なんかハイペースで物語が進んでいる様な……?
「ふむ……我輩も、勘違いをしていたようだ」
「どういうことだ?」
明月さんが大学で蝶を回収してから次の日、案の定野中君には蝶がまた集まって来ていた様だ。
「恋というのは普通、かなり強い分類の感情になる。そんな強い感情に影響を及ぼせるほど蝶は強い存在ではない」
「つまりは、元から当の本人が諦めようとしていたのだ」
「あ、なるほど、そういうことか」
「だから蝶を回収しようが解決策にはならないってことだな」
「どうしますか?やり方を考え直さないといけませんよね」
「その男が自信を持てるようになればいい。話自体は至極単純なのだが……」
「その……野中君?って人は……こういっちゃあれだけど、中身だけではなくて服装とかの見た目も自信なさそうな感じだったりする?」
「そうですねぇ……そう感じる雰囲気はありましたね……」
「眼鏡とか古そうなタイプの服とかそういう感じの身のまわりの物を持ってたり?」
「言われてみれば……確かにそうだった。あまりファッションにも気を遣ってるようなタイプではなかったですね」
「なるほど、まずはそういった箇所から変えようってことですね?」
「ああ。自分の見た目を変えるだけでも、印象が変わるし……まずは眼鏡を止めてコンタクトにしたり、髪を切ってさっぱりしたり」
「自己暗示的な効果があるやもしれんな」
「そうですね。外見が大きく変われば本人の自信にも繋がるかもしれません」
「……けどなぁ、引き寄せるくらいネガティブな人だし、結構頑固なイメージだから高嶺からのアドバイスを聞くかどうか……」
「俺もそれが不安だなぁ……」
「それ以外で上手く行くのがあると良いのですが……」
「んー……詐欺まがいで騙して無理矢理が大丈夫ならするけど……それはなぁ」
「どんな方法をされるおつもりなんでしょうね……」
「まぁ、最初は高嶺の方で色々試してみてくれ。もうどうしようもないってなったら……俺の方でも頑張ってみるよ」
「何か手段があるのですか?」
「一応。多少強引になるかもしれないけど」
まぁ、そんな手段取らなくても解決するけどね。
「わかりました。まずは俺の方で頑張ってみます」
その後、解散となったが、俺はまだ明月さん達と用事があると言って残った。
「それで、貴様が言う解決策とはなんだ?」
「一番手っ取り早いのは、火打谷さんに蝶を回収してもらって気分が良くなった時に無理やり連れ回す。一時的に気持ちが上がれば動く可能性もあるしなぁ……多分」
「あとは……相手の蝶に直接触れるとかか?」
「そっちは……あまりオススメ出来るやり方ではないですね」
「こっちは最終手段ということで」
明月さんが嫌がるしね。
「さっきの方法で上手く行くのか?」
「それは本人の気持ち次第だな。それと……」
「それと……?」
「高嶺が相手側に引っ張られる可能性もあるから気を付けた方が良いと思う」
「それは私も危惧しています。あまり同情的になってしますとどうしてもそちらに引き寄せられてしまいますから」
「ま、昔のなら怪しかったけど、今の高嶺なら大丈夫だと思うけどな。このお店で体験した三ヶ月近くは伊達じゃない」
「……そうですね。それだと嬉しいです」
「最近の奴は前向きに見える。この調子なら悪い結果にはなるまい」
「……そうだな」
「すみません、それじゃあそろそろ一旦抜けます」
「あいよ、楽しんできなー」
「いってらー。気を付けてな」
翌日、午後になりフロアのメンバーが揃ったタイミングで高嶺が抜ける。今から野中君との約束との事だ。
「それじゃあ、昂晴が戻ってくるまでは、そっちは任せるけど大丈夫そう?」
「任せて下さい。倍くらいならこなして見せましょう」
「ほほぅ、言ったな?なら、私のもお願いしようかな?」
「それは、俺のことを認めたと受け取っても良いんですか?」
「ポジティブに受け取ったなー……」
「それでしたら喜んで貰いますよ?涼音さんは横で審判でもして貰えれば」
「若いなぁ……向上心があって」
涼音さんには負けますけどね!
