喫茶ステラ ―異邦人と蝶の残滓―   作:コクーン√

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今回は休憩回です。

オムライスの味見に付き合わされた末路に起きた話です。


第41話:この苦行をどうにかしなければ…。前半戦

 

あれから高嶺のオムライスの練習の日々が続いた。家で作っては高嶺父と墨染さんに食べさせ、お店で作っては自分で食べたり他の人が味見をしていた……が、流石に毎日食べるのは飽きたらしく進んで食べようとする人は居なくなった。最初は『タダ飯だぁー!』って嬉しそうに言っていた火打谷さんでさえ、オムライスを見るや顔を歪ましていた。明月さんはタイミングが合えば進んで食べてくれるが、味見役はほとんど俺一人となっているのが現状だ。

 

「高嶺さんや。」

 

「どうかしましたか?もしかして変でしたか?」

 

「いや、味や見た目は日が経つごとに上手くなっているから問題は無い。」

 

「それじゃあ、他に一体……?」

 

「君も薄々感じていないか?毎度同じ味は食べ飽きたって……。」

 

「………。」

 

「その無言は肯定と取るからな。いや、別に作る事自体は良いのよ、けど毎回毎回同じ味なのは流石にどうにかしないといけないと思うわけです。他の子たちなんて厨房からオムライスを作る音が聞こえたら若干避けてるからな?気づいてるよね?」

 

「まぁ、最近澤田さん以外味見してくれなくなったとは感じてました。」

 

「気づいてるなら何とかしないといけないでしょう……。俺はまだ耐えれるから良いが……。他の人にも食べてもらわないと意見が偏るぞ。」

 

とは言ってるが、この拷問に近い苦行の犠牲者を俺以外にも拡散したい。

 

「そこで俺は考えたのだよ。」

 

座ってる椅子から立ち上がり、ビシッと高嶺を指さす。

 

「味変をしよう!とね……。」

 

「味を変えるのですか?」

 

「正確にはオムライス+何かで食べればいいのでは?と考えている。」

 

オムライスだけでは苦痛なので他と組み合わせることで違う味も楽しめるという事だ。

 

「例えば、王道ならカレーとか、デミグラスソースとか、今使ってるソースを変えるだけで色々試せるからな。もしかしたら、美味しい組み合わせとか出来て新しいメニューに追加出来るかもしれない。」

 

「まぁ、確かに他の味を試すのはアリかもしれないですね……俺も流石に飽きていましたし。」

 

「高嶺のオムライス練習の主軸は変わらないから問題は無いと思う。さっそく皆で一品出し合ったりしてみないか?倦怠期とか飽きを感じさせない為にもこういった楽しい事をした方が良いと俺は思うぞ。」

 

単純に今のオムライス祭りをどうにかしたいだけである。

 

「そうですね……皆に聞いてみましょうか。」

 

高嶺の了承は得れた事だし、女性陣にも話を通しに行こうではないか!

 

 

 

 

「ワタシは賛成ですっ!正直なところ飽きちゃっていましたし……。」

 

「私も澤田さんの意見に賛成です。こういった変化を取り入れるのは大事ですから。」

 

「そうね、私もオムライスだけっていうのは流石に……最近は澤田君に任せっきりだったしね。」

 

「私も賛成ですよ、毎朝昂晴君の食べていますが、たまには違う味もたべたいですし。」

 

皆から了承を無事得ることが出来た。やっぱり皆飽きていたんだと改めて実感した。

 

「じゃあ、それぞれ合いそうなやつを考えてくれ。王道でも良いし、自分が食べてみたい物でも良い。ただし、明らかにウケを狙ったゲテモノは控えるように、全部食べ切る前提で考えてくれ。」

 

「これって一つでは無くて複数とかも良いんですか?」

 

それぞれ考え始めた中、火打谷さんから質問が来る。

 

「流石に沢山は厳しいが……ソース系は二種類までなら何とか行けそうか?調味料ならそこそこ大丈夫だと思うけど……。」

 

後は高嶺がその分オムライスを作るだけだしな。頑張れ。

 

「了解ですっ!」

 

俺の返事を聞き、墨染さんとどれにしようかと楽しそうに話し始めた。

 

「澤田君は何にしようかとか考えてたりする?」

 

「俺は……、いや、その時まで言わない方が良いのか?」

 

「被ったりしたら嫌でしょ?」

 

「その時は集計した時に被りがあるって言うさ。因みに四季さんは何かあったり?」

 

「まだ決まっては無いかな?」

 

