喫茶ステラ ―異邦人と蝶の残滓―   作:コクーン√

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お店の改造と選択肢の場面です。




第46話:覗く者

 

少し肌寒く感じる中、まだ人通りがまばらな時間帯にお店へとやってくる。

 

目的は内装を変えるための作業の準備である。昨日、高嶺から飾っても大丈夫な絵を貰ったとの連絡が来たので今日は皆で店内の改造をしようとなった。道具や必要な物は予めミカドさんと少しずつ集めていたから問題はないはずだ。

 

「店内のテーブルや椅子を退かして、まずは席の改装を……」

 

今日の流れを立てながらお店の中へと入り、道具を取るついでに荷物を置きに行く。

 

「あれ?澤田君?どうしたのこんな早くに……」

 

部屋に入ると、何故か四季さんが居た。こんな早い時間から?

 

「いや、それはこっちのセリフでもあるんだが……、四季さんこそなぜ?」

 

「昨日お店に忘れ物をちょっとね、そっちはどうして……あ、もしかして今日のこと?」

 

「そうなるな、今日ので先に準備だけでもしておこうかと思ってさ」

 

「そうなんだ、連絡してくれても良かったのに。1人でするつもりだったの?」

 

「簡単な奴だけをするつもりだからわざわざ呼ぶ必要はないかなと……」

 

「ふーん。それで、何をしていくつもりだったの?」

 

疑うような視線をこちらに向けているが、どうやら手伝う気満々のご様子。

 

「……大学の方は平気なのか?」

 

「平気。元々今日は休むつもりだったから」

 

それは大丈夫なのか?単位とか色々。いや、大学行った事無いから俺には分からないけどさ。

 

「四季さんがそういうなら……まぁ気にしないでおこう」

 

荷物を置き、必要な道具を持って二人でフロアに向かう。

 

「一応昨日に軽く話したけど上にシーリングファンを付けることになる。結構な重さで疲れると思うから持つのは俺の方でするよ」

 

お店の高さ的に延長線は要らないから直接タイプを今回は購入した。多分原作も似た感じのを使ってたはず。

 

「まずは椅子や机を移動させた方が良い?」

 

「んーー、そうするか。上のファンは人が来てからになるから今は配置換えしたりソファを置くとかで充分だと思う」

 

「ん。了解、それじゃあ、早速始めましょう」

 

今は二人だけなので机や椅子などの移動だけにしておく。上は後からでもどうにかなるだろう。

 

 

 

「お二人とも、もう作業始められていたんですね」

 

「明月さん、おはよう」

 

「おはようございます。何やら表で音が鳴っていたので、もしかしてと思い確認しに来たのですが、案の定でした」

 

どうやら、移動の際の音が聞こえていたらしい。

 

「私は忘れ物を取りに来た流れなんだけどね」

 

「なるほど、裏切り者は澤田さんでしたか」

 

「四季さんが居なければ軽い準備だけに留めようかと思っていた。裏切ってはいない。」

 

「ほんとですかぁ?またお一人で進めようとか考えてませんでしたか?」

 

「……流石に重労働は危険だから避けるつもりではあった」

 

先程の四季さんもそうだったがあまり信用が低いような気がしてきた。今までの行いのツケが目に見えてきた気がする。

 

「それなら私も手伝います。お二人だけにさせる訳にはいきませんし」

 

一人で進めるつもりが、気が付けば三人と増えていた。文殊の知恵が出来そうだ。

 

「さぁ、澤田さん。さくっと終わらせてしまいましょう」

 

「了解。他のメンツの仕事が無くすつもりで行くか」

 

「無くすつもりって、女の子二人にどれだけ働かせるつもりなの……?」

 

「そこは、澤田さんの頑張り所ですねぇ……」

 

 期待と揶揄いの目でこちらを見てくる。まぁ、成り行きとは言え発端は俺だし、それなりに働かせてもらいますよ。

 

 

 

「これで……完成だな」

 

最後のシーリングファンを取り付け終え、終了の報せを皆に伝える。

 

「終わったー……」

 

「愛衣ちゃんお疲れ」

 

「希ちゃんもお疲れっ」

 

「やっぱりこれを頭上に持ち上げ続けるのは疲労が凄いな」

 

