喫茶ステラ ―異邦人と蝶の残滓―   作:コクーン√

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主人公の過去のお話編です。




第23話:過去話

 

「そうだな…。折角だし最初辺りから話しておこうか?」

 

確認のため二人を見る。

 

「私は、澤田さんにお任せします。」

 

「そうね。私が気になっている部分を話して貰えるなら後は任せる。」

 

「おっけい。所々暗かったり、重い内容が挟まるかもしれないけど気にせず聞いてくれ。」

 

二人が頷くのを確認し、話始める。

 

 

「まずは俺の小さな時からだな。普通の一般家庭的な暮らしを俺と両親二人でしてたんだけど、俺が小学生上がる頃に3人でドライブ…、とまでは行かないけどお出掛け的な事をしてたんだと思う。んで、交通事故に遭ったらしい。当時の俺は気づいたらベットの上で何が起きたか理解出来ないままで起きると隣に叔父…、前に話してた喫茶店の人ね。その人が俺が起きたのを見て安堵した顔をしていた。今でも鮮明に覚えるほどにな。」

 

当時を思い出して苦笑いが出る。超近かった。

 

二人を見ると何となく察している明月さんと目が合った。

 

「ご両親は…、ご無事でしたか…?」

 

「いや、残念ながら二人とも駄目だったよ。母親の方は一度は意識を戻したが、直ぐに失ってそのまま…。父親の方は即死だったらしい。」

 

他人事の様に語る。実際そのシーンは聞かされただけだし実感はあまり湧かなかった。

 

驚きの声と、落ち込む様に顔逸らす反応を見せる。

 

「続けるぞ?両親を亡くした俺は親族に引き取られるかと思えば、父親の方は両親が小さい頃に施設に預けたっきりで家族としての縁は無かったそうだ。母親の方はまさかの引き取り拒否をしたと叔父が言っていた。その結果、叔父が俺を引き取ることになったんだ。」

 

一段落し、コーヒーを見る。良い感じに溜まって来ていた。

 

「続ける前に、明月さん。コーヒーがそろそろ淹れても大丈夫だから。飲みながら話を続けようか。」

 

「あ、はい。分かりました。今淹れますね。」

 

ポットを3人分のコップに綺麗に分けながら淹れていく。

 

「お待たせしました。最初はアメリカンで淹れてみました。」

 

俺と四季ナツメの前にコーヒーを置く。隣を見ると若干顔が引いてる。そこまでか。

 

「四季さん…。大丈夫か?やっぱり飲むの止めておこうか?無理しなくて良いんだぞ?」

 

少し煽りを混ぜつつ聞いていく。

 

「これ位…、何ともない。必要な事だから。」

 

覚悟を決める様にコーヒーを見つめるが、一向に飲む気配が無いので仕方なく先に飲むことにする。

 

「先に頂くことにしようか…。」

 

口を付ける。うん。苦い。でもいい匂いがする。コーヒーのこの匂いは好きだが味はそこまでだ。

 

「どう…でしょうか?」

 

「問題なく飲めるし美味しいよ?いや、苦いのは確かだけど。他のと試してみないと何とも言えないかな。」

 

「そうですね。飲み終えたら次に行きましょうか。」

 

「そうだな。それまでは話の続きでもしておくよ。」

 

横を見ると先ほどから一ミリも動いていない四季ナツメが居た。

 

(これは長くなりそうだな…。置いておこう。)

 

見なかった事にして話続きを始める。

 

「引き取られた後は叔父が借りたマンションに住むことになった。一応叔父と二人だが、帰る時間は遅かったし、帰らない日も多くあったな。作り置きとかお金を渡されてたから不自由は無かったけどな。」

 

 その頃は親が居ない事はよく理解出来ずにただ環境に慣れるのに精一杯だった気がする。もしかしたら本能的に受け入れることを拒んでいたのかもしれない。

 

「その後は普通に学校に通ってたよ。高校を卒業後は大学に行く意味が見つからなかったから就職コースを選んだな。地元から少し距離のある工場が初めての職場だった。」

 

懐かしいと思いながら昔を思い出す。初めて給料明細を見た時は嬉しかった。

 

「意外と普通の生活をしていたのね。」

 

「そりゃな。学生時代なんてそうそう変な事は起きないし。」

 

