喫茶ステラ ―異邦人と蝶の残滓―   作:コクーン√

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寝不足時の頭の回らなさはやばいと思います。ボケが始まったのかと思ってしまうレベル…。睡眠って大切なんだなと気づける瞬間でもありますが…。


第21話:不可思議への貸し

 

「……ん?…うん?」

 

寝ていると、何かが階段を上がってくる音で目が覚める。

 

(誰か来たのか…って閣下以外ありえんか。足音も変だしな。)

 

人にしては重さの無い音が聞こえてくるので閣下が帰って来たのだと判断する。

 

「ん?起きていたのか?いや、どうやら起こしてしまった様だな。」

 

猫モードの閣下が階段から姿を現した。

 

「いや、勝手に起きてしまっただけだから気にしないでくれ。」

 

「そうか。しかし、音を立てないように気を遣ったつもりだったのだが…、今ので起きたのか。」

 

「身に染みてしまっているからなぁ…。これはミカドさんが悪いわけじゃないから。」

 

「…なるほどな。それなら仕方ない。どうする?もう一度寝なおすか?」

 

「今って何時ぐらい?」

 

外はまだ暗いが車などが走っている気配はするから日の出前辺りと思われる。

 

「今は6時半前ぐらいだな。もう少しで日が上がるだろう。」

 

「それなら起きてようかな。足の様子も見ておきたいし。」

 

刺された足を見ると、包帯は薄らと血が滲んでいた。痛みはあるが昨日よりは引いている気がする。多分。

 

「それなら昨日話していた犯人についての報告をしておこう。」

 

「こっちは良いけどミカドさんは大丈夫?徹夜だったりしないのか?」

 

「その心配は必要ない。別の場所でしっかり睡眠は取って来たからな。」

 

なるほど。朝帰りって事かこれは。

 

「なるほど。じゃあ聞くことにする。」

 

「まず、貴様が言っていた犯人だが、無事警察の方へ連行された様だ。現場には警察が二人ほどしか居なかったからな。話していた内容を聞く限りでは喧嘩か何かを起こしたのではないかと言っていたな。」

 

これでまずは一安心出来るな。後はこっちまで辿り着かないことを祈っておこう。

 

「それは良かった。二人に良い報告が出来そうだな。」

 

「次は、蝶だが、道中で2頭程捕まえたが現場には見当たらなかった。既に散っていたのだろう。」

 

「それは残念。でも道中で見つけられたなら結果オーライか。それが目的の蝶かもしれなかったけど。」

 

「そうだな。そこに関しては仕方があるまい。」

 

「報告ありがとう。何か他に気になった事とかあったりするか?」

 

「今の所はそんな所だ。そっちは何かあるか?」

 

「うーん、特に。今日は四季さんと話して何とか説得を試みるのと、その後コーヒーの飲み比べをする位だな。」

 

「分かった。何かあったらまた言うと良い。吾輩はまた出掛けてくる。」

 

「もしかして、報告する為に戻って来た感じか。なんか申し訳ない。」

 

「気にするな。早めに連絡しておいた方が良いと判断したまでだ。」

 

そう言うと閣下はまた階段を下っていった。

 

「さて、包帯でも替えておこうか。」

 

足の交換は可能だが、肩の方は明月栞那が起きたらその時にでも頼もう。

 

「さてと、交換していくか…。」

 

部屋の隅に置いてある救急箱に手を伸ばし、包帯を取り出した。

 

 

 

足の包帯を交換し終え、外を見ると太陽が出ており、カーテンから日が少し差し込んでいた。

 

「もう朝が来たのか…。ていうか腹減ったな…。何か食いたいが、今この状態で出掛けようとすると絶対怒られるだろうしな…。仕方ない。明月さんが起きたら調達をお願いしよう。」

 

後ろを見るとまだ起きておらず、リズムの良い寝息をしていた。

 

「うむ、健康的な寝方だな。といっても死神に健康状態の有無はあるのか?体とは縛られていない存在だったか。上位存在から維持する為の力は貰っているから飯や睡眠も必要は無いが…、それらを行わないと気分的に良くないとかだったか?体調を崩すんだっけ。」

 

更に言えば体などが汚れたりとかもしないらしい。閣下が抜け毛などの代謝をしないのだから死神も似たようなシステム構造なんだろうな。超便利。

 

「あれ?って事は…。その存在に近い体の俺はどうなるんだ?」

 

体は少なくとも人間そのものでは無いだろう。が、死神というわけでもない。腹も減れば、喉も乾く。人としての代謝はあるはず。

 

