後半です。
「そこでさっきと繋がるんだけど、もしかして澤田君って、それを知っていたんじゃないのかなって……」
「何を、かな?」
「……うん、やっぱり知ってるみたいね。ワタシが高嶺君と同じ事故で死んだってこと」
「………」
これは……言い逃れは出来ないかな?
「あ、勘違いしないで。別にそのことについて責めたり文句言う気は全くないから」
「……違うのか?」
「そりゃ、最初はその理由は気になった。けど、澤田君は意味も無くそのままにするのはあり得ないし、何か理由があったからそうした。でしょ?」
「ああ……そうだな」
「なら良い。高嶺君が世界をやり直すってのもわかっていたからそのままにして今の世界になった。そして、やり直した本人は明月さんや閣下と一緒にお店へやってきた。そして、墨染さんや、お店のリフォーム。涼音さんを紹介したり色々なことをしてくれた」
「つまり、お店を開くためには高嶺君がどうしても必要だったってことでしょ?」
「……ああ」
「それなら、むしろ感謝したいくらい。そのおかげで夢が叶ったんだから……ありがとう」
「……感謝される様なことじゃない」
「澤田君はそう言うと思った」
「それに、まるで自分の夢が終わりみたいな言い方をしてる」
「うん。そのつもり」
「それはどういう意味だ」
「これ以上、ワタシのために頑張らなくていいってこと。あとは高嶺君と明月さんに集中して」
「……別に無理して頑張ってるわけじゃないんだけど?」
「ううん、無理してる。これ以上、澤田君に迷惑はかけられない。ワタシのせいで辛い思いはさせたくない」
「四季さんのせいで……?」
「そうでしょ?これまで沢山助けてもらった。けど、それは澤田君の我慢の上に成り立ってる。私を見捨てたって思ってその罪滅ぼしのために……」
「……そう見えたのか?」
「見える。今も辛そうな顔してるしね……ごめん、嫌な事を思い出させて」
「いや、これは違う……」
「違うようには見えないけど……?」
「……それで、四季さんはどうするつもりなんだ?」
「どうするって……?これまでと変わらない。これ以上は、変わらない」
そう目を伏せていう顔は、いつか見た諦めた様な寂しい表情を……。
「これ以上を……望まないって言うつもりか?」
「そうね。だって、ワタシが高望みすると、澤田君は喜んで手伝うでしょ?」
「そりゃ当然の話だな」
「だから望まない……って、本当はこんな話をする気なかったんだけどなぁ……なんか場の雰囲気に流された」
「四季さん」
「ん?なに?」
「俺も場の雰囲気に流されて話すけど」
「え、うん……」
「正直に言えば、俺は四季さんが思ってるような良い人じゃない」
「ぇ、うん。知ってる」
「………」
「………」
「しかも!」
「あ、現実逃避した」
「確かに俺は1度目の世界で、2人を見捨て……いや、見殺しにした。それも高嶺が幸せを掴むためだと考えてだ。けど、ちゃんと考えれば、四季さんが死ぬ必要はなかった。世界をやり直すなら、事故に遭うのは高嶺1人で問題無かった。それなのに俺は思考を止めてそのままにした」
「それに対して罪悪感がないとは言えないし、罪滅ぼしの意味もあって協力したのは認める……けど!俺が協力している理由はそれだけじゃない」
「他に……あるの?」
驚いた表情で俺を見る。
「ああ、四季さんに笑顔でいてほしい。笑って人生を過ごして、楽しいって思えるような日々を過ごして欲しいって思ってるからだ」
「え、なに急に?告白?」
「好きに捉えて貰っても構わない。四季さんは自分が変われない。これ以上自分の我儘で周りを巻き込みたくないって思ってるかもしれないけど、そんなことない、全然そんなことはない。人は変われる。何かの小さなキッカケ、勇気で変われるんだ」
「なに?それは経験則?それとも澤田君の力?」
「残念だが、これは経験則だ。変われた男がここに居るからな」
「昔の俺も似たような感じだった。親の居なかった俺は他とは違うってな。授業参観とか、遠足の弁当。自分の親は~って話をされてもわからなかった。話についていけない。それを言えば皆は気を遣って同情した目で俺を見る……それがわかったら自然と距離を置くようにして生きて来たよ」