そう。学生時代はな。起きるのはゲームの中だけ。

 

「初めはそこそこ順調に働けていたんだが、二年目に突入した辺りに急に上の人に呼び出されてな。不思議に思いながらも行くと、唐突にクビ宣告されたよ。」

 

二人を見ると、「え?」と驚いていた。

 

「分かる。俺も実際声に出してしまったからな。理解できなかったな正直。思い当たる節もなかった、急に会社都合でやめて欲しいと言われたよ。」

 

あの時は俺も同じ顔をしていたよ。凄く分かる。

 

「その後はそのまま手続きが進められて終わり。無職になりましたとさ。」

 

チャンチャン。ってな。

 

「その後何とか再就職を果たせたんだけど、そこもまたクビというかやめてくれって上から通達があってな…。」

 

乾いた笑いが出てくる。当時は笑えなかったけど。

 

「今度はどれだけ続いたのですか…?」

 

明月栞那が不思議そうに聞いてくる。

 

「確か…半年とちょっとだったかな?」

 

正確にはもうちょっと続いた気がするが誤差の範囲だろう。

 

「それって単純に澤田君が無能だったって説は無いの?」

 

横を見ると、明らかにコーヒーの量が減ってない四季ナツメが不審な目でこちらを見ていた。失礼な奴だな全く。

 

「その可能性が無い。とは言えないけどなぁ…。俺が無能だったかなと思っていた時期も確かにあった。」

 

後ほど違うって知ったけどそれまでは中々やさぐれた気がする。

 

「それからも就職した時もあったが、合わなかったりして辞めて、一時的にバイトとかで凌いだりして何とか働いては居たんだけどな。結局それも辞めて暫く働かないニートの時期があったんだよ。」

 

「その頃は働く意欲も無くて、まぁ…、多少人と距離を置いていたりもしていたな。ひねくれ者になってただけなんだけど。」

 

俺が駄目なのか、仕事が合わなかったのか。もしくは社会に適合出来ない部類なのか。変に考えて働きたくなくなっていたな、あの時期は。

 

「そんなこんなで引きこもりに近い時期が続いて、話すのもネットの中の人達。そこには似た人達が多く居たから不思議と安心感があった。駄目なパターンだったが。そこで暇な時間をどう過ごしているかの話になっておすすめのゲームやら漫画やらの話になって色々手を出していたりして日々を過ごしていたよ。」

 

その時に出会ったのがエロゲなんだけどな。

 

「ある一つのジャンルのゲームを勧められて試してみたら見事にドはまりしちゃってさ。寝る間も惜しんでしていたよ。」

 

その中の一つが喫茶ステラと死神の蝶だったわけだが。

 

「まぁ…。ノベルゲーム…みたいな物?だったんだが、それのストーリーに魅せられてさ。というか自分と似た気持ちや境遇だったからもあったからか、影響を強く受けたんだよ。」

 

「その中で紅茶を淹れるシーンがあって、それを見て自分も同じように紅茶を淹れてみたいと考えるようになってどうにかできないかと思いついたのが。」

 

「喫茶店を開いている叔父に頼み込まれたのですか?」

 

「その通り。叔父なら紅茶の淹れ方を教えてくれると思い、店まで押し掛けたよ。当時は働いても居なかったし出来ればバイトでも雇って欲しいとお願いした。」

 

「へぇ…、そこで澤田君は紅茶を学んだのね。」

 

「いや、違う。学んでない。」

 

「え?習いに行ったんじゃないの?」

 

「まぁ続きを聞いてくれ。」

 

そうすれば分かるから。

 

「俺は叔父にこう頼んだんだ。『紅茶の淹れ方を教えて欲しい!、俺も淹れれるようになりたいんだ。可能ならここで働かせて欲しい』とな。」

 

「う、うん。」

 

「叔父は驚き、少し悩んだ結果、了承してくれたよ。教えるから指定の日時にこの場所に来てくれとメモを渡されてその時は帰ったんだが。店で教えてくれないのかと思ったけど俺が店に居たら迷惑掛かるかと納得して当日まで自分で調べれる範囲で紅茶の事を勉強したんだよね。」

 