「考えてみると、昨日風呂に入ってないが、特に不快感が感じないな…。」

 

中途半端に似た感じになっているのだろう。

 

(人として生まれ変わったと思っていたが、人としての定義から少しズレている可能性があるのかも?。)

 

「その辺りも追々分かって来るだろう。今は生きている事に感謝しておこう。」

 

「んっ……んんっ。…あれ、澤田さん?起きていたのですか。」

 

「おはよう。もしかして起こしてしまった感じか。」

 

「おはようございます。まぁ…、寝ている横で何か独り言が聞こえていたので。それでだと思います。」

 

「それは申し訳ない。」

 

「いえいえ、もう起きる時間ですし丁度良かったです。それより何か考え事でも?」

 

「そうだな…。人としての定義について考えていた…のかもしれない。」

 

「朝から大分哲学的な事をお考えの様で…。」

 

(哲学的なのか…?まぁ、考えていないからどうでも良いか。)

 

「明月さんは起きる?時間的には良い感じだとは思うけど。」

 

「起きますよ。澤田さんが起きられているのに私だけ寝ている訳にはいきませんから。」

 

そんな事気にしなくてもいいのにと思うが、こっちとしても助かる。

 

「足と肩のお怪我の様子はどうでしょうか?」

 

「まともになっている気がする。多分。足の方の包帯は交換出来たけど、肩の方は一人じゃ難しいから後で手伝って欲しい。」

 

「分かりました。少し待っていて下さい。身支度を整えて来ますので。」

 

「了解。それまで待っておく。」

 

 

 

朝の身支度が完了し、戻って来た明月栞那に包帯の交換を手伝って貰い、次いでに朝食と昼食分の買い出しを頼んだ。

 

「何か食べたい物とかありますか?パンやおにぎりなどでしょうか?」

 

「そうだな。朝はおにぎり系で頼む。味は適当で別種類で大丈夫。後、インスタントの味噌汁系も頼みます。昼用は適当な弁当で。明月さんが美味しそうと思ったので。」

 

「あまり詳しくは無いのですが…。分かりました。変なのを買ってきても文句言わないで下さいね?」

 

「大丈夫。変なの買ってきても逆に好感度上がるだけだから。」

 

「何ですかその変な上がり方は…。それでは行ってきますね?」

 

「了解。すまんが宜しく頼みます。あ。ごめん明月さん、追加でカップのアイスを3つ程頼んでも良いか?」

 

「アイスですか?デザートに食べるのですか?」

 

「いや、コーヒー飲むときのお供にでもしておこうかなと。3つともバニラ味でお願いします。」

 

「分かりました。朝はおにぎりを幾つかとお味噌汁。お昼は弁当。後はカップタイプのバニラ味のアイスを3つですね?」

 

「ご注文に間違いは無いです。」

 

「畏まりました。少々お待ちください。今買ってきますので。」

 

こちらに一礼をして階段を下りていく。なんか客と店員みたいなノリになってしまった。向こうも途中からそのつもりに見えた。

 

「それまでのんびりしておくか…。」

 

特にすることが無いため、暇を持て余すことになりそうだ。

 

どうしようか考えて椅子に座っていると、階段から人が上がってくる音がする。しかも二人分。

 

(一人は明月栞那として…。もう一人は四季ナツメとかか?朝早くから来ているって事は…。)

 

恐らく昨日の事で朝から来た感じなのだろう。偶然そこで明月栞那に出くわした事になる。

 

そう考えていると、階段から二人の姿が出て来た。

 

「随分と注文を届けるのが早いと思ったが、どうやら違ったみたいだな。」

 

「外でナツメさんと会ったので戻ってきました。澤田さんとお話をされたそうに見えたので。」

 

「おはよう四季さん。随分と早い時間から来たみたいだな。」

 

「おはよう…。気になって仕方なかったから早めに来たんだけど…。澤田君は昨日はここに泊まったの?」

 

「念のため安静にしておこうと思ってな。明月さんにお願いして寝泊りさせてもらっているよ。」

 

「そうなんだ。だからこの時間にでもここに居たのね。納得。」

 

「そんな感じ。お腹空いたからさっき明月さんにご飯の調達を頼んだ所だな。」

 

「はい。そうなりますね。」

 

四季ナツメが何か言いたそうな顔をちょくちょく見せている。多分話すタイミングを伺っているのだろう。

 

「それじゃあ明月さん。引き続きお願い。」

 

二人きりの方が良いと考え、この場を離れるように目線を送る。

 

