明月栞那視点→主人公視点です。
今回で原作のchapter1が終わりとなります。
「それでは、高嶺さんまた明日です。」
「ああ、また明日。」
蝶々を見送り終え、高嶺さんと明日から早速オムライスを作る練習をしていく事になりました。
「私も、頑張らないとですね……。」
きっと高嶺さんなら失敗をしても諦めずに何度も練習を重ね上手になって行くのでしょう。それなら私も足を引っ張らない様にフロア……ウェイトレスの仕事を頑張らないといけませんね。お互いに保証してしまった事ですし。
『出来るさ、明月さんなら。俺が保証する。』
『明月さんが可愛いのも、笑顔が魅力的なのも、全部本心だ。だから大丈夫だって。』
「ぅう……あんなこと言われたら頑張るしかないですよぉ……。」
あんな卑怯な返しをされたら先に言った私が弱音を吐くわけにはいきませんし。
「頑張るのは……お互いに、ですね。」
少し熱くなってしまった顔に手で扇ぎながら、お店の戸締り確認をする。
「……おや?まだ奥の部屋が電気付いていますね。」
消し忘れかと思い、部屋のドアを開ける。
「澤田さん?まだ残られていたのですか?」
中を見ると、ミカドさんがいつも使っている……パソコン?を何やら操作している様です。
「お、明月さんか、お疲れ様。無事高嶺と一緒に見送り終わった?」
機械に顔を向けたままこちらに対して返事をする。
「はい、無事終わりましたよ?」
「それは良かった。高嶺も明日から慌ただしい日々に突入だなぁ……。ごめん、ちょっと待ってくれ。」
カタカタと音が部屋に鳴り響き、最後にボタンを押すと一仕事を終えた様でこちらを向く。
「もしかして、お邪魔してしまいましたか?」
「いやいや、丁度一区切り付いたから気にしないでくれ。そういえば、蝶の方も大丈夫だった?」
「はい、そちらも滞りなく、無事全て捕まえることが出来ました。」
「これで取り敢えずは大丈夫そうだな……、後はパンケーキまで待つのみか?」
「パンケーキ?」
私の返事に安心してから、考えるように呟く声が聞き取れたが、澤田さんから出た言葉との繋がりが見えなかった為、つい聞き返した。
「ああ、すまん。こちらの話だからスルーしてくれ、また後で話すよ。」
どうやら、今日蝶を回収した女性の方……、確か汐山涼音さんでしたか、あの方関連の事みたいですね。パティシエをしていたとのお話でしたし……。
「まだ先の出来事……という事ですね?」
「……察しが良くて、凄く助かります。」
「流石に何となく察しますよ、澤田さんがその様におっしゃられた時は大抵話してくれませんし…。」
「あー…、それについては申し訳ない……。」
「ああっ、いえ!別に嫌味などじゃないですからっ、勘違いしないで下さい。まぁ……小言の一つや二つ言いたくなる時もありますが……。」
「でもっ、澤田さんも考えてそうしているのは理解していますから、気にしないで下さい。こっちは大丈夫ですから。」
私の言葉に申し訳なさそうに苦笑いをして目を逸らす。やっぱり話せない事に罪悪感を感じているのでしょう。
そんな澤田さんを見て、以前から気になっていた事を問いかける。
「澤田さん……、一つお聞きしたいのですが。」
「ん?どうかした?」
こちらが急に真面目な雰囲気をしたのを感じ取ったのか、不思議そうに私を見る。
「澤田さんは、今を楽しめていますか?」
「楽しい……?えっと、それはどういう意図での言葉?」
「私の思い違いなら良いのですが……。」
「澤田さんは今、これからこのお店で起こるであろう出来事が分かる……という事で間違い無いですよね?」
「……ああ、あくまで俺が視える範囲とかなり限定的だけど、一応。」
「聞いている感じではそれがかなりの精度で視えていると思われます。人の会話、動き……実際にどの様にかは分かりませんが……。」
「しかもそれらはその都度澤田さんが好きなタイミングで確認することが可能……で合っていますか?」
「まぁ……そういう感じで思って貰って……構わない……ぞ?」
澤田さんの反応を見た感じ、正確には違うが外れでもない……と言ったところでしょうか。
「この先に起こる未来も現時点から観測することがいつでも……出来てしまう、つまり、言ってしまえば澤田さん一人だけ答えを……知ってしまっています。」
「まぁ、ほんとに言ってしまえばだけど、そうなるな。」
「例えるなら、漫画や小説などの物語の結末、答え合わせを読む前から知ってることになっている訳です。」
