お家へご招待。
「お邪魔します」
「どうぞどうぞ、何もない所ですが」
あの後、俺の部屋で話すことに決まり、どうぜならとコンビニで適当に買ってワイワイするになった。
「まさか家に人を招く日が来るとはな……」
「初日だってワタシと明月さんが来てたでしょ?」
「それは引っ越しとしてだからな」
テーブルにコンビニの袋を置く。
「あ、冷蔵庫とかに入れるやつ勝手に入れてもいい?」
「好きに使って大丈夫だぞ」
「ありがと」
冷やしたいものを取りあえず冷凍庫にぶち込む。
「それにしても……最初からそこまで変わってないね。あ、ベッドとテーブルは増えた?」
「そんくらいかな?あとは細かいのを少々って感じだ」
「ふーん……それに意外と綺麗にしてるんだ」
「一応な。掃除や整理してる時は考え事とかがしやすいから」
「そうなんだ」
「そうそう。んじゃ、先に飯でも食うか」
「だね」
お互いに買った昼食を食べ始める。
ピンポーン
「……ん?」
「お客さん?」
「いや、全く気配がしないんだが……」
「気配て……」
ピンポーン
「ちょっと、見てくる……」
扉越しに人の気配が無いが……誰だ?
ドアののぞき穴から外を見ると、そこには耳の生えた少女が立っていた。
「あ、なるほどね……」
その正体に安堵しながら玄関を開ける。
「今日の報酬か?」
「貰いに来た」
「了解、ちょっと待ってな」
部屋に戻り、駄菓子の入った袋ごと持ってく。
「ほい、これ。うみゃい棒以外にも色々入れてみたから、気に入ってもらえると助かる」
「色々……?」
袋を開け、中身を覗く。
「……ぉお……、今後も期待してる」
目をキラキラさせながら中を覗き、満足気に頷きそのままどこかへ消えて行く。
「……取りあえずは喜んでもらえたのかな?」
相手の予想より良い報酬を出したのだ。こちらの印象はプラスに働いたと見て良いだろう。
玄関を閉め、部屋に戻る。
「今の子が、澤田君が言ってた依頼の人?」
「ああ、優秀なハンターさんだ」
「なんか、コスプレしていなかった……?それに、耳も……」
「まぁ、それについても話すよ」
「まさかだと思うけど……あれを着させている、とかじゃないよね?」
「酷い風評被害を、今感じた……」
「男の人って、コスプレとか好きなんでしょ?高嶺君もそうだし。それなら澤田君も同じなのかなって……」
「そうだな、コスプレ好きなのは認めよう……だが、流石にあんな小さな子にまでさせる程腐ってはいないんだが」
「あ、やっぱり好きなんだ」
「好き……というか一種の憧れ?みたいなものだな。うんうん」
「なんか、おっさん臭い……」
「男は何時になっても変わらないってことの証明だな」
「いや、そんなことをカッコつけられても」
昼食を食べ終え、そのまま四季さんへ事情を説明する。
「えっと……一通り聞きはしたけど……え、神様?あの人が?」
「ああ、一応全部本当だぞ?」
「だから閣下や明月さんが緊張していたんだ……それなら辻褄も合うか」
「納得出来たか?」
「全然。急に神様が来たとか言われても、はいそうですか。って納得出来ると思う?」
「ま、普通はそうだよな」
「むしろ、冷静に受け入れられているそっちがおかしいでしょ」
「まぁ、俺の場合は普通じゃないし……」
「……知ってたってこと?」
「まぁな、何となく予想は出来てたし、相手の素性は把握出来てたからなぁ」
「そんな人がお店に来てたなんて……あれ?昨日絡まれてたよね?他の人に?」
「絡まれてたな。そのせいでミカドさんとかすっごい顔してたぞ。傑作だ」
「自分がいるお店で偉い人がそんな目に遭ったら、そうもなるか……」
「まぁ、絡みたくなるほどの美人だったんだろ」
「確かに、ザ・大和撫子!みたいに綺麗な人だったよね。口調もそうだし……」
「中々良い性格してるけどな」
「そうは見えなかったけど……」
「いいや、あいつは自分が絡まれても排除できるだけの力を持っておきながら俺が止めに来たのを面白そうに見てるような奴だ」
「ああ……それはそれは」
「と、そういえば、一応四季さんにも先に言っておくことがあった」
「ん?なに」