「了解です。買ったらまた戻ってきますね。」

 

こちらの意図を読み取ったか、会話を続けず階段を下りて行った。後で感謝しておこう。

 

「それで、朝早くから来たのは怪我が気になったからで良いのか?」

 

それもあるだろうが、昨日途中で話し終えた続きもあるのだろう。恐らく夜の間ずっと考えていたはず。少し隈が見えるし、目の充血が確認できる。そのせいであまり眠れなかった様だ。

 

話す前に座って貰おうとしたが椅子が無い。仕方なく明月さんのベットに座るように促す。

 

「うん…。どうかな?平気…では無いよね。」

 

「まぁ多少は痛みはあるけど、別に命に関わるレベルの怪我でも無いしな。その内治るから大丈夫。」

 

「その…、昨日はごめんなさい。私が付いて行ったばっかりに澤田君に怪我を負わせてしまったから…。」

 

「今日はその謝罪を含めて様子を見に来たのか。」

 

「そうなる…かな。迷惑を掛けたから、そのことで謝りたかった。」

 

「分かった。四季さんの謝罪を受け入れるよ。それじゃあこの話はこれで終わりって事にしようか。」

 

「え…?そんなあっさり…?」

 

「俺は別に気にしていない。けど四季さんは謝りたい。それなら俺がその謝罪を受け入れたら終わりではないのか?」

 

「それはそうだけど…。もっと怒ったりしないの…?怪我を負わせた原因が目の前に居るのに。」

 

「怒って欲しかったのか?もしかして四季さんって意外と寂しがり屋だったりするのか?」

 

「そういう意味じゃない。…そうじゃないけど、怒って貰った方が気が楽になると思う。」

 

(なるほどね…。少しでも自分の中にある罪悪感を吐き出したい感じか。こっちが何も言わないから逆に溜め込んでしまったんだろう。それを怒られることで清算しておきたいと)

 

「やはり、Мの素質があったのか…。喜んでくれるのなら怒るのもやぶさかではないが…。」

 

「だから違うっ。そんなに私を陥れたいのっ?」

 

「照れなくて良いんだぞ?人は誰しも言えない秘密の一つや二つ。三つや四つ。いや、五つや六つ…。」

 

「いや、秘密多すぎない?それ。」

 

「ミステリアスはモテる秘訣と聞いたので沢山抱えてみたんだが…?」

 

「数が多ければ良いって話でも無いと思うけど…。」

 

「じゃあ、重たくて巨大な秘密を一つ抱えることにしておく。」

 

「澤田君は確かに変な秘密を抱えてそうだけど…。」

 

適当にふざけて話していたら、こちらの話題にすり替わろうとしていた。

 

「変な秘密とは失礼だな。人並だぞ。」

 

「例えば…?どうしたら裏路地で起きた様な事が出来るのか気になるのだけど…?」

 

「やっぱり気になる?」

 

「…気になる。聞いていいのか疑問だけど。」

 

「…そうだな、まぁ話せないこともないし…。コーヒー飲むときにでも話すとするよ。」

 

「半分冗談で聞いたつもりだったけど…いいの?本当に。」

 

「ああ。その内話そうか考えていたし、いい機会として2人には話しておく。」

 

(二人がいつまでもこちらに不信感を抱いてしまうくらいならちゃちゃっと話してしまった方が楽だろう。知られた所でこの世界じゃ大した影響なさそうだしな。)

 

「分かった。それじゃ楽しみにしておくから。」

 

「了解。俺もコーヒーを飲んだ四季さんがどんな顔をするか楽しみにしておくよ。」

 

「嫌な楽しみ方…。どうせ飲めないのはわかってますよ。」

 

少し拗ねた顔をして顔を逸らす。うん。7兆点。

 

「その為にも今は少しでも寝てた方が良いぞ。あんまし寝れてないだろ?」

 

「まぁ…確かに寝れていなかったかも…。やっぱり気づくかな。」

 

「隈も出来ていて、目も充血しているからな。明らかに寝不足に見えるわ。」

 

「うわぁ…そんなにか…。恥ずかしい。」

 

顔を伏せ、必死に前髪で目元を隠そうとしている。が、隠しきれてない。

 

「今日は大学の講義とかは平気?」

 

「ん?…ああ。今日は大丈夫。コーヒーの件で元々来る予定だったから。」

 

「じゃあ大丈夫か。ほれ、そこのベットで少し寝た方が良い。少し寝ただけでも変わるからな。」

 

「え、でもここ、明月さんのベットじゃ…。」

 

