喫茶ステラ ―異邦人と蝶の残滓―   作:コクーン√

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明月栞那視点です。

書いていた文章を保存しようとして誤って消してしまい、一から書き直しました。

気落ちしてしまったので、一旦明月さん視点で区切りたいと思います……。




第35話:プロフィール ー明月 栞那視点ー

 

高嶺さんにオムライスを食べて頂いた後、ナツメさんの紅茶の方も味の確認を終え、お開きとなりました。

 

「お疲れさん。今日は何とか無事に乗り切る事が出来たな。」

 

高嶺さんとナツメさんを見送ってから澤田さんが労いの声を掛けてきます。

 

「澤田さんの方もお疲れさまです。今日はありがとうございます。」

 

「大したことはしてないけどな。ま、忙しくなるのはこれからだから明日からもよろしく頼む。」

 

高嶺さんの説得やナツメさんを元気づけたりと、それなりの事をしていたと思うのですが…。本人からしたら大したことが無い部類になるのでしょうか。

 

「それで、貴様はまだ帰らんのか?」

 

「ちょっとな、ようやく高嶺が参加したから明日以降の事を話しておきたい。」

 

「そうか、すまんが吾輩は用事で席を外すから要件は栞那に話しておいてくれ。後で詳細は聞いておく。」

 

「用事?」

 

ミカドさんはどうやら用事でお出掛けをされるそうですね。

 

「昨日からに続き、色んなことが起きたからな。一度その報告をしてくる。」

 

なるほどです。確かに今日だけでも高嶺さんの事で報告が必要そうですし。澤田さんも「あ~。なるほど、了解。」と納得されている様です。

 

「ついでに貴様の事も話しておくことにしよう。前に一度報告はしていたが、それから特に何も連絡が来ていないのでな…。」

 

既に報告はされていたのですか…。それで特に澤田さんの身に何も起きていないという事は高嶺さんの様に監視中でしょうか?

 

「高嶺さんの奇跡の件もそうですが、澤田さんの奇跡も相当だと思うのですが…。」

 

「吾輩もそう考えているのだが…。判断を下すのは吾輩では無いからな。」

 

「………」

 

「澤田さん?どうかされたのですか?」

 

澤田さんを見ると何だか気まずそうに苦笑いをしていました。

 

「あー、いや。何でもない。」

 

「何でもない様には見えないのですが……。」

 

「ほんとに何でもない。ただ、ミカドさんには苦労を掛けているなと改めて思ったら罪悪感がひしひしとな……。」

 

どうやら自分の事でミカドさんに負担を掛けていることに罪悪感を感じてしまっている様です。

 

「何を今更な事を。それに吾輩達も貴様には苦労させてしまっているからな。お互いさまというやつだ。」

 

「そうですよ、なので、変に気を遣わないで下さいね。同じ職場で働く仲間ですし。」

 

「二人の優しさに涙が出てきそうだ。今後も色々相談や頼る事になりそうだが、改めてよろしく。」

 

頼る事になるのはこっちになると思うのですが……。とは口には出さず。肯定の返事をする。

 

「それでは吾輩はそろそろ行ってくる。」

 

「はい、行ってらっしゃいませ。」

 

「夜道には気を付けてな。」

 

ありきたりな言葉なのに、澤田さんが言うとなんだが気にしてしまいそうです。

 

「そんじゃ、さっそく話しますか。」

 

「そうですね。あ、何か飲まれます?良かったら淹れますよ。」

 

そう聞くと、澤田さんは少し悩んでから「コーヒーをお願い。」と言います。

 

「澤田さん、今日の高嶺さんの説得の件、ありがとうございました。おかげで無事高嶺さんがここで働いてくれます。」

 

コーヒーの準備をしながら、今日の事で改めて感謝を伝える。

 

「ほんと、大した働きでは無いんだけどな。でも感謝はありがたく受け取っておくよ。」

 

「澤田さんにとって大した事では無くても私にとっては一大事でしたから。」

 

「色仕掛けしなくて済んだしな。」

 

「それは言わないで下さい……。」

 

今思い出しただけでも恥ずかしくなってきます。まぁ、結局しなかったですが。

 

「あ、それよりも、高嶺へのオムライスはどうだった?愛情をこれでもかと詰め込んでいた様に見えたが。」

 