「そのまま高校を卒業して仕事に就いたが、暫くしてクビになってさ、自分なりに頑張って生きていたつもりだったが、そんなことなかったのかってなんかどうでも良くなった」
「何故か叔父は、特に理由を聞かずに無職を続けさせてくれたよ。そして、このままこんな人生が続いてくんだろうなって思いながら過ごしていると、とある人を知ったんだ」
「その人は、自分が小さい頃から体が弱く、何度も入退院を繰り返していて、学校にもまともに行けず……そのせいでクラスメイトの輪にも入れず、けれど、せめて自分が楽しみにしてたことを聞きたいと思っても皆にとっては大した事のない日常の一コマ」
「……っ!?」
「しかも、ご両親にはいつも迷惑をかけてるからワガママを言うわけにも行かない。そんな考えを続けていると、自然と他人と距離を置くようになって、色んなことを諦めて……生きて来た」
「それって……」
「けど、転機が訪れた。死神と名乗る女性と、神の遣いとかぬかす猫だ。そして、次に世界をやり直したとか言う男が店に来て、更にはお店で働く人も集まる。彼女は戸惑いながらも決意をして無事お店をオープンさせることが出来た。『CAFE STELLA』って名前のお店を」
「そこからは忙しくも楽しい日々が始まった。眩しいくらいに、毎日がキラキラと輝いて見えた。周りを困らせてばかりの自分が……周りの人を笑顔にしている事を知って、気が付くと、彼女も自然とそれを受け入れていた」
「毎日が楽しくて、諦めかけていた自分にもまた望んで良いと思えるような、そんな明るい人生が、世界があるんだって……」
「澤田君……」
「そんな姿を見て、簡単にあきらめていた自分が嫌になったよ。ああ、俺にも変わることが出来るかもしれないって希望を同時に抱いたよ」
「そこからは前にお店で話した通りだ。そして、何の因果があったかは分からないけど、この世界に来た。俺が知っているこの場所に……どうして来たかは今でも分からない。けど、もしその意味を自分で創るのなら……」
困惑した表情の四季さんを見つめる。
「四季ナツメ、キミを助けたい。明月さんへの恩返しでもなく、俺の意思で。四季さんのおかげで救われて変わることの出来た男がここにいる。なら、今度は俺が四季さんを助けたい。明るく、楽しそうに笑いながらみんなで働く姿を見たいんだ。そのために俺はこうしている。罪滅ぼしじゃなくて、そうしたいと俺自身が願ってるからだ」
「だから、夢を……望みを諦めないでほしい。それを俺に手伝わせてほしい。その夢を叶える所を見せてほしい」
「………、でも、これ以上は……」
「でもじゃない。諦めるとかそんな後ろ向きの言葉は無しだ」
「なにそれ、ムカつくなぁ……」
「前向きになってくれるなら幾らでもムカついてくれ。その度に喜んで罵られてあげよう」
「……迷惑じゃ、ない?」
「まさか、むしろご褒美」
「……良いのかな?ワタシみたいな、ちっぽけな夢でも……」
「俺にとっては世界一だけどな。好きなだけ願ってくれ。その度に好きなだけ付き合わせてもらうから」
「……ほんとに?色々と面倒なこと言うかもしれないし……」
「それも思い出として楽しかったって懐かしめるようにして行けば無問題。それで?まだ肯定して欲しいところあるか?」
「……手伝って、くれる……?」
「喜んで。それで四季さんの笑顔が見れるなら。それが俺の望みでもあるからな」
笑って手を差し出す。冬の夜風に当てられ、すっかりと寒くなってしまったが……まぁいいだろう。
「四季さんが諦めても、俺は諦める気は無いからな。先に諦めることを諦めるのをおススメしておくぞ」
「なにそれ……。脅しにもならないんだけど?」
困ったような、呆れた様な表情で笑う。
「うん、分かった。……それじゃあ、どっちが先に諦めるか楽しみにしておこうかな?」
呆れながらも、小さく笑ってこちらに手を差し出す。
「それはそれで未来の楽しみの一つだな」
それに釣られるように笑いお互いに手をーーー
「--ッ!?」
握ろうとした瞬間、突然四季さんが苦しそうに胸を押さえ始める。
「ど、どうした!四季さんっ!?」
苦痛に歪む表情を浮かべ、倒れそうになったのを急いで支える。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」
