前回やらかしたシーンの続きからです。
夜道で出くわしたら目も合わさずに去って行きますね。完全に変な人です。
やらかしてしまったぁぁぁぁあああ!
と今すぐにでも泣き叫びたいところだが、まずはこの場面を無事に乗り越えなければならない。
前に居る彼女は未だに驚いたままでこちらを見ている。あまりにも突然の事で脳の処理が追いついていない可能性がある。それならまだ混乱している内に畳みかければ乗り切れるか?
前提として蝶が見えていなかったとして話さなければならない。そうなると……夜だし虫が飛んでいた……で誤魔化しきれるのか?さっき自分で否定してしまった事だぞ?
……いや、まてよ。目の前の彼女は蝶……本人にとってはもやもやと言っていたな。それが見えることを隠しているし隠したいはずだ。普通の人には見えないものだからな。此方は虫が飛んでいたので払ったと言ったら向こうもそれで納得するのでは?こちらがそう言っているのに強引に違うとは言えないだろう。おかしな人だと思われてしまうのを恐れて問い詰めようとはしないはず。案外気弱だしな。それに…割とアホな子だ。
あれ?何とかなりそうな気がしてきた。うん、行けると信じて演技しなければ。不審に思われることが無いように…。
「ええと…、こんばんは?どうかされたのですか、もしかして驚かせてしまいましたか?」
「あ、いえっ、その…今、何をしたのかと思って……。」
「ああ、すみません、虫が飛んでいて……、少し邪魔だったので手で思いっきり払ってしまいました。そのせいで驚かせてしまったのなら申し訳ない。」
なるべく腰は低めに、申し訳なさそうに謝罪を入れる。
「ああっ、いえっ、大丈夫です。……確かに驚いてしまいましたけど。」
こちらが謝ると、両手を出し、首をぶんぶんと振って否定してくる。
「驚いてしまわれても仕方ないです。こんな薄暗い夜道ですし……。」
「こっちこそ変な目を向けてなんか……すいませんでした。」
こちらに謝りながら、背を向けて帰っていく。彼女の姿が完全に見えなくなったのを確認してから盛大にため息が出る。
「はぁぁあ……緊張した……てか、これ大丈夫なんだろうか。変な第一印象を与えてしまった気が……。」
どのみち、明日のは顔を合わせる事にはなるが、不審な目で見られたのは間違いない。後で何とか修正出来れば良いんだけど。
「………帰ろ。」
明月さんには明日の朝に報告しよう。いや、報告するのが怖いとかでは無くて、もう夜も遅いし、夜更かしは女性の天敵だしな。そう言う事にしよう。
誰に対してか分からない言い訳をして、家に帰った。
「という事なんだ、申し訳ない。」
次の日の午前中、店に行き出迎えてくれた明月さんに昨夜の出来事を早速報告した。
「なるほど、仰る事は分かりました。」
俺の報告の最中も口を挟まず、黙々と聞いていたのだが終わった後も特に文句などは出てこなかった。
「そもそも私にはどう違ったなど分かりようがありませんので……、昨日澤田さんが先に出会ってしまった事でどの様な影響が出てくるのですか?」
「いや、正直それは分からない。問題無いようには努力するが、間違いなく第一印象は変な目で見られたとは思う。」
「不審には思われたかもしれないのは確かですが……。」
俺の言葉にあまり腑に落ちないような表情をしている。
「第一印象って結構大事だと思うんだよ、それって結構後々まで引きずる場合多いからさ。」
もし今日店に来た時に俺が居たせいで働くのやっぱり止めますとか言われたりしたら……死にたくなるなこれは。
「まぁ、確かにそうですね……、私も澤田さんの第一印象は私のマントを巻いた全裸の人……いえ、葉っぱ一枚が先でしたね?にひ。」
「それについては勘弁して欲しい、全裸よりはましだと考えた結果だったんだ。」
「でも、それは最初だけですよ?今はそのような印象は持っていませんし、私もミカドさんも助けられていますから、感謝しています。ナツメさんはどうか分かりませんが……。」
「四季さんはどうだろうな……、時々疑いの目を向けてくる時があるんだけどな。これは自業自得か。」
「あはは……それは否定できませんね。………つまりですね、私やミカドさんが澤田さんと知り合ってからまだ一月程度です、この短い期間でも印象というのは大きく変わります。先ほどの子も一緒に働けばきっと悪い印象は払拭できます。澤田さんをこの一ヶ月だけですが、見て来た私が保証しましょう。」
目の前の明月さんは、諭すように、それでかつ自信ありげに言い切る。
