。それとも…。

 

警戒しながら静かに歩いて行くと、彼から無言で止まれとジェスチャーがあった。

 

「あの30m位先で右手の地面に座っている人が見える?あれが今日の犯人。」

 

小声で耳打ちをしてくる。確かに地面に人が座っているのが分かるが、薄暗く、人相まではっきりと見えない。

 

「人が座っているとしか分からないんだけど…間違いないの?」

 

「100%。見てたら分かるよ。蝶が寄ってくるはずだから。」

 

彼に言われ観察していると、座っている人の周囲にどこからか蝶が集まって来た。

 

「だろ?。しかも駅で見た時より数増えてるし…。」

 

「どうするの?警察呼ぶ?」

 

「ちょっと、話掛けてこようかと思う。」

 

「いくら何でもそれは危険すぎるでしょ。」

 

「俺だけなら大丈夫。ちょっと付いて来てくれ。」

 

そう言い、来た道を引き返すと途中にあった自動販売機で水を買っている。

 

「え、何?水でも差し入れるの?」

 

「いやいや、これは濡らす用。」

 

彼は購入した水の蓋を開け、ポケットから取り出したタオルを濡らしていく。

 

「これを何に使うの…?」

 

「護身用?座っている人の顔でも拭いてやろうかなと。」

 

意味不明な行動を見ていると、また来た道を引き返し犯人に近づく。

 

「今から話をするから、四季さんは少し離れて見てて欲しい。もし何かあったらさっき最後に言った事は必ず守る様に。」

 

私に強く念を押し、この先に座っている犯人であろう人に彼は近づいて行った。

 

 

 

 

 

(はぁぁ…。結局付いて来て貰うことになったなぁ……、はぁ…。)

 

心の中で何度目かのため息を吐く。

 

(彼女のトラウマを刺激すれば嫌がって帰ると思ってたけど甘かったのかね。)

 

小さいころから引きずっている過去のトラウマを言えば、怖気づくと考えての言葉だった。実際一度は目には動揺した様子が見えたし、後ずさりもしていた。決まったと判断したが…、なぜかその後表情が変わってしまった。

 

(うーん。原作前の四季ナツメはそんなに強い意志を持っていたか?諦め精神だと思っていたのだけどなぁ…。語られてないだけで実際は違うとかあったりするパターンか?)

 

自分の中の想像とは合わず、頭の中で自問していたが答えは出ず。

 

(過ぎたことは仕方ないか。今は彼女に被害が及ばないようにする事と、なるべく穏便に事を済ませるようする事。この2つだけに集中しよう。)

 

犯人の魔の手が及ばないように距離を置いてもらうのが良いがあまり離れすぎると何かあった時に間に合わなくなる。なので適度な位置にいてもらう。

 

(あとはあまり疑問に思われない方法での防衛…、素手では無く道具を使えば誤魔化しは出来るだろう。)

 

ポケットにタオルと、小銭がある事を再確認し歩き出す。

 

3度目の蝶を捕まえ、犯人の場所が分かった所で再度確認をしたが綺麗に断られた。

 

少し歩くと右手にうずくまる様に座る人が見える。よく見るとパーカーを着ておりポケットに手を入れていた。

 

(あれか…。)

 

無言で後ろに止まるように指示を送り、状況を説明する。

 

「人が座っているとしか分からないんだけど…間違いないの?」

 

彼女は何とか人が居る位にしか判断できないらしく疑いの目を向けてくる。だが間違い無く駅に居た人だ。

 

少し待って見ていると周囲に蝶が寄って来たことが確認できた。それも駅で見た時より多く。

 

(穏便には済みそうに無いし…備えておこうか。)

 

来た道を引き返し、途中で見た販売機から水を買う。中身でハンドタオルを濡らし、右手に持つ。隣で四季ナツメが何をしているのか分からず聞いてきたが、適当な返事をしておく。

 

(さてと、これ以上変な事が起きる前に処理しておかないと…。)

 

