喫茶ステラ ―異邦人と蝶の残滓―   作:コクーン√

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少し投稿が遅れました。今回は主人公の戸籍やら、部屋のお話です。




第24話:引っ越し

珈琲の飲み比べをした日から二週間が経とうとしていた。その後は特に何も起きず、怪我の養生に努めた。ベットでぐうだらしたり、明月栞那や四季ナツメがたまにやってきては世話をしてくれた位だ。後は、寝た後にあの変な空間で例の女性と会って雑談とか蝶の話をしたとか。

 

「もうこんな時間か。」

 

この日俺は閣下に店に呼ばれていた。恐らく前に話していた部屋や調査の話だろう。

 

「とうとう、この部屋ともお別れになるのか。」

 

借りている部屋という事もあり、なるべく綺麗にしては居たが何となく名残惜しく思える。愛着が湧いたとは言えないが。

 

「さてと、そろそろ行くか。」

 

準備をして部屋を出る。少し肌寒くなってきている中、店に向かった。

 

 

 

店の中に入ると中には閣下と明月栞那が席に座っており、机には紙が幾つか並べられていた。

 

「澤田さん。おはようございます。」

 

「おはようさん。すまない遅くなった。」

 

「何、気にするな。呼んだのはこちら側なのだからな。」

 

こちらを見てそう言ってくる閣下が席に座るように催促してくるので正面に座る。

 

「今日呼んだのはやっぱりそれの事?」

 

机にある書類を見ながら問いかける。

 

「ああ。前に話していた貴様が借りる部屋の事と戸籍の話だ。」

 

目の前に差し出された紙を手に取り目を通す。

 

「部屋は意外と店から近いのだな。」

 

部屋の場所を見たが、店から徒歩五分程度の近場だった。良く見つかったなと思う。

 

「貴様にとっても都合の良い立地であろう?。」

 

「確かに。部屋も十分な広さあるし、値段は…場所の割には安く思えるな。良い所見つけてくれて助かる。」

 

「たまたまタイミングが良かったからな。初期費用は既にこちらで支払い済みだ。」

 

「マジでそれは本当に助かります。自分のお金を一銭も無いからさ。」

 

金銭面でお世話になりっぱなしだなマジで。

 

「それと、これは部屋で必要なものを揃えるのに使うが良い。」

 

そう言って閣下は封筒を出してきた。手に取り中身を見ると結構な額が入っていた。

 

「ミカドさん…。流石にこれは。」

 

「気にするな。と言いたいところだが、ケット・シーの国からのだからな。これも蝶関連。死神としての費用として落としている。だから吾輩達の仕事の手伝いをしてもらう事になる。」

 

「それは元々手伝うつもりだったが…。」

 

「それなりの理由を付けねばならないからな。」

 

経費として落とす為の理由付けだったのか。此方としては大助かりだ。

 

「だからこれは貴様で使うように。余ったら家賃にでも当てると良い。」

 

「いや…本当に良いのか?」

 

心配になり隣の明月栞那を見る。

 

「はい。ミカドさんもこう言っている事ですし、今回は甘えるのが良いかと思います。」

 

「…分かった。有難く受けとる。家具や家電に充てる事にするよ。」

 

「そうしておけ。」

 

「じゃあ次は…、戸籍の奴か。」

 

もう一つの方の紙に目を通す。

 

「これは…ミカドさんが親になるのか。という事は…。」

 

名前のページを見ていく。

 

「明月さんと戸籍上姉弟になるのか?これは。」

 

戸籍上家族となるのなら、そういうことなんだろうか

 

「色々面倒だったのでな。そういった形を取った。」

 

「まぁ。此方としては何でも大丈夫なのだが。」

 

「宜しくお願いしますね。」

 

明月栞那がこちらにお辞儀をしてくる。

 

「それはこっちのセリフだな。宜しく頼む。お姉ちゃんって呼んだほうが良いか?それとも栞那姉とか?」

 

冗談っぽく提案してみる。

 

「なんだか…そういう風に呼ばれた事無いので違和感ありますね…。というか私が姉なのですね。」

 

「違ったか?生きている長さで言えばそっちが上になると思うが。」

 

「それもそうですね。それじゃあ私は澤田さんではなく、達也と呼びましょうか?」

 

からかってくるようにこちらを見てくる。

 

「呼ばれると確かに違和感あるな。それに急にお互い名前で呼び始めると四季さんに変な勘違いをさせそうだ。」

 