「ちゃんと美味しいと言っていただきましたよ?」

 

今回食べて貰ったオムライスは無事美味しいと言っていただけました。これまで練習した甲斐がありましたね。まさか、また作る日が来るとは思ってもいませんでしたが……。

 

「そうか……。頑張って練習した甲斐があったな。おめでとさん。」

 

澤田さんから出た声に、コーヒーの準備をしている私の手が一瞬止まってしまい、そちらを向く。彼を見ると、とても柔らかい表情で優しくこっちを見ていました。

 

「明月さんにとっては思い出深い料理だしな、また食べさせれる機会があって……こちらとしても良かったと思う。」

 

「やっぱり……ご存じでしたか。」

 

厨房でわざわざ“待望の”と言われた時から何となく予想は出来ていましたが……。

 

「まぁな。過去を覗くような真似をしている事はすまんと思っているが……。」

 

「そちらについては多少なり思うところもありますが……。今更言っても仕方ありませんから。」

 

そこで、ふと考える。もしかすると…今回、高嶺さんにオムライスを再び食べさせる機会を作って下さったのでしょうか。思い返してみれば、オムライスの話が出るきっかけは澤田さんの一言でしたし……。

 

「もしかして、わざわざ私に為に機会を作って下さったのですか……?」

 

気になってしまい、澤田さんに問いかける。

 

「まぁ…どのみち、食べてもらう事にはなっていたと思うけどな。」

 

「ありがとうございます。おかげでリベンジが叶いました。」

 

感謝の言葉と一緒にカップに淹れたコーヒーを差し出す。

 

「ありがと。さっそく頂くとしよう。」

 

一口、コーヒーを口に付け、今度は何かを懐かしむような目で澤田さんは笑みを浮かべていますが…。

 

「いつかはオムライスだけでは無く、このコーヒーも同じ物になる日が来ると良いな……。」

 

カップを置き、小さくでしたが私には聞こえる声でそう言いました。その顔はやはり何かを思い出し、懐かしむ目に見えます。恐らくは……。

 

「そうですね。お店が無事に開けば、その様な機会が来るかもしれないですね……。」

 

私がそう答えると、それもそうだな。と返事が返ってくる。

 

「と、思い出話はここら辺にしといて、明日からの話をしようか。ちょっと真面目な話も混じる事になる。」

 

「分かりました。」

 

澤田さんが少し真面目な声になり、こちらも感傷的な気持ちから切り替える。

 

「明日なんだが、高嶺と一緒に高嶺の父親がこの店にやってくる。」

 

「え?高嶺さんのですか!?」

 

「ああ、父親は絵描きをしていてな。一緒に店のインテリアとかを決めたりするアドバイザー?俺も内容までは詳しく知らないが……みたいな事をしているらしい。今日高嶺がお店の事で相談したことで明日、店に来る。」

 

「大丈夫なのでしょうか……。」

 

「いや、大丈夫じゃないな。結果は明日直接本人の口から聞いて欲しい。」

 

「今から出来ることはありませんか?」

 

「寧ろ何もしなくて良いと思う。結構駄目出し食らうが…参考になるしそれをバネに出来るから。」

 

何もしない方が良いのでしょうか?澤田さんからは焦った様子は見られませんし。これはあえて何もしなかった……と思って良さそうです。知っていたのなら今までで何か行動を起こしているでしょう。

 

「因みにこのことを他の人には……?」

 

「いや、まだ話していない。明日四季さんには高嶺の父親が来るとだけ話そうかと思っている。それから……。」

 

澤田さんは言葉を区切り、何やら三枚の紙を出してきます。

 

「これらは……?」

 

見ていると、誰かの履歴書?の様に見えますが。

 

「俺の手書きで悪いが、これからこのお店で働いてもらう人達の簡単なプロフィール的な物だ。」

 

「………えっ?」

 

驚きの余り、変な声が出ました。今…これからこのお店で働いてもらう人たちの……?

