今回は明月栞那と閣下の話し合いからです。
彼がトイレに入ったことを確認し、ミカドさんがこちらを向く。
「奴はトイレに入ったな?」
「そうですね、こちらに気を使って……の様に見えましたけど」
「奴なりの気遣いだろう。我輩達としては好都合だ。栞那、お前から見てあやつはどう見えた、率直で構わん」
「そうですねぇ……、悪い人では無いと思います。先ほどのお話も私達を騙そうと嘘を付いている様には見えませんでしたし……ミカドさんから見て澤田さんはどう見えたのでしょうか?」
「……これは憶測、いや妄想の類に近いかもしれんが……。奴は未来を見通す力、未来視や予知などに近いものを持っている可能性があるのかもしれんと考えていた」
「ミカドさん……。それは流石に飛躍し過ぎた考えかと思いますが……?まだ人の考えや記憶を知ることが出来ると言われた方が……ってこちらも現実的ではありませんが」
「分かっておる。あくまで可能性がある……のかもしれない程度に過ぎん。だが吾輩達しか知るはずの無い情報を奴はどこで知りえたのかが想像つかん」
苦笑いをしている私にミカドさんは難しい顔をしてる。確かに死神の事はまだ私たち以外にも同じような人と出会っていたらまだしも、高嶺さんの事は私達以外には知らないはずですし……、もっと言えば彼が私に向けて言ったあの言葉。あれはミカドさんでも分からないはずです……。
「ここで考えても仕方ないな。奴から直接話すのを待つことにしよう。無論こちらでも調べておく」
「分かりました。ミカドさんに負担を掛けることになってしまいますがよろしくお願いします」
暫くお互いに考えていたがこれと言って無く、一旦先送りにすることにした。
「気にするな。栞那は引き続きあやつの世話を頼む。なるべく目を離さぬようにな」
「はい。差し当たってはお昼の用意でもしましょうか。お腹を空かしていましたからね」
ミカドさんからの頼みに了承し、ご飯の支度のため厨房に向かい何か無いかと漁る。
「何が食べたいとかリクエストとかあったりするのでしょうか?とは言ってもパスタ位しか直ぐに作れるのはありませんが……。ご飯はお米を研ぐ所からですし……、一応卵もありますね。うーん。今回はパスタを適当に二種類作ることにしましょう」
無難なかつ手頃な味にしておけば大丈夫だと考え、食材と調味料に手を伸ばした。
「さて、そろそろ出ても大丈夫かな」
フロアから微かに聞こえていた二人の声が止み、厨房から音が聞こえてきたのを確認してトイレを流す。
これ以上長居すると便秘と勘違いされる可能性があるかもしれない。いや、向こうも何となく感づいている可能性が高いし……それなら大丈夫か。
ドアを開けフロアに戻り席を見る。
席には閣下だけが座っている。明月栞那は昼の支度をしてくれているのだろう。
そう考え席に座り、こちらを見ている閣下に話かける。
「明月さんは厨房にですか?という事は話し合いは纏まった感じでしょうか」
「情報が何も無いのだ纏まるわけがない。現状は様子見にすることにした。貴様の監視は栞那に頼んでいる」
首を振り、呆れ顔で閣下が返事をする。
監視って……、いや、まぁ間違いではないのかもしれないけど……。此方も話せる内容を考えておかないと。場合によっては物語がスムーズになるなら多少先の話をしていた方が良い事もあるだろうし。
「今話せる事は本当に無いのか。栞那が居るから話せない事などはどうだ?」
こちらが何か無いか考えていると、閣下から催促が来る。
うーん、現時点は原作より前だしなぁ……。始まってからならこっちも色々助言できるけど直ぐには思いつかないし、今はいいか……。
「すみません……。ただ確かにミカドさんにしか話せない事も多く出てくるかと思いますので、その時は協力をお願いしたいです」
「それは、栞那に話すと何か不都合が出るという認識で良いのか?」
「はい。明月さんも高嶺さんと深く関わる可能性が出た場合にそうなると思います。そうなった時はミカドさんに頼らさせてください」
「分かった。その時は頼ると良い。それからもう一つ確認しておきたいことがある」
閣下から良い返事を貰えたがまだ話は終わらなかった。厨房からは何かをフライパンで焼く音が聞こえていた。
「貴様が我輩達の事を知っていてそれについて
乗り切ったかと思ったがそんなはずは無かった。どうやら社会的に殺したがっているご様子だ。
あー……、誤魔化しきれませんでしたか。どうしよ、同じ理由ってしらを切っておこうかな。取りあえずはそう言って納得してもらおうか……。なんかごめんなさい。
「話せないなら、吾輩なりに少し推測をしてみたが……いや、変な話だからな。気持ち半分で聞いてくれ」
こちらが罪悪感を感じながら返事をしようとすると、閣下から続けてくる。