なるほどなぁ……。高嶺が感じたのはこんな感覚だったのだろうか?若干違うかもしれないが。こういう一面を見るとやはり長年生きていた貫禄というのがあるのだと実感する。……昨日のSNSを知ったかぶりしていた人と同一人物とは思えないな。いや、そのギャップが最高なんだが。
「あー、その、まさか慰めの言葉を貰えるとは思わなかったから……ありがとうで良いのか?」
「どういたしまして。もしかして怒られるとか思っていたんですか?」
「小言の一つ位は覚悟していたんだが。」
「まさか、そのくらいで怒ったりしませんよ?わざとではありませんし。」
それはわざとしたわけではないが……、寛容な人で助かる。
「それに、お礼はきちんと言った方が良いですよ?感謝をしっかりと相手に伝えることは大事ですから。」
「いや、なんていうか、あんまり言われた事が無かった類の言葉だったから反応に困ってしまった。」
「え?感謝を示しただけなのですが……、もしかして、あまりされたこと無かったのですか?」
「ああ、いや、感謝くらい流石にされたことはある。では無くて、明月さんの言い方に……なんていうか、包容力というか、安心させるような気持ちが籠っていた様に感じたから。」
「………澤田さんはそれが初めてでしたので、反応に困ったと?」
「あー、初めてというのは違うが……いや、実際に目の当たりにしたのはこれが初めてか?」
画面の向こう越しでは幾らでも見たが、自分に向けられるという点では初めてである事は間違い無いな。
「っ、………そうですか。」
なんだが、俺の言葉にどう返したら良いのか迷っている様に見える。どうやら共感は得れなかったご様子。
「俺の話は置いといて、本題にもどろうか。」
流石に話題が続かなくなって来たで話を切り替える。
「と言っても明月さんにしてもらいたい事は蝶の回収くらいなんだけどな。」
「アルバイト希望の方が来られたのと入れ違いでしたね。」
「そうそう、渡した紙の二枚目の子だな。その次の日には高嶺が幼馴染の子を連れてくるはずだ。」
「こんなにも早く希望者が集まるのですね。」
「まぁな、だからミカドさんに色々準備をお願いしておきたかった。急に増えたら大変だと思う。」
ゲームの展開上ヒロインが序盤で集まるのは仕方ない。だからこそこの速さで希望者が出てくるのだし……。
「やる事は沢山あるがなるべく混乱しない様に一つ一つ片付けられるようにしていくからすまんが協力して欲しい。」
先に先にと片付けておくのなら、四季さんにユニフォームの件を話すのもしておいた方が良いし、マニュアル作成とかもしておかないといけない。
「任せて下さい。ですので、一人で無理はしない様にして下さいね。」
無理はしなくても物語は進むからなぁ……。意味があるか分からんが、少しでも楽に出来るように頑張るか。
明月さんと話した後、夕方まで時間があったので奥の部屋を借りて接客などのマニュアルを作り始めた。
「今時ネットで形作れるのだから楽なもんだな……。」
基本的な接客の仕方や、来店時から店を出ていくまでの対応、緊急時の対応など、他に足り無さそうなのはネットで漁り追加していく。
「大体だが……、こんなもんか?」
形から整えるのは重要。上を目指すなら、他にも覚えたり意識した方が良い点は幾らでもあるが慣れてからでも大丈夫だろう。まずは一定のレベルまで育つのと、全員が統一出来る事、その為のマニュアル。
「進捗はどうだ?」
扉が開く音に振り返ると、ミカドさんが入ってくる。
「丁度良かった、今しがた形は作った。まだ変更や修正は必要だけど取りあえずはこんなもんかと思う。」
出来上がった紙をミカドさんに渡す。
「思ったよりしっかりと出来上がっているのだな……、これはお前が?」
「足りてなかった部分はネットから拾った。」
「私からはいう事は特に無いな。後で他の者たちにも聞いておくといい。」
「了解、あと、開くにあたって仕入れの発注やら納品、保健所とかやる事沢山あるが……、そこらへんは任せても大丈夫?と言っても特に出来る事ないけど。」
「心配せずともその辺りは任せておけ、吾輩が出た方がスムーズに事が進められるからな。」
ですよねー、大学生の四季さんとかが出ると何かと不安に思われそう。
「分かった。そのかわり表の部分を頑張らせてもらう。」
「うむ、任せた。高嶺昂晴にも、目先の問題に集中出来るようにサポートしてやってくれ。」
「高嶺に何かあったのか?」
確か今日はマンションで、涼音さんの状況を確認して……、お店に戻ってきたはず。
