喫茶ステラ ―異邦人と蝶の残滓―   作:コクーン√

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ちょーっと、暗めの場面へ突入します。




第62話:食

 

 

テスト期間が近づき、高校生組2人はテストを乗り切るまで店のシフトよりも勉強を優先させることに決まった。

 

勿論、そのことで異論を唱える人達はこのお店にいなかった。だが、抜けた穴は大きい。平日であれば多少は問題無いが、休日の土日となれば話は別だ。

 

「オーダー入りまーす。パンケーキとオムライス。それにカプレーゼ風パスタをお願いします」

 

「はいよー」

 

「あと、すみません。ドリンクの方を少し手伝ってもらえませんか?」

 

「こっちもそんなに余裕がある訳じゃないんだけど……放置は出来ないしねぇ」

 

「あ、それなら自分が行きますよ?今オムライスの方が丁度終わったので」

 

「そう?それじゃあこっちは私と昂晴でやっておくから、ごめんだけどお願い」

 

「すみません。ありがとうございます」

 

「人少ないからな。仕方ない」

 

フロアに出ると、想像以上に賑わっていた。

 

「それじゃあ、ドリンク系は俺の方で対応するから、明月さんは客捌くのをお願い」

 

「わかりました。お願いします」

 

オーダーを確認して用意する。コーヒーが2つと、紅茶ね。こっちは紅茶2つと……。

 

5人分のドリンクを用意する。注ぐまでの余りに厨房の完成品を運ぶ。

 

「すまんっ、明月さん。これ6番テーブルのお客様」

 

こちらへ戻って来た明月さんへトレイを渡す。

 

「了解です。こちら8番テーブルのオーダーになります」

 

「了解、もらうよ」

 

8番……って、結菜ちゃんか。

 

紙を受け厨房へ向かう。

 

「すみません、オーダー、オムライス1つとパンケーキ1つ入ります」

 

「了解です!」

 

「因みに、このオムライスは結菜ちゃんの注文だ。高嶺シェフ、期待してるぞ」

 

「はいっ。任せて下さい!」

 

フロアに戻り、コーヒーと紅茶を淹れる。

 

「2番テーブルと5番テーブルのドリンクおっけーっと」

 

今度は注文を受けた四季さんがこちらへ来る。

 

「ごめん、これお願いしてもいい?」

 

「おっけーもらう。代わりにこれ2番テーブルへお願い」

 

「うん、ありがと」

 

受け取ったオーダーを再度伝えて戻り、5番テーブルへ飲み物を届ける。

 

「お待たせしました。ドリンクになります。アールグレイのお客様」

 

「あ、私です」

 

「ダージリンはあたしでーす」

 

「こちらがアールグレイ、こちらがダージリンになります。それでは、ごゆっくりどうぞ」

 

注文を届け、戻る。次は……オレンジジュースとダージリンだな。8番のやつだな。

 

「パンケーキあがったよー!」

 

「もらいますっ」

 

上がったパンケーキを受け取りに行く。

 

「オムライスとパスタはどうですか?」

 

「パスタはもう上がるっ、オムライスはもうちょっと」

 

「了解です。ドリンク淹れているので上がったら運びます!」

 

「あいよー」

 

パンケーキを席まで届け、再びドリンクを淹れる。

 

「澤田君、ガトーショコラってまだあった?」

 

「まだあるな。チーズケーキの方も平気だ。今受けたオーダーのフルーツタルトもまだあったぞ」

 

「わかった、ありがと」

 

この調子なら追加で作らないといけないのが出てくるなぁ……。厨房にも行かないと。

 

「お待たせしました。オレンジジュースとダージリンになります」

 

「あっ、魔法使いのおにいちゃん!ありがとうございます!」

 

「いえいえ、どういたしまして。オムライスも今厨房のお兄ちゃんが作っているからもうちょっとだけ待ってね」

 

「はい!楽しみです」

 

「すみません、娘が……」

 

「気にしないで下さい。作る側も喜んで食べてくれるのは嬉しいですから」

 

一礼して席を離れる。ついでに帰られた席の皿も回収していく。

 

「あ、澤田さん、ありがとうございます」

 

「客入りは捌けそう?」

 

「この調子でしたら何とかなると思います」

 

「もしかしたら涼音さんにケーキ類を追加で作ってもらうかもしれないからその時は一旦戻るわ」

 

「分かりました」

 

一言断りを入れて厨房へ。

 

「へーい、洗い物でーす」

 

「そこに置いといてー」

 

「色々と足りそうですか?」

 

「今のところは平気。けど、この調子ならまた作らなきゃかもね」

 

