喫茶ステラ ―異邦人と蝶の残滓―   作:コクーン√

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1月1日




第74話:元に戻すために

 

 

「………」

 

日が落ち始め、空が茜色に染まって来た中、部屋で一人ベッドに腰を掛けて必死に考えていた。

 

1人で初詣に来ていた高嶺を呼び止めて事情を聞いた。昨日はミカドさんと話した後は()()()()()()()()()()()()()()()()とのこと。つまり、昨日の夜に蝶は集まらなかったという事だ。まずはその原因から考えた。

 

「……原因とか、そんなもん決まってるよな」

 

蝶が集まらなかった。つまりは周囲に蝶が飛んでいなかった……数が減っていたことが理由だろう。そして、その原因を作ったのは俺が蝶の回収をしていたこと。火打谷さんに蝶の回収を手伝ってもらっていたこと。原作と違うイレギュラーと言えばそれだろう。

 

「つまり……俺のせいってことか」

 

蝶の回収をし過ぎれば昨日集まる予定の蝶が居なくなる。ちゃんと考えれば思いつくことのはず……けど、回収をするのが正しいと勝手に思ってしまっていた。まずこれが間違いだった。

 

「このままじゃ明月さんが戻ってこない……」

 

どうすれば良い?解決するなら本来通りに大量の蝶を集めてそれを高嶺に当てる事だが……肝心の蝶がいない。火打谷さんの瞳に残っていれば問題無かったのだが、既に回収済みでいたとしても少量だろう……。恐らくだが、かなりの量が必要になるはずだ。人を形成するほどの量が……。

 

「俺だけでも……足りないだろうな」

 

人として安定した存在を作る必要がある。俺だけでは不十分だろう……。

 

考えるが、碌な解決案が出てこない。時間だけが過ぎて焦りが出始める。

 

「……くそっ!猶予がいつまでか分からないのに……!」

 

焦りに任せてイラついても妙案が思いつくわけがない。落ち着かないと……。

 

「……どこかで蝶を手に入れられる場所があれば」

 

すぐに思いつくなら病院や火葬場など人が亡くなったりマイナスになりやすい場所が集まりやすいだろう。そこで俺の身体に一時的に保管して……いや、時間がかかりすぎるな。

 

「他に蝶が……っ!?いや、待てよ……?」

 

蝶が居る場所なら……もしかしたらあるかもしれない。人に近いレベルで構成された場所が。

 

「俺が生まれた森なら……もしかすると……」

 

俺があそこで構成させたという事は、それなりに蝶が居たという事だ。俺が生まれた後も数頭は飛んでいたし……もしかしたら何かしらの理由であそこに集まっていたのかもしれない。

 

「……一度確認しておくか……?」

 

もしかすると的外れかもしれない。だが、ここで座っていても碌な考えは出てこない。それなら行動しておいた方が良いだろう。

 

「今から行けば……最悪最終までには戻って来れるか」

 

時間を無駄にしない為にもすぐに行動に移る。

 

と、その時、玄関のチャイムが鳴った。

 

 

 

 

 

 

「メッセージの返信も無し、か……」

 

お昼前に澤田君と初詣で集まると約束をしていたが、直前で急用が入ったとキャンセルとなった。

 

それは別にいい。用事があるのなら仕方がないと納得が出来た。けど……その後に神社に訪れた高嶺君を見て、彼が何故急用が出来たか理解した。

 

「やっぱり……何か問題が起きてる……」

 

高嶺君の様子と話を軽く聞いてから解散し、彼にメッセージを送ったが今まで既読も付いていない。

 

「電話を……いやでも、忙しかったり取り込み中だったらどうしよ……」

 

悩んだ結果、直接部屋まで来ていた。電話ではぐらかされる可能性もあるかもしれない……それに、直接会って話した方が良い。そんな気がする。

 

「……よし」

 

意を決してインターホンを押す。

 

すると、中から歩く音が聞こえた。どうやら部屋にいるみたい。

 

「はい、って四季さんか……」

 

「今、話せる?」

 

