喫茶ステラ ―異邦人と蝶の残滓―   作:コクーン√

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主人公視点です。

なんかヒロインの事を書こうと思いましたが、文字数が多くなりそうなので抑えることにしました。またどこかでちょくちょく書こうかと思います。




第36話:プロフィール ー澤田 達也視点ー

 

高嶺と明月さんの新婚ごっこを確認した後、四季さんの紅茶も確認を終えた所で、丁度良い時間という事もあり今日は解散となった。

 

「お疲れさん。今日は何とか無事に乗り切る事が出来たな。」

 

二人を見送り、隣に立っている明月さんを労う。

 

「澤田さんの方もお疲れさまです。今日はありがとうございます。」

 

「大したことはしてないけどな。ま、忙しくなるのはこれからだから明日からもよろしく頼む。」

 

俺の返事にあまり納得出来ていない顔をしているが……、そんな大層な事してないしなぁ。今日俺がしたのって……四季さんを怒らせたのと、高嶺を下心満載の勧誘とかぐらいか?……碌な働きしていないなこれは。いや、四季さんの怒ったのを見れたのはプラスか?

 

「それで、貴様はまだ帰らんのか?」

 

「ちょっとな、ようやく高嶺が参加したから明日以降の事を話しておきたい。」

 

残念ながらまだやる事があるんだよな…。明日から動き出すことだし、せめて明日の話だけもしておきたい。

 

「そうか、すまんが吾輩は用事で席を外すから要件は栞那に話しておいてくれ。後で詳細は聞いておく。」

 

「用事?」

 

今から外に出掛けるのか。あれか?猫の集会的な奴か?

 

「昨日からに続き、色んなことが起きたからな。一度その報告をしてくる。」

 

あ、そっちか。確かに高嶺の事で色々進展あったし、一度報告は必要か。

 

「あ~。なるほど、了解。」

 

「ついでに貴様の事も話しておくことにしよう。前に一度報告はしていたが、それから特に何も連絡が来ていないのでな…。」

 

俺の……?出生というか生まれ直した事についての報告か。いや、でもミカドさん……多分俺が未来視を持っているとかも報告したのか?それなら連絡は一生来ないと思いますよ?そんな力持って無いから。上も困惑していると思うぞ。

 

「高嶺さんの奇跡の件もそうですが、澤田さんの奇跡も相当だと思うのですが…。」

 

「吾輩もそう考えているのだが…。判断を下すのは吾輩では無いからな。」

 

深刻そうな空気で二人は話していく。が、判断も何も無いもんは罰せれないからな……。というか俺は高嶺と同等の危険度か。まぁ、確かに本当にそんな奇跡があれば危険視するだろうな。……それにしても。

 

「澤田さん?どうかされたのですか?」

 

俺が苦笑いをしていたからか、明月さんが不思議そうな顔でこっちを見てくる。

 

「あー、いや。何でもない。」

 

「何でもない様には見えないのですが……。」

 

「ほんとに何でもない。ただ、ミカドさんには苦労を掛けているなと改めて思ったら罪悪感がひしひしとな……。」

 

ありもしない力に振り回されているミカドさんに対して最悪感を感じてしまうが、原作知識の出所がバレる訳には行かない為話すことは出来ない。

 

「何を今更な事を。それに吾輩達も貴様には苦労させてしまっているからな。お互いさまというやつだ。」

 

「そうですよ、なので、変に気を遣わないで下さいね。同じ職場で働く仲間ですし。」

 

此方を気遣う様に言う二人を見ると、フッ。っと少し呆れながらもどこか満足そうなミカドさんと、安心させるように微笑みかけてくる明月さんが目に入る。

 

「二人の優しさに涙が出てきそうだ。今後も色々相談や頼る事になりそうだが、改めてよろしく。」

 

話せないの1点張りにも関わらずこのように言ってくれる事に感謝をしつつ、今後役に立つことでそれらを返してくと改めて決意する。………すまない、エロゲの事だけは話す訳には行かないんだ……許せ。

 

「それでは吾輩はそろそろ行ってくる。」

 

「はい、行ってらっしゃいませ。」

 

「夜道には気を付けてな。」

 