覚悟はしていたが流石に1人ではきつかったので高嶺と一緒に持ち上げていた。

 

「流石に今日はマジ疲れましたー」

 

クタクタなのかテーブルに火打谷さんが突っ伏している。

 

「こうして完成したお店を目の当たりにすると、やっぱり明るい方が居心地がいいですね。」

 

明月さんの言葉につられ店内を見渡す。テーブルごとに過ごしやすい様に仕切りを設け、ゆっくりと過ごせるようにソファの席も用意した。空調がしっかりと行き渡る様に天井にもシーリングファンを設置した。見た目もおしゃれなだけあって女性受けを狙えるだろう。

 

背景としての変化は見た事はあったが、実際にその場に立ち会うと、その違いは驚く程明るくなったと感じれた。

 

「明るさもそうだけど、日が射してなかったせいか少し肌寒い感じはあったかも」

 

「そうだな。私もはっきりとその違いを感じ取れる」

 

皆も同じ感想の様で生まれ変わった店内を嬉しそうに見渡していた。

 

「そろそろ、大家を呼んでも良いのではないか?」

 

店が完成したことでミカドさんからの提案が出る。

 

「そうは言っても、正直まだ不安があるんだけど……」

 

案を聞いて四季さんが不安げな表情を浮かべる。その様子を見ていると、ミカドさんがこちらに視線を向けていた。何となく聞きたい事が分かったのでそれに対して首を横に振っておく。

 

「そうか。だが期限の10月は目の前だ。完璧を求める気持ちは分かるが、どこかで区切りを付けるようにな」

 

俺の返事を見て、あまり深く言わずに四季さんと話す。一応解決出来ていない問題もあるし、その話を出すか。

 

「ミカドさんの言いたい事も分かるが、パンケーキの問題をまずは解決しない事には大家さんを呼ぶことは難しいと思う」

 

それに関しては高嶺に一任していたので答えを聞くためにそちらを見る。

 

「そうだな。準備が必要にはなるけど……そろそろ良いかもしれないな」

 

「高嶺さんに何か案があるという事でしょうか?」

 

「ああ、大家さんに来てもらう前に、この店に呼びたい人がいるんだ」

 

今の言葉を聞いて、不思議そうに見返す組と何かを察して俺を見る組に分かれる。

 

「とはいえすぐに呼べるわけじゃない。一応向こうの都合もあるからそれを聞かないといけない。そこは決まり次第皆に連絡するから安心してくれ」

 

店の改装が済んだことで次のパンケーキ作戦に進んだと見て良いだろう。……となると、今日はひとまず練習の続きか。

 

パンケーキに関しては後日となり、新しくなった内装での最初の練習をすることになった。……確か、ここは選択肢があったはず。

 

少ししてから店内を見ると、皆が各々上達したい作業を練習している。フロアでは墨染さんと明月さんが接客の応答をしているのが目に入る。取りあえず高嶺の行動を見ておかないとな。

 

さっき厨房に入って行くのを見たので中に入る。厨房では卵焼きを完成させ、丁度ご飯の上に乗せようとしていた。

 

「今日もオムライスの練習に精が出ているな」

 

「最近は練習の甲斐があって味や見た目に問題は無いと思える位にはなって来たと思いますよ。あくまで自分の中ではですが……」

 

こちらに気づき返事をする高嶺は少し疲れて眠たそうな顔をしていた。最近ずっと頑張っているからだろう。

 

「味見役は必要か?」

 

「いえ、これは自分で食べようかと思います」

 

「了解。人が必要なら遠慮なく呼んでくれ」

 

「ありがとうございます。その時は頼みます」

 

厨房でオムライスの練習をしている高嶺を確認し終え、厨房を後にする。

 

「……次は」

 

後は高嶺が疲れて裏に眠りに行くのを見て明月さんに言えば大丈夫のはず。フロアに戻るとさっきまでのメンツに火打谷さんも加わっていた。と。いう事は四季さんが1人ってことになるのか……。

 

記憶を掘り起こし、今四季さんが休憩室で何をしているのか思い出す。

 

「これは……行くしかないな」

 

鏡に向かって笑顔練習している四季さんを生で見たい。この欲望は誰にも止められない。

 

期待を胸に抱きながら、気配と足音を消して静かに忍び寄る。これはあくまで休憩に行こうとしただけだから。そう決して邪な目的を持っている訳では……。

 

自分に謎の言い訳を聞かせながら少しだけ開いたドアの前に立つ。深呼吸を行う。この先に何が待っているか考え、落ち着かせる。

 

よし。覗くぞ。

 

静かな休憩室の中からは「いらっしゃいませ」と声が聞こえる。これは確定演出だ。中の様子を見る。

 

「いらっしゃいませ」

 

「……うーん」

 

「いらっしゃいませ」

 

ーーーっ!!??!?

