喫茶ステラ ―異邦人と蝶の残滓―   作:コクーン√

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更新の間が大分空いてしまった様に思います。仕事で暇が作れず、ちょこちょことしか書けてませんでした…。

三連休?なにそれ美味しいの?状態ですね。はい。

今回はショッピングモールに一人で買い物を終えた所からです。ここ辺りもオリジナルとか挟んでいきます。ありえない事ではないと思うのでノリで読んでください。


第26話:少女と手品

 

ショッピングモールにあるベンチに座り一息を付く。

 

「さてと…。必要なのは揃ったか」

 

前の引っ越しから数日が経ち、世間では休日がやって来ている。その証拠にショッピングモールでは平日より人が多くみられた。最近のステラの方は変わらず飲み物の淹れ方などメニューに関する事で話し合っていたが、これと言ってやることがまだ無いため、暇を持て余しているのが正直なところだった。明月栞那に何度か聞かれたが、動くのは高嶺昂晴が来てからということもあり特に無いと返事をしておいた。暇すぎたのか道を走行していく乗り物の車種を覚え始めていた…。

 

「問題は無事に高嶺昂晴が働くかだよな…。選択肢間違えたら即終わりだし…。」

 

ステラで働かないかと明月栞那から誘われるがそこで働くと言わなければ始まる事すらない。当日は何としてでも説得をしなければならない。

 

「何か働きたくなるような要素があれば良いのだが。」

 

ベンチに背を倒し考えていると、隣に女の子が座って来た。周囲に他に座る場所が無いため仕方ない。手には飲み物とソフトクリームと思われるものを持っている。

 

(見てて危なっかしいな…。その内どちらか片方が犠牲になりそうだ。)

 

ベンチに座り美味しそうにアイスを食べているが、ベンチに置いてある飲み物への注意が疎かに見える。此方に被害が出る前に立ち去ろうと席を立ち背を向けると、後ろから驚いた様な声と何かをこぼした音がした。嫌な予感がして振り返ると見事に地面に飲み物をぶちまけ、それと止めようとして今度は手に持っていたアイスの中身を零し、手にはコーンだけの状態になっていた。零れた中身と手にあるコーンを交互に見ている。現実を受け入れられないご様子だ。

 

ようやく現実を受け入れ始めると、今度を顔を歪ませ涙を浮かべ始めた。直感が働く。これはまずい。充電中だと。直ぐに爆発してしまうと。見捨てて帰る訳にも行かず、泣かれる前に声を掛ける事にした。

 

「嬢ちゃん大丈夫か?盛大に落としているが…。」

 

泣きそうな顔でこちらを見つめてくる。どう見ても大丈夫じゃない。防波堤がいつ決壊してもおかしくない顔をしている。

 

「アイスが…。ママに買ってもらったアイスとジュースが…。ううっ…。」

 

爆発するかと思えば、声を堪える様に泣き始めた。盛大に泣き出すかと構えていた手前違った事に安堵したが、またいつそうなるか分からない為迅速な対応が必要と考え、袋の中から買い物中に貰ったポケットティッシュを出し、落とした残骸を素早く処理し、向き合う。

 

「取り敢えずは落ちてしまった物は処理はしたが…、その、大丈夫か…?」

 

少女の顔を見るが、目から涙が零れていた。声を出して泣いては無いが落としてしまった事に対しての悔しさが顔に現れている。

 

「あー…、そのなんだ。代わりと言っては何だがこれ…食べるか?」

 

袋の中から菓子を取り出す。チョコレートアソート的な奴。色々種類があるから大丈夫だとは思う。少女の前に差し出すが要らないと首を振る。何故かと問いかけると。

 

「知らない人から…っ、受け取ってはいけないって…ママがっ、言ってたから…。」

 

なるほど。教育が行き届いているな。確かにその通りだ。正しい。

 

「俺の名前は澤田達也って言うんだ。君の名前は?」

 

「…深山結菜って…いいます。」

 

泣いたからか、ちょくちょくしゃっくりをしている。横隔膜が悪さをしている様だ。

 

「なるほど、結菜ちゃんって名前か。宜しく。これでお互い知らない人じゃなくなったな。」

 

知り合いになった事を示し、再度菓子を差し出す。

 

「もらってもいいのですか?お兄さんの食べ物じゃないですか?」

 

「いやいや、気にしないでくれ。美味しいと思って買ったから是非誰かに美味しいか確認したくてな。結菜ちゃんが良ければ食べてみて欲しい。」

 

封を開け、中身を差し出す。すると一度こちらを見て来たので、大丈夫と頷く。少し遠慮しながらもチョコを1つ取り食べる。

 

「味とか濃くは無いか?美味しいと良いんだけど。」

 

「このチョコレート、とってもおいしいですっ。すごくおいしいです!」

 

先ほどまでの泣き顔から一転、驚いた様に声をあげ、笑顔になる。チョコ1つでここまでなるのか…。小さい子は単純で可愛いな、おい。

 

「気に入って貰って安心した。もっと食べるかい?」

 

「たべたいですっ。でも大丈夫ですか?」

 