「そして、指定された日時に目的の場所まで向かったんだけど、そこには一軒家と家の前には車が止められていた。あれ?ここで教わるのか?と不思議に思ったが取りあえず玄関のベルを鳴らしたよ。」

 

「そしたら、中からは明らかに一般人じゃない筋肉質の男が出て来てきてさ。確認したがどうやら叔父の知り合いだった。安心して中に入ったら待っていて欲しいと飲み物を出されたよ。」

 

「ソファに座りながらただ待つのも暇だし取りあえず飲み物を飲んで待っていると、急に睡魔に襲われてさ。人様の家なのにと思ったが抗えず寝てしまった。」

 

「それって、睡眠薬とかが入ってたって事?」

 

「流石四季さん。その通り。実はその飲み物には睡眠薬が入っていたらしい。まぁ、知ったのは後でなんだけどね。」

 

「次に目を覚ますと車の中で、運転席には先ほどの男と助手席にはまた違う男が乗っていたよ。慌てながらも問いかけると、どうやら叔父の指示である場所に向かっているとかなんとか言ってて、よく分からないまま到着するのを黙って待つことになった。」

 

「暫くすると車が止まり、下ろされると、辺り一面森。俺は山の中に連れて行かれていた。その時思ったよ。『これ山に埋められるんじゃないか?』と。警戒しながら車から降りてくる人を見ていると。森の中から叔父が出て来てさ。知っている人がいると安堵して話しかけると、ありえない事が口から出て来たんだよ。」

 

二人をみる。既に何が起きているのか、起きようとしているのか良くわからない顔をしていた。

 

「内容は、これからお前を鍛える為に暫くの間訓練を積んでもらうと。この先の森で生き延びてもらうとかそんな感じ。何言っているんだこの人はと思ったね。その時の俺の顔はさぞかし間抜けな顔をしていたと思う。」

 

「その後車に乗っていた男に何かを話して後は任せると言って去って行ったよ。残った俺は男らに連れられ森の中に入って行った。奥には小さな家が一つあるだけで他は自然のみだった。」

 

「その日から訓練という名の拷問というか、地獄が始まったよ。ここら辺はあまり思い出したくないから割愛する。」

 

考えたくも無い。あんな苦痛の日々とか。自然と顔が歪んでしまいそうだ。

 

「心中お察しします…今の澤田さんの顔が全てを物語っていますね…。」

 

なんとも言えない顔でこっちを気遣ってくる。

 

「ああ。一つ言えるのは、俺が思っていたより、世の中食べることが出来る植物や生き物は沢山いるって事かな。はは…。」

 

乾いた笑いしか出てこない。でもカエルは意外と旨かった。

 

「死んだ目をしている…。」

 

「まぁそんなこんなで何とか森から出ることは出来たんだ。俺は生き残れたんだ。家に帰ることが出来るんだとみっともなく泣いた。コンクリートの街並みを見て、地獄を乗り切ったと実感できた。家に帰ると気絶するように寝て、次起きたのは確か、16時間後とかだったかな。」

 

「その頃には結構体力も付いてたけど一番は常に周囲を警戒する事が身についたと思う。森には毒持った生き物とか菌とか持っている奴いたし、何より熊が出る可能性もあった。そんな場所でずっと生活してたら勝手に身についた感じだ。」

 

「この時点で一般人から離れてる気が…。というか澤田君は紅茶を習いに行ったのじゃ…。」

 

「ほんとにな。それで、起きたら叔父からの書置きがあって、店に来いとの内容だったから向かったんだよ。文句を言うつもりでもあったしな。怒りが湧き出て来た。」

 

「店に着き、叔父に問い詰めると、お前の希望通りの事をしたまでと意味わからないことを言っていた。誰が紅茶を習いたいと言ったら、サバイバルに連れて行く阿保がいるんだと思ったよ。すると叔父が、『漸く基礎が終わったか。次は本格的に始めて行こうか。』と口に出したんだ。」

 

「頭の中が真っ白になったよ。今までのは準備段階で本番はこれからみたいな言い方だったからな。聞いてみると、『今までのは体力が無い俺を鍛えるためであり、教えるのはここからだ』と」

 

「そこから今後は叔父に連れられてなんか地下の部屋に連れて行かれると、色んなトレーニング器具や、道具があった。漫画とかでしか見た事無い光景だったよ」

 