 

そこに居たのは自分の頬を上にあげながら鏡に向かって笑顔の練習をしている四季さんが……!

 

覚悟していたが想定を上回る光景に脳が考えるのを止める。……これは。

 

「やっぱり上手く笑えない……なーんか、噓くさくなるんだよね。なんでだろう?」

 

「口角が自然に上がっていないのかな?確か、口角を自然に上げられる言葉が……ウィスキー、いらっしゃいませー」

 

口の動きで自然に口角を上げてから「いらっしゃいませ」と言う四季さんを見て、こっちの口角が勝手に上がる。大成功だな。

 

「むーーー……」

 

頑張っている甲斐もあってか、前の時よりは引きつっていない笑顔ではある。本人は全然納得がいっていないご様子だが。

 

「いらっしゃいませっ♪」

 

「んー……やっぱりダメかなぁ」

 

駄目じゃない。全然可愛いと思います。でも言わせて貰えるならいつもの美人な笑顔の方が好みです!いや、こっちもすっごく良いですよほんと。でも四季さんの容姿とキャラ的には難しいと思う。さっきみたいな表情は火打谷さんとかが一番輝く。

 

「いらっしゃいませ」

 

何とか良い笑顔を作ろうと何度も鏡に向かって練習する四季さん。それをいつまでも見ていたい気持ちが俺の心の中を埋め尽くす。バレない様にしなければ。

 

「うーん……」

 

その時、鏡から意識が逸れる気配を察してドア前から隠れる。一息つくために練習を止めたのだろう。

 

少ししてまた中から練習する声が聞こえたので再度中を覗く。

 

「いらっしゃいませ」

 

「………」

 

鏡に向かい練習を再開したのを確認し、引き続き観察を続ける。

 

「火打谷さんのは感覚的な説明でよくわからなかったし……。えっと、確か楽しい事をおもいだすんだっけ……?」

 

「楽しい思い出、楽しい思い出……。どうしよう、思い当たる思い出がないかも……」

 

寂しそうに一人呟く四季さんを見て心が痛む。哀愁漂うなぁ……。

 

「取り敢えず無理やり作ってそれを覚えれば……」

 

楽しい思い出か……。四季さんに言える程俺にも無いのかもしれないな、地獄の様な思いでなら沢山話せるけど、楽しい思い出かぁ。前世では最後辺りは仕事してゲームしての繰り返しだったな。楽しかったが思い出して笑顔になるかと言えばそれはまた別で……。それよりはさっきの四季さんの練習光景の方が、よっぽど……。

 

一人で思い出してみたが大した思い出は無かったと結論付けて四季さんの方へ意識を戻した。

 

「………?」

 

「……あっ」

 

あ、やばっ。今目が合った。

 

「はぅぁっっ!?なっ、なんでっ!いつ、からっ、見てっ!?」

 

俺に見られていたのを知り取り乱す四季さん。慌てる顔も大変素晴らしいです。はい。

 

「………」

 

ここは、何事も無かったかのような振る舞いが求められる場面だろう。

 

「お邪魔致しました」

 

さりげなくドアを静かに閉め、背中を向ける。

 

「さってと、フロアに戻りましょうかね」

 

バレてしまったのはしょうがない。ひとまず見たい物が見れたので大満足だ。

 

しかし、背後で閉じられていたはずのドアが音を立てて開き、その隙間から物凄い勢いで手が伸びてくる。

 

「待ちなさい。どこに行くつもり?」

 

その手は俺の肩を放さまいとがっちり掴む。

 

「いや~、ちょっとフロアにやり残した事を思い出してさー」

 

肩を掴んでいる手に力がこもる。いだだだ。結構痛いぞこれ。指が肉に食い込んでる。女の子が出せる範囲じゃない!

