遅くなりましたが、続きです……!
最新作の天使☆騒々RE-BOOT!が発売されましたね!まだ乃愛ルートしかしていませんが……w
「今日の紅茶は……どうでしょう?」
緊張しながらも丁寧に入れた火打谷さんの紅茶を四季さんが飲む。
「うん。ちゃんと淹れられている思う」
「そうですか。はぁ、よかったぁ……」
無事合格をもらい、胸に手をあてて安堵のため息を吐く。
「お疲れ様、愛衣ちゃん」
「ようやくちゃんと淹れられるようになったよ~」
「特訓に付き合ってくれて、ありがとね」
「ううん、わたしも練習が必要だったから」
「えー……アタシをおいてけぼりにして、あっさりマスターしてた気がしたけどね」
「そんなことないと思うけど……」
「2人とも、ちゃんと淹れられてると思いますよ」
四季さんだけではなく、明月さんからもお墨付きである。
「コーヒーは……正直、味がわからないんですけど」
「大丈夫、ちゃんと美味しく淹れられてるよ」
味がわからないと言う明月さんに代わって、 高嶺がフォローを入れる。
「ほんとですか?よかったぁ。それもこれも、先輩方のご指導のおかげです。ありがとうございますっ」
「こちらこそ、頑張ってくれてありがとう」
火打谷さんの紅茶を飲み、満足している四季さんからもお礼が飛ぶ。
「あはは」
「それで昂晴君。今日ってお客さんが来るんだよね?」
「高嶺君の友達だっけ?」
「正確には友達とそのお姉さんな。一応知り合いではあるけど、ちゃんとしたお客さんだ」
「プレオープンというか……実践練習として本番のつもりで接客してほしい」
「うん、分かってる」
高嶺に任せていたパンケーキの件を少し前に相談を受け、その成果を今日実施することに決めた。
内容として、沈んでいる人間に起き上がってもらう……もう一度熱を取り戻させようという内容である。まぁ、これは原作と同じ内容だな。
特に変更する必要もなさそうなのでそのままでいく事になった。一応明月さんと四季さんには軽く説明はしておいた。
大丈夫だとは思うが、失敗しそうになった時のセカンドプランを考えてはいるが……まぁ必要になることは無さそうだな。いや、フラグとかじゃなくて……。
「それで……その人たちは、いつ頃来るの?もしかして、いつ来るかもわからない実戦形式?」
「いや、連絡があったから、そろそろ来ると思うんだが……」
確認しようと高嶺がスマホの画面を覗く。
その時、店の中を一頭の蝶が入り込んで来る。
「あれって……」
飛んでいる姿を四季さんが見つける。となると、もう来るか。
身なりを確認し、姿勢を正す。
「四季さん、お客が来るぞ」
蝶を目で追っている四季さんに声をかける。
「あっ……うん」
意識をこちらに戻したと同時に、店の入り口が開き、ベルの音が店内に響く。
「いらっしゃいませ」
それを聞いて全員が一斉に声を出す。
「うわっ、なんだここ……店員のレベル高けぇ……本当に四季さんまで居るし!?」
入って来た人の第一声が汐山弟の驚愕の言葉だった。
「……ほんとにオープン前まで行ったんだな」
「ワタシの名前を知ってるってことは……大学の人?」
「顔すら覚えてくれてない!?……いやまぁ、親しいわけではないけど」
「俺と同じ学科だよ。もしかして、知られない方が良かったか?」
「本音で言えば嫌だけど……お店を開けばこういったことにもなるし、ワガママ言ってられないでしょ。あ、でも、面白半分で広めるのは止めて欲しいかな。冷やかしで来られるのは困るから」
「そんなガキっぽいことはしないって」
「なに?知り合い?こんなところに連れて来て……なんなの?」
不思議そうに、しかし若干不機嫌そうな声を出して質問をしている人物。そう、彼女が
紫色のパーカーに白黒のボーダーの……リボン?で良いのかな?ピンクのロングヘアが身長の半分くらいまで伸びている。まぁ、元の身長が……いや、これは止めておこう。
「前に言ってただろ?今度オープンさせる店の客になってほしいって、頼まれたってさ」
「だから、どうして私が付き合わなきゃいけないの?」
不満がありげな態度で弟に文句を言う。その様子を見ていると、背後から声をかけられる。
「澤田さん、あの人が……」
「ああ、パンケーキの人だ」
「なるほど……わかりました」
納得したように頷いて、二人に近づく。
「いらっしゃいませ。2名様でしょうか?」