「今から行かないといけない場所があるんだ。これから向かおうと思ってるんだけど……一緒に、行くか……?」

 

「勿論行く」

 

言えば私が一緒に行くと言い出すのが分かっていて、少し困った様に聞いてくる。

 

「……ですよねー。ごめんだけど、移動しながら話すよ」

 

「了解、因みに何処へ行くの?」

 

「まずは駅で電車に乗って……俺が最初に生まれた場所にだな」

 

玄関から出て靴を履き直しながら話し始める。

 

「閣下達と会ったって言ってた場所?」

 

「そう、確認したい事がある」

 

マンションを出て駅へ向かい、電車に乗る。

 

「それで?どうしてそんな場所に……?」

 

「蝶を回収しに行く」

 

「蝶を……?」

 

どうしてわざわざ……?

 

「昨日の夜、高嶺が明月さんの蝶を連れてミカドさんと会いにお店に行ったんだ。明月さんの魂が高嶺に触れた事で夢で記憶を見てしまった。そこには高嶺を救う為に命を懸けていた明月さんがいた。そのことをミカドさんに確認していった時に高嶺の感情に引き寄せられた大量の蝶たちが居たはずだった。そこで高嶺はその蝶たちを使って再び奇跡を起こす予定だった……」

 

「高嶺君が……。でも、違ったのでしょ……?」

 

「ああ。実際には蝶は集まらず、何事も無く解散したらしい……」

 

「どうしてその蝶は……集まらなかったの?」

 

「それは……俺のせいだな」

 

「澤田くん……の?」

 

「現時点で一番可能性が高いのは……だけどな。俺が最初に想定……というか、視ていた未来より蝶を多く回収してしまっていたんだ。そのせいで蝶が集まらなかったと考えてる」

 

「た、偶々じゃないの?」

 

「そうかもしれない……けど、どの道蝶が居ないことで高嶺は奇跡を起こせずに今日を迎えてしまったのは事実だ」

 

「だから……蝶を集めようってこと?」

 

「その通り。正直いるかどうかは博打に近いし、これが駄目ならまた次を考えないと行けないから不安要素しかない」

 

「少しでも可能性があるならってことね」

 

「そういうことだ。だから無意味に終わるかもしれなかったから付いて来てもらわなくても……って思ったけど、どのみち来てたよな?」

 

「正解。内容は特に関係なく一緒に行ってた」

 

「ですよね~。というわけで、俺がこれから向かうのはその森の中だ」

 

「もし蝶がいたら、それを回収して高嶺君に使う……で良いの?」

 

「そうだな。その蝶を使ってもらいもう一度奇跡を起こしてもらう」

 

「でも……大丈夫なの?前に一度やり直して目を付けられてるって言って無かった?」

 

「そこは大丈夫。抜け道的なのがあるから心配はしなくてもいい」

 

「あるんだ……」

 

「そこはまぁ、色々とな。あまり気にしないでくれ」

 

「ん、わかった」

 

電車に揺られながら夜の街を抜けて、徐々に街の明かりが減っていく。森の中というぐらいだし田舎方面なのだろう。

 

「近くの駅に着いてから歩きそう?」

 

「森の入口が15分くらいだったかなぁ……。あっ、あと結構道がガタガタして歩きづらいから、ヒールだと気を付けた方が良いかもな」

 

「そっか……夜道だしスマホのライトとかで照らしながら歩かないと……」

 

暫くして目的地に着き、電車から降りる。

 

「うわぁ……結構街並みが変わるんだ」

 

「割と田舎側だしな。確か方角は……こっちか」

 

周囲を見渡してから森までの道を歩き出す。

 

「懐かしいなぁ……ってまだ3か月しか経って無いけど」

 

「街灯とか明かりは少ないけど……人通りが無いってわけじゃないけど、よく服も着ないで歩いて通報されなかったものね」

 

「いや、最初は全裸だったのは否定しないけど!応急処置として明月さんのマント借りて宿まで避難したからっ!その後はミカドさんに服とか買ってきてもらったし!」

 

「そうなんだ、残念……」

 