「今日はガトーショコラの売れ行きがなんかすごいですね」

 

「たまにあるんだよねー、特定のだけ馬鹿みたいに売れる日が……っと、パスタ上がったよ」

 

「こっちのパンケーキとオムライスも上がりました」

 

「了解。運びます」

 

これは……5番テーブルと2番か。

 

後は8番の料理と、3、4番テーブルのデザートがもう少しと……7番は出揃ってるな。

 

「運ぶか」

 

中々忙しいが、それもお店が良い感じに進んでいる証拠と思いながらトレイを席まで運んだ。

 

 

 

 

 

「あー……終わった終わったぁ」

 

ピークを何とか捌き、一息付ける……なんて考えていたが、客足はそこまで衰えずに暫く奔走した。流石に夕方が来ればそれなりに落ち着き、なんとかフィニッシュを迎えた。

 

「お疲れ様です」

 

「明月さんもお疲れさま。今日なんかピーク長くなかったか?」

 

「そうだったんですよねぇ、ありがたいことに……」

 

「まぁ、良い事には違い無いんだけどなー、如何せんタイミングが……」

 

「ですが、澤田さんがお二人が戻るって言っても追い返したじゃないですか」

 

「行けると思ったからな……。少し見栄を張り過ぎたかもしれん」

 

「男の矜持ってやつですか」

 

「かもな。そういえば二人はどんな感じ?」

 

「さきほど、高嶺さんがテストの採点を始めていましたね」

 

「その辺りか……。少し、様子を見て来て貰ってもいい?墨染さんは疲れとかでケアレスミスがあるから休んだ方が良いってアドバイスをしておいた方がいいのと……、火打谷さんは……良い感じに点数は上がってきてるはず。元があれだからだけどな」

 

「さも普通のように仰ってますね……しかもフロアで堂々と」

 

「今更今更、フロアには涼音さん以外になら今は平気だし」

 

「それもそうですね。分かりました。ちょっと様子を見てきます」

 

「ういす、お願いします」

 

手を振りながら明月さんを見送る。

 

「少しいいか?」

 

今度はミカドさんから声をかけられる。

 

「ん?どうかした?」

 

「愛衣のことについてだ。あれからまた見つけたか?」

 

「いや、遠出で見つけたのはショッピングモールだけだな。あとはお店に来てくれた人の回収とかぐらい。一応自分で見つけたら回収はしてるって言ってたけど」

 

「そうか。こちらが把握してる内容と同じ様だな」

 

「今はテスト期間だし。それが終わったら再度練習するなり、一度瞳から回収するなりしておこうか」

 

「そうだな。今は余計なことはせず勉学に励ませた方が良い」

 

「了解。見てる感じだと安定してると思うから心配は無いと思う」

 

「わかった。また何かあれば連絡しよう」

 

……そういえば火打谷さんの件は進めて無かったな。お店でもちょくちょく回収を任せていたからそのままにしていたわ。

 

「さてと、帰りの準備でもーー」

 

「澤田君、ちょっといい?」

 

「あいあい?」

 

今日は色んな人から来るな。クリスマス前のモテ期か?

 

「今日って、この後……暇?」

 

「……え、それって……?」

 

 

 

 

 

 

「ごめんね、また手伝ってもらって……」

 

四季さんが俺の部屋へ……!!しかし、当然のごとくテスト対策の件である!!

 

「このくらい大したことじゃないし、四季さんと同じ空間に入れるならむしろ喜んで手伝いますとも!」

 

「空間て……普通にキモイんだけど」

 

「ふっ、それは俺みたいな奴の業界ではご褒美だぜ……?」

 

「決め顔で言うな、キモさが増す」

 

「あーい」

 

「けど、感謝はしてる。ありがと」

 

「その労いだけで今日も頑張れるなぁ……」

 

「あと数時間しかないけど?」

 

「その数時間を頑張るってことに決まってるだろ?」

 

「単純すぎるでしょ……」

 

「男とは、そういう生き物だ」

 

「わかったわかった……はい、これお願い」

 

四季さんから受け取った問題集の付箋のページを纏めて行く。

 

「……因みになんだけど、男の人って何されたら喜ぶ?」

 

「……どうしたんだ、唐突に?」

 

「いや、ほら、澤田君には色々手伝ったり助けてもらってるから、何かお礼をしたいなーって思って」

 

「なるほど」

 

「だから、何がお礼に?恩返しになるのか聞いてみた」

 

「あー……お礼か……」

 

ここで、気にしなくて良いと言っても頑なに引き下がらないのは目に見えてるし……何か言った方が良いか?