ミカドさんが出ていく事となり見送る。夜道を気を付けろとか言ったが、猫には無関係な言葉かもしれなかったな。

 

「そんじゃ、さっそく話しますか。」

 

扉を閉め、思考を切り替える。

 

「そうですね。あ、何か飲まれます?良かったら淹れますよ。」

 

それはありがたい。何を飲むか……。ここはやはりコーヒーだろうか。

 

「コーヒーをお願い。」

 

明月さんは俺の返事を聞くと、カウンターに入りコーヒーの準備を進めて行く。

 

「澤田さん、今日の高嶺さんの説得の件、ありがとうございました。おかげで無事高嶺さんがここで働いてくれます。」

 

準備をしながらこちらを向き、今日の事で礼を言ってくる。

 

「ほんと、大した働きでは無いんだけどな。でも感謝はありがたく受け取っておくよ。」

 

いや、ほんと。でも感謝は受け取っておく。

 

「澤田さんにとって大した事では無くても私にとっては一大事でしたから。」

 

「色仕掛けしなくて済んだしな。」

 

「それは、言わないで下さい……。」

 

俺の言葉に手が止まり、恥ずかしそうにつぶやく。どうやら思い出しただけでも恥ずかしいとおもってしまう事をしようと考えていたらしい。流石エロい人だな。

 

「あ、それよりも、高嶺へのオムライスはどうだった?愛情をこれでもかと詰め込んでいた様に見えたが。」

 

ケチャップでオムライスの上にまで溢れ出ていたが……。

 

「ちゃんと美味しいと言っていただきましたよ?」

 

「そうか……。頑張って練習した甲斐があったな。おめでとさん。」

 

あの時、三度目の生まれ直しをしたときに初めて作ったオムライス。碌に掃除はされずに汚れた部屋の中でただ一人残された子供。母親の友達などと適当な嘘を付いてまでもその子に何かしてあげたかったのだろう。その時に食べたいと言われたのがオムライスだった。

 

まぁ、初めての事もあり、感想としては美味しくないの一言だったわけだが……、次は美味しく作ると反省し、また作ってあげると約束した。

 

しかし、その子は再び蝶へと還ってしまい、約束は果たされずのままだった。それが今回で果たすことが出来た。幸せを求め続ける満たされない渇望と、それを諦めずに次こそはと案内し続けた二人の頑張りがあったからこそ実った奇跡なのだろう。あー、思い出すだけで泣けてくるわ。

 

「明月さんにとっては思い出深い料理だしな、また食べさせれる機会があって……こちらとしても良かったと思う。」

 

ただ場のセッティングをしただけなんだけどな。でも、彼女のルートを見た人から見ればまず外せないイベントだと思う。

 

「やっぱり……ご存じでしたか。」

 

何かを納得した声で返事をしてくる。流石に露骨過ぎて気が付くか。

 

「まぁな。過去を覗くような真似をしている事はすまんと思っているが……。」

 

「そちらについては多少なり思うところもありますが……。今更言っても仕方ありませんから。」

 

それについては、なるべく割り切ってくれるらしい。ほんと出来た人だよな……普通自分の過去や感情を見られるのは嫌悪感持たれても仕方ないと思っているのだが?いや、既に手遅れな俺が言うのはお門違いだけどさ。

 

「もしかして、わざわざ私に為に機会を作って下さったのですか……?」

 

「まぁ…どのみち、食べてもらう事にはなっていたと思うけどな。」

 

わざわざって言う程でもないけどなぁ。

 

「ありがとうございます。おかげでリベンジが叶いました。」

 

感謝されるほどのことでも……あるのか明月さんにとっては。けど俺の手柄みたいにするのは若干気が引けるな。だが感謝は受け取っておく。

 

明月さんから感謝の言葉に続き、カップを前に置かれる。淹れたばかりのコーヒーをさっそくいただく。

 

………オムライスもそうだが、このコーヒーもいつかはオムライスと同じぐらいの大事な位置になるんだよな。確か……キリマンジャロだったか…?ちょっと高い豆ではあったが、デート前か何かの時に高嶺に淹れた物の……はず。それが将来は毎朝淹れてあげるような関係になって……部屋を満たすその匂いすらも幸せを感じる一部に……。