「まぁ大丈夫だろ。事後報告しておくから。それとも俺が寝ていたその床の方が良いか?」

 

「結局寝る事には変わり無いんだ…。」

 

そりゃ強制ですよ。

 

(折角の綺麗な顔が隈出来たままだとな。いや、これはこれで良きかもしれない。)

 

「拒否権は無いな。四季さんの為でもあるからな。」

 

「と言っても寝れる気はしないのだけどね。」

 

「横になるだけでも疲労は取れるから、横になって目を閉じていれば次第に眠くなってくる。さあさあ。寝たまえ。」

 

椅子から立ち、寝るように催促する。

 

「ちょ、ちょっと、なんでそんな強気なのっ?」

 

「寝不足はマイナスしかないからな。コーヒーはどうせ昼からだろうし。今の内寝てくれ。」

 

こちらが強気で行くと、下がる様にベットに入っていく。なんやかんやで彼女も眠いのは同意なんだろう。此方が無理やり寝かすという形を作ればいいだけ。

 

「あー、服にしわが付くかもしれないのに…。いっか、もう。」

 

諦めたように横になる。観念したようだ。

 

「お言葉に甘えて少し横になっていようかな…。確かに眠たかったし。」

 

「そうそう、甘えておくが良い。なんなら手を握って、子守り歌でも歌ってやろうか?」

 

「それはいらないかな。逆に眠れ無さそう。」

 

それは一体どういう意味なんだ。おら。

 

「恥ずかしがらなくても結構だぞ?寝れない時にしてもらうと安心するとよく聞く。」

 

「どこ情報だか…。」

 

横になり目を閉じているが、声で呆れている様子がよくわかる。

 

「いや、割と真面目に言っていたのだが…。ほれ、今ならタダで握り放題。」

 

ベットの前の地面に腰を下ろし、手を差し出す。

 

「え、冗談じゃなかったの…?」

 

「冗談でこんな恥ずかしい行為が出来ると思うか?いいから、ほら。」

 

「えっ、なんで勝手に手を握っているの?」

 

「安心しないか?」

 

「ええー…。そんなのする訳ないと思うのだけど…。」

 

「そうか…。小さい頃とか親にされたりしたら安心しなかったか?もしかして俺だけだったのか。」

「それは…分かるかも。寝る時とかにして貰ったりしてたなぁ…。何?それをしている訳?」

 

「そうなるな。四季さんが少しでも安心して寝れるかと考え抜いた策だったのだが…。」

 

「そんな事言って、実は女の子の手を握りたかっただけじゃないの?」

 

「それは確かにあるな。10割程。」

 

「全てじゃないの。何それ。邪な気持ちしかないの?」

 

「男が可愛い女の子に接触する時は、大抵邪なワンチャン狙いだから。大学でもよく被害に遭ったりするだろ?」

 

「確かに多いかな…。こっちはその気じゃないのに誘ってばっかり来る人とか。」

 

「そんなもんよ男は。だから俺の邪な欲望を叶えると思ってどうぞこのままでお願いします。」

 

「そんな風には見えないけど?でも、そういうのならそのままにしといてあげる…。」

 

「心が広い事で。」

 

話している内に少しずつ、声のトーンが下がってる。徐々に眠くなってきているのだろう。そろそろ話しておきたい事を言い始めるとする。

 

「四季さん。」

 

「んー?何?」

 

「昨日の夜は一人で居て怖かったとか感じたりした?あんなことがあった後だし。」

 

「あー、まぁ多少はあったかな…。でも狙われたわけでも無かったからそこまででも無いかな?澤田君に対しての罪悪感の方が強かったからかも。」

 

どうやら罪悪感のお陰でトラウマにはなっていないらしい。

 

「それなら安心した。トラウマになったりしないか心配だったからな。」

 

「トラウマ物はそっちじゃない?足に刺さったのだから。」

 

目を開けてこっちを見てきたが、閉じるように促す。

 

「……トラウマには刺激不足だったかもな。既に強烈なのが住み着いている事だし。」

 

「あれ以上とかどんなのだが…。」

 

「それもコーヒーの時に話そうか。」

 

「分かった。楽しみにしておく。…でも。」

 

何か言いたそうに、少し黙る。

 

「怪我をした事に関しては私が悪いのは事実。だから何かしらの形で償いたいの」

 

再度目を開けてこちらを見てくる。

 

(意思は固いみたいだなぁ…はあぁ。)

 

「分かったよ。それじゃあ貸し一つって事にしようか?」

 

「貸しにしておくって事?」

 