 

「そうだな……飯がまだだし、晩御飯作ってもらうとか?」

 

生姜焼きを思い出す。

 

「いや、そんなことでいいの……?」

 

「そんなこと……だとっ!?」

 

「え、なんでそんなに驚くの?」

 

「女の子に晩御飯を作ってもらう……これが、そんなことの訳がないっ!!」

 

「そんな力説されても……」

 

「世界に存在する男の夢だっ!人の夢だ!これがどれだけの偉業か……!」

 

「どうしよう、なんかやばいスイッチでも押したかな?ワタシ……」

 

俺の答えに呆れた表情でペンを止める。

 

「冷蔵庫の中、確認してもいい?」

 

「ん?良いけど、どうしたんだ?改めて……」

 

「自分でさっき言った事忘れたの?晩御飯、作って欲しいんでしょ?」

 

「………、マジでっ!?」

 

「え、そこで驚く……?」

 

「はっ、待てよ。これは喜んだ俺をぬか喜びさせるための高等な罠……!?」

 

「ワタシをなんだと思ってるの。そんなことしない」

 

「じゃ、じゃあ……本気で、作るのか……?」

 

「だから最初からそのつもり。嫌なら別のにするけど……」

 

「いえ!是非ともお願いします。俺は晩御飯を望みますっ」

 

「必死過ぎでしょ……、まぁ、悪い気はしないけど」

 

立ち上がり、冷蔵庫の中身をする。

 

「んー……澤田君は今日何か作るつもりだった?」

 

「今日は特に考えてなかったな。卵と……鶏肉がまだあったし、親子丼とか?あ、でも葉っぱが無かったな」

 

「葉っぱて……別にカイワレ大根とか三つ葉が無くても良いんじゃないの?」

 

「それもそうだな」

 

「台所も好きに使ってもいい?」

 

「ええ、どうぞどうぞ」

 

「それじゃあ、作ろうかな」

 

スマホを開き、作り方を調べ始める。

 

「それなら、俺は米でも炊こうかな」

 

「ストップ。それもやるから。澤田君は大人しくしてて」

 

「ア、ハイ」

 

立ち上がろうと中腰まで上げた腰を下ろす。

 

「んー、なるほど。意外といけそう」

 

スマホを見ながら必要な食材や物を用意していく。

 

「………」

 

これは、夢だろうか。俺の部屋で四季さんがご飯を……原作では生姜焼きであったが、これはこれで……すごくいいっ!!最高ですっ!

 

「……ん?どうかしたの?」

 

「幸せを噛み締めていたんだ……うぅ……」

 

「はいはい、出来るまで続きをお願い」

 

こんな時にテストの問題など作ってる場合じゃねぇ!いや、しかし、四季さんからの頼みを断る訳には……!

 

「くっ……!なんて残酷な選択を強いるんだ……っ!」

 

「急に苦しみながら何言ってるの……」

 

「けど、承知した。引き続きテスト作成に努める」

 

「うん、お願いします」

 

茶番を終え、再度紙と向き合う。

 

しかし、晩御飯を作っている四季さんが気になる……が、ペンを走らせる。

 

俺に第三の目があれば……。悔やまれる。

 

 

 

 

 

ご飯が炊き上げるまでの待ち時間があるため、それまでの間テスト対策の準備を進めていた。

 

「……あ、炊けたみたいだな」

 

炊飯器からの通知が鳴ったのを聞いて、蓋を開ける。

 

「うむ、新鮮な白米だな」

 

湯気に当てられながら中身をほぐして蓋を閉じる。

 

「それじゃあ、こっちも温め直そうかな」

 

それからすぐに丼の茶碗に盛られた親子丼が出来上がる。

 

「はいどうぞ」

 

「おおおぉ……」

 

夕食なのでテーブル上の資料などは既に退避させている。

 

「普通の出来だから、あまり期待しないでね」

 

「大丈夫。例え四季さんがメシマズキャラだったとしても食べ切れる自信がある」

 

「なんの自信だが……」

 

「俺が、食べても良いのか?」

 

「どうぞ、その為に作ったんだから」

 

「ありがとうございますっ!いただきます!」

 

箸を手に取り、親子丼を食べる。

 

「……どう……?」

 

「……この世界に生まれ直して良かった」

 

目を閉じて、天を仰ぐ。

 

「大げさでしょ」

 

「いや、大げさじゃない。美味しい。人生で一番美味しく感じたご飯って自信もって言える位には美味しい……!」

 

「そう……?なら、まぁ、よかった。それじゃあ、ワタシもいただきます」

 