 

「いつかはオムライスだけでは無く、このコーヒーも同じ物になる日が来ると良いな……。」

 

カップをテーブルに置くと、自然と口からこぼれた。どうやら心の声が漏れてしまったようだ。

 

「そうですね。お店が無事に開けば、その様な機会が来るかもしれないですね……。」

 

「それもそうだな。」

 

明月さんの言葉に相槌を返す。その通りだ。まずは店を無事に開かなければ意味が無い、幸せの未来はそれからだ。しんみりした気持ちはここまでにしよう。

 

「と、思い出話はここら辺にしといて、明日からの話をしようか。ちょっと真面目な話も混じる事になる。」

 

「分かりました。」

 

俺が真面目な話をし始めたのを感じ取り、明月さんも切り替える。

 

「明日なんだが、高嶺と一緒に高嶺の父親がこの店にやってくる。」

 

「え?高嶺さんのですか!?」

 

ああ…そりゃ唐突に言われたらそうなるよな。

 

「ああ、父親は絵描きをしていてな。一緒に店のインテリアとかを決めたりするアドバイザー?俺も内容までは詳しく知らないが……みたいな事をしているらしい。今日高嶺がお店の事で相談したことで明日、店に来る。」

 

「大丈夫なのでしょうか……。」

 

「いや、大丈夫じゃないな。結果は明日直接本人の口から聞いて欲しい。」

 

「今から出来ることはありませんか?」

 

「寧ろ何もしなくて良いと思う。結構駄目出し食らうが…参考になるしそれをバネに出来るから。」

 

変に付け焼き刃でやっても大した効果は無さそうだし、マイナス要素は今日明日でどうにか出来る部分は少ない。

 

「因みにこのことを他の人には……?」

 

「いや、まだ話していない。明日四季さんには高嶺の父親が来るとだけ話そうかと思っている。それから……。」

 

分かりやすく説明できるように、予め紙に書いておいた各ヒロインのプロフィールを3()()出す。

 

「これらは……?」

 

「俺の手書きで悪いが、これからこのお店で働いてもらう人達の簡単なプロフィール的な物だ。」

 

「………えっ?」

 

明月さんから驚いた声が出る。うん。そうなるよね、正しい反応だと思う。取りあえず一枚一枚説明していこう。

 

「まず、最初にこの墨染 希って子なんだが、書いてある通り高嶺の年下の幼馴染だ。家事も高嶺の朝食を毎日作る位スキルも高い。」

 

清純派幼馴染。昔からの家族付き合いでよくお世話になっておりご両親公認。毎朝ご飯作りに行っているとか俺にもそんな幼馴染が…以下略。

 

「明るくて素直な性格ですか…、ご実家は神社なのですね。」

 

「だな。間違いなく戦力になる。基本的にフロアになると思うが、万が一キッチンが戦力不足になってもそちらをカバーできる一級品の人材。」

 

性格も明るく素直でノリも良く、要領も……あれ、良かったっけ?踊り覚えるのは結構……まぁいっか。

 

「あの、この下の方に書かれている備考欄とは…?」

 

「ああ、こっちはちょっと個人的な情報が含まれている事だから別で書いている。あまり人に話す事では無かったり、秘密にしたい事とかを書いてある。無闇に地雷を踏まない為の情報だな。」

 

がっつり個人情報です。ほんとの個人的な情報です。知っているのがおかしいレベルで。

 

突っ込まれるかと思ったが、思いのほか紙の方へ意識を向けていた。

 

「…澤田さん、これは本当なのでしょうか?」

 

明月さんが指差す先を見てみると、墨染さんが霊感持ちと書いている欄を指していた。

 

「ああ、それか?本当だ。マジもんの霊感持ちだ。」

 

神社の一人娘で霊感持ちとか由緒正しき血統って感じがするよな……。

 

「それと、この下の“???”と書いているのは……?」

 

おや、やはりそこは見逃さないか。

 

???(それ)はトップシークレットって感じだな。話すことは出来ないが、とある問題があって、もしかしたらそういう未来が来るかもしれないので一応枠だけを書いている。」

 

要素として出てくるのは個別に入ってからだし今は必要ないだろう。もしくは……、舞の人が来れないなどの異常事態が起きた時とか?