しかし、知っている理由の推測か……。流石に正解には辿り着くことは無いけど、一応聞いておこうかな。
「貴様は我輩や栞那、更に高嶺昂晴の事を知っていた。高嶺昂晴に至ってはこれから起こりえる事。つまり先の未来での可能性を示唆していた。そこで考えたのだが……もしや貴様は、未来が視える力を持っているのではないのか……?とな。もしくはそれに近い力を所持してはいないか?」
閣下からの発言に驚きを隠せず目を見開いてしまった。『……何言っているのだろう?この人』と頭の中で思う。
「その顔はもしや本当に持っているのか……?その様な奇跡を……」
今度は閣下が驚いている。いや驚くのはこっちの方だろう。
え、えぇ……?未来予知とかそう来るかぁ……。でも確かにそう思うのも分からなくはないけど……いや、待てよ。これはありなのかもしれない。
閣下の見当外れの予測に驚く中―――閃く。そういう力を持っている事にしていた方が向こうも納得しやすいのではないか……?と。人は自分の予想や考えが通るとそれを真実と思い込む。現に閣下もこっちが驚いてるのを見透かされたと勘違いして、事実だと思い始めている。人じゃなくて猫だけど。
……あり。これはありだ。その方向で行こう。よくあるライトノベル系で出てくる原作知識を持っている人が預言者的な立ち位置で振る舞うロールで行こう。未来予知では無いから少し修正はしておく必要があるけど。
今後の立ち位置を考えつつ、閣下にそれっぽいことを言えば、向こうで勝手に落とし込むだろうと決め、返事をする。
「それについては……すみません、私の口からは是とは言えません。ですので……ミカドさんの想像にお任せします」
なるべく申し訳なさそうに下を向く。そして顔を上げ、閣下の顔を見る。
「……ミカドさんが仰った事とは関係ないのですが私、趣味が占いで特に人の運勢や悩みを聞くのが得意でして……。いえ、何でもないです。すみません、急に自分の趣味を語り始めて……気にしないで下さい」
これが最大限の譲歩とアピールをしておく。後はそっちで察してください。と空気を醸し出しておく事も忘れずに。
さぁ……!これでどうだっ?
「………、そうか。我輩の妄想だ、気にしないでくれ。貴様の趣味などは吾輩では疎くてな……。そのあたりは栞那の方が詳しいだろう。戻ってきたら趣味について話すと良い」
こちらの発言の意図を汲み取ってくれたのだろうか。明言は出来ないけどヒントは出す。これで今後聞かれる可能性は減ると思う。明月栞那に話すのは情報を共有しておきたいのだろう。
……勝ったな?これは勝ちだよなっ?
「分かりました。女性の方がその手は興味持ちますもんね。明月さんは食いつきそうです」
主に高嶺昂晴の事で食いつきそうだ。あっちには占いが趣味で占い師もどきをしているとか説明しておこう。後で閣下が補足してくれるだろう。
閣下と話し込んでいる内に、厨房からいい匂いがしてくる。もうすぐ完成するのだろうと予想が付く。
「私は何か手伝えることが無いか聞いてきますね。完成品を運ぶ程度の事しかなさそうですけど……」
閣下にそう伝え、席を立ち厨房に向かった。
厨房に入ると先ほどより濃い匂いがする。空腹には犯罪的な匂いだ。
「おや、澤田さん。どうかされたのですか?」
フライパンの上で麺とソースを混ぜながらこちらを向く。
「いい匂いがこちらまでしてきて……、待ちきれず何か手伝えることは無いかと思ったのですが」
恥ずかしそうな顔をしながら確認をする。
「ありがとうございます。それじゃあお皿の用意をしていただいても大丈夫ですか?こちらはもう出来上がりますので」
「了解です。食器はこちらの棚で大丈夫ですか?」
「はい。そちらから二人分をお願いします」
食器の在り処を聞き、平たい皿を2枚取り出して並べる。
「それではそちらに移しますね」
そう言ってトングで皿にパスタを乗せていく、最後に渦を作るように乗せ完了。これは旨そう、いや旨いだろ。見栄えも綺麗だし……。
「これは凄く美味しいパスタですね……」
「まだ食べてないのに感想早いですって……」
「匂いで分かりますよ。美味しさの主張が激しいので」
「なんですかそれは……。それじゃあ食べたら感想お願いしますね」
「大役ですね。グルレポ出来る自信は無いですが、任せてください」
こちらのボケに苦笑いしつつも対応をしてくれた。食べなくても分かる。旨い奴やん……。
軽くコミュニケーションをした後、皿を持ち上げて閣下が座っている席へ向かい昼食を取った。
因みにパスタは文句なしで旨かった。
占い師()
・中途半端の丁寧語
・知りえない情報を話してくる
・素性不明
怪しさマシマシのエセ占い師にしか見えてこない…。