「あっ、はい。2名です。よろしくお願いします」
「はい。ではこちらのテーブルにどうぞ」
「ほら、姉貴もコーヒーの一杯ぐらいは付き合えよ。ここまで来たんだから」
「まぁ、いいけどね」
弟の説得に何とか応じる。それを見て明月さんが二人をテーブルに案内する。
そうして近づいた瞬間、涼音さんの周囲を漂っていた蝶が、全て切られ、消える。
……相変わらずめちゃくちゃな速度である。鎌の反射が一瞬見えたか?ぐらいの速さ。
「いらっしゃいませ。こちら、メニューです」
席に着いた二人に墨染さんがメニュー表を渡す。完成品でないが、印刷した物なので形にはなっているはず。
フロアの接客は墨染と火打谷さんに任せて、男は厨房に引っ込む。
「ここまでは順調だけど、料理、大丈夫そうか?何か手伝えることは……?」
「いえ、後は俺の方で作りますので、任せて下さい」
「了解、パンケーキも任せるけど……何かあれば遠慮なく言ってくれ」
「はい」
既に下準備も終わっているし、あとは作るだけである。半熟オムライスとカルボナーラだ、そこまで手間はかからないしな。
「高嶺君、大丈夫?」
厨房でその様子を見ていると、フロアから四季さんがやって来た。
「パンケーキのことか?」
「うん。パンケーキの味見したことないんだけど……作れるってことで良いの?」
「ああ、準備は終わらせているしな」
「そう、分かった。そっちは任せるね?ワタシはドリンクの準備をしてくる」
「ああ、お願い」
フロアに戻った四季さんと入れ替わるように、今度は明月さんが入って来る。
「何か手伝いましょうか?」
「いや、このくらい一人でやるよ。今から手伝ってもらってたら、この先が心配だしな」
「そうですか、わかりました」
「一応、俺も居るからなんかあれば手伝うよ」
今のところ、何もせずに突っ立ているだけだけどなっ!
「わかりました。では、私の方はフロアに戻っていますね」
「ああ。よろしく頼む」
料理に集中しながら、高嶺が返事をする。フロアの戻ろうとする明月さんがこちらに視線を送って来たので、『よろしく』と手を上げる。それを見て頷き、厨房を出て行く。
「……俺も一度フロアに出てくるよ。汐山さんの方にも挨拶しておきたいから」
「了解です、こっちは大丈夫です」
許可をもらってフロアに戻る。見渡すと、ドリンクを入れている四季さんと、それを注意深く見ている火打谷さん、メニューのことを聞かれていると思われる墨染さんと明月さんが目に入った。
「何か手伝えることはあったりする?」
紅茶を淹れている四季さんに声をかける。
「ん?いや特には……。しいて言うならコーヒーを淹れてほしい……かな?」
「おっけ、むしろ好都合」
「そう?」
不思議そうにこっちを見た四季さんを横目に、コーヒーの準備を進める。
「達也先輩、こっちも見学して良いですか?」
むこうは待ち時間のため、暇となった火打谷さんがこちらに寄ってくる。
「別に大丈夫だが……何なら淹れてみるか?」
「いやぁ、それは流石にまだ早いかなって思いまして……。合格はもらえましたけど、自信が……」
「なるほど、お試しと言っても相手は大事なお客だもんな」
「そうですそうです、自分が淹れたせいで美味しくないって思われたりしたら……」
「いやいや、卑下し過ぎだ。火打谷さんのも充分美味しいって」
「そうですか?でも、未だ手順を考えながらなんですよね……動きがぎこちなくて」
「それに関しては慣れとしか言えないな。何度も練習して覚えるとしか……ま、これからだな」
「ですよねー……、アタシも早くかっこよく淹れたいです。優雅にこう……」
「なるほど、それは確かに分かるな」
「あっ、分かりますっ?」
「そりゃ勿論、コーヒーや紅茶を丁寧に淹れている姿って憧れるよな。執事とかウェイトレスを見てると」
「それですそれです。と言ってもあたしにとってはナツメ先輩や達也先輩、栞那さんもそっち側なんですけどね」
「ん?そうか?」
「はい!なので参考にさせてください」
「こんなので良ければご自由に」
隣で見学をしている火打谷さんの視線を受けつつ、コーヒーを淹れる。
まぁ、実際に働いていたからそれなりには出来るし、そうなるように指導は受けたが……改めて言われるのは悪い気がしないな。うん、超嬉しい。可愛い後輩にそう言われるとやる気が出ちゃうね!