 

「今は話す事は出来ない…という事でしょうか?」

 

「すまんが、そうなる。必要になったら話すからそれまでは無視してくれていい。」

 

「………分かりました。」

 

こちらが話さないと分かったからか、無理に深堀はせずに引き下がってくれたようだな。……さて、一人目はこの辺にして次に行こう。

 

「次は2枚目のこの子、火打谷 愛衣って子なのだが……、この子は笑顔がとても眩しい子で、場を明るくしてくれるムードメーカー的存在だな。」

 

後輩キャラで、元水泳部という理由で褐色系。目のせいで片目を隠しているという若干中二病気味要素。雰囲気的にサバっとしているかと思えば、結構繊細で撃たれ弱い。しかも可愛い物好きでそれをバレない様に隠しているという……っ!まぁ、高嶺にあっさりバレるのだけど。主人公補正で強制イベントだな。うん。女子校だったからか、エロい事に興味津々で自分からその話題を出しておきながら恥ずかしくて撃沈する……けどやはり興味津々という属性を盛りに盛ったヒロインです。最高。

 

「とっても可愛らしい人みたいですね。」

 

色々考えたが、その一言で十分だな。うむ。

 

さっきと同じように欄を見ていく。

 

「あの…この子も“???”と書いているのですが……?」

 

「そうだな…。その子の場合結構難しい問題でもあるのだが……、これについては俺の方で様子は見ておこうかと思う。何か問題が起きれば、頼らせてもらう事になるが、その時は宜しく頼む。」

 

これも個別ルートで詳しく出てくるが……何かの拍子で表面化する可能性もあるから気にかけておこう。

 

「最後に3枚目の女性、汐山 涼音って人だ。この人はお店の主戦力となる人だな。」

 

原作ではサブヒロイン扱いで個別も短く、物語の根源などには関りを持たない。まぁ、この人の場合、落ち込んでいる今が一番の難所だし共通では持ち直しているから仕方ないんだが……。が、メインに引けを取らないくらいのキャラだと思っている。サブなのが惜しいぐらい…。もっとこう、個別が長くても良かったんじゃないだろうか?高嶺を励ますシーンとか年上という立ち位置からの助言。あれには心打たれた。姿はあれだけど、しっかりと自分の信念を持った大人の女性だと認識するくらいには凄かったと思う。最高。

 

「澤田さん、この女性は。」

 

「現時点ではまだ大丈夫のはず。何もしなくても明後日には高嶺が訪ねに行くことになるけど、念のために明日辺りにでも一度様子を見てこようかと思う。」

 

3つめの項目は死神として見過ごせないのだろう。まだ大丈夫とは思うが、何があるか分からないしな。一応確認だけはしておこう。

 

「今はどのくらいの症状で……?」

 

「他から見て、かなり落ち込んでいて気力があまり無い……位に見えていたと思う。でも反応も受け答えもちゃんと出来るから今の所は最悪にはなってはいないから安心してくれ。」

 

「これが取りあえずの話だが、まずはミカドさんに女性3人分の書類とかロッカーなどの場所の準備をお願いしたい。四季さんに何か聞かれたら俺が言っていたと言ってくれ。」

 

これも四季さんが信用してもらうための行動とか言っておけば何とか丸め込めるだろう。

 

「そういえば…今日ナツメさんにも話をされたのですか?」

 

「したんだけど当然信じてはいなかったからな、要監視中になったわけ。」

 

あれだけで信用するとか思っていなかったから良いけど……。

 

「なるほど、それでオムライスの事を当てていたのですね。」

 

「そういうこと、それはこれから何とかしていく。目下は高嶺父に色々指摘されるから、それについて改善してく事になる。」

 

「色々あるが、先にしていくのはアルバイトの募集と、お店のメニューの改善だな。」

 

頭で考えている内容を口に出しながら書いていく。この二つは直ぐに取り掛かる事になるはず。

 

「澤田さん、結構速筆なのですね。」

 

「ん?そうか?」

 

俺が紙に書いている速さが気になるらしい。

 