「恋人同士とかと勘違いされそうですよね。これだと。」

 

「ああ。戸籍上の話だしな。特に変える必要は無いだろう。」

 

よく考えてみると、仮に高嶺昂晴が明月栞那のルートに入った場合…。義理の兄弟になるのか。それはありなんだろうか。

 

「澤田さん?どうされましたか?」

 

「いや、何でもない。少し考えごとをしていただけ。」

 

「ほんとですか~?血の繋がっていない義理の姉弟の禁断の関係とか変な事考えてたりしていませんでしたか?」

 

「その場合俺はミカドさんに娘さんを下さいって事になるのだが…。」

 

「こんな頭の中ピンク色の娘なら好きなだけ貰っていくがいい。」

 

明月栞那の冗談に閣下が呆れた反応をする。

 

「だってよ。明月さん。」

 

「ミカドさんっ!?それはひどすぎでは無いですか!」

 

「お前が下らん事を言うからであろう。」

 

「ちょっとした可愛いジョークじゃないですか…。」

 

冷たい返事をされたことに少し拗ねている。

 

「取り敢えずこの二つの紙は俺の方で持っておけばいいのか?」

 

「ああ。そっちの方は貴様で持っておくと良い。あと、これは部屋のカギだ。」

 

机の上に部屋のカギを置いてくる。

 

「一応今日からでも大丈夫だ。荷物などを運んで住むことも可能だ。」

 

「了解。荷物は着替え程度だし早速向かってみるよ。」

 

「その辺りは自由にすると良い。」

 

「今回もだけど、助かった。ありがとう。」

 

「感謝は受け取っておこう。それでは吾輩は用があるのでな。席を外させてもらう。」

 

そう言って閣下は席を立った。

 

「引っ越すなら栞那に手伝って貰うと良い。今日は暇だからな。」

 

「はい。お任せ下さい。澤田さんは怪我がまだ治っていないので代わりに私が動きます。」

 

「宜しく頼む。歩く程度なら多少大丈夫だけど、力入れるのはまだちょっとな。」

 

「それでは、早速行きましょうか。」

 

「了解。お供頼みます。」

 

二人で席を立ち、店から出る。店から出ると明月栞那が立ち止まりこっちをみる。

 

「住む場所とは把握されていますか?」

 

「ああ。さっき渡された紙の中にマップ図があったからな。一応場所は覚えてる。」

 

「それなら大丈夫そうですね。部屋は一人でしたら十分な広さはありましたし問題なく済むことが出来そうですね。」

 

「十分すぎる広さだな。一人暮らしでは少し持て余してしまいそうだ。」

 

「一人では寂しいから女性の方とか連れ込みますか?」

 

また急にネタを振ってくる。暇だし乗っておく。

 

「そうだな。独りは寂しいしな。かといって知り合いは居ない。見知らぬ人を連れ込むわけには行かないしな。此処は明月さんに協力してもらうしかないか?」

 

こちらも冗談みたいに隣を見る。

 

「おやおや。これはまた随分大胆なお誘いですね。でもそうしたら近親相姦になってしまいますよ?これはもしや…澤田さんはそっちのご趣味がおありで?」

 

「さてな。部屋に行けば分かることだろう。なぁ?栞那お姉ちゃん?」

 

というかその設定はまだ続いていたのか。

 

「これでは引っ越しのお手伝いに行けなくなってしまいますね…にひ。」

 

「そういわず俺を助けると思ってさ。いや、何もしないから。引っ越しのお手伝いしてもらうだけだから。その後休憩がてらちょっとお茶でもするだけから。ほんと。」

 

最後に縋るような顔を作り、情けなさそうな声を出す。

 

「さて。どうしましょうかねぇ。」

 

「お店の前で…、何をやっているの?」

 

茶番をしていると四季ナツメが姿を現した。

 

「四季さん。おはよ。」

 

「おはようございます。」

 

「おはよう二人とも。で、店の前でなんで明月さんに縋っているの…?それに明月さんの事をお姉ちゃんとか呼んでいたけど?」

 

意味の分からない表情でこちらを見る。

 

「た、ただ冗談を言い合っていただけですから。変なプレイとかではないですからっ。」

 

「そうそう。茶番をしていただけだから気にしないでくれ。」

 

「どうだか。ヒモ男が女性に縋っている様にしか見えなかったけど。」

 

「なるほど。そういうのもありだな。てか事実じゃん。それ。」

 

「確かにそうですね…。実際にはミカドさんにですが。」

 