「それからまた地獄が始まった。色んな技術や技を教え込まれたよ…。頭と体がどうにかなるかと思った。生き残る事だけを考え日々を凌いでいた。その中でどうやら俺にはセンスや才能が無いらしく、結局教えられたのは相手の不意や意識外からの攻撃とか道具を使う戦闘スタイルみたいなのだった。要するに不意打ちや暗殺的な正々堂々と戦わないやり方って感じだな。その過程で人をよく観察したり意識する事も覚えていったかな?」

 

「そんな日々が続いて、叔父から及第点を貰った所でもう一度問い詰めたんだ。どうして紅茶の淹れ方では無く、こんな良く分からないことを教えたんだと。」

 

「すると叔父から、『貴様が分かっていなかったから言うが、俺の店では紅茶の淹れ方を教わるという意味は、この業界で仕事をしたいから何か無いか?として使われる。』ってさ。隠語みたいな物らしい。知るかよってなったわ。」

 

「そこから詳しく聞いたが、叔父はどうやら裏の世界とまでは言わないが、あまり表に出せない事件とか案件を調査したり処理する仕事をしていたらしい。中には偉いさんや、政府関係の人からも来ることがあるとか。急に意味の分からない世界に引き込まれた気がした。一番分からなかったのが、知らぬ間に自分もそちら側に足を突っ込んでいる事だった。」

 

「と、まぁざっくり言うとこんな感じで意味の分からない世界に引きずり込まれた感じかな?割と適当な説明だから抜けている部分もあると思うけど…。」

 

話が一段落してコーヒーを飲む。うん。苦い。二人を見ると苦笑いをした様な微妙な顔をしていた。

 

「何か聞きたい事があれば可能な範囲で教えるけど何かある?」

 

「結局紅茶はどうなったの…?」

 

「自力で覚えた。店で一応働いていたが、基本的にはウェイターが多かったかな?お店の人から暇なときに教わったりして何とか物には出来たと思う。」

 

「因みに、その話は全部本当なの…?」

 

「証明は出来ないけどな。本当です。と言う他ない。」

 

「ちょっと…というかかなり信じられない。作り話って言われた方が納得できる。明月さんは今のを聞いてどう思ったの?」

 

「私ですか?そうですね…。正直信じられませんが、逆にありえなさ過ぎて本当の事なのかと思ってしまいそうです。」

 

まぁ聞いてて普通は信じられないよな。紅茶習いに行ったら裏の世界に引き込まれたとか。どこの漫画だよと思う。

 

「信じるかは二人に任せるよ。暇つぶし程度に話しただけだしな。」

 

「やっぱり作り話?適当な話を作って誤魔化したとか?」

 

「それじゃあ、実は俺は小さい頃から命を狙われるような存在で、そのせいで親族はおらず生き残るために仕方なく身に着けた技術。とかだったら?」

 

「なにそれ。なんで命を狙われるような設定になっているの?」

 

「それはほら、超常現的な力?超能力的なのを持っていたり?」

 

「へー。澤田君は一体どんな凄い力を持っているのかな?」

 

馬鹿にするような呆れ顔でこちらを見てくる。隣の明月栞那は心配そうにこっちを見ている。

 

「そうだな…。未来とか過去を見ることが出来たりとか?政府の人間や権力者が放っておかないだろ?」

 

明月栞那が驚愕の顔で俺を見ている。

 

「そんな凄い能力を持っているから命を狙われていると…。へたくそな作り話。それで?そんな凄い力を持っている澤田君はどんな事が出来るのかな?」

 

からかう様に俺を見ている。だったら占い師としても力(原作知識)を見せてやろう。

 

「そりゃあとんでもない事が出来るさ。例えばそうだな…。四季さんの好き嫌いを当てたりとか?」

 

「物凄く地味な事に使おうとしているのは分かった…。じゃあ当ててみてくれる?」

 

「ピーマンとかだろ?」

 

俺が嫌いなものを当てると少し驚いた顔をする。

 

「これは図星だったか。コーヒーとか苦い物が苦手だしな。子供舌か?んん?」

 

「うるさい…。苦い物が苦手で悪かったわね…。」

 