「昨日、神様に絡んできた男居ただろ?蝶が集まってた」
「うん、さっきの話の人よね」
「ああ。そいつなんだが、昨日皆が帰った後に……火打谷さんに用があってお店で用事を終わらせて家まで送ったんだが、その帰りに待ち伏せされてたわ」
「えっ、大丈夫だったの?」
「大丈夫大丈夫。逆恨みとかなんかで襲い掛かってきたからボコボコにしてミカドさん達に引き渡しておいた」
「火打谷さんも無事だったのよね?」
「そりゃな。大丈夫だとは思うけど、明日から念のため様子を見ててほしい。トラウマ……とまでは行かなくても多少は怖かったと思うし」
「うん、分かった。それにしても……澤田君ってよく巻き込まれるよね?」
「今回で3件目か?」
「そう。あの時の怪我はもう平気……で良いのよね?」
「当然、もう完治してるに決まってる」
「よかった」
話が一段落付き、少し無言の間が訪れる。
「なんか飲むか?お菓子とかもあるし、他に聞きたい事とかあれば今の内だけど」
「あー、それじゃお茶取ってもらえる?」
「了解。……アルコールもあるけど?飲むかい?」
「今はいい。後で飲むから置いといて」
「うい」
コップにお茶を淹れて戻る。
「ほい」
「ありがと」
「一応最近の出来事としてはそんな感じだな」
「……他にも聞いていい?」
「なんなりと、答えられる範囲であれば」
「こう聞くのが当たってるのか分からないけど……澤田君の目的って何?」
「これはまた抽象的な質問が来たな。どういう意図でその質問を?」
「ちょっと不思議に思ってた。お店を開く前はワタシや明月さんに協力してるのは、勿論恩返しで手伝ったりもしてるとは思うんだけど、お店を開く事が目標なのかなって……」
「ほうほう」
「けど、最近思うのが、最初からお店を開くのは……その、前提条件?みたいなもので、もっと別の何かがあるのかなって……」
「四季さんから見れば、そう思えると?」
「うん、と言っても勝手な推測なんだけどね」
「いや、是非とも全部聞いておきたい」
「そう?えっと、前に明月さんから高嶺君を救う為に色々動いてるってポロっと聞いたことがあって、その、高嶺君の幸せ?望みって……ほら、卒業する事でしょ?」
何を……とは聞かない方が良いか。今でも恥ずかしそうな顔してるし。
「その最終的に行き着く先って恋人とか作って……ってなると思う。それがお店を開くこととどう関わるのかなって気になって」
「ふむふむ」
「最初に思いついたのが、お店からカップルを誕生させることなのかな?って思った。けど、澤田君ってそう言った動きしてない様に見えたし……」
「まぁ、基本的に真面目に働いてるだけだしな」
「閣下や明月さんと色々してるからそれらが関係してるとか?昨日も火打谷さん含めて話し合ってたみたいだし」
「………」
「どう、かな?的外れだった?」
「んーー、四季さんは、それを知ってどうするの?知って納得するだけ?」
「納得もする。けど……以前にも言ったけど、澤田君に恩を返したいって思ってもいる」
「俺への恩返しねぇ……気にしなくていいんだけど」
「ワタシが気にする。だから何か出来ることないかって色々考えてたの」
「それでか……、俺へのならウェイトレス姿で、『おかえりなさいませ、ご主人様』ってしてもらえればそれだけで十分なんだが……」
「真面目に言ってるの、ふざけないで」
「ア、ハイ……俺も真面目なんだけど……」
「それに、澤田君ってたまに妙に人と距離を置くときがあるから」
「ん?そうか」
「たまにね。こう、壁を作ってるって言うのかな?違和感を感じる時がある」
「誰だって必要な時は距離を置くとは思うけど……?四季さんもしてたと思うし」
「そうね、確かにしてた……だから何となくわかるのかも」
「それが今ではこうやってお店の同僚の家でお喋りだもんな。著しい成長に涙が……ぅう……」
「いや、どこ目線……って、わざと話を逸らしてない?」
「………」
「目を逸らすな。こっちを見る」
「……因みに、黙秘権を使ったらどうする」
「……それを言われたら、大人しく諦める」
少し、寂しそうに目を伏せる。ぁああもう、んな顔するのは卑怯だぞ!四季ナツメッ!