「変な納得しなくて良いから。お店に変な噂がたったらどうするつもり?」

 

「それはすまん。店の前でするのは止めとく。」

 

「すみません。悪ふざけが過ぎました。」

 

「それで?二人はどこかに出掛けるの?」

 

「はい。澤田さんの部屋が決まったので今泊まっている場所から引っ越そうかと。」

 

「そうなんだ。今日からもう住めるの?」

 

「まぁな。それで明月さんに付き添いを頼んでいる所だ。」

 

「それなら私も付いて行こうかな。」

 

「お店に用があったのじゃないのか?」

 

「ううん。二人が居るかと思ってきただけ。どうせなら澤田君の引っ越しでも手伝う事にする。」

 

「と言っても大した荷物は無いのだけどな。」

 

「でも、引っ越し後に何か必要になるかもしれないしね。」

 

「ま、付いて来てくれるならこちらとしても助かるけど。」

 

「それじゃあ、ナツメさんも一緒に行きましょうか」

 

「うん。そうする。」

 

四季ナツメも同行することになり、三人で泊まっていた部屋から荷物を回収し、新しい部屋に向かう。

 

「ていうか、本当に荷物全然なかったことに驚いているんだけど。」

 

部屋に向かう途中で四季ナツメが呆れながら呟く。

 

「本当ですよね…。どうやってこれまでやりくりしてきたのでしょうか。」

 

「どうせ引っ越すからな。最小限で済ましただけ。っと、そこを右だな。」

 

マップを見ながら道を曲がると目的の建物が見えて来た。外観は普通だった。古くも無いが新しい建物というわけでもない。資料では築15年ほどらしい。

 

「此処か。取りあえず部屋まで向かうか。」

 

エントランスを抜けてエレベーターに乗る。確か場所は6階だったな。

 

「入口にセキュリティもあるし。安全そうな場所ね。しかもお店からも近い。」

 

「綺麗な見た目だし。当たりっぽいよなここ。」

 

外見はペールオレンジと白色が主だが、中に入ると黒色の大理石が床に敷かれていた。なんだかお高い場所に思えるのが不思議。

 

6階に到着し、借りている部屋に着く。玄関のカギを開け、中に入る。

 

「此処がこれから住む場所か。」

 

中に入ると、一本の通路で奥には部屋があるよくあるタイプだった。入って右手にはキッチンがあり、その横には洗面台があった。左手には洗濯機を設置できるスペースと隣にトイレ、お風呂場と並んでいた。

 

「へー、ここが澤田君が借りる部屋なのね。結構良いんじゃない?」

 

「だよな。部屋も十分な広さあるし、トイレと風呂が別々なのが有難い。」

 

「それ分かる。ユニットバスはちょっと嫌かなって思う。」

 

「そういう物なのですか?そのタイプが普通だと思っているのですが…。」

 

「今の人らは別々じゃないと候補から除外するくらいには重要になっていると思うぞ。」

 

一通り見てから奥の部屋に向かう。ドアを開け、部屋を見渡す。

 

(広さは大体7帖位か。)

 

部屋の奥にガラス窓があり、外はバルコニーになっていた。一応クローゼットも付いている。

 

「これは後でミカドさんに感謝しておかないとな。想像より良い場所だった。」

 

「一人暮らしには十分だと思う。近くにコンビニやスーパーもあるみたいだし。」

 

「ここなら澤田さんが安心して暮らせそうですね。何かあれば近くですし直ぐ対応できそうです。」

 

何かって、何が起きるんだよ…。まぁ、未だに怪我人だしそうもなるか。

 

「さて、俺の部屋も確認した事だしこれからどうする?」

 

「澤田君はどうするつもり?」

 

「あーそうだな。取りあえず日用品でも買いに行こうかな?少しずつ揃えて行こうかと思っているけど。」

 

「折角ですし、ショッピングモールまで行きましょうか?」

 

「いや、それは流石に申し訳ないのだが。」

 

「変な遠慮しない。怪我人なんだから重たい物とか持てないでしょ?」

 

「そんなに重い物を買うつもりは無いぞ?」

 

「それでもいざ行ってみると買うかもいれないし…。」

 

確かにいざ店に行くと買いたくなることもあるな。

 

「ナツメさんもそう言っている事ですし。早速行きましょう。」

 

 

俺の意思とは関係なく買い物いく事が決定し、ショッピングモールに向かう事にした。

 




次回は買い物を適当にして、次の話に進めようかと思います。
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