呼吸もままならない様子で、体に力も入っていない。そして、そのまま気を失った。
「四季さんっ!……ッ、救急車を今呼ぶからな!」
ポケットからスマホを取り出し、すぐさま電話を掛けた。
その後、駆けつけた救急車に乗せられすぐさま病院へ運ばれた。途中で離された俺は急いでお店へ電話をした。運よくミカドさんがまだ下に残っていたようで、事情を説明して二人に来てもらい、四季さんの魂の様子を見て貰った。
その結果、魂に何らかの影響が起きているという結論が出た。詳細までは分からないが……。
「………」
そして、病院に居ても仕方がないので、一度お店へ引き返して今に至る。
「ミカドさん、ナツメさんは……」
「今の所はまだ無事だ。だが……最悪、このまま行けば目を覚まさない可能性もあるだろう」
「そんな……!」
「だが、事実だ。原因が分からなければ手の出しようもない」
「さ、澤田さん?」
「すまん、さっきも言ったけど、これについては俺も想定外だった……」
「い、いえ、ですが、あまり自分を責めて思い詰めないで下さいね?」
「……ああ、ありがと」
「今は病院で治療を受けている。上手く行けばそれで目を覚ますかもしれない。それに、ここに居てもどうにも出来ん。今日は帰るがいい」
「……そうだな。急に呼び出したのにありがとな」
「変な遠慮は要らん。何かあればすぐに我輩たちを呼べ」
「ああ。おやすみ」
二人に見送られながら店を後にする。
「……どうして」
考えられるのは原作でも起きた事件。けど、あれはもっと後の話だった。しかし現実に起きたのなら、時期では無く魂自体に何か起きたのではと考え見てもらったが、案の定だった。
問題は四季さんの魂に何が起きているかだ。それが問題である。
「……考えろ。原作と共通点が無いか、それとも別の原因かを……」
部屋へ戻り電気もつけずにずっとそのことを考える。
「何かが四季さんの魂に影響を及ぼしたのは事実だ。蝶の羽ばたきも弱まっていた」
安易に考えるなら直前まで居た俺だろう。俺の魂に感化された……?しかし、これまではそう言った場面は見られなかった。
「……くそっ、頼み込むしかないか!」
スマホを取り出し、真夜中だけどそれを無視して電話を掛ける。
「あー、もしもし?なんじゃ、こんな真夜中に……妾の子守歌でも聞きたくなったのか?」
寝起きと思われる声で電話を取った相手に頼みごとをする。
「夜遅くにすまん!至急頼みたい事がある……!」
「……どれ、話してみせよ」
「お店の人で倒れた人が居る。その人の魂を見て欲しい」
「魂をとな……良かろう。準備をするゆえ、メッセージで詳細を送るがいい」
「ああ、分かった!」
通話を切り、これまでの流れを詳細に書いて送る。数分後、『これから向かう。報告を待つがいい』とスタンプ付きで返信が来た。
「……これで、何か分かれば良いが……」
焦る気持ちを落ち着かせながら、待つ。その間も、倒れてしまった原因を考える。
30分が経ったくらいに、玄関のインターホンが鳴る。
「っ!?……もしかして」
急いで玄関のドアを開ける。
「やはり起きておったか」
そこにはいつもの煌びやかな衣装を着た卯花之佐久夜姫が立っていた。
「中に入るぞ」
「ああ」
部屋へ案内する。
「結論から言う。魂が弱っておる」
「つまり、ミカドさんと同じ結論か……」
「これ、早とちりするでない。続きを聞け」
「続き……?」
「ああ、ナツメの魂が弱っているのは元々じゃ。今回の原因は別にある」
「詳しく聞かせてくれ」
「おぬしらが言う魂の分離、いわゆる蝶となって魂が零れ落ちた。それによって彼女の魂は一般の人間より弱い。いわば病弱な体質の人間と同じじゃな。何かしらの干渉などでも体に影響を及ぼしてしまう位にな」
「じゃが、これまでは問題無く生きて来られた。多少の刺激があっても、その分魂も元に戻ろうと強くなっていたからのう……。しかし、その魂の許容範囲を超えてしまい、それが体にも影響を及ぼした。恐らく、これが今回の原因だ」
「……何をしたら、魂に影響を、及ぼすんだ?」
「魂とは自分の心じゃ。沈んだ気持ちを持てば魂にも影響を及ぼす。勿論逆も然り」
