喫茶ステラ ―異邦人と蝶の残滓―   作:コクーン√

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前回の栞那視点です。




第1話:ある日。森の中で。全裸に。

 

 

「ミカドさん。確かに蝶はこの先に飛んで行ったのですか?」

 

 木々の間を歩きながら、隣を歩いているミカドさんに確認する。

 

「ああ、こちらに向かって行ったのは間違い無いはずだ」

 

「このような場所に蝶が居るとは思えないのですが……。離れの家でもあるのでしょうか?でも、それにしては道の舗装とかは無くて歩きづらいですね……」

 

地面から生えている草を踏みながら前に進む。まともな道では無いため歩きづらく、暗闇だらか気を抜くとバランスと崩し転んでしまいそうだった。

 

「元々の目的のために田舎まで来たとはいえ、まさか別の蝶を見かけることになるとはな……」

 

「そうですねぇ……お仕事が捗ってありがたいのですが、こんな人が居ない場所となると嫌な予感がするのは私だけでしょうか……?」

 

ミカドさんの言葉に返事しつつ周りを見渡す。草木が覆い茂り、悪路に違いない。むしろ人間の生活圏から離れて行っている。そんな場所に居るのは動物位しか思いつかない。

 

「出会うとしても熊さんは勘弁してほしいものですが……」

 

「その心配は無いだろう。此処の猫たちは熊などの危険な動物は見たことはないと言っていたからな。それに宿泊先の女将さんの夫もこの辺りには居ないと話していたであろう?」

 

「それもそうですね。万が一遭遇したらミカドさんが対話して何とかしてくれますよね?」

 

「馬鹿を言うな。出来るわけないだろう」

 

「そうですか?猫さんとは可能なので他の動物も何とかなりませんか?」

 

冗談交じりでミカドさんに聞いてみる。

 

「我は猫だぞ?熊科の生き物と会話が出来るわけないであろう。人科の人間が他の生き物と出来ないのと同じだ。私をなんだと思っているのだ。全く……」

 

「ふふ。ごめんなさい、冗談です」

 

呆れながらため息を吐くミカドさんに、思わず笑みが出てしまった。

 

お互い無言になりながらも暫く歩いていると、前方から何か音が聞こえてきた。

 

「ミカドさん、何か聞こえませんか?」

 

「ああ、蝶が飛んで行ったのはこの先になるが……もしかすると人が居るのかもしれないな」

 

「こんな場所で蝶が人に集まるなんて、あまり良い状態では無いことは確かですし……急ぎましょうっ」

 

「ああ。悪い傾向であることは間違いないであろうからな」

 

人気の無い場所に居るなど、まともな状態なわけがないですし、もしかすると……と嫌な考えが浮かぶ。焦りを感じつつ木々の間を走り抜ける。

 

少し進むと草木は減り、開けた場所にたどり着く。そこには数頭の蝶が飛んでいた。

 

「どうやら蝶が飛んで行ったのはこの辺りの様だな」

 

「そのようですね。それにしてもどうしてこのような場所に……」

 

「原因はわからぬが、居ることは確かであろう。もしかするとこの場所で自殺か殺されたなどとの可能性も考えらえる。それでもこの場を離れずに居るのは疑問ではあるが……一先ずは回収を済ませよう」

 

「了解です。この場を離れてしまう前に済ませてしまいましょう」

 

蝶が飛んでいる場所に近づき、死神の鎌を構える。

 

……どなたの魂かご存じありませんが、回収させていただきますね。次は幸せな人生に巡り会えますように……。

 

何度目になるか分からない願いを心の中で想いつつ、鎌で蝶を回収する。

 

とりあえずはこれで一安心ですが、原因が気になる所ではありますね……。

 

「っ!?そこに誰かいるのか!」

 

蝶が居た原因を考えようとした時、ミカドさんが前方に向かって呼び掛けた。

 

「人の気配だが……これは―――」

 

「そこにどなたか居るのですか?こんな場所に……?」

 

人が居るなら、もしかしてこの場所に飛んでいた蝶に関して何か関係があるのでしょうか……?

 

「人であるのは確かだ。敵意はないが……こちらに警戒しているようだ」

 

「すみません。どうしてここに居られたのかお聞きしたいのですが……怪しいものではありませんから」

 

なるべく警戒されないように落ち着いて呼びかけますが、こちらの呼びかけには答えてくれません。

 

「居るのはわかっている。姿を見せてくれないか?」

 

再度ミカドさんが呼び掛けますが、姿を見せる気配はありません。

 

……仕方ありません。此方から向かいましょう。

 

そう考え近づこうとした時、向こうから返事が返ってくる。

 

「わかった。姿を見せるから何もしないでくれ」

 

返って来たその声は、少し低く女性ではなく男性の声だった。前方の木から姿を現した人影はゆっくりとこちらに近づき、少し前で立ち止まる。

 

「男性の方ですが……。一体どうしてこんな場所に……?」

 

身長的にも確かに男性の方だと思われますね。ですが、少し姿勢を低くして近づくのはなぜでしょうか……?

