喫茶ステラ ―異邦人と蝶の残滓―   作:コクーン√

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んーー、クロスオーバー……?




第53話:白の刺客?

 

 

「さて、既に皆は帰ったな」

 

その日の営業を終え、静まり返った店内に俺と明月さんとミカドさんの三人で集まっていた。

 

「それで、相談とはなんだ?珍しくそっちから来たのだ。大事な話なのだろう?」

 

「あー、いや、大事なのかはまだ分かっていないからそっちの話を先に終わらせて問題ない」

 

「ふむ?そうか?では、こちらから先に片付けようか」

 

ミカドさんの隣に座ってる明月さんが話し始める。

 

「澤田さんが話されていた蝶が集まっている例の男性ですが、キッチンで話された通り、かなり自分を追い込んでいるみたいですね」

 

「そうだな、医者で真面目で普段しない様なミスをしてしまってかなり自己嫌悪に陥っているはず、好物の甘い物も喉を通らなくて蝶が寄ってくるくらいには……」

 

「今のところは大事にはならなさそうですが、次も同じことが起きれば更に悪化するかもしれない……という事でしょうか?」

 

「いや、それは大丈夫。二人には順を追って説明しておくよ」

 

「既に知っている、と見て良いのだな?」

 

「ちゃんと解決までな」

 

「まず、あの医者の人……深山先生だが四季さんが言っていた美和総合病院の人だ。以前明月さんと一緒に行ったところだな」

 

「なるほど、あそこですね……あれ、深山?」

 

「気づいたか、その通り、実はケーキを買いに来た結菜ちゃんのお父さんだ」

 

「つまりあの子が誕生日って言っている人は……」

 

「そう、お父さんの深山先生だ。最近パパが元気ないから大好きなケーキを食べてもらって元気になってほしいんだとさ。泣けて来るだろ?」

 

「ほんと、良い子ですね」

 

「だから、ケーキ作りは外せないんだよなぁ。まあ、涼音さんに負担はかかるけどその分他の作業を俺と高嶺に持って来れば大丈夫だし」

 

「それで、その問題が解決すれば高嶺昂晴にどう繋がるのだ?」

 

「結菜ちゃんが食べているオムライスって高嶺が直々に作ってあげているだろ?それを美味しい美味しいって嬉しそうに食べている姿を見れば、自信も付くだろ」

 

「そう言う事でしたか、だから澤田さんは高嶺さんにお願いしたのですね」

 

「うむ、今回の誕生日ケーキ大作戦で、高嶺と深山先生の自信を取り戻すことが出来るはずだ」

 

「なるほどな、だから貴様もいつも以上に動き回っているということだな」

 

「ああ、深山先生が自分の仕事にもう一度向き合えるようになるのは無くてはならない出来事だからな」

 

「と、言いますと……?」

 

「あ~……これに関しては不確定要素なんで今は伏せておくよ。余計なことになるかもしれないから」

 

「分かりました」

 

深山先生がこのまま放置されれば、四季さんがもしも倒れてしまった時に助からない……とか変な可能性が出てくるかもしれない。流石に他の医師も居るから大丈夫だとは思うが……。

 

「と、まぁこれに関しては以上かな。後は勝手に進行していくだけだし」

 

「了解した。では次にそちらの話を聞こう」

 

「ああ、お願いするよ」

 

気持ちを切り替えて、二人を見る。

 

「時にミカドさん、最近俺の周辺を監視?をしていたりするか?」

 

「我輩がか?いや、そう言った事はしてないが……」

 

明月さんも見るが無言で首を振る。

 

「なるほど、二人は特に関与してないと……」

 

「何かあったのですか?」

 

「いや、ここ最近、誰かに尾行されている気がしててな」

 

「澤田さんが……!?」

 

「あくまで俺の経験で……なんだが、視線というか意識を向けられている感じだな」

 

「どこかで貴様の存在に気が付いた人間が居るということか?」

 

「ん?ああ、どうだろうな。あくまで観察し続けているような気がする。夜道に一人で歩いたり、隙を見せても仕掛けてくる様子は無かったし」

 

「貴様を捕えるのが目的ではない……?」

 

「どうだろ、毎回同じ奴から向けられている気がするが……もしかしたら俺の勘違いって可能性も捨てきれないが……」

 