「外れない物を1つとチャレンジな物を1つとか?」

 

いつぞやのチキチキたこ焼きパーティーの時は変わり種と、合いそうなやつを入れていたし……。中でもハズレの激辛を二度も引き当ててたな。

 

「そうしてみたいけど、パッと思いつかないなぁ……。」

 

思いつかないのか、スマホを取り出し検索をし始めた。俺も一つ位考えておかないとな。

 

暫く時間を設け、みんなからの意見を集めた。必要な物は明日俺が買い出しに行くとして、今日はいつも通り各々練習をして解散となった。

 

 

 

次の日、学生組がまだ来ない時間帯に買い物を済ませ、お店に戻る。調味料もあるが、作る必要があるソース類もある。極力本人で作る事になっている。厨房にはオムライスと関係あるのか良く分からない物が既に置かれている……気にしたら負けなのでスルーしよう。多分明月さんが用意したものだと思われる。

 

「さて……。」

 

現在の時刻は夕方前、そろそろ四季さん辺りが来てもおかしくない。作れるソースだけでも先に作っておこう。

 

「ていうか、ほんとなんだこれ。」

 

明月さんのだと思われる謎の瓶、中身は薄い茶色……きつね色と言うのか?パッと見たら油が入っている様にしか見えないが……。

 

「一体これをどう使う気なんだろうか……。」

 

正体が気になるが、なんだか嫌な予感がする。流石に食べられないのを入れるとは思えないし、食べる時が楽しみのような怖いような……。

 

 

 

 

「では、これより、オムライスの食べ比べを始めたいと思います。」

 

全員が集まり、準備が出来たので開催を宣言する。

 

「いえーい!ひゅーひゅー。」

 

ノリ良く火打谷さんがドンドンパフパフと盛り上げてくれる。

 

「では、栄えある一番手をしたい人はー?」

 

周りを見わたりながら希望者が居るか確認する。

 

「えっと、私、一番目に行きたい。」

 

「おおっと、四季さん自ら希望か!最初は評価の基準ともなる大事な一品です。もしや自信がおありで?」

 

「わざわざハードル上げないでもらえる?残念だけどそんなんじゃないから。多分私のは割とスタンダードだと思うから最初にしようと思っただけ。」

 

俺の煽りに困ったような表情で答える。王道だから一番手を取ったってことか。なるへそ。

 

「了解しました。ではっ、早速準備の方をお願いします。」

 

オムライス……と言うか卵自体は既に高嶺に焼いて貰っている。後はそれに掛けるなり乗せるなりしたら大体完成となる。

 

四季さんが一旦厨房に入る。少しすると中からトレイを持って高嶺と一緒に戻ってくる。

 

「お待たせしました、私が選んだのは……これ、デミグラスソース。」

 

皆が座っている机にオムライスが置かれる。いつも作っているのより小さめのサイズで作られている。今から複数食べると思えば当然か。

 

「デミグラスっ!王道なのが来ましたね!」

 

最初に反応したのは火打谷さん、続く様に他も反応を示していく。

 

「なるほど、ナツメさんが一番手を取ったのはこれが理由だったのですね。」

 

「定番ですもんね~、絶対に美味しい奴ですよ。」

 

「一番手に恥じないメニューだな。じゃあ、早速いただいていくとしましょう。」

 

各々、小皿に取り分けてから食べていく。うん、普通に美味しいな。恐らく缶に入っているやつを使ってると思うが、万人受けだし味の差も出ないだろうな。メニューに入ってもハズレはしないだろうな。

 

「旨い、一番手に外れないのを持ってきたのは良い判断だと思う。」

 

「私が食べたかったってもの多少はあるけど……、うん。美味しい。」

 

一番手は四季さんのデミグラスソースのオムライス。ソースが強いからご飯は白米が良いのかも?とか組み合わせで盛り上がった所で終了。

 

 

 

「では続いては二番手を希望される人はー?」

 

さっきと同じ様に立候補が居るか確認を取る。

 

「あ、それなら私が二番手貰っても良いですか、早めに消化しておきたくて……。」

 

二番手を火打谷さんが挙手する……が、不穏なワードがあったが……。

 

「それはあれか?不味いかもしれないってことか?」

 

「もしかしたら……合わない人は合わなさそうだなって思いまして、自分も食べるのは初めてなんですけどね。」

 

好みが分かれるタイプか……、一体何が来るんだ。

 

「それじゃあ用意してきますね!昂晴先輩、お願いしますっ。」

 