 

テーブルに置いてある紙に目を通す。そこには簡易的だが、基本的な情報が書かれていた。

 

「まず、最初にこの墨染希( すみぞめ  のぞみ)って子なんだが、書いてある通り高嶺の年下の幼馴染だ。家事も高嶺の朝食を毎日作る位スキルも高い。」

 

「明るくて素直な性格ですか…、ご実家は神社なのですね。」

 

「だな。間違いなく戦力になる。基本的にフロアになると思うが、万が一キッチンが戦力不足になってもそちらをカバーできる一級品の人材。」

 

目を通していくと下の方に上とは別に備考欄があります。

 

「あの、この下の方に書かれている備考欄とは…?」

 

「ああ、こっちはちょっと個人的な情報が含まれている事だから別で書いている。あまり人に話す事では無かったり、秘密にしたい事とかを書いてある。無闇に地雷を踏まない為の情報だな。」

 

内容を見てみると、

 

・神社の手伝いをしている為シフトの調整要。

・甘いものが好きな為、店のデザートメニューへの貢献有。

・カロリー0理論の提唱者。

 

……何でしょうか?3番目の内容は?

 

更に読み進めて行くとある項目に目が止まる。

 

「…澤田さん、これは本当なのでしょうか?」

 

「ああ、それか?本当だ。マジもんの霊感持ちだ。」

 

私が指さす先には……

 

・霊感持ち。蝶を見ることは出来ないが、察知することが出来る。近くに居ると寒気として感じる。

 

と書かれています。

 

「それと、この下の“???”と書いているのは……?」

 

「それはトップシークレットって感じだな。話すことは出来ないが、とある問題があって、もしかしたらそういう未来が来るかもしれないので一応枠だけを書いている。」

 

「今は話す事は出来ない…という事でしょうか?」

 

「すまんが、そうなる。必要になったら話すからそれまでは無視してくれていい。」

 

「………分かりました。」

 

元々話す気が無かったが、情報として一応私達に知らせておきたいという事なのでしょう。これは多少は信用していただいているのか、私やミカドさんの力が必要な事なのか……。

 

「次は二枚目のこの子、 火打谷 愛衣(ひうちだに めい)って子なのだが……。」

 

先程と同じように書いてある紙を見ていく。どうやら1枚目の希さんと同じ年の子みたいですね。しかも元々同じ中学で友達と…。活発的な性格でとにかく笑顔が明るい子みたいですね。

 

「この子は笑顔がとても眩しい子で、場を明るくしてくれるムードメーカー的存在だな。」

 

「とっても可愛らしい人みたいですね。」

 

澤田さんの言葉を聞きながら下を見ていくと、

 

・元水泳部。

・褐色で片目を髪で隠しているという属性盛り

・可愛い物好き。※本人はそれを隠している。

・意外とかなりのむっつりスケベ。

・???

 

色々ツッコミどころがあるのですが……、それよりも。

 

「あの…この子も“???”と書いているのですが……?」

 

「そうだな…。その子も場合結構難しい問題でもあるのだが……、これについては俺の方で様子は見ておこうかと思う。何か問題が起きれば、頼らせてもらう事になるが、その時は宜しく頼む。」

 

そう言ってくるという事は蝶がらみの話である事は間違いなさそうです。

 

「最後に3枚目の女性、 汐山 涼音(しおやま すずね)って人だ。この人はお店の主戦力となる人だな。」

 

・パティシエ。『Patisserie・sourian(パティスリースリアン)』というお店で働いていた為、スウィーツ類に精通。が、今は辞めている。

・高嶺と同じマンションに住んでおり、高嶺と同じ大学に通っている友人、汐山宏人の姉。直接的な接点は無し。

・現在店を辞めているが、それが原因でかなり落ち込んでいる。※蝶関連の為明月さんとミカドさんに相談要。

 

こちらの女性はお菓子作りで即戦力になる方の様ですね。過去にお店で働いていた経験が……、こちらは澤田さんが調べてくれたのでしょうか。それと3番目の項目は……。

 

「澤田さん、この女性は。」

 

「現時点ではまだ大丈夫のはず。何もしなくても明後日には高嶺が訪ねに行くことになるけど、念のために明日辺りにでも一度様子を見てこようかと思う。」

 

「今はどのくらいの症状で……?」

 

「他から見て、かなり落ち込んでいて気力があまり無い……位に見えていたと思う。でも反応も受け答えもちゃんと出来るから今の所は最悪にはなってはいないから安心してくれ。」

 