「だが、確信はあるのだろう?」

 

「まぁ、そうだな。前の世界でも何度か味わったことあるし、間違いはないかなぁっと」

 

「それで、我輩たちに協力して欲しいことがあるのか?」

 

「いや、いまのところは。一応何かあった時の為に情報の共有をしておきたかっただけ。下手に二人に動かれると警戒されるし」

 

「因みにだが、どこでそう感じるのだ?」

 

「家から店までの道とか、あとたまにフロアに出た時にも感じるな。気づいてない振りしてそのままにしているけど」

 

「となると、既に部屋まで特定されているという事か……」

 

「お一人にならない方が良いのでは……?」

 

「明月さんの言い分は最もだが、他を巻き込む訳にも行かないし、それに、俺は相手をこのまま放置しておくつもりはないぞ?」

 

「何か策があるのか?」

 

「策とまでは行かないが……まずは向こう側の姿も確認しておきたい。もしかしたら二人にも頼ることになるかもしれないから、その時はすまないけどよろしく頼みます」

 

「謝る必要はない。遠慮せず言うが良い」

 

「そうですよ、澤田さんの身に何かあってからでは遅いです」

 

「……いや、ほんとありがと、変な事を持ち込んで来て」

 

「ですから、気にしないで下さい。いつも助けてもらっているのでお互い様ですよ」

 

「この件に関しては無関係と放置は出来んからな」

 

「ありがとう」

 

ようやくお店が無事にオープンし、順調に行っている最中に変な事件を店に持ち込みたくないが……今回は頼らせてもらいます。

 

 

 

 

 

「………」

 

二人と話を終え、店を出た後、いつも通りの道を歩く。

 

……今日も見てるな。

 

どこからかまでは分からないが、俺へと向けられている視線があるのは確か。殺意とか憎しみでは無くただただ監視に徹している様にも見える。

 

前に四季さんや高嶺と途中まで帰った時は俺だけに注がれていたから標的が俺なのは間違いない。それだけが安心である。

 

「……はぁ」

 

正直気が休まらない。ほぼ毎日こんな視線を浴びらされていれば精神がすり減っていくだろう。その間に穏便に終わらせたい。

 

「やってみるかぁ……」

 

効果あるかは分からないが、俺の動きを監視したいのなら、その行動の詳細まで知っておくと考えるのが普通だろう。

 

いつもとは違って途中でコンビニに寄り道をする。袋の中身が見えない様にと隠しながら路地裏を歩く。

 

……来てるな。

 

道の街灯が照らされている道端で怪しげに袋を漁り、そのまま袋ごと放棄する。そして何事も無いかの様に立ち去りつつスマホを起動して、道端が移るように設置してその場を去る。

 

暫く適当にぶらついていると、俺を見ている気配が一時的に無くなった。

 

これは、引っかかったかな?

 

それから数分歩いて先ほどの道へ戻る。街灯の場所を通りながら目を向けると、袋が無くなっていた。

 

そのままスマホを回収し、急いで部屋へ戻る。

 

鍵を閉め、カーテンを閉め切り部屋に誰も居ないことを確認してから動画を再生する。

 

「良かった、ちゃんと映せてるな」

 

ピントは若干合っていないが、例の場所が街灯の光にしっかりと映されていた。

 

「さてさて、どこのどいつがしてくれてんのやら」

 

少しの間、誰も居ない夜道が流れていたが、暗闇で動く影が見えた。

 

その影は素早く街灯下へ移動すると、そのまま袋取って中身を漁り始める。

 

中身を確認したかと思うと、そのまま袋ごとどこかへ消えて行った。

 

「まるで獣みたいな動きだな……」

 

跳躍し、コンクリートの塀へ、家の屋根へと飛び移りそのまま見えなくなる。

 

今度はズームしてスローでゆっくりと確認していく。

 

「……は?まさか……」

 

その姿は、少女と呼べるくらいの立ち姿で、白い装束の様な恰好をしていた。

 

「いや、いやいやいや……」

 

頭の中にとある人物が思い浮かぶ。まさか、んな馬鹿な……。

 

急いでネットで調べるが、当然ヒットしない。

 

「待て待て、思い出せ……他にもワードはあったはずだ」

 