「うむ。好きなだけ食べると良い。数はまだまだあるからな。」

 

チョコを少女の横に置き、それを挟むように俺も横に座り、チョコを1つ食べる。うん。美味しい。次はもうちょい含有率が高い奴でも良いかもしれない。隣を見ると、美味しそうにチョコを口に運んでいた。

 

「結菜ちゃんはどうしてここにいるんだい?」

 

「ママが買う物があって、結菜はそれがおわるまでここでまっているの。」

 

母親が終わるまで待機中という事か。なるほどね、それでアイスとか持っていたのか。いまや残骸だが。

 

「ママはどれ位で戻ってくるとか分かる?」

 

「んー。すぐもどるから大人しく待っていて欲しいって言ってました。」

 

正確な時間は分からずということ。まあ小さい子を長時間放置はしないから精々30分も無いだろう。此処まで来たのなら母親が戻るまで付き合うか。物騒な事が起きないように。端から見れば俺がそれにあたるかもしれないが。

 

「そうなのかー。じゃあここで時間つぶししているって事になるのか。」

 

「はい!そーです。」

 

元気良い返事だ。すっかり元気を取り戻したご様子。

 

「じゃあママが帰ってくるまで一緒に時間でも潰すか。」

 

「?。お兄さんもママを、待っているのですか?」

 

「ん?いや、俺は待っていないぞ?結菜ちゃんが暇しないように付き添っているだけ。」

 

「どうやって暇をなくすのですか?」

 

「そうだな…。何かしようか…。手品でもしようか?簡単な奴。」

 

そんなに出来るわけでもないが子供相手なら適当でも通じるだろう。

 

「手品!?、みてみたいです!お願いします!」

 

「うぉ、まさかここまで食いついてくるとは…。了解。それじゃあ幾つか披露させていただきます。」

 

「よろしくお願いします!」

 

今出来るコインで良いかと考え、財布から500円球を取り出す。

 

「このコインと手を見ていてくれ。今からこのコインが手から消えてこっち側の手に移動するから。」

 

よく見えるように500円玉を見える。怪しい所が無いのを確認したのか大きく頷いた。

 

ベンチに手を置き、手の甲に反対の手で大振りで何度か当てる。

 

「一、二、三、で手を貫通してコインが無くなるから。いくぞ?」

 

手を少し遅めに大振りで頭横まで上げ、一、二、の時に500円玉を耳に掛け、三を素早く振り下ろす。

 

「三っ!。ほら、手からコインが無くなった。どこに行ったと思う?」

 

手を広げ、無くなったことを見せる。

 

「こっちの手!こっちの手の下にありますっ。」

 

ベンチに置いている手を指さして来る。

 

「正解は…、ってあれ、こっちの手にも無いぞ?どこに行ってしまったんだ?」

 

両手を広げて、コインを持って無い事を示す。

 

「こっちにも無いですっ。それじゃ……、あ、後ろに投げた!」

 

中々力業な回答をしてくる。室内ならともかくこんな場所ではしないぞ。

 

「でも後ろにも無いしなぁ…。どこに行ったか分からないから、さっきと同じようにしてコインを戻すことにしようか。」

 

「出来るのですか?」

 

「多分出来るよ?やってみる?」

 

「戻してくださいっ!」

 

元気よく返事が返ってくる。遣り甲斐がある。

 

「じゃあやってみようか。」

 

耳に掛けている500円玉を手の平の肉で挟み、向こうから分からないように運び手をベンチに付け、準備完了。

 

「それでは行くぞ?一、二、三っ!」

 

手を大振りに振り反対の手の甲に当て、念押しにぐりぐりと手の平を押し当てる。

 

「よっし、これで行けたと思うけど…、見てみる?」

 

「見せてくださいっ。」

 

返事を聞き、ゆっくりとベンチの手を持ち上げる。勿論ベンチには先ほどの500円玉が置いてある。

 

「戻ってるっ!本当に戻ってます。どうやって戻ったのですか?」

 

「そうだな…、実は、魔法を使ってこれを無くしたり、出したりをしていたんだ。凄いだろ?」

 

「まほう?お兄さんは今まほうを使って500円を動かしたのですか?」

 

「そそ。他にもこんなことが出来るぞ?」

 

手に500円を乗せ、反対の手を20cmほど離して上に持ってくる。上の手で指を鳴らしてから下の手の親指の力で500円を上に飛ばしキャッチする。仕組みが分からなければ重力を無視している様に見えるだろう。

 

「凄いですっ!コインが上に飛んでいます。」

 

両手の間に仕掛けが無いか何度も手を動かして確かめているが単純な力技の技術だから見つかる訳もない。

 

「いやいや、コインの重さが無くなってさ、勝手に動くんだよね。」

 

指の間を行き来させつつ手の平を移動させる。さっきの技と相まって不思議に見えるだろう。

 

「すごいっ!すごいです!へびさんみたいに、にょろにょろと動いています!」

 

にょろにょろって。

 

「少しは信じて貰えたかな?と言っても大した事は出来ないけどね。」

 

「もっと見たいですっ!みせてください。」

 

「もっと見たいのか?」

 

「駄目ですか…?」

 