「……分かった。四季さんにも話しておくよ」
「え、いいの?半分無理と思ってたけど……」
「じゃあ、やめとく」
「話して。男に二言は無いんでしょ?」
「お、おう……」
グイグイ来るなぁ……、ちょっと予想外。もう少し人と距離を置くと思ってたんだが……?
「まぁ……その、なんだ。ミカドさんと明月さんと四季さんの3人は既に知っているとは思うけど、俺は……未来、を視ることが出来る。これは前にも言ったとは思うけど」
自分で未来が見えるって言うの毎回くそはずかしいんだが!?しかも本当はエロゲの知識とか……!
「うん、それは聞いてる」
「見えはするけど、それはかなり限定的だし、漫画やゲームで出てくる様な万能な力じゃない」
「うん」
「これも前に言ったが、未来とか幾らでも変えれる。未来を知ったせいで本来の道筋を変えて別の行動を取った結果、望んだ未来とは違った結末に……なんてことも充分にあり得る事なんだ」
「本音を言えば、俺が知ってる未来と既にズレている事も起きてるし、多分俺が起こしてることもあると思う」
「澤田君が……?」
「ああ、だからなるべく多干渉はせずに……とも考えてたりもしてる。逆に必要なら積極的に動いてたりもな」
「だから、距離を置いたり?」
「そうそう。可能な限り、荒波を立てずに事を進めて行きたい。だから昨日みたいな男は物凄く迷惑極まりない存在なんですよ」
そのせいで火打谷さんの事も露見したし……って、これは遅かれ早かれバレたかもしれないけど。
「そうなんだ……」
「ぶっちゃけ、この場で四季さんにそうやって事情を話していること自体もどう影響するのかって所。良い方面に転がるか、はたまた逆か」
今の感じ良い方向と思いたいが……。
「もしかして、ヤバいことした……?」
「いや、それは大丈夫だと思う。前にも言ったが手伝いたいって言ってくれたのは感謝してるし嬉しいのは本音。けど、俺が話した事で悪い方向に動いたら……?って思ってしまうだけ」
「それは、分からないの?」
「残念ながら。明月さん達はこれをチート級に感じてるかもしれないけど、俺からしたらそんなことないし毎日大丈夫か心配なくらいだ」
「………」
「正直、一昨日来た神様だってイレギュラーだし、そのせいでどうなるかって心配でもある。お店への影響を含めて」
「まぁ、簡単に纏めると、お店の安泰を維持する為に危険分子は全力で排除しますって方針だ。昨日のみたいなやつは特に」
「ってのが、俺の考えなんだけど……満足できた?」
「……一応は。聞かせてくれてありがとう」
「そりゃよかった。話した甲斐があったってもんだな」
「……それで、目的は、聞かせてくれないの?」
「……そうだったな」
そこは流れでスルー出来るかと思ったんだが……、まぁいいか。
「わかった。四季さんの覚悟はしかと受け取った。……因みに、これは他言無用で聞けば引き返せないことになるけど……それでも良いか?」
「そのくらいヤバい話なの……?」
「ああ、ここから先はセーブも引き返すことも出来なくなりますが、それでも?」
「っ……!」
俺の言葉を聞いて、目を見開く。以前裏路地で聞いた言葉を同じのはず。
「……うん。それでも知りたい。聞かせてくれる?」
うーん、強い意志の籠った目も素敵だなぁ。最高です。ま、これなら大丈夫かな。
「……わかった。それじゃあ、ここからは共犯ってことで」
「え、犯罪をするの……?」
「いやいや、比喩だから。同じ秘密を共有する仲ってこと。因みに、明月さん達にも話して無いから本当に他言はしないように」
「わ、わかった」