 

「記憶おいてけ、ねぇ!見たな。見たでしょ。ねぇ見たんでしょう、キミ」

 

「誰か助けてくれっ、妖怪に襲われる!記憶を持ってかれる……!」

 

「誰が妖怪かっ!いいから、逃げるな。こっちに来い」

 

引きずり込まれるように部屋の中へ入る。

 

「……ぐむむむ……」

 

引きずり込まれた先では、恥ずかしそうに顔を赤らめこちらを睨む"妖怪、記憶おいてけ"が居た。

 

「四季さんは俺を部屋に連れ込んで、どんな乱暴を働くつもりなんだ?」

 

「そうねぇ……、澤田君がさっきの事を忘れるくらいには乱暴しようかしら?」

 

顎に指を当てながらこちらを蔑む。

 

「死にたくないのでご勘弁してください」

 

取りあえず謝罪として土下座をする。

 

「……いつから見てたの?」

 

「……ウィスキーの少し前からです」

 

「つまり、私が練習をしてたのを暫く覗いて居たってことよね?」

 

「おっしゃる通りでございます。四季さんがしているのを見て魔が差しました」

 

「何か弁解することはある?」

 

「……四季さんの笑顔が可愛かったなぁ……と」

 

「……は?」

 

「すみません。猛省しやがりまくっています」

 

「そうはみえないんだけど?」

 

「本当です。お詫びと言っては何ですが、四季さんが悩んでいる笑顔の事で助言やお手伝いをさせてください」

 

「……澤田君が?」

 

「はい。私澤田がです。1人で笑顔の練習をしていたという事は火打谷さんの説明では上手く行かなかったという事だと思う。他の人の意見も聞いてみてはどうだろうか。」

 

「確かにそれはそうだけど。澤田君は分かるって言うの?」

 

「多少は。可能な限り助力させて頂きます」

 

 俺と四季さんの間に沈黙が訪れる。

 

「……はぁ、分かった。それじゃあお願いしようかな」

 

「寛大な処置、感謝いたします」

 

「大丈夫、別に許したわけじゃないから」

 

許されてはいなかったご様子。

 

取りあえずこの場は許されたので土下座を止め席に座る。

 

「それで、何かアドバイスとあったりする?」

 

「そうだなぁ、頑張って笑顔の形を覚えようとしていたけどあれは火打谷さんの笑顔を真似てたとか?」

 

「多少は参考しているかな?でも感覚的な説明でやっぱり分かんなくて取りあえず無理やり作れば覚えるかなって思ったんだけど」

 

「でも納得できる笑顔は出来上がらなかったと……」

 

「そう。なんか不自然な笑顔になるの。なんでだろ……?」

 

それは四季さんが美人だからだろう。

 

「そりゃあ四季さんが火打谷さんの笑顔をしようとしても無理……とまでは言わないけど難しいと思う」

 

「やっぱり無理かなぁ……」

 

「いきなりした事のない笑顔を覚えようでは今からじゃ時間が足りないと思う。火打谷さんの笑顔をマスターするとしたら期限の10月が終わってしまうからな」

 

「……それは……」

 

「それよりは火打谷さんみたいな明るい笑顔では無くて、四季さんの中での自然な笑顔を見せる方が一番良いと思う」

 

「それだと……お店の雰囲気と合わない笑顔をすることになるでしょ?」

 

「そんなことは全くない。四季さんの笑顔も他の皆に負けないくらい魅力的な物だと俺が保証する」

 

「……適当な事言って誤魔化そうとしてない?」

 

「俺の言動に信頼が無いってことは良くわかってるが、これは本心だってことを強く言いたい」

 

お店で見た事がある笑顔はそれはそれは素晴らしい物だった。あれを接客時にも出来るのならファンクラブが設立されてもおかしくない。いやする。

 

「お店とかで笑った時の笑顔が出来れば間違いなくお店の雰囲気に合わないなんてことは無い」

 

「笑った時……楽しいと思えた時の笑顔……ね」

 

「過去を思い返すのが難しいならこれから先の事を考えるとかでも良いと思う。お店を開いて、店内に客が沢山来て皆が笑顔でいる店内の光景でも想像してみたらどう?イマジネーションだ」