「だな……、ああ、なるほどな。」
目の前の彼は、私が何を言おうとしているのか察した様に納得した声を出す。
「明月さんが言いたいのは、未来を知っている事で人生がつまらない物になっていないか心配と言うわけか。」
「……はい。」
「それでさっきの質問という事かぁ……。はは、なるほど。」
「逆に質問してすまんが、明月さんには俺が楽しく無さそうに見えたりしたのか?」
「え?……いえ、そう言うわけでは……。」
「ちゃんと言っておくけど、俺は今が楽しい、最の高だ。」
不敵な笑みでこちらを見る。
「明月さん、四季さん、墨染さん、火打谷さん、涼音さん、高嶺にミカドさんの皆と、このお店で一緒に働けることが何よりも楽しいし嬉しい。そしてみんなでこれからお店を開き、忙しくもあるけど楽しく、皆が笑って働いてる姿を見たいと思ってる。勿論、その先の結末もだけど……。」
「明月さんが言う通り、俺が話してきた内容は何度も見て来た。10回20回くらいは軽く……まぁ、はい。」
「それほど繰り返し……。必要だった、と言うわけですか。」
「あ、えっと……必要……そう言われると……あー。」
「澤田さん?」
「そう、必要だったっ、俺には必要でした。なのでその位見てもおかしくない、うんうん。」
「どうかされたのですか?」
慌てている様に見えますが……。
「何も問題は無い。だからこの話は終わりにしよう。」
「え、あ、はい。」
急に話を切り上げようとしていますが……何かあったのでしょうか。まぁ、気になった点は一応聞けましたが……うーん。
「それよりっ、これからの話をしよう、建設的なお話をだな?」
「……りょうかいです。分かりました。」
澤田さんが話されないのなら無理に聞き出す訳にも行きませんし、ここは従っておきましょうか。
その後、愛衣さんの時と同じ様に話し合い、夜も遅くなったという事で解散となりました。
「初めまして!墨染希です。白瀧学園の2年生です。こういう接客サービスのアルバイトは未経験ですが、一生懸命頑張ります。よろしくお願いします。」
高嶺が墨染さんを連れて来たので、いざ面接となり自己紹介が始まる。はきはきと気持ちいい声と笑顔で挨拶をする。
「採用。」
「ですね。」
「早っ!?」
四季さんと明月さんの即決に驚きを隠せない火打谷さんのツッコミが入る。
「火打谷さんの時も結構即決だったと思うけどな。」
「まぁ……その場で面接、その場で採用でしたしね。」
「あの、ありがたいですけど良いのですか……?本当にそこまで即決で……。しかも、マスターさんの意見を聞かないで……。」
困った様に墨染さんはミカドさんに視線を送る。
「マスターとは私の事か?」
「マスターじゃないんですか?てっきり一番偉い人かと……。」
「いや、私が一番偉いぞ、合っている。」
その偉いは貴族だから偉いとかの質問では無いんだけどな……。ミカドさんを責任者にしていた方が都合が良いのは間違っていないけどな。
その後、明月さんから始まり、俺含めて全員と自己紹介を交わす。
「やったね!希ちゃんと一緒に働けるなんて嬉しいよ。」
「私も嬉しい。頑張ろうね!」
同級生という事もあり仲良くきゃっきゃっと嬉しそうにしている。こういうのを見ると歳の差と言うか……年代を感じてしまうなぁ。
「さて、面接も済んだ事だし、これから忙しくなるな。」
「そうですね……、新しい人の為に研修などした方が良いのですかね?」
「一応接客とかのマニュアルは昨日で形は作ったから問題は無いとして……、他に何か追加要素あったりする?」
明月さんと話しながら、周囲に話を振る。
「そういえば、昂晴君。ユニフォームの話はしなくて良いの?」
「あ、そうだった。」
「ユニフォーム……?」
高嶺の発言に四季さんが一瞬こちらを見る。
「今四季さんが着ているのじゃなくてデザインを変えて、新しいユニフォームを作ったらどうかって、親父からの提案があったんだ。」
「澤田さん、これが昨日言っていた……。」
明月さんが小声でこちらに耳打ちで話しかけてくる。
「ああ、新ユニフォームだな。」
「残念ながら、まだオープン出来るか分からない。気が早いかもしれないけど話だけはしておこうかなってさ。」
四季さんの疑問に高嶺の説明が続く。
「それは……。」
悩むような仕草をしながら再びこちらに視線を送ってくる。それに対して、ふっ。っと笑みで返す。安心して一歩踏み出すと良いさ。
「むぅ……。分かった、お願いします。」
「良いのか?」