「本気で。世辞でも何でもない。冗談とかふざけているわけじゃないからな。本心から思ってる」

 

「わかったから。冷めない内に食べて」

 

「ああ、胸に刻みながらありがたくいただくよ」

 

四季さんからの手作りの晩御飯……手作りの!親子丼を!食べ終えて、ゆっくりとだがまたテストの準備を進めていく。

 

「んーー、こんなもんかなぁ」

 

「今日は終わりか?」

 

「そうする。一応出来上がったしね。あとはこれを理解して解ければそれなりの点数は取れると思う」

 

「了解、んじゃ帰りますか」

 

「そうする」

 

上着を着て、四季さんを送るため部屋を出る。

 

「それにしても、どうして急にご飯をつくるなんて言い出したんだ?」

 

送り道の途中に、気になって聞いてみる。

 

「さっきも言ったでしょ。手伝って貰ったお礼にって」

 

「それはそうだが……行動に移すにしては急だなって思ってさ」

 

「そう?」

 

「ちょっと引っかかっただけだから特に意味がないならスルーしても良いけどな」

 

「んー……まぁ、確かに勢いに任せたとは、自分でも思う」

 

「やっぱり?何か焦りでも?」

 

「そうかも」

 

「それは……最近高嶺や皆が頑張ってるのを見て、触発されたと見て良いのか?」

 

「そんな感じ。ワタシもお店の為に頑張らないといけないと思ったと同時に、まずは手伝って貰ったことに対してワタシから何か出来ないかなって」

 

「なるほど。それは良い事だな」

 

「と言っても、大したことは出来てないけどね」

 

「チャンスならこれから幾らでもあるだろ」

 

「あるかなぁ……?」

 

困った様に苦笑いをする。

 

「次で言えば、クリスマスイベント。お店でも限定のケーキ……ブッシュドノエルとか出すかもしれないしな。その時が最初の機会だな」

 

「けど、クリスマスはいつも以上にお客さんは来るし……」

 

「クリスマスを甘く見ちゃいかんよ。向こうから客が来る……なんて考えだったら好機を逃すぞ?」

 

「それは経験則?」

 

「経験則も含めてだな」

 

「そうなんだ……それじゃあ色々と考えてみようかな」

 

「イヴと当日はお店に缶詰め状態だし、今年は寂しいクリスマスになると思うけど……お互い頑張ろうかぁ」

 

「そんな惨めに言わない。お客さんが笑顔になってくれるのを喜ばないと」

 

「そうだな。俺たちの犠牲の上に笑顔が出来上がるんだよな。その次は同じくバレンタインのイベントを……四季さんは渡す相手とかいる?」

 

「ワタシ?特にいないけど?」

 

「お店のメンバーはどうするんだろう……高嶺に恋人が出来たら本命から貰うだろうし……そうなると義理か。そのお零れをワンチャンもらえるのか?」

 

「そんな乞食みたいな……てか、高嶺君に彼女が出来るのは確定なの……」

 

「その前提で考えてる。けど、その分お返しのホワイトデーが何かと……うーむ」

 

「なに?チョコレートほしいの?」

 

「そりゃあな。男にとっては年の一度のビックイベントだ。しかも世間には色んな種類のチョコが出回るし楽しみだ」

 

「自分で買いに行くんだ……」

 

「気になれば買うな。無論、人から貰えるなら何でも嬉しいが」

 

「そっか、それじゃあ用意しようかな」

 

「……それはとてもありがたいのですが、無理しなくても良いからな?」

 

「別に、無理してない」

 

「四季さん、そういうイベントあまり好きそうじゃないし」

 

「それはそうだけど、たまには良いかなって。気が向いただけ」

 

「……それなら超楽しみにしておこうかな」

 

「ハードル上げるの止めてくれる?」

 

「無理、あと2か月を全裸待機するレベル」

 

「そのまま凍死すればいいのに……」

 

絶対零度っ!視線ありがとうございます!

 

「まぁ、まだ先の話だしな」

 

「そうね、まずはテストを乗り切ってもらわないと」

 

四季さんが先の話をしているのを見て、無性に嬉しく感じる。ミカドさんから聞いた感じでも以前より蝶も元気になっているって話だし、この調子で行けば何とかなるかもな。

 

「何だが嬉しそうだけど、何かあった?」

 

「いやー、四季さんとこうして一緒に未来のことを話してると思うと自然とな……」

 

「なにそれ」

 

「以前の四季さんならこうも楽しそうに話さなかったからさ」

 

「そうかな……?けど、そうかも」

 

「無事、四季さんの中で心境の変化があったってことだよな?」

 