「俺を露出狂に仕立て上げたいのか……」

 

「事実だしね」

 

「……一部事実に訂正を願う」

 

「一部は正しいってことは……部分的に露出狂?」

 

「更に変態度が増したような気がするな……」

 

下らないことを喋りながら歩いていると、家などの生活圏から少し離れた場所に辿り着く。

 

「……ねぇ、澤田君。あれって……」

 

目の前の森の上空に青く光る何かが飛んでいる。

 

「恐らく蝶だろうな。しかも結構飛んでる……」

 

ここから分かるぐらいの明るさがある。一匹や二匹じゃないと思う……。

 

「それじゃあ、行くかーーー」

 

薄暗い森に入ろとすると、隣で歩いてる澤田君が後ろを振り返る。

 

「えっ?どうしたの?」

 

「いや、何でもない。ちょっと気になるのがあっただけ」

 

「……もしかして、ワタシを怖がらせようとしてる?」

 

正直今からこの森に入るってなると……嫌と言いたい。

 

「すまんすまん。そんなつもりじゃない」

 

「……スマホのライト点けとこっと」

 

スマホを取り出して明かりを確保する。

 

「俺も……んじゃ行きますか」

 

塗装や整備もされていない場所を歩いて行く。

 

石や木の根っこが……歩くの難しい。

 

「やっぱり歩きづらいか?」

 

「ごめん、少し歩くのが遅くなると思う」

 

「いいよいいよ、安全第一で。それにもし転んだりしたら大変だしな。あ、俺の腕でも掴むか?」

 

面白い事を思いついたかのようにこっちを見る。

 

「……危ないし、そうしようかな」

 

「どうぞどうぞ。ご自由にお使いくださいな」

 

差し出された腕を掴む。……なんだか物凄く恥ずかしい。

 

「ペースが早かったり足が痛んだりしたら言ってくれ」

 

「うん、多分大丈夫だと思うけど……」

 

歩くのを再開しようとすると、彼が反対側の手で近くの木の枝を折り、正面を斬るように振りながら進む。

 

「何してるの?」

 

「クモの巣避け。今正面に巣があったからな」

 

「……帰りたくなって来たかも」

 

さっきから周囲で虫の鳴き声が聞こえるし、明かりに集まってきたりもする。

 

「残念だったな。自然とはこういう場所だ」

 

「危ない生き物とか……居ないよね?」

 

恐る恐る聞いてみる。

 

「どうだろうな。毒を持つのは……多分大丈夫だと思う。熊もやイノシシも居ないらしいから死にはしないと思う」

 

「今更だけど、何も考えずに来てしまった……」

 

人の生活圏から離れた場所に来ているのだから、野生の生き物が居てもおかしくない。

 

「もし遭遇しても、叫んだり走って逃げないようにな?間違いなく襲われるから」

 

「う、うん……出会わない事を祈っておこうかな……?」

 

照明一つもない真っ暗な森。周りを見ても目の前の茂みすらちゃんと見えない……。

 

「……っ」

 

本能的な恐怖で彼の腕を掴んでる手に力が入る。

 

「……普段体験しないことに怖がるのは無理はないけど、怖がり過ぎないようにな?何なら腕を掴むじゃなくて腕を組もうか?ん?」

 

こっちが怖くなったのを察してか、冗談を言って来る。

 

「……澤田君は怖くないの?」

 

「んー……慣れたな。叔父との訓練の時はここより自然って感じの場所で生活してたこともあるし……何なら1人で二日程度過ごした事もあるぞ?」

 

「それは、ワタシの気を紛らわせるための冗談?」

 

「さぁ?どうだろうなぁ……?」

 

怪しく笑いながら前を向く。どうやら冗談じゃないみたい。特に怖がらずに普通に歩いているし……。

 

……掴んでる彼の腕を見る。ど、どうしようか?冗談で言ってるのは分かるけど、折角の機会をふいにするのは……。

 

「……お言葉に甘えて、そうしようかな。こ、転ばない様にするためにもね」

 

掴んでる腕に近寄って、彼の腕を自分の腕で組む。

 