四季さんと提供するタイミングを合わせてテーブルへ運ぶ。
「お待たせしました。お飲み物の、コーヒーと紅茶です」
コーヒーを涼音さんの前に、紅茶を汐山弟の前に置く。
「お久しぶりっすね。澤田さん」
「お久しぶりです。学校以来ですね」
「何、この人とも知り合い?」
「まぁな、厨房に居る俺の友達がここで働くキッカケになった人」
「初めまして。澤田 達也と言います。今日は私たちのお店に足を運んでいただき、ありがとうございます」
「私は別に……この子の付き添いで来ただけなので」
「しっかし、前に聞いただけでしたけど、もういつでもお店開けそうですね」
「そのつもりで準備を進めていますからね。今日はそのお試しとしてお二人をご招待させてもらいました」
「あんなに可愛いウェイトレスの子たち……どうやって集めたのですか?」
「……企業秘密です。たまたま縁に恵まれただけですよ。……それではごゆっくり、お過ごしください」
一歩下がり、一礼をしてその場を去る。
「どう?どこかダメな所とかあった?」
トレイを戻しながらこちらを見ていた四季さんに聞いてみる。
「え?……ううん。特にそうは思わなかったけど……?」
「そっか、なら良かった」
「ただ……」
「ただ?」
「思ったより様になっていて変な違和感というか……なんかむかつく」
「そりゃ元々経験があるからな。それなりには出来るさ」
「それもそっか」
少し拗ねたような表情から納得の表情に早変わり。
「……料理ももうすぐ出てくるし、あとはパンケーキだな」
「ワタシは詳しく聞いていなかったけど、任せても良いのよね?」
「ああ、高嶺の方で上手くやってくれるよ。それで駄目なら……フォローは入れるつもり」
「そ、何か手伝えることがあったら遠慮なく言って」
「了解」
「紅茶もティーバックとは全然違うな……美味い」
「コーヒーも美味しぃ~」
汐山兄妹が、注文の料理を食べ終え、最後のパンケーキを待ちながらゆったりと過ごしている。
「そろそろかなー」
厨房から僅かに香ってくる匂いから、パンケーキが仕上がったであろうと察する。
「火打谷さん、パンケーキがそろそろ出来るから、準備しておいてもらってもいいか?」
「えっ、はい、わかるのですか?」
「大体は」
「はへぇ~、凄いですね。ではちょっと行ってきます」
「あいよ、よろしくお願い」
厨房に入っていった火打谷さんが出てくるのを見て、交代で中に入る。
「お疲れ様。料理、まぁまぁの評判だったぞ。ちゃんと美味しいって褒めてた」
「ほんとですか。良かったです」
「それにしても……中々な完成度のパンケーキだったな……?」
すれ違いざまにチラッと見たが……うん、お店で出すのには見栄えが……ってそれが狙いでもあるのだが。
「まぁ、今の自分の実力じゃこんなもんですしね」
「プロとして見逃せないなぁあれは……絶対何か言って来るぞ?」
「一応、それが狙いでもあるので……うまく行けばいいのですが」
「大丈夫、あれはこだわりが強ければ強い人程文句を言いたくなる一品だ」
「あの~昂晴先輩?今いいですか……?」
高嶺と話していると、火打谷さんが厨房に戻ってくる。
「ああ、どうした?」
「なんか、お客様がお呼びなんですけど……」
それを聞いて高嶺と顔を合わせる。
「わかった、今行くよ」
「高級な料亭みたいですよね。このパンケーキを造ったのは誰だぁ!って」
「それは確実に説教されるパターンだけどな」
「あっ、そっか」
「取り敢えず、行ってくるよ」
「健闘を祈っておくよ」
「問題はこれからですけどね」
手を振りながら高嶺を見送る。
「……さて、パンケーキの準備をしておこうかな」
作り終えた器具や道具を念入りに綺麗にして、所定の位置へと戻す。
「あとはクリームと……」
「澤田君」
「ん?フロアで何かあったのか?」
少し困った顔をした四季さんが入ってくる。
「高嶺君が出したパンケーキが駄目って言われていたから……大丈夫、でいいのよね?」
「ああ、今のところは。この後、素人とは比べ物にならない程の美味いパンケーキが出てくるから、味わうと良い。プロの腕を体験出来るいい機会だぞ~」