「まぁ、色々と?それなりには……」

 

「やっぱり、高嶺とかの頑張る姿をみてか?んん?」

 

「それもある。けど、一番は澤田君……かな?」

 

「お、まさかの一番指名か?こりゃ嬉しい」

 

「まさかも何も。あんなに頑張ってる姿を見たり聞かされたりしたら、嫌でも頑張らないとってなるに決まってる……」

 

少し拗ねた表情で目を逸らす。

 

「それはそれは……」

 

「なに、なんか文句でもある?」

 

「いや、頑張っただけの甲斐があったなって思っただけ。ちゃんと俺も四季さんに与えられるだけの物を持ってたんだなって」

 

「普通にそうでしょ……その言い方は嫌味にしか聞こえない」

 

「それは、すまん。けど……うん、素直に嬉しい」

 

そう言って貰えるだけで、これまでの頑張りに意味があったな……。

 

「……ねぇ、澤田君、一つ質問してもいい?」

 

「……どうした?」

 

さっきまでの雰囲気とは違い、不安そうな表情で俺を見る。

 

「どうして、澤田君は、ワタシに協力しようと思ったの?」

 

「何か気になる事でも……?」

 

「色々とね。ワタシに協力しようってなったキッカケって何だろうってふと思ってね。勿論、お店を開くためにはワタシが本気で開く覚悟が必要だったから助けてくれたってのは分かる。未来が視える澤田君なら狙って動く事も出来るしね」

 

「けど、お店を開いた後でも、変わらずに助けてくれてる。それなら、最初からお店を開く関係無くなのかなって?それか、開いた後も何かあるのかなって最近考えててね」

 

「うん」

 

「さっき話しを聞いて思ったの。もしかして、高嶺君だけじゃなくて、ワタシの魂も助けるつもりなんじゃないかって……」

 

「……面白い仮説だな」

 

「ワタシの魂が蝶になって零れ落ちてるのは当然知ってるよね?それなら、その理由も知ってる。違う?」

 

「………、続けて」

 

「ワタシがお店を開こうと考えたのは、閣下達が好き勝手言って来たときに思ったの。『何も関係のないこの2人なら迷惑かけてもいいんじゃないだろうか』『向こうが言ってきたから自分の責任じゃない』って……覚えてる?以前、明月さんの部屋で似たような言葉を澤田君の口から言われたこと」

 

「さぁな、どうだったかな」

 

「ワタシは覚えてる。なんせ、自分が思ってたことをそのまんま言われて言いくるめられたから」

 

「偶然とは恐ろしいな」

 

「未来や過去が視える。でもそれだけじゃなくて触れた蝶の記憶も見れる。あの裏路地でしていたみたいにね」

 

「それなら、ワタシの過去や記憶も読んだ。その時に、共感とかしたのかなって……」

 

「知ったから、見過ごせずに高嶺君だけじゃなくワタシも助けようとした……どう?」

 

「……単純に、四季さんに一目惚れして、お近づきになりたかっただけだったら?」

 

「なにそれ……自分で言ってる時点で否定してるようなもんでしょ」

 

苦笑しながらこっちを見る。

 

「まぁ……正直それもあるのかなって考えもしたけど、でも、今の澤田君の顔を見ればそうじゃないってわかる」

 

「……なんだ、顔がキモイとでも言いたいのか?」

 

「ううん、なんだか……寂しい目をしてる。何かを後悔してるみたいな顔。まるで自分を見てるみたい」

 

「四季さんと似るとか光栄だな」

 

「自分で気づいていたかわからないけど、お店とかでもたまにしてる」

 

「店ではいつも笑顔のつもりだが?」

 

「なんだろう、ふとした瞬間、思い詰めた様な……顔をする時がある。特にワタシと話した後とかにね?」

 

「……見てるのは高嶺じゃなかったのか?」

 

「見てた。けど、参考にする人はなにも高嶺君だけじゃないでしょ?一番は澤田君だったし」

 

「なるほどなぁ」

 

「それでね。一つの仮説を立てたの。聞いてくれる?」

 

「嫌だと言ったら?」

 

「その口を針で縫う」

 

「こっわっ!?猟奇的!」

 

「それでね、どうしてワタシを見てそういう顔するのかなーって考えて、思いついたの。ああ、そういえばワタシ、一度目の世界で死んでるなって……」

 

「………」

 

今日の四季さんは痛いとこを突いてくるなぁ……こういうのは素直に喜べないな。

 

「そこでさっきと繋がるんだけど、もしかして澤田君って、それを知っていたんじゃないのかなって……」

 

 





区切ります。後半へ続く……。

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