お店で働くことになるという事は立ち直って問題は解決可能ということなのでしょう。明後日には高嶺さんが接触するとのことですし、どこかのタイミングで蝶を回収する必要があるみたいですね……。

 

「これが取りあえずの話だが、まずはミカドさんに女性3人分の書類とかロッカーなどの場所の準備をお願いしたい。四季さんに何か聞かれたら俺が言っていたと言ってくれ。」

 

「そういえば…今日ナツメさんにも話をされたのですか?」

 

「したんだけど当然信じてはいなかったからな、要監視中になったわけ。」

 

「なるほど、それでオムライスの事を当てていたのですね。」

 

流れ的に、澤田さんが私と高嶺さんの状況を言い、それをナツメさんが確認されていたのでしょう。

 

「そういうこと、それはこれから何とかしていく。目下は高嶺父に色々指摘されるから、それについて改善してく事になる。」

 

澤田さんはそう言うと、空いた紙にお店のメニューを書き込んでいく。

 

「色々あるが、先にしていくのはアルバイトの募集と、お店のメニューの改善だな。」

 

口で話されながら、流れる様に書いていく。

 

「澤田さん、結構速筆なのですね。」

 

「ん?そうか?」

 

「口に出しながら同じぐらいの速度で書かれていますから、かなり早いと思いますが…。」

 

「あまり気にしてなかったが……まぁ、そうする必要があったというか、自然と身に付いた感じだな。」

 

書く手を止め、どこか遠い目をしている。これは……。

 

「すみません。もしかしてじゃなくて、嫌な記憶を思い出させてしまったようで……。」

 

「ああ、いや、気にしないでくれ。ただ昔を思い出して懐かしんでいただけだから。」

 

そうしてまた紙へ視線を向け、書いていく。

 

前に、頭の回転が速い人は書く速度も速いと聞いたことがありますが、澤田さんもその部類なのでしょうか?確かに彼の奇跡なら当然頭の回転は速いのでしょう。幾つもある未来から最善を手に入れる為にはどの様に人を動かし、どの様に先の事を話すのが正解かを考えなければいけません。日頃、私達と話している最中でも常にそれらを頭に入れながら過ごしているのでしょうから……。それなら頭の回転が速いなど当然かもしれません。

 

澤田さんは前世……前の世界に居た時からその様な人生を歩んできたのでしょう。今回の件で、机に置かれた三枚の情報から、明日に起こる事、それに対して改善すべき点、その案を止まる様子なく話している。この世界からでは無く、過去に多くの経験があったからこその賜物に違いありません。逆に言えばそれだけの思い出したくもない……悲惨な人生だったとも言えるのですが。

 

“そうする必要があった”と言ったのは当然なのでしょう。様々な人からの悪意、権力者などから逃げる日々に休まれる時間は無かったはずです。ましてや字を書いている暇なんて。“ただ昔を思い出して懐かしんでいただけ”とはおっしゃっていましたが……それは私を気遣った言葉だったのか、それとも慣れ過ぎて感覚が麻痺してしまったのか……。

 

「と、まぁ、今の所はこんなもんか。いきなりメニューが多くなって大変だが、少しずつ作れるのを増やしていきたいと考えている。デザートについては、俺はそこまで詳しくは無いから……プロフェッショナルが来てから詰めていきたいと思う、が……明月さん、今の話聞いてた?」

 

「え?、あっ!すみません、聞いていませんでした!」

 

考え事をしていて、澤田さんの言葉を右から左へと聞き流してしまっていました。

 

「見間違いじゃなければ、何か思い悩んでいた様に見えたけど、気になる事でもあった?」

 

「ああ、いえ、考え事をしていただけですので大丈夫です。」

 

「……了解。」

 

私が話さないのを察したのか、深く追求せず視線を戻したようです。

 

「じゃあ、最後に明日の流れを話して終わりとするか。」

 

「ええっと……まず明日高嶺父が来るのだが……午前中の、そんなに早くない時間帯の筈。詳しい時間までは分からないけど、朝食を摂った後で、店に来た時に四季さんが高嶺におはようと言っていたからそこまで遅い時間では無いとは……思う。多分。」

 

紙に書きながら逆の手をこめかみに当て、何かを思い出すような、記憶を探っているように話していく。

 

