喫茶ステラ ―異邦人と蝶の残滓―   作:コクーン√

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宿にたどり着きました。

小さな離れ旅館ですが部屋構成はベット二つ、ベット横に円卓テーブル。バスムール付の一部屋6000円位ですかね?冷蔵庫付の割と広めの部屋です。

こういう場所に泊まるのは旅行気分を味わえますよね。窓から紅葉と見つつゆったり
お茶でも飲みたいです。

話内で明月栞那→主人公視点に切り替わります。




第2話:彼の疑惑

 

 

無事何事も起きずに宿の部屋に辿り着き、中へ案内する。彼は終始周りに人が居ないか挙動不審な行動をしていたが、部屋に入ると同時に安心して胸を撫で下ろしていた。

 

こんな状態では当然ですよね。なんせ裸マントで歩いてる所を見つかれば社会的に死んでしまわれます。……あれ?それに付き添う私達も終わりになるのでは?

 

自分達の状況を想像し、実は飛び火していた可能性を考えつつも部屋の鍵を閉める。

 

「ここまで来たのなら変な心配の必要は無くなった。早速本題に入りたいところだが……、その恰好では落ち着けまい。部屋に支給されている浴衣に着替えてくるといい。……いや、一度体を流した方が良さそうだ。体に土などが付いたままでは気持ち悪いであろう?」

 

彼の状態を見て、ミカドさんがお風呂に入ることを勧める。

 

「ありがたいのだが……良いのか?宿泊者では無い俺が使ってしまっても……」

 

「構わん。どうせ我々は使う必要が無いものだからな。宿の女将には後で話しておく」

 

「ここの浴衣はフリーサイズでしたので、男性の方でも大丈夫だと思います。ゆっくりしてきてください」

 

「……すまない。何度も好意に甘えてしまうが、入りながら頭を整理してくる」

 

「いえいえ、お気になさらず」

 

彼はそう言い、バスルームへと入って行った。恐らく今でも頭の中は訳が分からない状況なのでしょう。

 

「さて……、あやつが風呂の間に色々と話しておく事がある」

 

ミカドさん声に体を向けると、いつもの閣下の状態に変わり、話し始めた。

 

「まずは栞那、彼の顔に見覚えはあるか?どこかで知り合ったり、蝶の事で関わったりなどは……」

 

「あの人ですか……?いえ、見覚えはありませんね……。お仕事で関わったりは……無いはずですよ?そもそも親しい人間関係を作っていませんし」

 

「そうか……。私も記憶に無いから不思議なのだ」

 

「不思議……?何が不思議なのでしょうか……?」

 

そもそも、彼の名前すら知らない……と言いますか、聞きそびれていましたね。お風呂から上がったらお互いに自己紹介をしておきましょう。そうしないとややこしい事になりそうですし。

 

「そっちは聞こえていなかったかもしれないが、先ほどの森で栞那の顔を見た時に、栞那の名前を言っていたからな。知り合いなのかと思ったのだ」

 

「私の名前を、ですか……?」

 

「そうだ。聞き間違えでは無いのなら、『明月栞那』とはっきりと口にしていた」

 

うーん、確かに彼は最初に驚いた顔をして何か言っていましたね。聞こえなかったのですが、私の名前を呼んでいたのですね……。でも、どうして私の名前を知っているのでしょう?初対面のはずですし……過去に会ったことが?うーん、やはりピンと来ないですね……もしかして、ナツメさんのお知り合いなのでしょうか……?

 

「ナツメさんのお知り合いという可能性は……?」

 

「確かにその可能性もあるかもしれん。だが、四季ナツメはあまり人との友好関係を持って無かったはず。親族などとも考えたが、我々の事は話してはないはずだ。無論顔を見られる機会も無い」

 

「確かにそれもそうですね……。では一体何処で知ったのでしょう?」

 

「気になるとこだが、後で本人に聞けば済む話だろう……そちらは一先ずは置いておく。それよりも、気づいてるとは思うが奴の体……」

 

「はい。それは私も気になっていました」

 

「恐らくだが、お前と同じように肉体に縛られていない存在に近い。蝶の魂で作り上げられた身体の……はずだ。確証は無いが、あの場所には元々奴の魂の一部が居て、それに蝶が呼び寄せられていたのだろう。何故蝶が奴の魂に呼び寄せられていたかは不明だが、何か強い未練があった事でそれに蝶が取り込まれた可能性がある……と考えている」

 

「それはつまり、蝶を吸収して生まれたという事なのですか……?」

 

「ああ、裸で寝ていたのもそれが原因であろう。生まれた状態なのだから服など着ているわけがない。だがこれまでに、その様な事が起きた話は聞いたことが無い。これらについては詳しく調べる必要があるようだな」

 

これからの事を考え、悩むように眉を顰める。

 

「取り敢えず……奴が風呂を出てきたら状況の説明を私の方から話しておく。場合によってはこちら側に引きずり込んでしまえば良かろう」

 

「個室で怪しい二人組に死神のお仕事の勧誘だなんて……変な宗教に捕まったとか思われませんか?なんせ内容が、人の魂を神の元に還す役目。とかなんですよ?」

 

「それのどこがおかしいと言うのだ。どこも間違った事は無いであろう?」

 

「無いからこそ、なんですが……」

 

私の冗談交じりの疑問に対して、まじめな顔で返答するミカドさんの顔を見て苦笑いが自然と出る。

 

その後、ミカドさんと暫く話していると、風呂場の扉を開ける音が聞こえ、浴衣に着替えた彼が出てきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人から風呂を勧められ、大人しく体を洗い流す。

 

さっきまでは裸マントで気が気じゃなかったが……、少し落ち着けそうだし頭の中を整理しよう。いやしたい……!