濡れたハンドタオルを軽く絞り水を出す。良い感じになったのを確認してから座っている犯人に話掛ける。

 

「やあ、そこで座っているお兄さん。どうかしたのか?」

 

声を掛けるが直ぐに返事が無い。

 

「……、ぁあ?俺の事か?」

 

少し待って居ると生気の感じない掠れた声で返事が返ってくる。

 

「他に座っている人が居ないからな。あんたって事になる。なんだか疲れている様に見えたんでな。心配して声を掛けさせて貰った。」

 

「…どっか行ってくれ。別に何でもない。」

 

「いやいや、そうも行かない事情があってさ。」

 

「そっちの事情とか俺には関係ないだろ。さっさと行ってくれ。」

 

顔を上げずに返事をしてくる。なるべくひっそりとして居たいのだろうけど、今からこの人は俺の事を無視することが出来なくなる。

後ろを軽くみると四季ナツメが少し不安そうにこっちを見ている。大丈夫と意思を伝える。

 

「何言っているんだ?これはあんたにも関わる事だぞ?」

 

「ああ?俺に?」

 

こっちの発言に不思議に思い顔を上げて俺を見る。…が、顔を見てもピンと来ていない様子だ。

 

「誰だあんたは…。」

 

「おいおい…。もう頭から消えたのか?凶器で切った相手ぐらい覚えていた方が良いんじゃないか?顔を見られているって事だぞ。」

 

すると目の前の男は目を見開く。

 

「お前…。まさか駅での…。」

 

「思い出してくれたか?そう、この肩をあんたに切られた被害者って訳。」

 

左手でトントンと傷口を指さす。

 

「なんで俺がここに居ることを…。」

 

「そんなのは今どうでもいい事だと思うのだけど?」

 

「なんだ、俺を捕まえに来たのか…?」

 

「まぁそうなるのかな…。大人しく自首してくれた方が嬉しいんだけど。」

 

そうなるとは端から考えては無いが、一応聞いておく。

 

「ハハッ。わざわざ捕まえに来たのか…。阿保だなお前…。」

 

「傷害起こす人に言われたくないのだけど…。」

 

どう考えても阿保はそっちだろう。

 

「一人で俺を捕まえに来たのか……、ってそこにも居るのか。」

 

「彼女は付添人。来るなって行っても付いてきただけ。」

 

「今度は別の女と居るとか…、モテモテだなおい。」

 

他人から見るとそう見えるらしい。

 

「それで。大人しくポケットのナイフを捨てて交番に行くことをお勧めするけど?」

 

「俺が大人しく、従うと思っているのか…?」

 

「そうなってくれることを願っている所だけども…無理みたいだなぁ。」

 

先ほどから目の前に居る男の声に力が籠ってきている。交渉は決裂になりそうだ。

 

「当たり前だろ。捕まってたまるかよ…。顔を見られている奴が目の前に居るんだ…そこの女にも見られたな。殺すしかない。」

 

はっきりと殺害予告をし、ポケットからナイフを取り出し勢いよく立ち上がる。

 

「全部…ぜんぶっ。殺してやるよ。お前らにも俺の苦しみを味わわせてやるっ!」

 

ナイフを構え、息を荒くしながら叫ぶ。後ろからは四季ナツメが悲鳴をあげ、俺の名前を呼ぶが無視する。

 

「いや、殺したらあんたの苦しみ味合わせること出来ないだろ…。極度の興奮で知能低下したのか?」

 

わざとこちらに矛先が向くように挑発する。

 

「馬鹿にしてんのかっ!」

 

「おお、こわっ。声デカすぎるだろ。」

 

怯える態度を取り、2、3歩後ろに下がり距離を取る。左手をポケットに入れ小銭を握る。

 

「逃げんじゃねぇ!お前は絶対殺す!」

 

両手でナイフを握り直しこちらに向ける。刃先は震えていた。

 

「いや、やめてくださ、あっ、そこの警察の方!待ってください。」

 