「んで、店に着くと、メニューの味の確認をするために幾つか頼むのだけど、コーヒー、サンドイッチを各種類とオムライス…?後は食後に紅茶を……これはアールグレイだな。」

 

「あ、念のために確認なんだが、胃薬って置いている?結構な量食べてるから……胃が、な?」

 

「多分ですが、置いてあったと思いますよ?」

 

一応飲食店という事もあり、置いてあったはずです。確かに和史さんの年齢を考えると……仕方ないですね。

 

「その後にさっき言った様に色々指摘を食らうから……、それらの改善を皆で話し合おうってのが明日の流れになるはず。」

 

明日の予定を確認し終えたからかこめかみから指を離し、顔を上げる。

 

改めて、澤田さんの奇跡を目のあたりにすると……、その恐ろしさがよくわかります。正確な時間などの情報が分からないと言っても、観測した未来の行動や言葉からおおよそが推測可能。聞いている限りでは会話なども詳しく見れている様ですね…。誰がどんな会話をしているかを分かるだけでも相当凄い事なのですが……。

 

「今言えるのはこのくらいか。俺の方は高嶺父が味の確認している間に、この女性の蝶の様子を確認しに行こうと思う。」

 

「先ほど話していた方ですね、分かりました。でも、無闇に蝶に触らない様にして下さいね?」

 

落ち込んでいたりなどのマイナスな感情が強ければ強いほど、蝶は多く集まってきます。それに感化するように負の感情も大きくなり、更には他の人にまで影響を与えてしまいます。

 

「そこはちゃんと理解しているつもり。多分集まっている数も多いと思うからな。」

 

「この前みたいに興味本位で触っては駄目ですからね?幾ら澤田さんでも何かしら影響は受けてしまう可能性があります。」

 

「確かに、自己嫌悪とか感じたくないから極力触らない様にしておく。………他なら楽なんだけどなぁ。」

 

最後に小さく呟くと、残っていたコーヒーを飲み干し、席を立つ。負の感情に楽とか無いと思うのですが……。

 

「それじゃあ、そろそろお暇しようかな。コーヒーごちそうさま、美味しかった。」

 

「お粗末様です。もう帰られますか?」

 

「そうするよ、そろそろミカドさんが帰って来てもおかしくないし、お邪魔になるかと思うから。」

 

「あの、こちらの紙は一旦私の方で預かっても良いですか……?」

 

「ん?ああ、了解。ミカドさんに説明する時にあると分かりやすいし持って行って大丈夫。ただ、他の人には見られない様に気を付けて欲しい。」

 

「はい。重々承知しています。」

 

「ならおっけい。」

 

店から出ようとする澤田さんを入口まで見送る。お店の扉を開き外に出ると、丁度ミカドさんが帰ってくるの姿が見えました。

 

「澤田達也か、話し合いは終わったのか?」

 

「おかげさまで、問題なく終わったよ。詳しい話は明月さんから聞いてくれ。」

 

「……分かった。後で聞いておこう。」

 

「それじゃあ、お疲れさん。また明日。」

 

「はい、お疲れさまでした。ゆっくり休んで下さい。」

 

「うむ、ご苦労であった。また明日もよろしく頼む。」

 

別れを告げ、澤田さんは家へと帰っていく。その姿が見えなくなった所で、ミカドさんから声を掛けられる。

 

「栞那、話がある。」

 

「……どういった内容でしょうか?」

 

ミカドさんから発せられる雰囲気から察するに明るい話じゃなさそうですね。

 

「澤田達也の件でだ。詳しくは部屋で話す。」

 

「分かりました。」

 

ーーー澤田さんの件

 

ミカドさんが出掛けられた用事は上への報告です。つまり……澤田さんの事で何かあったということなのでしょう。しかも良くない方向での。

 

無言で部屋に向かうミカドさんの表情は厳しく、話される内容の険しさを物語っています。

 

願わくば……彼に不幸が訪れませんように。

 

 

これから起こるであろう災難に、そう思わずにはいられなかった。





未来予知で宝くじ当てたい。※願望

次回は主人公視点を先にしてから、ミカドさん視点にしようかと思います。

主人公視点と言っても今回の話を彼の視点で描くだけですが……。
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