 

不思議に思いつつも、腰に下げている蝶を回収するランプを視線と同じ位置まで持ち上げる。ランプからは蝶の光で少しだけ周囲に明るさを放つ。

 

「―――っ!?」

 

すると男性はこちらを見て驚愕し、口を開く。

 

「――――――」

 

驚愕の表情のまま何かを声に出していたが、言葉の内容までは聞き取る事が出来なかった。

 

「突然すみません。どうしてこのような場所で……何をされていたのですか?」

 

疑問を投げかけて近づこうとすると―――。

 

「待てっ!止まれ!」

 

後ろからミカドさんの鋭い声が飛ぶ。その声に驚いて振り返ると、人型の姿になったミカドさんが私より前に出る。

 

「色々と気になることが多いが……。まず、なぜ貴様は裸の状態に葉っぱで股間を隠している……?」

 

ミカドさんの問いかけに、はい?と思考が止まる。

 

「ま、待ってくれっ!警察に連絡する前に俺の話を聞いてくれ!変質者ではないし原住民とかでもない!!」

 

男性は声を荒げ、片手を前に突き出して焦った様子でいる。反対の手は股の間で何かを抑えている様に見える。

 

「―――ッ!?」

 

先ほどのミカドさんの質問を思い出し、咄嗟に顔を逸らす。

 

人気の無いこんな森で裸で歩いていた……!?どんな変態プレイなんですか!?露出狂なのでしょうか……!いえでも、全裸になることで解放感を味わいたいのかもしれません。もしかすると、普段の生活でのストレスを解消する為に訪れたのかもしれないですし……!世の中にはそういった特殊な性癖をお持ちになる人も居るとは知っていますが……、いざ目の前にすると……ドン引きといいますかっ、理解が追いつきません!

 

「ほう……。では、どの様な事情があって、全裸で森の中で居たのだ?」

 

ミカドさんが最もな疑問を投げかける。

 

「俺もわからなくて戸惑っている所なんだ!自分の部屋で寝ていたかと思えば、次に起きたらここ居たんだ!しかも全裸でっ!そんな中状況が飲み込めない時に何かが向かって来たから隠れて様子を見ていたんだ!嘘じゃないっ」

 

「もしかして……その寝ていた場所というのは、そこの後ろ……あの位置で合っているだろうか?」

 

「え?……あ、ああ、その辺りで間違えない。さっきそちらの女性が鎌で蝶を回収していた位置で寝ていたはずだ」

 

「やはり……。では、発生の原因は考えている通りと言うことか……」

 

「あの、ミカドさん?話が見えないのですが……この男性の方と蝶が関係しているということでしょうか?あと、あなたは先ほどの蝶が見えている……で間違いでしょうか?」

 

「あの青い蝶のことなら見えているで間違い無いです」

 

私が別の事を考えている内に、なんだか話が進んでしまっているようですが……こちらの男性はここに飛んでいた蝶に関係していて、どうやら見えている様ですね……。

 

それに、先ほどの蝶を回収する時を見ていたのでしたら、警戒して隠れるのも納得ですね。こんな人の居ない森の中で見知らぬ人が鎌を振り回していたら私だって警戒しますし……。

 

目の前の男性が警戒するのも仕方ないと苦笑した。依然に裸なのは謎ではあるが……。

 

「まだ聞きたい事はあるが……取り合えず場所を移そう。そうだな……我々が泊まっている宿で話したいのだが……どうだ?」

 

「わ、わかった。正直全然状況を把握出来ていないけど、場所を移動するのは賛成したい。……が、これで人が居る場所には……」

 

「そうであったな。体を何かで隠さないとな。栞那、そのマントをそやつに貸してやってくれ」

 

「わ、わたしのをですかっ!?」

 

「そうだ。他に身を隠せる物はなかろう?それともあれか?この男に全裸で宿まで向かわせる気か?」

 

そ、それはそうですが……!裸の男性にマント貸すとか……。な、なんかマニアックなプレイをさせているみたいで……!

 

ちらっと男性に視線を向けると、申し訳なさそうな雰囲気で、はは…と苦笑いをしていた。

 

……でも、貸さないとこの方は困ってしまいますよね……?

 

首元で止めているリボン状の結びを外し、男性に差し出す。

 

「い、良いのか?貸していただいても……」

 

「はい。お話しする前に警察に連れて行かれてもらっても困りますし……。気にしないで下さい」

 

「すまない。それじゃ……お言葉に甘えて使わしていただくことにする……。ありがとう」

 

申し訳なさそうにマントを受け取って感謝を言う彼を見ると、悪い人では無さそうな印象を受けた。

 

「それでは向かうとするか。私が案内するから付いて来てくれ」

 

彼にそう伝え、先頭を歩いて行くミカドさんの後に彼も続く。私も後ろを追いかけ彼の横に並び歩く。

 

「寒くないですか?もう暫く我慢してくださいね?」

 

「いや、使わしてもらっているだけでも十分だ。贅沢は言わないさ……」

 

「あ、と言っても貸すだけですからね?如何わしい事には使わないで下さいよ?」

 

「変なことに使うかっ!ただ貸してもらうだけだからっ!」

 

おおっと?思ったより鋭い反応が返ってきましたね。面白そうな人です。

 

こちらの冗談にツッコミで返してきた彼を見てにひひと笑いつつ、彼より少し前を歩き一緒に宿を目指した。

 

 





裸に葉っぱ1枚装備→裸マントnew

絵面を考えるとドン引きですねぇ。しかも女の子から借りて……。


今回明月栞那視点を書きましたが、台詞や口調が合っているのか良くわからなくなってきました。違和感あってもスルーでお願いします。

次回は宿に着いた場面から始まります。

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