「明月さんたちにも話している範囲では、高嶺を幸せにする。これは、高嶺の魂の安定を意味していて、人の幸せ……恋をして、それを実らせて、好きな人と共に生き、幸せな家庭を作っていく……そんな人としても幸せ謳歌する必要がある。だから四季さんが言っていた様に恋人を作るって路線はあながち的外れでもないんだ」
「そうなんだ、ということは……明月さんらに話していない事が?」
「そう、高嶺だけではく、明月さんにも幸せになってほしいと考えている」
「明月さんにも?」
「うむ、俺としては高嶺と明月さんが共に幸せになってくれると万々歳って感じだ」
「つまりは……二人をくっつけようってこと?」
「端的に言えばそうなるな」
「なんか……想像していたより拍子抜けなんだけど」
「聞くだけだと、余計なお世話をしようとしているだけだしな」
「でも、澤田君にとっては重要なこと……なんでしょ?」
「ああ、物凄くな。超絶重要なことだ」
「どうするつもりなの?なにか手伝えることとかある?」
「そうだな、四季さんには高嶺の動向を見守っててほしいかな?」
「高嶺君の……?」
「そそ、高嶺が何をしたとか、どんな行動を起こしたとか気にしてもらえると助かる」
「そんなことでいいの?」
「勿論、俺もあっちこっちと気に出来るだけの余裕があるかわからないし、見逃すかもしれないから、手伝って貰えると助かる」
「ん、りょうかい。気にかけておく」
「よろしく」
これで四季さんは高嶺のこれからの行動に注視するはず。新しいメニューを作ったり、お店の為にと頑張る姿を見て自分も……、となってくれると助かるのだが……。
「実際のところ、澤田君にはどんな感じに未来が見えてるの?いつまでとか?」
「ん?それは秘密だ。こればかりは企業秘密とさせてもらおう」
「宝くじの結果が見れたりは?」
「無いな。残念ながらよくある儲け話とかはできなからな?」
「なーんだ。つまんない」
「それが出来たら今頃俺は金持ちだろうな……」
「何が出来るの?」
「……人の覗き見?」
「言い方……それだとただの犯罪者でしょ。おまわりさーん!」
「ふっふっふ、この部屋には二人しかいないぞ……?」
「うわぁ、安っぽい役者だな……」
失礼な。
「それで、何が出来るの?」
「視れる相手がどんな行動を取ったかとかそんなレベル」
「へぇ、そのまんまね」
「例えば、ある日高嶺が帰ろうとした時に、俺と一緒に帰る場合と、四季さんと一緒に帰る場合の未来があって、そのどっちを選んだか把握できるとか」
「ふむふむ」
「勿論、どっちを選ぼうが大して結果は変わらない場合もあるが、その選択で今後の未来が大きく変わる場合があるかもしれない」
「それをいつも見定めてるってこと?」
「言ってしまえばそうなるな」
「……なんか、物凄く疲れそう。毎日気を張ってるわけでしょ?」
「慣れれば余裕よ」
「そんなもん?」
「そんなもん」
~後日~
「オムライスの方上がりましたー」
「おっけー。昂晴、チーズケーキの方お願い」
「了解です!」
「ジーーー」
「し、四季さん?オムライスだけど……?どうかしたのか」
「ううん、何でもない。貰ってくね」
「………」
「昂晴、あんたナツメさんに何かした?」
「いや、全く心当たりが無くて……今日の講義の時も何回か同じような事があって……」
「……ソレハタイヘンダナァ」
「自覚がないだけなんじゃないの?」
「俺、何かしたんですかね……?」
「高嶺、俺が後でやんわりと聞いておくよ」
「ほんとですか?ありがとうございます」
「お、おう……なんかすまん……」
美人な同僚に何度も睨まれ……ご褒美ではっ!?