「うおっ!?……すまん、マジでそこまで怖かったのか?」

 

驚いた様にこっちを見る。

 

「まぁ……それなりには、怖かったり……?でも、こっちの方が掴むより安全じゃ……ない?」

 

「……ま、まぁそれは確かにそうなんだが……。いや、ご自由にって言ったのは俺だしな……うん」

 

驚きと困惑した顔で正面を向いて歩き出す。

 

……ちょ、ちょっと流石にこれは大胆過ぎた……かな?付き合っても居ないのに腕を組むとか……!で、でもっ、夜の道でワタシはヒールだし慣れてないしで危ないのは確か。だからより安全の為に当然の処置を……、けど、流石の澤田君も戸惑っていた。意外と可愛らしい反応がなんだか面白い。

 

またとないチャンスだし……、これくらいは……、良いよね?でも、澤田君は明月さんに帰って来て貰う為に真剣なのに、ワタシは浮かれて良いのだろうか……?

 

うぅ……そう考えると何だか罪悪感が……。けれど、怖いのも嘘じゃない。こうやってると……すごく落ち着く。不思議とこうやって触れてるだけで安心出来てしまう。

 

……これ、かなりべた惚れってことなのかな……?触れてるだけで安心し切っちゃうとか……完全にそうだよねっ!?

 

「……っ~~!」

 

きっと冬だから余計に体温を感じて心が安心してるだけ……、って変な言い訳は無理かぁ。うん、そうなる位には好きなんだろう。そこは素直に認めよう……。

 

けど、それを伝えるのは全部終わってから。それまでは我慢しないと……。だからーーー

 

もう少しだけ、今の状態を楽しんでおこう。

 

 

 

 

 

……どうも、こちら澤田達也です。現在蝶の調査の為に森へ来ています。あ、ダジャレとかではないぞ?するならもっと高度な事を言うからな?

 

と、んなことはどうでも良いんだよ。問題は俺が今味わってる状況だっ!

 

隣には四季さんが居る。これはまだいい、おかしなことではない……問題は、その彼女と腕を組んでるというシチュエーションだ。

 

さっき冗談で言ったが、本気で組んできた。これには流石の俺も想定外の外、怖がってるのは何となくわかる。初めて夜にこんな場所に来れば大抵の人間は怖がる。俺はって?慣れたよ、夜の森程度は。訓練中に何度も行ったしな……怖かったのはその最中暗闇から俺の食料を奪いに来たり襲撃を仕掛けて来た教官の方が何倍も恐ろしかった。

 

なんせ食料を奪われればその日は飯抜きである。その為必死で抵抗した。幾つかに分けて隠したりもした。最悪夜の森を徘徊もした。

 

そんな生活に比べれば……ただ歩くだけの森のどこを怖がれと言うのだ……。

 

いや、俺の話はどうでも良い。つまりだ、四季さんが想定以上に怖がっていて、俺と腕を組むほどだとは思わなかったって話だ。あとそっちの方が安全なのもある。うむ。

 

しかもだ。整備もされていない道だ。当然段差や地面の歪みもある。歩いていると重心が傾いたりこちらに寄りかかってきたりもある。

 

何が言いたいかというと……、そう!俺の腕に四季さんの胸の感触があるのだ!いや、コートがあるからそこまででは無いが、それでもハッキリとわかる。

 

童貞臭漂う発言かもしれないが……確かに前世では多少なりと仕事の為に女性との人並の交友関係はあったが……。だがこれはそんなちゃっちいものじゃない!

 

それにこの体では童貞なのでこの発言は間違っていないな。うんうん。

 

かなりの役得であるが……。気になるのはさっきから一言も言葉を発しない隣のお方のことである。ずっと下を向いてるし……。危ないのは分かるがそこまで注視する?

 

……いや、これはあれか?恥ずかしくて下を向いてるのか?したは良いけど思った以上に恥ずかしくて……でも今更放す訳にも行かないし……みたいな?