恥ずかしそうに拗ねる。因みに未だにコーヒーの量は減っている様には見えない。冷ましているのかと思ってしまう。

 

「苦手なものは誰にでもある。気にしなくていい。でも、そのコーヒーはせめて一口は飲むように。折角明月さんが淹れてくれたのに…。かわいそうだな。明月さん。飲みたく無いそうだぞ?この人は。きっとこのままひっそりと流し台に捨てる気だ。」

 

「そんな事するわけないでしょう!?そんなに私を陥れたいの?」

 

「そうですよ。ナツメさんがそんな事する訳無いじゃないですか。ナツメさんはきっと私の淹れたコーヒーを飲んでくれます。私はそんな変な心配はしていませんからね?安心してください。」

 

「明月さん…。地味に追い詰めようとしないでくれる…?」

 

「はて、一体何のことやら…。」

 

「話を戻すが、結局俺が何を言っても本当かどうか証明できないから信じるかはそっちに任せるってことを言いたかった。」

 

「分かりました。私の方は特に言いたい事はありません。澤田さんから言うまでは此方からは問い詰めたりはしません。」

 

「サンキュ。話せるときはまた言うよ。」

 

「はい。また気が向いたら占いでもしてください。」

 

「気が向いたらな。して欲しくなったら言ってくれ。」

 

「え?占い?なんの事?」

 

四季ナツメが不思議そうに聞いてくる。そえば話して無かったな。

 

「そえば四季さんには話してなかったな。」

 

「そうだったのですか。すみません。言ってしまって。」

 

俺が話してなかったのに勝手に話したことを謝ってくる。

 

「いやいや、気にしないでくれ。どうせその内話すことだったからな。」

 

「何?二人だけで話してて何の話?」

 

「いや、大したことは無いぞ?俺の趣味が占いってだけ。そんでついでに明月さんを試しに占ったって話。」

 

「え、澤田君の趣味が占い?そうなの?へー。変わった趣味。男の子でもそういうの興味持つんだ。」

 

「まぁな。興味があったら試しに占ったりしようか?運勢とか悩み事とか得意だぞ。」

 

「うーん。別にいいかな。そこまで気になる事ないし。」

 

「あ、はい。気が向いたらで良いので。」

 

「ん、気が向いたらね。なる保証は無いけど。」

 

「了解。んじゃあ、話も終わった事で今度は別の豆を試してみようか?」

 

「分かりました。今のはアメリカンでしたので次はキリマンジャロにしましょうか。」

 

そう言って新しく珈琲の準備を始めた。隣を見ると未だに減っていないカップと睨み合いをしていた。

 

(まだ飲んでいなかったのか…。大丈夫か?)

 

「四季さん。やっぱり飲むの止めとく?それか砂糖とかミルク入れるとかするか?」

 

「この状態で飲まないと味がわからないんじゃないの?意味が無くなると思うんだけど。」

 

いや、飲め無さそうだから苦肉の策を出しているのだが…。

 

そう言って覚悟を決めたか恐る恐る口を付け飲む。直後、体が硬直した。ゆっくりとカップと離してテーブルに置く。

 

「どう…だった?」

 

「こんな苦い物…。どうして美味しいと思えるのか、理解が出来ない…。」

 

今にも死にそうな小声でそう言った。やっぱりダメか。

 

「これが特別苦いというわけでは無いのだが…。他のも試してみるか?」

 

聞いては見たが彼女は静かに首を横に振った。

 

「おっけい。合わなかったという事で。」

 

「珈琲って全部こんなものなの…?」

 

「どうだろうな。色んな場所で飲んでみるしかないんじゃないか?コンビニとかどうだ?大衆向けだし飲みやすくなっているかもしれないし?もし無理なら砂糖とミルクで誤魔化せば飲めるだろうから何とかなりそうではあるが…。」

 

「機会があったら…そうしてみる。」

 

口に苦みが残っているからだろう。声がか細い。

 

「無理しない程度でな。」

 

 

 

そうして四季ナツメは飲み比べから脱落した。その後は残った二人で飲んでみたが、苦いという感想が大抵で、多少味の違いが感じる程度だった。

 





と、なんやかんやで進んで行きます。次回は時間をそこそこ飛ばして行きます。

主人公が遂に部屋を手に入れるまでは行こうかと思っています。
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