「うん。大家さんが認めてくれないのは、私の覚悟が足りないからなのかもしれない。」
「覚悟……?」
「お店をオープンさせる覚悟。昔のお店を再現しようとしているだけじゃ……いつまで経っても認めてもらえないかもしれない。」
「だから、決めた。」
「ちゃんとお店を営業させられるようにする。店内を明るくして、ユニフォームも変えて、メニューも決めて、仕入れる所も決めて話を通して……。」
「そういう、営業していくのに必要なことを。まだ許可が出てないから、今はある程度のところで止めていたけど、そういうのもちゃんと詰める。」
腹を括った様で、覚悟を決めた目で高嶺に宣言する。背水の陣で大家さんに無理やり許可を貰える位の気持ちで行こうって事だな。流石です。
「強引にオープンさせるのは流石にまずいだろ。」
「うるさい、揚げ足を取るな。それぐらいの気持ちってこと。」
「私も良いと思いますよ。いえ、むしろ、私もナツメさんに負けないような気持で頑張ります。」
「昂晴君昂晴君、どうしてナツメさんが覚悟を決めるの?マスターは御帝さんでしょ?」
「え?あー……それは……。」
事情の知らない墨染さんが不思議に思い高嶺に聞いているが、正直に答えるには行かないので何とか誤魔化そうとしている。
「……これで満足?」
二人のやり取りを見ていると、四季さんが隣に来て少し不服そうにつぶやく。
「お疲れさん。遂に、後に引けなくなったな?」
「昨日澤田君から聞いて、一人で色々考えた結果だから。こんなに沢山の人を巻き込んじゃったら流石に覚悟を決めるしかないかなって……。」
「うじうじとしている訳にはいかなくなった訳か。」
「うるさいな……。」
「これから様々な変化で慌ただしい日々を送ると思うが、必要な事があれば何でも言ってくれ。四季さんの頼みなら喜んで引き受けよう。」
「ありがと、こき使うから澤田君も覚悟しててね?」
「俺が覚悟しなきゃいけないのはそっちかぁ……。」
冗談を交わし、四季さんは高嶺達の輪に戻る。何とか今の所は順調……と思って良いのかもしれない。俺のミスがあったが、今の所火打谷さんからのアプローチが無いのでそのまま忘れてくれると助かるが……。
「これで吾輩の方も準備を進めて良いのだろう?」
「ミカドさんか……。すまないけど頼みます。」
「何、そちらの方は貴様らに任せるのでな、こちらは吾輩の方がスムーズに進む。」
「仕入れや、店のリフォームに必要な物資とか沢山あるがほんとに問題無いのか?」
確かにミカドさんの方が楽に進められるが……負担が多すぎると思う。
「余計な事は気にせんでいい。吾輩に任せて自らの事に集中しておけ。」
「承知、じゃあお願いする。」
「ああ、任せておけ。」
ミカドさんとの確認を終え、皆の方へ戻ろうとする。
「あー………それなら、身長体重、あとスリーサイズなんかも教えて欲しい。」
戻った瞬間、高嶺からの爆弾発言で場の空気が凍る。
「………は?」
四季さんからの冷たい眼差しと"何を言っているんだこいつ"の意味が込められた一言が放たれる。
あー、これはあれか、新ユニフォームの件か。唐突に言い出すから変態発言になったあれか。
「なるほどぉ……、確かに希さんのサイズは、中々お目にかかれるサイズじゃありません。同じ女でも気になります。」
高嶺の発言に乗っかる様に明月さんから台詞が出る。この疑問、私も同意です。
「確かに希ちゃん、昔から成長早かったけど……ちょっと見ない間に拍車が掛かったよね。」
「え?そ、そう……?いや、そんな凝視されると困るんだけど……。」
確かに女性陣の中では一番であろう。昔からとはそこ詳しく……。よく考えたら、俺にとっては九月からしかこの世界を知らないけど、皆には当然だけど昔からがあったんだよな。
「そんなドストレートにセクハラだなんて……高嶺さん、思ったより大胆なんですね、にひひ。」
「この店を手伝って欲しければ、貴様のスリーサイズを教えるのだー!的な脅し……鬼畜先輩だ。」
「サイテー。」
「ちょっと待てっ!勘違いしているっていうか、てか希はわかってて言っているだろ!ユニフォームを作るためには採寸が必要なだけだ。」
「あー……そっちですか。」
高嶺の言い訳に火打谷さんが納得した声を出す。
「そう。だから、このお店のため。あくまでこのお店の為だから。」
「言い訳みたいで胡散臭い……。」
「でも採寸が必要なのは納得しました。それじゃあ、善は急げって事パパーッと測っちゃいましょう!」