 

「……四季さん、下ばっかり見てるけど、大丈夫?」

 

試しに聞いてみる。

 

「えっ、あ、うん。……平気だから、気にしないで」

 

うむ、大当たりの様だ。

 

まぁ、俺もそれなりには……いや、かなりドキドキしている。平常心を保つようにはしているが、四季さんと腕を組んでいるのだ。するなというのが無理な話だ。男なら絶対する。

 

うん、折角の機会だ。舞い降りたこのチャンスを堪能させてもらうことにしよう。

 

そんなこんなで目的の場所へ近づくと、夜の森にも関わらず青い光がここからでも視認出来た。

 

「……どうやら、アタリを引いた様だな」

 

「そうみたい……。澤田君が言ってる場所はこの先?」

 

「恐らく……。もう少し進むと開けた場所に出るはず」

 

そのまま光の方へと歩みを進め、開けた場所へと出る。

 

「……なにこれ、凄い……」

 

隣の四季さんが驚くのも無理は無い。実際俺も驚いてる。その場所には、無数の蝶が飛んでいた。あるでそこに花畑があるのかと思ってしまう程の量だ。

 

「これは……想定以上に居るな……」

 

地面付近だけではなく木々やその上の空にまで飛んでいるのがわかる。

 

「どうしてこんなに大量の蝶が……」

 

「分からない……が、好都合だ。頂いていこう」

 

中心地と思われる場所に辿り着く。そこは俺が倒れていたであろう付近であり、明月さんが蝶を回収していた地点でもある。

 

「こんな数の蝶、回収出来るの?」

 

「多分な」

 

近くで飛んでる蝶を回収しながら辺りを歩く。適当に歩いて手を振り回すだけでも回収が出来そうなくらいには数がいた。

 

「上で飛んでるのはどうするの?」

 

「それなんだよなぁ……念じたら寄って来てくれないものか」

 

手を上に上げて、来いと念じてみる。

 

「……やっぱりダメか」

 

人の感情に引き寄せられる……だっけ?

 

試しに自分の過去を思い出して見る。

 

親が死んで叔父に養ってもらい、なんとか就職は出来たがクビになって無職に……かなり自堕落な生活を過ごして……そんで叔父へ連行されてあんなことを……。やばい、死にたくなってきた……。

 

嫌な記憶を思い出して割とガチめに落ち込むと、空を飛んでいた蝶たちが高度を落として周囲を飛び始める。

 

「……なるほど、こんな感じなのか」

 

良く分からないが上手く行ったのでサクッ回収する。

 

「急に寄って来たんだけど……何かした?」

 

「ちょっとコツを掴んだ感じだな」

 

「それって、あまり良くないことなんじゃ……。寄ってくるってことは、そう言う事でしょ?」

 

「かもな。人の感情に寄って来るからそれを利用してみたけど……あまりしたくはないな」

 

「なら上は止めて周辺を飛んでるのに留めた方がいい。どうしても足りないのならその時に考えることにしよ?。あまり無茶はしない方向で」

 

「了解であります」

 

光りながら飛んでいるので、見つけるのが簡単だった。

 

「澤田君、あっちにも」

 

「あれでこの辺のは最後か?」

 

見える範囲の蝶は全て回収しきった。想像以上に数が居て時間はかかったが……多分、こんだけいれば問題はないと思いたい。

 

「どう?体の方は平気?」

 

「特に異常は無さそうだな」

 

「本当に?隠してないよね?」

 

こちらを疑うような目で見上げてくる。信用されてないなぁ……仕方ないけど。

 

「ここで変な嘘は流石につかないから。本当に大丈夫だ」

 

「ん、ならいい」

 

「そんじゃあ、帰るか」

 

「思ったより時間かかっちゃったなぁ」

 

「今は……23時前か。何とか電車は間に合いそうだな」

 

「なら早く出ないとね」

 

「おっけー」

 

蝶を回収してきた道を戻る。来る時と同じように四季さんと腕を組んで戻る。……何も言うまい。

 

暫く歩いて森から出ると、俺を見ている気配を再び感じた。入口で待っていたみたいだな。

 

「はぁー……やっと出たぁ」

 

「お疲れさん。ここからは安全だな」

 

「そうね……。ちょっと残念な気もするけど……

 

小声で残念そう言う呟いているが……肝試し気分かな?