「……なんだか、ワクワクしてない?」
「しているとも。これからのことを考えれば当然な……ふふふ」
「うわぁ、笑い始めた……ちょっときもい」
失敬な、だが、それが良い。もう少し蔑んで言ってもらえるとこちらとしても……あと見下しも追加で。
「出来たよ。ほら、食べてみなさい、無知なる弟よ」
その後、涼音さんを連れてぞろぞろと厨房に入って来たので、脇へ退散し、パンケーキを作る様を後ろから見ていた。
「そんじゃまぁ……いただきます。はむ……んん」
出来上がったパンケーキを勧められるがままに一口食べる。
「……確かにちがうもんなんだな。ふわふわしててちゃんと甘くて……昂晴が焼いたやつは素人くさいってのかな、硬くて焦げの苦みがあったのがハッキリわかる」
「もしかして姉貴って……本当にプロだったのか?」
「アンタ、姉を一体どんな目で見てたわけ?」
「実際に働いている姿なんてみたことなかったし。家で作る事もなかったじゃねーか」
そう言いながらも美味い美味いと食べる。
「あのー……アタシも一口、食べさせてもらっていいですか?」
美味しそうに食べるのを見て、火打谷さんが恐る恐る尋ねる。
「はいよ。俺は違いが分かっただけでも十分満足した。甘いの、そんなに好きじゃないしな」
「やったっ!ありがとうございます」
「昂晴、お前も食べておくべきじゃねぇの?」
「そうだな、一口もらうよ」
それに続くように、皆が食べてみたいと言い出す。……俺の分とか余ってるかな?
「澤田君は?」
「俺の分、余っているのか……?」
「一応ね、折角だし食べたら?」
「では、遠慮なく……いただきますね?」
「あ、うん……どうぞ」
少し寂しそうな表情を浮かべながらも許可をいただく。
「んっ。すごい、これ、美味しいです!」
「ふわふわしてる、おいひー!んー!」
墨染さんと火打谷さんが美味しそうに笑いながら食べる。
「自分で焼くのとは違う……丁寧に焼くだけでも、違いって出るものなんだ……」
「生地は高嶺さんと同じのを使っているのに……こんなに違うのなんて、凄いですね」
四季さんと明月さんも驚くような表情を浮かべる。
じゃあ、俺も食べよう。
さっき見たパンケーキは見栄えから違うし、匂いも段違い。フォークを軽く刺してみたが、生地の弾力がもやばい。これは旨いものだ、絶対にそうだと確認が持てる。
「……いただきます」
一口、食べる。………、………美味い、こんなに美味い物なのか。前の店で食べてたものも中々だったが、それより断然こっちの方が美味い。……しかもこれは涼音さんが実際に作った物では?こんなに幸せを享受して良いのだろうか……?
「神よ……っ!」
取りあえず、実在すると思われる神に膝を付け祈りを捧げておく。
「うわっ、達也先輩が美味しさのあまり壊れた!?」
「………」
美味しい美味しいと絶賛するみんなを涼音さんが怪しんだ目で見ている。
「……もしかして、アンタが仕組んだの?」
「は?何のことだよ?いやいや、睨むなよ。本当に何もしらないんだって!」
第一に連れて来た弟を疑う。
「というか、姉貴のパンケーキが美味しいって喜んでいるのに……何怒ってるんだよ」
「だって、なんか……べた褒めだから。あれとか大袈裟過ぎでしょ」
天に祈りを捧げている俺を指す。周りも苦笑いをして見ていた。
「それだけの味だったってことだろ?正直、俺も美味しいと思ったぞ」
「アレは、アンタの友達の作り方がなっちゃいないのが原因」
「何を疑ってんのか知らんけど、俺だって頼まれてこの店に来ただけだ。もし何か仕込んでいるのなら、全部昂晴の仕業だ。俺じゃない」
「全ては……キミが仕組んだこと?」
仕込み役の高嶺に視線が向けられる。
「仕組んだとかそんな大層な話ではなくて……今の俺は、真面目に作ってあの出来だったんですよ」
ようやく話の場に持っていく事が出来た。頑張ってくれ!俺はパンケーキを堪能させてもらうぞっ!
キャピキャピとパンケーキを囲む女子陣。……この中に入れと申すか……くぅ。
どうしようかと考えていると、俺の存在に気づいた人が居た。
「なに?澤田君もおかわり?」
おおっ……女神よ!