高嶺を連れて厨房へ入って行く。四季さんと同じように暫くすると中からトレイを持った火打谷さんが出て来た。

 

「お待たせしましたー、今回私が考えた一品が、こちらです!」

 

ドン!と机に置かれたオムライスに注目する。見た目は白いソースが掛かっている。ホワイトソースか?若干俺のと被ったな……。

 

「愛衣ちゃん、これは……?」

 

「これはねっ、………ヨーグルトを掛けたオムライスです。」

 

「ヨーグルト………ですか?あの発酵乳の?」

 

「はい、そのヨーグルトです。」

 

「あの、火打谷さん?オムライスに……だよね?」

 

「そう……ですね、ヨーグルトソースオムライスって感じです。」

 

食べた事が無いからか、怪しい目でオムライスを見ている。奇抜なアイディアをしてはポイント高いと思うが……。個人的には味が気になるため最初に小皿に取り分け試食する。

 

「………意外と悪くないか?いや、酸味がちょっときついかも。」

 

思っていたよりさっぱりした味だと思う。口当たりは悪くないし、他にも色々と混ぜて作ればワンチャンある?

 

「澤田さん?どうですか……?」

 

「んー……まずいとは言い切れないが、もう少し何かと合わせれば食べれるかも?」

 

俺が食べているのを見て他の人も食べ始める。思ってたより外れては無いようだが、渋い顔をしている。

 

「うげぇ……そこまで美味しくは無いですね、これ。」

 

提供者の火打谷さんは二口程食べてスプーンを置く。

 

「何か付け加えてみる?何かあったかな………。」

 

四季さんが冷蔵庫から何か無いかと漁り始める。

 

「愛衣ちゃん、因みにどうしてこれにしようと思ったの?」

 

「なんか前にどこかの国で、ヨーグルトソースを使う料理があるってテレビで見た事があって……記憶に残ってたから……あはは。」

 

多分、トルコ料理の事だとは思うが……、なんか水餃子みたいのにかけて食べる伝統料理があった様な……。

 

「ケチャップとかと混ぜてみるか?運良ければオーロラソースみたいのが出来上がるかもしれない……。」

 

「ケチャップは確かにあるけど……大丈夫なの?」

 

四季さんが冷蔵庫からケチャップを取り出し、不安そうに机に置く。

 

「火打谷さん、好きな分配で調合してくれ。」

 

置かれたケチャップを火打谷さんの方へ押す。

 

「ええっ!?私がですか?」

 

「まぁ、今回は愛衣さんの料理ですが……。」

 

「オーロラソースはケチャップとマヨネーズを1:1で混ぜるのが多いけど……愛衣ちゃん大丈夫?」

 

「1:1だね、任せて……。」

 

ヨーグルトソースの上にケチャップを乗せ、かき混ぜていく。完成したそれは色合いだけ見れば悪くない。

 

「それでは、はいっ達也先輩、行っちゃってください!」

 

「俺が毒見役か?」

 

「最初にケチャップを、と言ったのは澤田君だもんねぇ……?」

 

「くっ、それもそうだな……。」

 

スプーンで少し掬い、口元まで持っていく。………ええい!ままよ!

 

意を決し口へと入れる。

 

「………。」

 

「達也先輩?どうでしょうか?」

 

「まぁ……その、改善の余地ありに一票かな?」

 

美味しくは無い。酸味は健全だが、頑張れば癖のあるソースと言えるレベルにはなりそう………な気がする。

 

「なるほど、美味しくは無かったと?」

 

「ノーコメントで。」

 

そんなこんなで二番目が終わる。因みにみんなにも味見してもらったが、美味しいの言葉は無かった。

 

 

 

「さてと、気を取り直して三番目の希望者は?」

 

「希ちゃん!私の仇を取ってっ!」

 

「私っ!?まぁ良いけど……。」

 

「希ちゃんなら美味しいのを選んでるってわかるから!この口の中に残る悪夢を取り払ってほしい!」

 

「自分のを悪夢って……、もう、分かった。じゃあ私が次行きますね。」

 

「了解。どうかこの災禍を祓ってくれ。」

 

高嶺と一緒に厨房へと消えてく。

 

「愛衣さんのはアイディアとしては悪くは無いと思うのですが……。」

 

「そうね……、奇抜と言うのか、私には思いつかなかったから良いアイディアだったと思う。」

 

「そうですか……?失敗だと思ったのですが、その、ありがとうございます。」

 

「俺も、普通とは違う物が出て来たからそういった考えは今後も役に立つと思う。」

 