今にも襲い掛かってきそうな男の後ろに目線を送り叫ぶ。目の前の男は警察が居ると思い後ろを向く。勿論誰も居ない。

 

「誰も居ないじゃねぇかよ…。」

 

こちらから視線を外し安堵した様子でこっちに振り返ったと同時にポケットに入っていた小銭を全力で投げつけた。

 

「つまらねぇ嘘を…っつ!!いだっ。」

 

油断したところに顔に痛みが走り顔を手で覆う。完全にこちらを見ていないと判断した隙で右手に持っていたハンドタオルを手加減なしで男の顔目掛けて振り抜いた。

 

肩にかなりの痛みを感じたが無視する。

 

(また血が出るだろうなぁ…。)

 

裏路地に破裂音の様な音が響く。後ろの四季ナツメからまた悲鳴が上がっていた。

 

男は顔面を抑えながら地面にうずくまる。即座にナイフを持っている手を足で踏みつける。

 

「っがぁ!」

 

訳も分からずに腕に痛みが来たことで反射的に手を放す。反対の足でナイフを抑え、拾われないように後ろに蹴る。

 

(取りあえず後はこの男が抵抗出来ないようにするだけだな。)

 

この後の事を考えようとしていると後ろから悲鳴が上がった。何事かと見ると四季ナツメが滑って来たナイフに驚いていた。

 

「あ、ごめん四季さん。驚かせてしまった。」

 

「あ…いや、大丈夫。変な声出てごめん。」

 

「いや、そんな事ないかr」

 

気にしていないと返そうとすると、うずくまっている男が雄たけびの様な大声を出した。咄嗟に顔を向けたと同時に手を押さえつけていた足に男の手が振り下ろされた。

 

殴られるような衝撃と、足に何かが刺さるような感触がした。

 

「踏んでんじゃねえ!どけっ!」

 

男が手を離し、足を見ると持っていたナイフより小さいナイフ。小型の7つ道具に付いている折り畳みナイフが刺さっていた。

 

手から足をどけ、男の鼻を踵で蹴り一歩下がる。刺された足を確認すると骨と骨の間に刺さっており、靴のお陰か貫通とまでは行かず途中で止まっていた。

 

「澤田君っ!?」

 

後ろから何されたかまでは分かってはいないが、心配をするように名前を呼ぶ。返事をしたいが今はそれどころではない。

 

男を見ると、鼻を抑えながら地面に伏せていた。多分折れたと思われる。

 

刺された右足を地面につけ感覚を確認する。滅茶苦茶痛いが今の所は我慢は出来そう。

 

男に近づくとうめき声と憎しみが籠った声を出していた。

 

「やりやがった…、殺す、殺す。もう許さねぇ…っ!」

 

(そろそろ人が来そうだし足を早く診せないといけない。時間をかけられないな。)

 

大通りからは少し外れているが、それでも人通りはあるし、大きな音や声が聞こえたら見に来るし通報だってするだろう。

 

(穏便とか四季ナツメに見られたくないとか言っている場合じゃないな。)

 

未だに伏せている男の前に立ち、左足で後頭部を踏みつける。

 

男から痛がる悲鳴が聞こえるがそれを無視し何度か踏みつける。

 

地面のアスファルトをバウンドし、顔と隙間が出来た所を再度踏み抜く。何度か繰り返すと男から頭を庇いながら懇願している様に言葉を繰り返している。多分謝ったり許してくれとかだろう。

 

言葉を無視して繰り返していると、次第に声が小さくなり抵抗もしなくなった。

 

足をどけて男の髪をつかんで顔を上げるとまだ意識は残っており、こちらを見ていた。

 

「……ぁ…。も…、……して…。」

 

呻き声を出し、怖がるように俺の目を見ている。

 

「これからお前は警察に捕まる。その際、ここで起きたことを話すな。返り討ちにあったとか適当な事を証言しておくように。理解したか?」

 