「このわたくしにも、どうかお慈悲を……!」
片膝を付き、皿を差し出す。
「いや、そんなにしなくてもちゃんと分けるから……はい、どうぞ」
「感謝……!圧倒的感謝っ!」
貰ったパンケーキにクリームを付けて食べる。
「……美味い。生きてて良かった」
次は何も付けずにそのままを味わう。……これだけでも美味い。もう美味いって感想しか出てないくらいには脳が満たされている。
「……この世の幸せがここにあったのか……」
「いや、さっきからなに一人で言ってるの?頭おかしくなった?」
俺の独り言を聞いて、困った顔でこちらを見る。
「実際に食べることが出来た感動が漏れ出ているだけだから、気にしないでくれ」
「隣でブツブツ話されたら気になるでしょうが……」
「それもそうだな。これは失礼、あまりの美味しさにな」
「そういえば、澤田君、甘い物好きだしね」
「まぁな……って話したっけ?」
「時々、お店にチョコとか持ち込んでるでしょ?それ見てればすぐわかる」
「あー……確かに。差し入れとかにして置いてたりもしてるし簡単か」
四季さんと雑談をしながら高嶺の会話を耳に入れてく。どうやら綺麗に話しは纏まり、涼音さんは無事一緒に働いてくれるようになった。
「では、涼音さん。これからよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
みんなとも挨拶を済ます。
「そうと決まれば、サボってた分のブランクを埋めないと……材料、確認させてもらっていい?」
そう言って冷蔵庫の中身を確認し始めた。
よし、これで最後の1人も無事働いてくれることになったな。安心安心。
まぁ、本格的に忙しくなるのはここからではあるけど……今はメンバーが無事揃ったことに喜んでおこう。
「それじゃあ、お先に失礼します。お疲れ様ですっ」
「お疲れさまでした」
日も落ち、外が暗くなって来たので、皆が各々帰りの支度を始め店を後にする。
「あれ、澤田君はまだ帰って無かったの?」
女性陣の着替えの最後に四季さんが出て来た。
「着替えるタイミングを逃したからダラァっとしているだけじゃな」
「あ、そういうこと。もう空いたし大丈夫」
「おっけー、そんじゃお疲れさん。また明日から気合入れて頑張っていこう」
「そんなだらけきった格好で言われてもなぁ……はいはい、また明日」
腕を上げてヒラヒラと手を振った俺に呆れながらも帰っていく。
「そんじゃ俺も帰ろうかね」
席を立ち、奥のロッカーへと向かう。
「……ん?」
入ろうとすると、中から人の気配を感じた。可能性なら明月さんくらいか。
ドアノブを回す前に一応ノックをする。
「明月さんか?今入って大丈夫か?」
「え?はい。大丈夫ですよ」
許しを得たので中に入る。そこには椅子に座って誰かを待っている雰囲気を出す明月さんが居た。
「……もしかして、俺を待ってた?」
「ですね。澤田さんにお話があって待ってました」
わざわざみんなが帰ったタイミングを見計らったとなれば……。
「……もしかして、俺、告白されるのか……?」
「ええっ?どうされたのですか!急に……」
「いや、二人きりのタイミングを見計らっての話と言えば……なぁ?」
「何が、なぁ?ですか……。そもそも、分かってて言ってますよね?それ」
「まぁ……ちょっとしたジョークです。それで?涼音さんの事とかか?」
「はい。以前澤田さんから受け取った紙に書かれていた皆さんが、無事一緒に働くことになったので一度話の場を設けようかなと」
「ちょうど一段落したタイミングだし、いい機会か」
明月さんに勧められ席に座る。
「んー……と言っても、後は皆でオープンの為に頑張って……大家さんに認めてもらって……さぁオープン!ってだけだしなぁ」
「なんともまぁ大雑把な回答を……」
いや、すまん。そこは俺も詳細は分からないんだ。知っているとなれば涼音さんの海兵隊式の調教だし……。
「そうだなぁ、しいて言うなら……大家さんに来て貰う日程を決める……くらいか?」
「特に大きな出来事はないと……?」
「だな。涼音さんはもう大丈夫。今後は生き生きと厨房で叱咤の声が飛び交うだろうから安心してくれ」
「そうですね、それは楽しみですね」
「怒られるのは高嶺と……あとは俺かなぁ……?」
明日からの罵声の嵐を想像しながら、気合を入れないといけないと思うのであった。
無事最後の1人も参加……っと。
次は汐山の姉御との厨房でのやりとりと……大家さんを招いて……。