「メジャーってお店にも置いてありますか?」
「えっと、メジャーは無かったような……。」
「心配いらない。俺が準備している。ほらここに。」
女性陣の言葉に返すよう机にメジャーを自信あり気に置く。通常なら、気が利くと褒められる場面なんだけどなぁ……。
「準備万端過ぎてキモい。」
高嶺の発言に更に四季さんからのご褒美が飛んでくる。あのポジション……奪えばよかったかもしれない……。
「気を利かせただけなのに、そこまで言わなくても……。まあいいや、とにかく測ろうか。」
諦めずお茶目を見せるが、女性陣から呆れた返事しか返って来なかった。仕方ない、助け舟を出そう。
「高嶺。」
高嶺の横に立ち、優しく微笑む。
「え、はい?」
「俺のスリーサイズなら………測っても良いぞ?」
「………。」
今度は女性陣だけでは無く、高嶺も無言になる。
「俺も新しいユニフォームが楽しみだからな。採寸が必要だよな?」
俺の発言に、火打谷さんと墨染さんが困った表情でこちらを見ている。明月さんは何か面白い物を見つけたような顔をしている。四季さんに至っては、またか。と呆れた目でこっちを見ている。
「澤田さん、残念ながら……新しいユニフォームは女性用なので、澤田さんは測る必要が無いのですよ。」
「女性用か、何かそれが問題なのか?着れば良いだけの事だろ?」
「いや、何言ってるの?問題しかないでしょ。」
「しかし、巷では女装をされる男性……所謂男の娘と言うのもありますし、この際お店に取り入れるのも……。」
「しない。するわけ無いでしょ。」
俺と明月さんの発言に呆れながら机のメジャーを取っておくに向かおうとする。
「それと、2人とも、分かってると思うけど……。」
俺と高嶺を睨みながら、殺害アイテムを準備しようとする。
「そんなに脅さなくても流石に覗かないから、な?高嶺、撲殺は勘弁だもんな。」
「流石に犯罪は起こしたくないから覗かない、なので鈍器を準備するのはだけは勘弁して下さい。」
「ん。」
俺たちの返事に軽く頷き、皆と一緒に休憩室に向かった。
「さてと……。」
「え、まさか早速覗きに!?」
「いやっ!行かないから、料理の練習でもするだけだから!」
「なんだ……、てっきり女性陣の下着の色当て選手権でもするのかと……。」
「誰がするのですか……そんな選手権。」
誰がって?俺ですが何か?まぁ、負けない自信がありますが。
「そういえば、仕入れの事に関しても話を進めるって……大丈夫なんですか?何かツテでも?」
「ああ、そっちに関しても既にミカドさんに手配を進めてもらってるから心配しなくて平気。必要な物は決めてミカドさんに出さないといけないけど、外部とのやり取りは基本任せるって事で決まった。」
「ツテがあるってことですか?」
「そんな感じだろうな、猫だし情報網広そうだし大丈夫大丈夫。懸念点で言えば、パンケーキの件だな。それに関してはどうしようかとかあったりする?」
「一応、それに関しては考えている事が……。」
「了解、基本その件は任せるけど何か協力が必要なら遠慮せず言ってくれ。念のために候補の店も探してはおく。」
「ありがとうございます。」
「いやいや、これから同じ店で働く仲だし気を遣わないでくれ、これからお互いに頑張って行かないといけないしな。」
「そうですね、それじゃあ早速料理の練習をしてきます。」
「おっけい、味見役ならいつでも空いてるからなー。」
料理の練習をしに行くため高嶺は厨房へ向かい、それを見送る。
これからしばらくは高嶺のオムライスの練習の為に毎日同じメニューを食わされる日々が続くかもしれないな。特に親父さんと墨染さんが……。
「これ、必要無くなったな……。」
一人になり、ポケットから小さいメジャーを取り出す。
万が一と考えて持っていたが、結局高嶺がちゃんと用意していたので日の目にあう事は無くなってしまった。
「いつか使う場面が……って無いか。」
手に出したメジャーを再びポケットに仕舞う。これに関しては仕方がない。
その後は、高嶺が練習として作った二つのオムライスと試作品のパスタが出来上がった辺りで、女性陣の採寸も終わり試食会となった。
試食を終え、最後は四季さんの掛け声とみんなの"おー!"の締めで解散となった。
四人目の墨染希も遂に参加を果たしました。残りは後一人ですね。
ラストはまだ少し先なので、早く合流出来るように頑張って行きます。
モンハンの最新作を楽しんでいたせいで放置気味でした。また再開していきます。