「口に出しながら同じぐらいの速度で書かれていますから、かなり早いと思いますが…。」

 

「あまり気にしてなかったが……まぁ、そうする必要があったというか、自然と身に付いた感じだな。」

 

任務……というか仕事ではすることが多く、その報告も多数あった。しかも電子では危険という事で手書きで出す必要があった。それを必死に書いている最中に次のが転がり込んでくる……とかも当たり前にあったなぁ……。慣れればそれなりに時間は作れたが、最初は腱鞘炎になるんじゃないかと不安になったもんだ。

 

「すみません。もしかしてじゃなくて、嫌な記憶を思い出させてしまったようで……。」

 

「ああ、いや、気にしないでくれ。ただ昔を思い出して懐かしんでいただけだから。」

 

どうやら、嫌な記憶を思い出していると思われた様だ。いや、そうと言われればその通りなんだが。

 

止まった手を再び動かし、追加していくメニューの案を思い出せる限り書いていく。

 

紅茶

・ダージリン

・アールグレイ

・アッサム

 

コーヒー

・ブレンド

・アメリカン

・モカ

・キリマンジャロ

・グアテマラ

・コロンビア

 

一品

・オムライス(半熟)

・オムレツ風カルボナーラ

・BLTサンド

・卵サンド

・カプレーゼ風

 

デザート

・チーズケーキ

・ザッハトルテ

・イチゴのタルト

 

 

うーむ。パスタ系はもう少しあった気が……、燻製版は個別ルートでの料理だったよな。紅茶とコーヒーのバランス悪いしこっちは後で数を調整しよう。

 

デザートに関してはもっと種類とかあったな、季節ごととかクリスマスの限定とか……、これに関しては涼音さんが来てからにしておこう。

 

「と、まぁ、今の所はこんなもんか。いきなりメニューが多くなって大変だが、少しずつ作れるのを増やしていきたいと考えている。デザートについては、俺はそこまで詳しくは無いから……プロフェッショナルが来てから詰めていきたいと思う、が……明月さん、今の話聞いてた?」

 

視線は紙に向け、一見俺の話を聞いている様に見えるが……これは考え事でここに心あらず状態に思われる。

 

「え?、あっ!すみません、聞いていませんでした!」

 

やはり聞いていなかった様だ。

 

「見間違いじゃなければ、何か思い悩んでいた様に見えたけど、気になる事でもあった?」

 

「ああ、いえ、考え事をしていただけですので大丈夫です。」

 

こちらの質問に考え事をしていただけ、と返してきたが、見る感じ話す気は無いのだろう。

 

「……了解。」

 

ここは無理に聞かず、スルーしておこう。話したくなれば向こうから話してくれるはず。

 

「じゃあ、最後に明日の流れを話して終わりとするか。」

 

明日の流れをなるべく細かく思い出しながら紙に書いていく。

 

「ええっと……まず明日高嶺父が来るのだが……午前中の、そんなに早くない時間帯の筈。詳しい時間までは分からないけど、朝食を摂った後で、店に来た時に四季さんが高嶺におはようと言っていたからそこまで遅い時間では無いとは……思う。多分。」

 

確か朝飯は食べていたはず。高嶺を目覚めのキッスで起こしに行っていたし……。

 

「んで、店に着くと、メニューの味の確認をするために幾つか頼むのだけど、コーヒー、サンドイッチを各種類とオムライス…?後は食後に紅茶を……これはアールグレイだな。」

 

サンドイッチはそれぞれで、オムライスも食べていたと思う。食後にアールグレイは覚えている。四季さんが淹れたものだしな。そえば……。

 

「あ、念のために確認なんだが、胃薬って置いている?結構な量食べてるから……胃が、な?」

 

「多分ですが、置いてあったと思いますよ?」

 

歳という事もあり食べ過ぎで胃もたれしてしまい、ミカドさんが胃薬を持っていくシーンもあったな。問題は無さそうだが。

 

「その後にさっき言った様に色々指摘を食らうから……、それらの改善を皆で話し合おうってのが明日の流れになるはず。」

 