「知っているかとは思うが、奴と同じマンションに住んでいる者の事でだ。」
「あー、自分が引き寄せて影響を受けてしまったのでは?と気にしてしまった件か。」
「吾輩の方から否定はしておいたがな。気にして身動きが取れなくなってしまっては元も子もない。」
「逆にその蝶に影響受ける可能性があるから気を付けないといけないのにな……。」
「そうだな、それは高嶺昂晴だけに限らずだがな。」
ミカドさんから釘を刺すような視線を向けられる。
「ちゃんと分かってる。明月さんにも言われたから気を付けている。」
「なら良いが……。」
というか、俺が奥で作業している間に表では着々とイベントが進んでいたのか……、いや立ち会う必要とか皆無なんだが……。
「ってなると……後は四季さんが来てからか。」
「ん?何がだ。」
「今日新しくアルバイト希望の子が来る話。」
「ああ、栞那から聞いている。確か、火打谷愛衣だったか?」
「そう、その子。特に問題は無いから採用したいと考えているんだけど。」
「貴様がそういうなら特に無い、それにウェイトレスの事は四季ナツメらに任せた方がやりやすいだろう。」
「ありがとう。じゃあそれまで適当に作業しておく。」
「パソコンを使うか?私も作っておきたいのがあるので使いたいのだが。」
「いや、大丈夫。調べ物が主だし。」
ミカドさんに席を譲り、お互いしたい事をしていく。暫くの間部屋にはキーボードの音が響く。
「あ、閣下に澤田君。おはよう。」
扉の開く音と共に今度は四季さんが入ってくる。
「ん?ああ、おはよう。」
「四季ナツメか、おはよう。」
挨拶を交わし、四季さんが着替えるので席を立ち部屋を出て、フロアに向かう。ミカドさんは用事があるという事でそのまま出かけて行った。表には高嶺と明月さんの二人が居た。どうやら四季さんが着替えて来るのを待っているらしい。
「そういえば、昨日話していた幼馴染の子はどうなった?」
「あの後会いに行って色々相談してみたんだが、パンケーキなどのお菓子作りは難しそうだ。けどアルバイトに関しては働いてみたいって言っていた。」
「そうなのか、でもバイト希望してくれるのは物凄く助かるな。相手が良ければ面接とかしてみるのも手かもな。」
「今度聞いてみる。それと、本格的な人探していて友人の姉に条件が合う人が居たんだけど……。」
駄目だったのが少し言いづらそうなのでこちらから切り出す。
「仕事を辞めた関係で落ち込んでそれどころじゃないから駄目だったらしいな、ミカドさんからさっき聞いた。」
「ああ…、結構落ち込んでて、とても話せる感じに見えなかったからまだ言ってすらいない。」
「正解だと思うぞ、仕事辞めて病んでるのにその原因の話とか誰だって嫌だしな。今は様子見て少しで回復してもらった方が良い。」
俺でも同じ立場なら聞きたくもない話だし。
「だから取りあえずは昨日の続きを話した方が良いかと思う。」
「それで四季さんを待っている感じか、了解。」
「ごめん、お待たせ。」
待とうと思ったが、もう戻って来た。思ったより簡単に着れる物なんだろうか?前側は確かボタン式だったか。
「いや、全然待って無い。むしろ早くてビックリしたぐらいだ。」
「待たせないように急いだから。」
急いで戻って来た四季さんと入れ替わるように、また奥の部屋に戻ろうとする。
「あれ、澤田さんはご一緒されないのですか?」
「すまん、奥でしておきたい事があるから少しの間離れる。何かあったら呼んでほしい。」
そそくさと奥へと引っ込む。このまま参加していたら昨日会った例の少女が来てしまうからな。俺が居る事で変な印象を持たれたく無いのだよ……。顔合わせるのは面接終わった後にしたい。それなら逃げられないからな。
表では今から店をどう変えるかの話し合いが行われるはず。メニュー数を増やして選択の楽しみやそれを共有できる楽しさで客を呼ぶとか何とか。ぼっちがどうとかも話していたなそういえば。基本的に1人で行動する四季さん、死神として人付き合いが無かった明月さん、高嶺もボッチとか言っていたが……あれ?普通に男友達居たよな?飲みにとか行っていたし、講義の席でコントみたいなノリも繰り広げていたし……。ぼっちって言うの嘘なのではないのか?でも自分ではぼっちと認識していた訳で、実は友達では……いやこれ以上は考えるのは止めておこう。
因みに言えば俺もぼっちに入るであろうか?この世界では知り合いはおろか血縁関係すら居ない。もはやぼっちではなくて天涯孤独って言うべきか……。