「そんなに褒められると、なんだか照れますね……あはは。」

 

思ったより評価が高かったからか、恥ずかしそうに頬を掻く。"にゃはは"と笑っているが、多分文字の表記としては"あはは"となっていると思う。俺、詳しいんだっ、こういうの。

 

「それにしても、ヨーグルトソースって変わったものでしたが、日本の料理なんですか?」

 

「確か……、トルコ料理だったと思う。ケバブとかによく付いてるって聞いたような……。」

 

不思議そうに思う明月さんに四季さんが答える。トルコと言えば、エルトゥールル号遭難事件が有名だと思う。1800年代後半に確か和歌山辺りで起きた奴だが……、この世界にも歴史として起きたのかどうか……。自慢気にうんちくを語りたい気持ちもあるが、存在しないとなった時のリスクが高いため口を閉じておこう。

 

「あ、聞いたことありますよ、ドネルケバブでしたっけ?あの回る大きなお肉ですよね。」

 

「その肉を使ったパンとかに使われるとかなんとか……?」

 

本場ではヨーグルトソースらしいが、日本ではもっぱらマヨネーズだと思う。ケチャップでは無くてマヨネーズを入れるのが正解だったのか?

 

「他とは違う物を使うのは注目を集める点では良いですし、愛衣さんのそういうチャレンジする気持ちは見習わないと……。」

 

「そこまで考えていないのでそう言われると何だか……あ、次のが来ましたよっ。」

 

後ろを向くとトレイを持った墨染さんが来たが、後ろの高嶺もトレイを持っている。品数は二つなのだろうか。

 

「お待たせしましたー、二つあったので少し時間が掛かってしまいました。」

 

机にトレイが置かれる。内容を見ると、片方はミートソースと思われる……がひき肉と野菜がそこそこ入っている。

 

もう一つは……、キノコの餡かけ?トロッと透明なタレが掛かっていた。

 

「私からは、こちらがミートソースです。ボリューム感出すためにお肉とお野菜を少し足してみました。それでこっちが、キノコの和風ソースです。と言っても餡かけなんですが。」

 

「これは美味しそうですね……。」

 

「流石希ちゃん!間違いなく美味しいですよこれ!」

 

「まだ食べてないから美味しいかどうかわかんないと思うんだけど……。」

 

「ううん、これは食べなくても美味しいってわかる。高嶺君から料理が得意って聞いてたけど自分で工夫したの?これ。」

 

「工夫と言いますか、少し追加して手を加えただけなので特別な事は特に……。」

 

「希が作ったのは美味しいからな。俺が保証する。」

 

「そこで高嶺さんが得意げになるのはどうかと思うのですが……。」

 

ほぼ毎日食べている高嶺からの太鼓判である。厨房で見ていたから味の予想が付いてるのかもしれないな。

 

「それじゃあ早速いただきまーす。」

 

火打谷さんが、我先にとスプーンを取り小皿に取って食べ始める。

 

「んんっ!うまいっ!美味しいよ希ちゃんっ!」

 

「そう?ありがとね。」

 

「ミートソースの方は思ったよりボリュームあって満足感ありますねっ。」

 

「餡かけの方も温かくて美味しい……これからの季節にピッタリかも。」

 

みんなからの評価は高い様子。それをみて食べ始める。

 

「この餡かけ、とろみが最高だな、味も濃すぎず薄すぎずで丁度良いな。温かいから尚更美味しく感じる。」

 

これは冬に出したら一定数売れそうだな……。続いてもう一つは……。

 

「こっちも美味いな、追加で粉チーズとか掛けても良いな。」

 

「あ、それ良いですね!。ありです。」

 

火打谷さんから賛同を受ける。

 

「ミートソースですし、パスタとかにもそのまま使えそうですね。」

 

「お店のメニューとかにも使えそう。」

 

「待て、今は増やさずに現時点のをマスターしよう。」

 

四季さんの発言に高嶺が待ったをかける。

 

「分かってる。今はこれ以上増やすつもりはないから心配しないで、今後の話だから。」

 

「そうか、それなら安心した。」

 

高嶺の心配も杞憂に終わり、無事に三番目が終了した。前回のヨーグルトソースは無事払拭出来た様だ。





思っていたより長くなりそうなので前半と後半に分けました。後半は明月さんと主人公です。

因みに火打谷さんが用意したのは本場のヨーグルトソースでは無く、普通のヨーグルトです。言葉だけを覚えていたのでそのまま掛けて提供しています。
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