思い出せる範囲で検索を続ける。

 

「……真日羽市……水薙学園……、『Robin』……」

 

あり得ないことに、検索結果に出て来た。

 

「……はは、マジかよ。これは流石に想定外というか……」

 

スマホの持つ力が抜け、笑う。

 

「という事は、俺は神様に監視されているというわけか……」

 

 

 

 

 

「おはよー」

 

「ああ、四季さんか、おはようさん」

 

「え、どうしたの?その顔……隈が酷いけど……?」

 

「いや、ちょっと色々調べ物をしてたら眠れなくてな」

 

「大丈夫?明月さん達に言って今日は休んだ方が良いんじゃない?」

 

「いや、そこは問題無い。むしろミカドたちに用があるからさ」

 

「そう……?あまり無理しないでね」

 

「ああ、お気遣いありがとな」

 

「………」

 

『ほんとにこいつ大丈夫か……?』と言いたげな表情で奥の部屋へと消えてく。

 

「さて、取りあえずは今日の仕事を終えてからだな」

 

気合を入れて立ち上がる。寝て無いから少しダルさはあるが支障は無いだろう。

 

あれからひたすら思い付いた考えを調べまくった。検索内容に引っかからなかったものもあれば、写真付きで出て来たものもあった。それらを俺の記憶と照らし合わせると……もはや言い訳が出来ないレベルだった。

 

「澤田さん……本当に大丈夫ですか?今日はお休みされた方が……」

 

「少し色々調べていたら朝になっててさ、単純に寝てないだけだから大丈夫」

 

「昨日の今日でそうなっていると、やっぱりこちらとしては心配なのですが……」

 

「あー……じゃあ、きつそうなら連絡するよ」

 

「言いましたね?約束ですよ?変な遠慮して我慢なさらないで下さいね?」

 

「了解。あと、今日も終わった後にミカドさん含めて話がしたいから残ってもらえると助かる」

 

「分かりました。ミカドさんには私の方から伝えておきますね」

 

「ああ、お願い……」

 

今の所監視の目は無さそうではある。問題はミカドさん達がこれに関与していないという点だが……これに関しては調べてもらうのが早いのかもしれないな。

 

 

 

 

「では聞こう。何があったのだ?」

 

昨日と同じ様に三人で密談を始める。

 

「ああ、まぁ色々とな……」

 

「昨日と今日でかなり疲労したように見えるが……何をしたんだ?」

 

「いや、昨日言ってた俺を監視している存在が居るって言ってただろ?それの正体を掴んだんだ」

 

「それは本当かっ!?たった一日で辿り着くとは……流石だな」

 

「まぁ、問題はその相手の正体なんだけどなぁ……」

 

「もしかして、知っている人物なのか?」

 

「まぁー……一応、一方的に知っていると言えば……そうなるのかぁ?」

 

「一方的に……、もしかして、また澤田さんの奇跡関連なのでしょうか」

 

「おおー、察しが良いね明月さん」

 

「以前、私たちにも似たようなことをおっしゃっていましたから」

 

「そうだったな。とまぁ、俺の予想が間違って無ければ相手の素性や、誰がそうさせているか……くらいは何となく掴めた。ただ、確証を得る為に夜通しで色々調べていたから寝不足になっていただけ」

 

「……ふむ、それを我輩らに相談したという事は、何か案があるのだろう?」

 

「ああ、ミカドさんとや明月さんと同じ管轄とは違うような気もするけど、ある人物……神様について調べて欲しいんだ」

 

「なぁ……!?神についてだと!」

 

「勿論、可能ならで良い。そっちに不利益が及ぶなら辞めてもらっても構わないし、無理のない範囲でだ」

 

「……取りあえず、話を聞こう」

 

「ありがとう。そうだなぁ。分類として俺が知っている範囲だと土地神だと思うんだが、知っているか?」

 

「ああ、古くからその地を守っている神だな。確かに我輩らとは管轄が違う」

 

「現在も同じかはわからないが……真日羽市という地名一帯を治めていた……はず。多分」

 

「どうした、やけに歯切れが悪いではないか」

 

「これに関しては少し古い情報かもしれなくてな……今は違うかもしれないんだ」

 

「なるほど、承知した」

 