「そうそう、俺が何か頼み事したときに可能な限り手伝って欲しい。四季さんにしか頼めない事もあるだろうし。」

 

「それなら…少しは納得できるかも。」

 

少しかよ。

 

「そんな大層な事をお願いするつもりは無いから気軽に受けてくれ。」

 

「分かった。返せるようにする。」

 

そういうと静かに目を閉じる。納得は出来たらしい。

 

「了解したという事は、少なくとも貸しが返せるまでは今の関係が続くという事だな。」

 

「そうなる…かな。うん。」

 

「それは良かった。四季さんの事だから罪悪感を感じて人と距離を置きかねないと思っていたのだけど…杞憂だったかな。」

 

「…正直、置くつもりだった。」

 

やっぱりか。人に迷惑かけたからとか自分みたいな人間がとかそんな感じなのだろう。

 

「四季さん。一度ちゃんと確認しておくが、この程度で俺に迷惑を掛けてしまったとか考えて距離を置こうとか無しだからな?」

 

「でも実際迷惑じゃなかった?」

 

「まぁな。否定はしない。けど別にそれで四季さんの事を嫌いになるとかそんな事無いから安心して良いぞ。」

 

「そっちが良くても私が気にする…。」

 

「気にする必要は無い。迷惑を掛けてしまう。我儘を言ってしまうなどと気にする必要は無いという意味もあるけどな。俺に対しては特に。」

 

「澤田君に対して特にって…。どういう意味なの?」

 

「そうだなぁ。ある意味明月さんやミカドさんより迷惑を掛けても構わない相手って事になるのだけど。」

 

あの二人は少なくともこの世界の人だしな。別世界の人ならもっと迷惑など掛けても関係無い存在になるのではないだろうか。

 

「え…、それって…。」

 

驚きながら俺を見る。さっきこっちが言った台詞が引っかかるのだろう。自分が夢を望む為の言い訳に使った言葉なのだから。

 

「四季さんが思い浮かんだので当たっていると思う。死神やケット・シーよりも更に不可思議な存在と思ってくれて構わない。だから四季さんが望む、我儘と言うその夢を叶える為に俺が勝手に協力しているだけ。四季さんが負う責任は何一つ無いって事だ。」

 

「あの二人よりも不可思議な人とか…。本当に何者なの?」

 

「それは追々話していく。今重要なのは四季さんの事。纏めるとだな…。俺になら迷惑でも我儘でも気にせず頼って貰っても構わないって事だ。遠慮や俺を気にする必要は一切ない。四季さんが望むことがあるなら言ってくれ。それに全力で叶える為に協力は惜しまない。っていう意思がある事を言いたかっただけ。」

 

こちらから多少強引に踏み込まないといつまでも前に進もうとしないだろう。必要なのは四季ナツメ自身の心の変化だが。

 

「私なんかが望むことなんて…、そんな事をして良い人間でもないのに。」

 

「自分をちっぽけな存在だからと決めてそこで諦めてしまおうとせずに、まずは口に出して欲しい。俺じゃなくても他の二人でも良い。直ぐにそうしろとは言わない。少しずつで大丈夫、出来たらようやくスタートラインに立てるからな。」

 

「……そんなの…出来ない。」

 

「今はな。大事なのは今後どうするかだが、…取りあえず今は寝て少しでも寝不足を直そうか。長らく話してすまん。」

 

「私から話しかけた事だから…気にしないで。」

 

「お詫びに子守り歌でも歌うからさ。ジャンルはどれが良い?」

 

「子守り歌にジャンルとか無いと思うのだけど…ていうかいらないから。」

 

「それは残念。最近ロックバージョン覚えたから披露したかったのに。」

 

「寝かせる気があるの…?その歌は。」

 

「さあ?。じゃあ代わりに寝るまで適当に雑談でもしておくか。」

 

「あー、そっちの方がまだましかなぁ…。」

 

子守歌:Ver.Rockよりは雑談がお望みらしい。

 

では、眠たくなるように思い出話でもしておこうか。

 




一方その頃の明月栞那

「最近のコンビニは色々な物が売っているのですね…。まずはおにぎりでしたか。それから味噌汁と弁当…。あ、ついでにナツメさんの分も買っておきましょうか。」

「最後にアイスでしたか。バニラ味を三つと…、ん?なんでしょうかこのアイスは…。『カップアイスにラーメンシリーズが遂に登場!』こんなのもあるのですか…。コンビニって面白い場所ですね。」



次回はコーヒーの飲み比べと昔話です。
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