それから、一時間もせずに高嶺は戻って来た。
「お、意外と早く戻ってきたね。宏人にドタキャンでもされた?」
「いや、案外用件が早く終わったので任せて戻ってきました」
「そう、なら良かった」
「どうだった?相手の方は」
「はい、その……色々あって元気になったので大丈夫だとは思います」
「それなら安心だな。明日が楽しみだ」
「そうですね」
仕事が終わり、明月さん達と状況の共有をして店を出る。
「高嶺君が今日会いに抜けたんだって?それで問題は解決?」
「だな。野中君の方はこれで解決だな。明日にはイメチェンした彼が現れる事でしょう」
「ふーん、なんの心変わりがあったんだろ……」
「さぁな、本人に心境の変化があったんだろ」
「その様子だと、知ってるみたいね」
「まぁな。けど、話す必要は無いから黙っておくよ」
「そ。なら分かった」
「それで、だ。明日四季さんにお願いがある」
「なに?」
「明日、高嶺の体調を見ててほしい」
「明日って……大学で?」
「ああ。もし体調を崩しているようなら即座に帰らせてくれ」
「それはわかったけど……なにかあったの?」
「……ちょっとな。無ければそれはそれで問題だけど」
「……わかった。もしそうだったら連絡する」
「よろしく頼みます」
……何だか、最近四季さんが素直過ぎるような気が……?こっちが濁してもあまり追及して来なくなったし、信用度が上がったと見て良いのだろうか?
明日の朝時点で体調の変化を見る必要もあるし……、明月さんにも話を通しておこう。
そして次の日、大学へ行く前の朝の準備で出て来た高嶺は、想定通り体調を崩していた。
「それじゃ、大学の方へ行ってきます」
「はい、いってらしゃい」
「頑張ってねー」
「無理しないようになー」
明月さんを合わせて3人で高嶺を見送る。
「………」
送った後、意味深な視線を俺に向けてきたので、少しフロアへ出て話す。
「……高嶺の事だな」
「はい。何だか調子が悪そうでしたので……」
「十中八九、昨日の蝶の影響だな」
「やはり……」
「……大学は休んだほうがいいかもしれないな」
「それほどですか……?」
「ああ。四季さんと涼音さんの弟さんにも連絡を入れておくよ。高嶺の様子を見ていてほしいって」
「ありがとうどざいます」
「あと、念のため後でお見舞いに行ってきてくれないか?魂の確認しに……」
「そうですね……、確かに心配です」
「問題が無ければ良いんだが……」
「澤田さんとしては有る可能性の方が高いと……?」
「残念ながらな。けど大事ではないと思う」
「分かりました。お店の方が落ち着き次第行ってきますね」
「よろしく」
……これで、無事お見舞いに行って高嶺の魂を安定させてくれるはず。
「それじゃあ、一旦休憩室に行って戻ってくるよ」
「はい、よろしくお願いします」
笑顔でそう言われると……うーん、罪悪感がこうチクチクと……。
「高嶺君の様子を……」
今朝、澤田君からのメッセージで高嶺君の体調が悪そうだったから後で様子を見て欲しいと改めて来ていたから探しに来たけど……。
「あ。いたいた」
「四季さん?」
見るからに体調が悪そうな高嶺君の隣の……友達がこちらに気づく。
「高嶺君の体調が悪そうだから様子を見て欲しいって連絡があったんだけど……本当に悪いわね」
「平熱で咳も頭痛も無いから、そんな大げさにすることじゃないと思うけど……」
「お前、そういうけどさー」
「今日はもう帰った方がいい。バイトの方もワタシから連絡入れておくから。明らかに大げさじゃないって」
「……分かった。無理して倒れたりしたらもっと迷惑かかるしな」
「そうして。お店も平日だしなんとでもなるって。それより自分の体を心配して」
「送ってやろうか?」
「流石に1人で帰れるって。いや、マジで真っ直ぐ戻るから。戻ったらLIENで報告するから」
「……わかった。必ず報告してね?」
「ああ」
高嶺君を途中まで見送り、講義に戻る。
……澤田君が予想していた通り、高嶺君の体調が悪くなったけど、これも彼が言っていた様に明月さんとの仲を深める為に必要なこと……で良いんだよね?どういった経緯でそうなるかは聞かずに受け入れたけど……。
あの時の澤田君は、少し申し訳なさそうに答えていた。多分高嶺君へ対しての罪悪感やそういったことを感じていたのかもしれない。幾ら必要なこととか言っていても、それを見過ごすのは心苦しいんだろう。
「………」
思えば、ここ最近はそう言った表情をする機会が増えている様に思える。特に明月さんと話している時に多いような……。
ワタシの時と同じように明月さんに対してもってことは……きっと、そういうことなんだろう。
「……なにか、出来ないかな……?」
晩御飯を作ってあげた時は凄く喜んでくれていたけど……もっと他の事もした方が喜んでくれるかもしれない。
「……やっぱり」