相変わらずうめき声をあげているが此方の言葉には反応を示している様子。

 

「間違っても今日の俺ら3人の話を出さないように。分かったら反応して欲しいのだが?」

 

なるべく静かに淡々と声を掛ける。男から小さく了承の返事が返ってきた事を確認し髪を離す。

 

最後に側頭部に蹴りを入れ、気絶したことを確認する。

 

(今度は大丈夫だな。もう無視しても良いだろう。)

 

さっきの様な事にはならないと判断し男から離れ、四季ナツメの方を向く。彼女は俺の方を怯えたように見ていたが、足の方を見て目を見開く。

 

「……え、澤田君?これってナイフじゃ…。」

 

「いや、これは…、最新を取り入れた靴のアクセサリーなんだけど…。どう?似合っている?」

 

心配させないように、肩の時と同じように聞く。

 

「それってさっき足を殴られた時に刺されたの!?それより大丈夫なのっ!」

 

「今の所はまだ大丈夫。めちゃくちゃ痛いけどな。」

 

「急いで病院に行かないと…!えっと、先に救急車をっ。」

 

今日の明月栞那と全く同じことを言いながら慌てている。なんか面白い。

 

「待て待て、まずは落ち着け。」

 

「落ち着ける状況じゃないでしょ!?ナイフが刺さっているの!」

 

もしかしてここまでがテンプレなのかもしれないと思う。

 

「慌てるのも分かるがまずは場所を変えたい。そろそろ人が来ると思う。」

 

周囲には点々と店や、家らしき建物もある。何事かと見に来る人も居るかもしれない。

 

「えっと…、移動したら良いの?ここじゃまずい…?」

 

「今を誰かに見られるとまずいからな…。ごめんだけど軽く肩を貸して頂けると…助かるのですが。歩きにくくて。」

 

「変な遠慮しなくて良いからっ。早く捕まって。」

 

四季ナツメの肩を借りながら来た道を戻る。右肩を掴んで貰っているが、肩の傷が地味に痛む。

 

「ここら辺なら人も居なさそうかな…。」

 

来た道の途中で更に細道に曲がり、コンクリートの段差に腰を下ろす。

 

「ここで一旦良いの?それで、足の怪我はっ!」

 

「軽くナイフが刺さっているだけで、骨は避けてるし貫通もしていない。血がこれ以上出ないようにしないとな。」

 

沁み込むようにじわじわと出ている。多分動脈からでは無いのだろう。

 

「こういう時、どうしたら良いの?取りあえずナイフを抜いた方が良いの…?」

 

「あー、いや逆に血が出てしまうから一旦抜かない方が良い。栓になっているからな。」

 

「心臓より高い位置に置けば良いって聞いたことあるけど…。」

 

「まぁそれは正解だな。今は傷口を直接触れないから間接的に抑える位しか出来ないかな。」

 

ポケットから余ったハンドタオルを取り出し足首に巻きつける。ついでに気休めに靴紐を絞め直す。これで少しは抑えれると良いが。

 

「今可能なのはこれ位だろう。ごめんだけどまた肩貸してくれないか?」

 

「どこに行くの…?」

 

「夕方言った様に病院には行けないからな。手間掛かさせるがステラに引き返したい。」

 

「閣下に対処して貰うって事?大丈夫なの?」

 

「大丈夫。直ぐにどうこうなる怪我じゃないからな。めちゃくちゃ痛いけど。」

 

「……分かった。じゃあ急いでお店に戻らないと。」

 

(急いでって…、こっちは怪我人なんだからお手柔らかに頼むぞ…。)

 

 

 

 

怪我の痛みを表に出さないように我慢しつつ、またステラに引き返した。

 




水を含んだハンドタオルで叩かれるのってもの凄く痛いですよね…。ナイフ刺されるよりは、ましなのかもしれませんが…。


次はまたステラに戻り、手当てを受けます。ミカドさんに怒られることになりそうです。

平均文字数が4444字で不吉。急いで次を書かねば。
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