その後に、インスト映えやらSNSやら話を広げていくはず。明月さんは付いていけてなかったけど……。そこが可愛いポイントでもあるか。“それな。そーしゃるねっとわーくさーびすな。”とか最高だと思う。……っと、今は明日の話だな。

 

「今言えるのはこのくらいか。俺の方は高嶺父が味の確認している間に、この女性の蝶の様子を確認しに行こうと思う。」

 

「先ほど話していた方ですね、分かりました。でも、無闇に蝶に触らない様にして下さいね?」

 

明日の事で明月さんから先に釘を刺される。

 

「そこはちゃんと理解しているつもり。多分集まっている数も多いと思うからな。」

 

「この前みたいに興味本位で触っては駄目ですからね?幾ら澤田さんでも何かしら影響は受けてしまう可能性があります。」

 

前科持ちだからか、念を押してくる。

 

「確かに、自己嫌悪とか感じたくないから極力触らない様にしておく。………他なら楽なんだけどなぁ。」

 

絶対触らないとは言わない。明日触る予定なので、あくまで極力と言っておく。

 

でもまぁ……、確かに自己嫌悪は嫌だな。他の恨みや妬みとかの怒りなら楽だけど、自分も陥った事があるのはなるべく共感したくはないな。

 

嫌な記憶を思い出したため、残っていたコーヒーを一気飲み干して席を立つ。

 

「それじゃあ、そろそろお暇しようかな。コーヒーごちそうさま、美味しかった。」

 

「お粗末様です。もう帰られますか?」

 

「そうするよ、そろそろミカドさんが帰って来てもおかしくないし、お邪魔になるかと思うから。」

 

それに帰ってからやりたい事もあるしな。早めに寝て色々話しておきたいし。

 

「あの、こちらの紙は一旦私の方で預かっても良いですか……?」

 

話す内容を考えていると、明月さんからプロフィールの紙が欲しいと言われる。

 

「ん?ああ、了解。ミカドさんに説明する時にあると分かりやすいし持って行って大丈夫。ただ、他の人には見られない様に気を付けて欲しい。」

 

もし見られたらいい訳が利かないからな……本人とかには以ての外。

 

「はい。重々承知しています。」

 

「ならおっけい。」

 

ま、彼女なら大丈夫だろう。多分。最悪、()()()1()()を見られなければ良いだろう。

 

紙を明月さんに預け、店を出る。すると、向こうからミカドさんがこっちに向かってくるのが見えた。

 

「澤田達也か、話し合いは終わったのか?」

 

「おかげさまで、問題なく終わったよ。詳しい話は明月さんから聞いてくれ。」

 

「……分かった。後で聞いておこう。」

 

若干表情が硬く見える。発する声も少し沈んでいる様に聞こえるが……あまり良い報告では無かったみたいだな。

 

「それじゃあ、お疲れさん。また明日。」

 

この後二人で情報のすり合わせがあるのだろうと考え、早めに切り上げようとし、帰ると告げる。

 

「はい、お疲れさまでした。ゆっくり休んで下さい。」

 

「うむ、ご苦労であった。また明日もよろしく頼む。」

 

二人からの言葉を聞き、部屋へ帰る。シャワーを浴び、夕食を済ませる。今日は高嶺に謎の対抗心を出してオムライスにした、お供は御前の紅茶だ。時間帯はすっかり午後だけど。

 

「さてと……。」

 

寝る為にベットに入り、手を翳す。すると、手から1頭の蝶が出てくる。

 

「明日の為に話し合いたいから、今日はよろしく頼む。」

 

あの薄暗い世界へ行ける様に事前に話しかけておく。蝶はそれに反応したのか、俺の肩部分に留まり溶ける様に消えていった。多分これで大丈夫だろう。

 

明日の事で手助けが必要になる可能性を考慮しておいた方が良いだろう。

 

夢の中のせいで明日に疲れが出ない様にと瞼を閉じ、早めに寝るのであった。





原作でヒロインそれぞれちゃんとした魅力があって最高でした。普通なら好きと、そうでもないのに分かれると思うのですが、皆可愛いで収まるのは制作陣の力を感じました。ありがとうございます。

次回はミカドさん視点で明月さんとの報告会をしようかと思います。
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