「それで、そこの神……って神様の名前を気軽に言うけど問題とかあったりする?」

 

「いや、軽々と発言するのは避けておいた方が良いだろう」

 

「やっぱりそう?じゃあ、やめておこうかな。代わりになんだが、その神様の部下……みたいな存在を見せておくよ」

 

スマホを取り出し、昨日撮影した動画を二人にも見せる。

 

「という感じで、この子が俺を監視していた存在だな」

 

「見た目は少女に見えるが……動きはまるで動物の様な俊敏性だな」

 

「この子が、澤田さんを狙っていた犯人……」

 

「ああ。まぁ、正体を知れたからある程度安心は出来たし、すぐにどうこうする感じでは無さそうだな」

 

動画を止め、スマホをしまう。

 

「彼女の名前は……、あー……合っているか分からないが、多分……竜胆 ルリ。キツネの少女だ……」

 

「……分かった。こちらでも探ってみよう」

 

「すまないけど、よろしく頼む」

 

「なに、一日でここまで調べ上げたのだ。それに、神ともなれば我輩の方が都合が良いだろう」

 

「ですね、ミカドさんは定期連絡していますし」

 

「この件に関してはこちらで受け持つことにしよう。貴様は引き続き店の事を頼んだ」

 

「また何か進捗があったら連絡するよ」

 

「わかった。今日はもう帰ってしっかり寝ておけ。明日に響くからな」

 

「そうしておくよ」

 

席を立って帰る準備をする。

 

「そんじゃあ、二人ともまた明日」

 

「ああ、またな」

 

「ゆっくりと休んでくださいね」

 

二人に見送られながらも店を後にする。

 

「……はぁぁーー……」

 

俺を監視しているってことは、高嶺と同じ感じで奇跡についてなのだろう……。

 

「冤罪をかけられている気分だなぁ……」

 

となると、ミカドさんの更に上の神か、はたまた別の神からの差し金か……。あのナルシストで性格歪んでる上司じゃないと良いんだけどなぁ……。

 

因みにだが、今の時点でも視線は感じる。前と違う点は向こうの素性を知っているから気がかなりましなくらいか。

 

「あとは、ミカドさんの連絡待ちだな」

 

下手にこっちから動いて刺激したくはない。腕を噛まれるとかたまったもんじゃないからな。

 

 

 

 

 

「では、我輩は出掛ける用意をする」

 

「はい、お願いします」

 

「全く、今度は何事かと思えば……まさかこっち側にも関わってくるとはな」

 

「もうビックリし過ぎて逆に冷静になりますね……」

 

「これに関しては奴の判断が正しいが……ふむ」

 

「どうかされましたか?」

 

「いや、あやつがこの店に関わる人物だけでは無く、違う者らの事も知っているのだと思ってな」

 

「言われてみればそうですね、澤田さんは高嶺さんに関わる未来が見えるって仰っていましたし」

 

「それも伏せていたのか、想定外だったのか……」

 

「恐らく、後者では無いでしょうか?かなり熱心に調べていたようですし」

 

「やはりそう思うか?」

 

「はい。澤田さんにとっても想定外の出来事だったから寝不足になるまで情報を集められていたかと……」

 

「ふむ。問題はどうやってその情報を集めたか……気になる所ではあるが」

 

「確か、古い情報って言ってましたよね?」

 

「そうだったな。とあると……今より過去に干渉していた……?」

 

「昔となると、澤田さんが居た前の世界ってことでしょうか?」

 

「いやしかし……それだと以前の世界にもその存在が居たという事になってしまうな」

 

「あ、そうですね。ですがそれですと……」

 

「うーむ。以前にも、高嶺昂晴の様な存在が居たのかもしれないな」

 

「と、言いますと?」

 

「高嶺昂晴や四季ナツメのように、あやつが導こうとした存在がいたかもしれん……と考えたのだが、それがさっきの話との繋がりが見えん。それに、奴は一方的に知っていると言ったしな」

 

「あくまで奇跡の力で観測をされていた……?」

 

「わからん。だが、これでまた一歩秘密に近づけるのかもしれないな」

 

「藪を突かない様にしてくださいよー……?」

 

「そこら辺は心得ている。では行ってくる」

 

「はい、お気を付けて」

 

 

 





天神乱漫……懐かしい。

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