 

「なるほど、そ、想像……を……想像」

 

目を閉じて頭の中で未来の事を思い浮かべる。

 

「……いらっしゃいませ」

 

浮かべた笑顔はさっきまでとは違い、一番自然な笑顔だった。

 

「どう?不自然じゃなかった?」

 

「完璧。自然な言い笑顔だった。200点」

 

「……一応聞くけど、何点満点中?」

 

「勿論100点満点中だ」

 

「だから判定ザル過ぎでしょうが……」

 

呆れるような表情をしているが、若干嬉しさと恥ずかしさが見える。

 

「今のを出来る様になれば問題無いはず」

 

「そっか……なら、この調子で頑張ってみるか」

 

そう言って再び鏡の前に座る。だが、視線は鏡では無くこちらに向いている。

 

「……?どうかした?練習を続けるのでは……?」

 

「わざわざ言わなきゃ分からない?」

 

「冗談です。今すぐ出て行きます。扉もしっかりと閉めて行くので。はい」

 

「よろしく」

 

流石にここまでかと考え、ドアを開け外に出ようとする。

 

「えっと、澤田君」

 

すると背後から呼び止められ振り返る。

 

「その……ありがとう」

 

照れながらお礼を言う四季さんに無言で親指を立ててドアを閉める。

 

「……がはっ!!」

 

扉前から離れその場に崩れ落ちる。

 

い、今のは破壊力やばすぎでしょうが……!怒った時の蔑んだり睨むのも最高だが、こういう時に見せる表情……!!正直そそります。ええ、はい。鼓動が早まります。

 

今の光景を脳に焼け付けよう。美化もせず、風化もせず、1ビット足りとも違わない光景を……。

 

暫くの間膝を付き、落ち着いたことで立ち上がる。まだやるべきことは残っている。

 

フロアに戻ると、厨房にはオムライスを食べている高嶺と恐らく盛り付けの練習をしている火打谷さんが居た。あれはクリーム盛り付けだろうか?

 

「あ、澤田さん丁度いい所に」

 

この様子を見ていると、フロアから明月さんに呼ばれる。

 

「何用ですかい?」

 

「接客の練習を希さんとしているのですが、それに付き合って貰えないかと」

 

「了解。何をすればいい?」

 

「取りあえず、お客の方でお願いします」

 

「おっけい。それじゃ、墨染さん。よろしく」

 

「はい、こちらこそよろしくお願いします」

 

フロアで練習しながら、厨房に居る高嶺の様子に意識を割いておく。暫くすると、奥の部屋から四季さんが戻る。それを見て火打谷さんが紅茶の淹れ方を教わりに行く。

 

「後で明月さんにもコーヒーの淹れ方を聞きに来ると思うぞ」

 

「私は大丈夫ですよ、と言っても自分もまだまだですけどね」

 

俺も店に出せれる様に安定させとかないとな……。後で四季さんに聞いておこう。

 

 

 

練習を続け、時間が経つと厨房から高嶺が出てくるのを確認する。しかも少し眠たそうな表情だ。

 

休憩室に行ったのを見て、明月さんと墨染さんに声を掛ける。

 

「もう少しやったら一区切りにしようか」

 

「了解です」

 

「分かりました。それじゃ私も愛衣ちゃんと一緒にコーヒーの淹れ方教わろうかな……。」

 

最後の練習を流し終えた所で明月さんを呼ぶ。

 

「どうかされましたか?」

 

「最近、高嶺が少し疲れている様に見えていてな」

 

「確かにそうですね。最近頑張っていますし」

 

「さっき眠たそうな顔して休憩室に入ったから大丈夫かどうか様子を見に行ってほしくてさ」

 

「私がですか?」

 

「ああ。一応高嶺担当の死神だろ?対象の健康状態の把握は大切だと思う」

 

「それもそうですね。分かりました。少し高嶺さんの様子を見てきます」

 

「居眠りとかしてたら起こさないで介抱でもしていてくれー」

 

手を振りながら明月さんを見送る。これで高嶺が膝枕確定だな、頑張ってるしその分美味しい思いをしても問題ないだろ。俺も美味しい思い出来たし。

 





ウィスキー。

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