沈んだ声でこちらを見上げる。いや、そんな悲しそうな目で見上げないでくれ。そう言われたらやる以外の選択肢無いような物だ。

 

「仕方ないな…。あまり人に見られたくないが、特別だぞ?」

 

「はいっ!お願いしますっ。」

 

少女からアンコールを受け、飽きが来ないように出していくネタを考えていった。

 

 

 

手品をある程度披露すると満足したのか、今は近くの自販機で買ったアップルティーのペットボトルを2本買い、一緒に飲んでいる。因みに手品の500円は犠牲になった。

 

「あ、ママッ!」

 

突然声を上げ、手を大きく前方に振る。前を見ると母親と思われる女性が近寄ってくる。娘を迎えると此方を見て来たので取りあえず会釈をする。ベンチの様子を見て様子を見ていたのを察したのか申し訳なさそうに声を掛けて来た。返事を返しこれまでの経緯を軽く説明する。

 

「すみません…。娘が迷惑を掛けてしまったようで…。」

 

「いえいえ、流石に放っておくわけにも行かなかったので…、」

 

「その、頂いた食べ物は幾ら位になるのでしょうか…?」

 

「いえっ。結構です。大した物ではないので、娘さんが美味しそうに食べられていたのでこちらとしても元気が出てくれて良かったです。」

 

両手を前に出し、大丈夫と意思を示す。それに、あれで泣き止むなら安いもんだ。

 

「はいっ。とてもおいしかったです。ありがとうございます。」

 

「いえいえ、どういたしましてー。」

 

視線を下げ、なるべく柔らかい声を意識し、返事をする。勿論笑顔で。

 

「それに娘のわがままに付き合っていただいて……。」

 

「手品を披露する機会を得れてこちらも助かりました。リアクションが良くて、ついついこちらも気分が乗ってしまいました。なのでお気になさらず。喜んで貰えただけで十分ですのでお代とかは結構です。」

 

やんわりと、しかし要らない意思ははっきりと声に出す。後は向こうが折れるまで繰り返すだけ。

 

「それより、お時間とか大丈夫ですか?そろそろ良い時間ですし、家事などあったりするのでは?」

 

「……そうですね。そろそろ家に戻らないといけません。」

 

「でしたら、お早めに。今回の事は大丈夫ですので。」

 

「…すみません。娘を見て頂き本当にありがとうございます。」

 

こちらが折れないのを察したのかお礼を告げる。

 

「いえいえ。こちらこそ楽しい時間を過ごさせていただきました。」

 

「それでは…。」

 

此方に礼をして、娘と手を繋ぎ、モールから出て行こうとする。見送っていると深山結菜がこっちを振り返るので、手を振る。

 

「今日はありがとうございました。魔法使いのお兄ちゃん。」

 

大きく手を振りながら感謝を告げてくる。苦笑いが出るが、我慢して手を振り続けた。

 

「魔法使いって…、いや、俺が言ったけどさ。」

 

二人が去った後、独り言を呟く。

 

「それにしても…偶然だったが、まさかあの子と出くわすとは…。」

 

深山結菜。名前を聞いた時驚いたがどうやら本物。というか本人だったようだ。本当なら出会うのはもっと後、10月のステラオープン後の父親の誕生日イベントの時にお店に来るのが初対面になるはずだったが。

 

「いや、逆にありかもしれないな。先に接点を持つことで有利に進めるかもしれない。」

 

先ほど考えていた高嶺昂晴の事で思い付く。初対面で働いてくれとか死神など言われても警戒心を持つ可能性が高いのなら、事前に知り合って居れば、働きやすくなるのではないかと。

 

「知り合いが居れば多少は安心できるし…。やってみる価値はあるかもしれない。」

 

問題はどこで接点を持つかだが…。

 

「あるのなら大学ぐらいか…。」

 

大学内に入る必要が出てくるし、最悪講義の部屋まで行く必要が出てくる。外でいきなり声を掛けたり、偶然を装うのは厳しいから大学でが無難だろう。

 

「そうなると頼れる人は…、一人しか居ないな…。」

 

頭の中で思い付いた人物に連絡をするため、スマホを開く。というか連絡出来る人間が一人しか居なかった。

 

「聞き入れてくれるか…。駄目だったら貸しの話を出して強引に進めるとしよう。」

 

頭の中で高嶺昂晴と知り合うための計画を立てつつ、コール先の人物が認めてくれるような計画を立てないといけないと考えると、少し面倒く感じてしまった。

 

「もしもし。どうしたの?急に電話を掛けて来て。」

 

そうこう考えている内に、受話器越しに不思議そうな声が返って来た。

 

「あ、もしもし()()()()。急にごめん。ちょっと頼みたい事があって…。」

 

これからの為に必要な事だと割り切り、返事をした。

 

 

 




深山結菜ちゃんですね。パパさんのケーキを求めて三千里の子です。登場が思ったより少なかったのに立ち絵があって驚きました。(他のサブでも言えますが。)

今回の遭遇で主人公も少しずつ行動を起こし始めます。後、数話で原作の頭に辿り着くと思いますのでお付き合いください。
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