次の定休日は、世間一般で言うクリスマスイヴイヴ……。
「……~ッ!」
向こうは特に予定は無いって言っていたしっ!暇なはず……!きっと誘えば乗ってくれると……思う。
「が、頑張ってみようかな……?」
「ただいま戻りました」
その日の夜、高嶺の所へ行った明月さんがお店へ戻って来た。
「昂晴先輩の様子、どうでした?」
「大丈夫そうでしたよ。食欲もありましたし、熱も平熱でした」
「そっか、よかった」
「希さん、鍵ありがとうございました」
「いえいえ。昂晴君が休むぐらい体調を崩すなんて滅多にないから、ビックリしましたよ」
「そうなの?」
「見るからに健康そうでしょ?わりとそのイメージまんまだよ。わたしが覚えている限りでも……軽い風邪以外に体調を崩したことないんじゃないかな?胃腸とかもかなり強いから」
それは魂が強いからとか関係するのだろうか……?いや、体だし関係無いか。
「大丈夫です。明日にはきっといつも通りですよ」
「さぁ。安心したことろで片付けを続けるぞ」
「はーい」
ミカドさんの言葉でみんなが片付けを再開する。
「澤田さん、後でお話が」
「了解」
すれ違い様に明月さんから言葉に返事をして片付けへ戻る。
片付けが終わり、店を閉めた後に明月さんの間借りした部屋へ入る。
「それで、高嶺昂晴の様子はどうだったのだ?」
「懸念していた通り、魂が衰弱していました」
「処置はしてきたのだな?」
「はい。もちろんです。衰弱した魂が元に戻るよう、ちゃんと力を注いでーーー力を、注ぎ……」
「………」
急に明月さんの言葉の覇気が無くなり、遂には無言で何かエロい事を考えている顔になる。
「お注ぎ申しました……ともっ」
「なんだその奇妙な物言いは……?」
恥ずかしそうに目を閉じて言う。でも、くっつけたのはおでこである。
「お気になさらず」
「ミカドさん、魂を注ぐにはそれなりの肉体的接触が必要なんだよ」
「まぁ、その通りだな」
「そして、明月さんのこの反応からして見て、導かれる答えは一つ!」
「……栞那、お前、高嶺昂晴とセックスでもしたのか?」
「してませんよ!突然何を言ってるんですかっ!?」
「いや、お前の態度が変だったからな。もしやと……」
「何ですか?もしや力を注ぐどころか逆に中に注がれたのでは?なんて考えていたのですか?卑猥ですよ、ミカドさん」
「それはお前のオッサン臭い頭の中だ。色情淫乱死神娘め」
「変な呼び方しないでくれませんか!?」
来たっ!色情淫乱死神娘!
「なるほど、色情淫乱死神娘か。なんか良いフレーズだな」
「澤田さんも気に入らないで下さいっ!」
「すまんすまん。結局どうしたんだ?恥ずかしそうにしてるけど……」
「いえ、ただ……おでこをくっつけ合ったくらいです」
「うむ。まぁ、普通だな」
「最初は親が子供にする様なもんだと思って平気だったのですが……いざ始めると、急激に恥ずかしくなって……ものすっごくドキドキして……」
恥ずかしそうに語っているが、おでこをくっつけただけだよな?
「自分でもわけわからないことを口走ってて、セックスセックスって叫んでしまう始末でして……」
「それは本当にわけが分からんな」
「場面がカオスだな……」
「……うぅ……」
考え事を始めた明月さんが一人で悶え始める。
「まぁ良い。それで解決したのだな?」
「はい。明日には元気になっていると思いますよ」
「そうだな。明日にはいつも通り元気な顔を見せてくれるはず」
「そうか。なら安心だな」
「あ、けど念の為明日のお店に来たら一度確認してもらってもいいか?」
「え、は、はい。大丈夫ですっ」
「あとは……その次の日とか……?まぁなるべく高嶺の様子を気に掛けてほしい」
「そこは変わりませんので大丈夫なのですが……もしかして、何かあるのですか?」
「いや、ほんと念のため。以前の四季さんみたいに見逃したくないからさ」
「あれは……澤田さんのせいでは……」
「分かってる。だからこそ今度はしっかりとしておきたい」
「……分かりました。高嶺さんの方は私にお任せ下さい」
「あまりあの件で気を病むな。貴様の努力でちゃんと解決させたのだ。そのお陰で四季ナツメの魂は安定してる」
「そういえば、協力してくださった蝶の方はどうなったのですか?」
「分からん。最近は表に出て来てないし……静かにしているのかもしれない」
夢でも見えないし、もしかして普通の蝶に戻ったのか?力の使い過ぎとかで……。
「まぁ。その内また出てくると思うし心配は無いと思う」
「そうですか……。意思を持つなんて、あまり例を見ない蝶ですよね?」
「そうだな。よほどの強い未練などがない限りは通常の蝶になるはずだ」
という事は、あの蝶は何かやり残していたことがあったのか……?いや、していたのって俺とお茶会したり雑談だが……?
「……そうは見えなかったけどなぁ」
次回は……恋のお悩み相談……とか?