くだらない事を考えながらパソコンを開く。作ったマニュアルの他にも在庫の管理などのも必要になる可能性がある。確か帳簿などの金銭類はミカドさんがやってたな……。開店に向けての広告はチラシと現物配布してたからまだ要らないな。ホームページとかも作らないとな。SNSもやってたよな……?オープニングムービーで流れていたし……。あと、この店って専用の固定電話ってあったか?クリスマスに予約注文してたし契約はしていたはず、そこら辺もまとめて相談しておくか。
必要そうな件をメモに書いていく。相談が必要そうな事は誰に対して聞くかで一応分けておく。後で見やすいからな。
他には……まだ先だけど店を改装する時に設置した家電類とかだな。何があったか原作で書かれていたっけ?なんか最後にシーリングファンを付けていたのは覚えているが……。思い出せ、あの二つの背景のビフォーアフターを……。
「まずは……奥にソファがあったよな?それから客席を区切るやつ……。」
名前はなんていうか知らないが席4つで一区切りみたいな感覚だった。壁の絵は高嶺父の譲りもんだとして……分かるのはこんなもんか。後は席一杯の客のイメージしか思い浮かばんな。んで、奥の席には前作のヒロイン二人組が居たな……。あくまで背景としてなのか実はこの世界でもお目にかかれるのか。でもこの世界では前作にあったアストラル能力なんて摩訶不思議は見た事も聞いた事も無い。いや死神とかケット・シー、神様とかいう存在も充分に摩訶不思議か。
本題から脱線し始めた辺りで扉が開く。
「澤田君、ちょっと来てほしいのだけど……って、今大丈夫?」
「ん?全然大丈夫だが、どうした?まさかバイト募集の子でも来たのか?」
「そのまさか。少し前に来て軽く面接を終えた所。私や高嶺君は雇っても良いかなと思っているけど一応聞いておこうかなって。」
そのまさかであった。もう来たのか、という事は明月さんは蝶の回収に向かったという事だな。『特技:ピッキング』が火を噴くな。通報しました。
「じゃあ採用という事で問題無しだな。」
「え、いいの?特にそっちの意見とかも聞かなくて。」
「俺は端から採用で行く気だったからな。」
「取り敢えず人数が欲しかったとか?」
「いやいや同じ職場で働く以上人柄を重視しますとも。その方が働きやすいだろ?」
「なら尚更会わないといけないじゃない。それとも私や高嶺君の判断に任せた?」
「ーーー火打谷愛衣。」
「……え?」
「今アルバイト募集に来ている子の名前。合ってるか?」
「え、あ、うん。合ってるけど……もしかして知り合いの子?」
「いやいやまさか。俺みたいな人間にあんな明るくて笑顔が眩しすぎる子が知り合いに居る訳ないだろ?そもそもこの世界に生まれてからの知り合いは今の所このお店に居るメンバーぐらいだしな。」
後は汐山弟と……あのベンチでアイスをぶちまけて泣いていたから手品を見せた少女ぐらいだろう。
「いやそれ、自分で言うのはどうかと思うのだけど……。」
事実だしな。
「昨日表に張った募集の紙を見て来た。アルバイト経験は無いけど学生だから休日も都合付くし、やる気もある。お店のムードメーカーになりそうだし雇わない理由が無いな。」
「いや、なんでそれを知っているの?盗み聞き?……ちょっとキモイ。」
キモイ頂きました!ありがとうございます。励みになります。
「してないしてない。ずっとここで座ってたぞ?」
「じゃあなんで知っているの?何、前に言っていた占いの話?」
「そう、四季さんの信頼を勝ち取るために言ってみたんだが……?」
「今それが出て来るんだ……。それで?今度はどんな未来が見えるの?自称占い師さん。」
「そうだな……。さっき言っていた火打谷さんが来てから一通りの会話なら何となく?」
「へぇ……。じゃあ私が今から聞く事に答えてもらえる?」
「分かる範囲なら。」
少し楽しそうな顔を見せた四季さんの期待に添えられるようにプレイ時の記憶を総動員する。言っておくが……負ける気はしない。
「じゃあ早速、面接に来た火打谷さんは私を見て第一声になんて言ったでしょうか?」
「確か、綺麗なメイドって感動していたはず。どう?」
店に入るや否や本物みたいなメイドが出迎えたこと感動を覚えていたはず。
「え?あ、当たっている……、正解……。」
こちらの答えに驚いている様子。これはあれか?仮に火打谷さんとの会話を盗み聞きしたとしても、途中から聞いているのだと踏んで一番最初のやり取りは聞けてないとか考えての質問だったのか?