「それは……つまり、マイナスだけじゃなくプラスの考えもってことか?」
「そうじゃな。ナツメの魂の許容よりも強い気持ちを持てば、当然その分魂へ無理を強いる」
「……ああ、なるほど、理解したよ」
つまり、倒れる直前に俺が背中を押した事で希望を持ってしまって……。
「まてまて、妾の話は終わっとらんぞ?」
「まだあるのか?」
「当たり前じゃろう。原因がわかってそのまま終わりと行くわけがない、まぁ聞け」
「ナツメの魂は今は荒れておるが、その内落ち着きを取り戻す。そうすればすぐにでも目を覚ますじゃろう」
「ほんとかっ!?」
「じゃが、問題が解決したわけじゃない。その内、また同じことが起きる確率が高い……いや、起こるだろうな」
「……目を覚ましても、魂の問題を解決しない限り、続くのか」
「だろうな。だから何とかして魂を元に戻さねばならない。それが出来れば不安は取り除けるはずじゃ。じゃが、今の所その方法は思いつかん、すまんな」
「いや、原因が分かっただけでも助かった。四季さんの魂を安定させれば良いんだな?」
「ああ、そうじゃな」
「分かった。少し考えてみるよ」
「こちらでも考えておく。何か分かればすぐに連絡を入れよう」
「助かる」
「わかったなら今日は寝たらどうじゃ?酷い顔じゃぞ」
「こんな状況で寝れるか……」
「それでもじゃ。せめて横になっておれ。睡眠不足は判断と思考を鈍らせる。寝て一度スッキリさせて方がいい」
「……そうだな。そうしてみるよ」
「それじゃあ、妾は帰るとしよう」
「ああ、ありがとな。夜遅くに」
「気にするな。緊急事態だったのじゃろ」
帰るのを見送り、ベッドに体を倒す。
「……四季さんの魂を……」
何となく方法なら思いつく。が、それが上手く行くか保証がない。
「ミカドさん達に相談を……いや、絶対止められるな」
どうにかして出来ないかと考えている内に、自然と眠くなってくる。
「お……おきない、と……」
起きようとするが、抵抗出来ずにそのまま目を閉じてしまった。
「ようこそ、夢の世界へ」
目を開けると、見慣れた景色が広がっていた。
「……ここにきたってことは、俺は寝たのか?」
「寝た、というよりかは、私が呼んだって言うのが正しいかしら?」
正面を見ると、いつもと変わらない姿で俺を見ている。
「取り敢えず、座ったら?」
進められるままに席へ座る。どうせ起きようとしても起きれるかどうかはこいつ次第である。それなら付き合う以外選択肢がない。
「急に呼んだかと思えば、何かあるのか?」
「何かあるのはそっちでしょ?大変な事が起きてるみたいだし……」
「まぁな……」
「それで?彼女を助ける方法は思いついてるの?」
薄暗く照らされた場所で、静かに俺を見る。
「……あるのはある。だが、確証がない」
「死神のあの子と同じ方法を試そうと……」
「ああ、前にミカドさんの口ぶりから俺にも同じことが出来る様な事を言われた」
「……確かに2度目の世界になった時に言っていたわね」
「やり方は何となくわかる。俺の魂を四季さんへ移す。恐らく可能だと考えている」
「問題は、どれだけで足りるか……でしょ?」
「……そうだな。そこら辺は俺には分からない。明月さんがどんだけの魂を高嶺に譲渡したか……それ次第では足りないかも、しれない」
「ナツメさんの魂と、高嶺くんの魂がどれだけ違うのかにもよるけれど……人の魂を補うのだから、並大抵では無いはずね」
「多分な……俺の魂だけで足りるなら良いけど」
「それじゃ駄目ね」
「何がだ」
「あなたが消える代わりに彼女を助けても意味が無いってことよ」
「………」
「死神のあの子が魂を分けた結果、何が起きたか分からないわけじゃないでしょ?」
「……そうだな」
「あなたがそれだけあの子に思い入れがあるのは嬉しいけど、だからと言って自分を犠牲にしても喜ぶと思う?」
「………思わん」
「最悪、今より悪化するわよ?また自分のせいで誰かを……って」
「それじゃあ、別の方法を考える方が良いのか……」
「まだ分からないわ」
「……何かあるのか?」
「ええ。上手く行けば、あなたも消えずに彼女を救い出す手立てがね……。どう?乗ってみない?」
久々の夢の中……。