 

シャワーを頭から浴びつつ、これまでの流れを思い浮かべていく。

 

……やっぱり、さっきの女性は明月栞那で間違いなさそうに思えるが……。それか、コスプレのレベルが超絶高いなりきりロールプレイヤーのどっちかだが……森で蝶を回収している所を見ているし、本物なのか……?となると、横で歩いていた執事姿は閣下になるのか?確かケット・シーで公爵家の……。

 

そう言って思い浮かぶのは金の王冠に赤のマントを着けた猫の姿だった。

 

もし……本物だと仮定すると、此処はゲームと同じ世界ってことになるのか?異世界転移?ラノベ的な展開……?それとも実は俺が知らなかっただけで現実に存在していた……?いや流石にそれは無いか。ゲームのキャラが全く同じ見た目で居るとか、前者の方が信憑性まだあるわ……。

 

夢ってわけでも無いし、本当ならどうしてゲームと同じ世界に居るのか分からないが……一旦そこは受け入れておこう。閣下は何か分かっていたみたいだし、話を聞いてから考えよう。

 

仮に、ゲームの世界なら……今はどの時点だろうか?原作が始まってから喫茶ステラの仕事で遠出の仕事とかしてなさそうだったし……原作の時期の前後とかかな?……でも、外で全裸なのにそこまで寒くなかったし、虫の鳴き声していたから原作より少し前か、一年後以降になるかもしれない。まてよ……?まず、ここは俺の知っている日本で当たっているのか?同じ日本でも並行世界みたいな感じの世界とか……。別の世界なら元々住んでた場所や交友関係とかどうなっているのか気になる……。

 

考えれば考えるほど気になることが出てくるが、それに対しての答えに結局辿り着けずにすっきりしないもやもや感が残ってしまう。

 

「……出るか」

 

考えても仕方ないと結論付けシャワーを止める。扉を開け、置いてあるバスタオルで体を拭き、宿泊用の浴衣を着る。

 

部屋には二人が居る……。こっちからしたら知っているけど、向こうからしたら初対面なんだよなぁ……。馬鹿真面目に話しても頭おかしい人だと思われそうだし、変な事言わないように一応気を付けた方が良いかもしれないな。

 

ドアの前に立つと、謎の緊張を感じる。一度深呼吸してから風呂場を出ていく。

 

部屋に戻ると、そこには椅子に座った明月栞那と床に二足で立っている閣下が居た。その姿に一瞬驚いてしまう。

 

……知ってはいたけど、実際にこんな格好の猫を見るとびっくりしてしまうな……。現実味が無さ過ぎて受け入れるのを拒否してしまいそうだ……。

 

「どうだ?水浴びをして少しは落ち着けたか?」

 

うわぁ……本当に喋った……。猫がこんなに流暢で話しかけてくるとか正直不気味というか、気持ち悪さを感じるぞ……。

 

「む?どうした、変なものを見た様な顔をして」

 

「ミカドさんがその姿で話しかけるからですよ。誰だって急に猫が話しかけてきたらそうなりますって」

 

「そうだったな、では」

 

そう言うと、次の瞬間には何時もの執事に戻っていた。

 

「貴様にはこっちの姿なら見せているからな。この状態で話しておこう」

 

「あ、ああ……そっちの方が助かる。非現実的なのを見て思考が変になりそうだ……」

 

執事の姿をした閣下が、綺麗な姿勢でこちらを向く。

 

「では、話の前に軽く自己紹介を済ませておこう。我輩はミカド。此方の姿では御帝 貴紀と名乗っている。人の魂を正しく案内する為に死神の仕事をしているそこの娘のサポートをしている程度の認識で構わん」

 

閣下からの自己紹介を受け、視線を椅子に座っている明月栞那へと移す。

 

「次は私の番ですね。私は明月栞那と言います。先ほどミカドさんが仰っていた通り、死神のお仕事をしています。内容としては……そうですね、森で見たように彷徨える蝶を回収したり、回収した蝶を正しく神の元へ導くことを主にしています」

 

……まじかよ。名前も設定も全く同じだな……。声や話し方まで同じとなると……同一人物として認めるしかないよなぁ?流石にこれは……。

 

顎に指を当て、うーん……と唸っていると、二人からの視線に気づく。

「ああ、ごめん。そっちにだけさせて、こっちがまだだった。ええっと、私の名前は澤田達也と言います。歳は今年で27、仕事は……普通の会社で一般社員としてサラリーマンをしています。先ほども話しましたが、家で就寝後起きたら森の中で何故か裸で寝ていて……自分でも言っている意味がわからないのですが、本当にそういう記憶しかなくて困っている所です」

 

なんか……自己紹介って緊張してしまう……っ!喋り方も変になってくるし……超恥ずかしい。

 

「澤田達也さんですね。よろしくお願いします」

 

「はい。よろしくお願いします……」

 

……よろしくって、何に対してのよろしくなんだ?今後の俺に対してか?何をよろしくさせるつもりなんだ?

 

「お互いの自己紹介も済んだな。ではまず……澤田達也。貴様に今起こっている現象を先に説明しておこう。我輩の推測にはなるがな」

 

「あ、はい。よろしくお願いします」

 

こうして、よく分からない空気の中、閣下からの説明が始まるのであった……。

 

 





ダンディな執事からシャワーを勧められる若い男……。色情淫乱死神娘の妄想が膨らみそう。

今回と次回は宿での説明回的になる予定です。
それが終わり次第、進んでいくと思いますのでお付き合いください。
設定とかボロ出そうで心配ですね……。

しかも、正直主人公の名前ぎりぎりまで何も考えていませんでした……。

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