「それなら良かった。」
「えっと、次。えーと……。」
第一問目から目論見が外れたからか、慌てて取り繕っている。多分頭の中混乱状態かもしれない……それかそもそも二問目を想定してなかったか。
「えっと、そうね……。さっき、澤田君は火打谷さんの事を学生って言っていたけど、どこの学校までか答えられる?」
質問が思いついたのか、挑発するような顔でこちらに聞いてくる。その顔最高です。
ていうかこれ、引っ掛けだろ。確か学校じゃなくて学院だったはず。咄嗟に思いついたかのように見せかけてエグイ質問を出してくる。
「確か……、糸を巻くの巻に、機械の機で、
わざわざ学院を強めに協調させる。学年は墨染希と同じ年だったな。クラスと出席番号まで言っていた気がするが……。A組だったような……。
「ちっ……、引っ掛からなかったか…。」
「中々間違えそうな質問を直ぐに思いつく辺り……、過去に間違った経験が?」
「………。」
俺の質問に恥ずかしそうに目を逸らす。適当に言ったつもりだったが、どうやら的中だったご様子で。
「いや…適当に言ったんだが、なんかごめん。」
「……うるさい。じゃあっ、これは答えられる?」
羞恥心を払うように睨むような表情で次の質問を出す。
「火打谷さんの得意料理。」
「得意料理?」
「そう、高嶺君が聞いたんだけど、火打谷さんは何が得意と言ったか。」
え、彼女得意料理とかあったのか!?どう見ても出来ない系じゃん。料理実習でも危ないからと包丁すら握らせてもらえなかったじゃん。……カップ麺とか?いや料理じゃねぇな。あったか?燻製の動画見ている記憶しかねぇわ。
「どう?流石に答えられない?」
「いや、答えられないと言われればそうなんだが……、得意料理だよな?火打谷さん、料理苦手とか言って無かったか?キッチンは駄目だからフロア担当とかになると思うんだけど……?まぁ、紅茶やコーヒーの知識も無いから一から教える必要があるけどなぁ……。うーむ。」
そのためにマニュアルを作らないとなぁ……。これが終わったら四季さんにも確認してもらって手直しが必要かどうか確かめないと。
「すまん、四季さ……」
マニュアル確認を聞く前に、答えが分からないと回答するために顔を上げると、驚いた様な、それで若干悔しそうな顔が目に入る。
「あ、あの?結局分からなかったのだが……?何が得意料理だった?」
「あ…、いや、それが……無いの。」
「え、無い?」
「うん。彼女、料理苦手だから得意料理とか無い。だから……澤田君の正解。」
うわぁ……、更に引っ掛けをしてきたのかこの人は。道理で分からないわけだよ全く。キャラ的にあれで料理得意ですとか言われた日には……それはそれで最高ですがっ!ご飯を作ってくれる後輩キャラ!……いや、幼馴染と被るから駄目だな。ポジションの喰い合いは良くない。ただでさえ褐色肌に水泳の水着跡あり、ムードメーカー的明るい後輩で、可愛いの好きからのむっつりスケベで若干アホな子とかいう盛りすぎでは?と一度は考える程性癖特盛セットなのに……料理上手まで獲得とか戦争が起きるな。
「なるほど、一度引っ掛けをすれば二回目の警戒心は少なくなったところにわざとか……狡猾だなぁ。目論見が外れた訳だが。」
「………。」
俺の言葉に恥ずかしそうにどんどん顔を伏せていく。なんか変にハマってしまいそうだな、これ。
「まぁ、試してくれと言ったのは俺だしな。非難する気は無いから安心してくれ。煽りはするけどな。」
「うっわ……、性格わる。」
俺の揶揄う様な声に反応して顔を上げ、ウザそうな表情をしているがまだ顔を赤いままです。ごちそうさまです。
今すぐスマホで写真を撮りたいなど考えていると、再び部屋のドアが開く。
「随分遅いけど、何かあった……ってどうかしたのか?二人して向き合って。」
一向に帰って来ない四季さんを不思議に思ったのか、高嶺が確認しに来たことによって今回のゲームは幕を閉じた。
ドエロ谷愛衣との顔合わせまで持ちませんでした()
文字数が多いのでここで一旦区切ろうかと……。次回こそは対面させます。