 

数少ない街灯の明かりを目指して進み、何とか駅まで到着する。

 

「………、おい、嘘だろ」

 

「ねぇ、澤田君……。電車って、いつ来るの?」

 

引きつった表情でお互いに顔を合わせる。

 

「電車の表示、出てないな……」

 

そこには、『本日の運転は終了しました』と電光掲示板に流れている文字があった。

 

 

 

 

 

「いや~……こんな時間から泊まれる宿で助かった……」

 

「まさか電車が終わっていたなんてね……」

 

お互いにそれぞれのベッドに腰を下ろして一息つく。

 

「しかも結構良い感じの場所だし……悪くないかも」

 

「蝶の回収に時間がかかったのもあるけど、ちゃんと調べておくべきだった。すまん」

 

「ううん、それ関してはしょうがない。ワタシも電車があるものだと思ってたから」

 

「取りあえず蝶の回収は出来た。あとは明日の夜にでも高嶺を連れてミカドさんの所に行くことにするよ」

 

「わかった。それなら明日は大丈夫そう?」

 

「ああ、ありがとな。付き合ってもらって」

 

「ワタシが好きで付いて来ただけ。気にしないで」

 

「いや、一人だけ色々と考えてしまっていたかもしれないからな。四季さんが居て助かったよ」

 

「そう?それなら良かった」

 

これは割とマジで思う。1人だったらマイナス方面に考えてしまっていたし。けど……まぁ、やる事は決まっていて、今更変更する気はない。目の前の彼女には申し訳ないけどな。

 

「今日はもう遅いが……何か食べるか?」

 

駅からここに来るまで運よくコンビニがあったためそこでご飯と飲み物だけは買っておいた。

 

「んー……お茶とおにぎり貰おうかな?」

 

「了解、ほい。昆布だけど」

 

「他は何があるの?」

 

「他は……鮭とツナマヨ……小松菜とかだな」

 

「そっちは何か食べる?」

 

「俺は……ツナマヨにしようかな」

 

「じゃあ鮭もらっていい?」

 

「どうぞどうぞ」

 

食事を済まして一息つく。

 

「一応風呂もあるから、入るなら先にどうぞ」

 

「ありがと。……お言葉に甘えて先に貰おうかな」

 

譲ろうとした時にある事を思い出す。

 

「すまん、違うな。……『先にシャワー浴びてこいよ』だったな。ここは」

 

「………、はあぁぁぁ~……」

 

キョトンとこっちを見たかと思うと、呆れたように目を閉じて思いっきりため息を吐かれた。

 

「滅茶苦茶デカいため息吐かれたんだが……?」

 

「したくもなる。……なんだが馬鹿みたい」

 

「ちょっとしたジョークだよジョーク」

 

「寒気がするけどね」

 

「それなら今から暖まるんだし好都合だな!」

 

「誰のせいでそうなってるんだが……。それじゃあ、入って来るけど覗かないでね」

 

「物理的に無理じゃね?確かに部屋に備えられてるとはいえ鍵掛かってるし……」

 

「じゃあドア越しで聞き耳立てない様に」

 

「そんな変態行為は……したくはないなぁ……」

 

「そこは"しない"って言う場面でしょ」

 

「男の本能に抗う事が出来ない可能性を考慮しての発言ですので……」

 

「遂に本性を現したか……おまわりさーん」

 

「待て待て、ここの人が勘違いしたらどうするっ!」

 

「勘違い?」

 

「行動に移してないから未遂ですらないんだぞ!?流石にしないから安心してくれ!」

 

「未遂で済めば良いんだけどねぇ……」

 

こちらを揶揄うように笑いながら脱衣所へ消えてく。

 

「うーむ、やはり部屋は別にしておいた方が良かったか?」

 

急いで入ったので空いてればいい精神で入ったが……今からでも変えるべきか?四季さんは特に気にしないとは言っていたが……。俺としてもありがたい。風呂上がりで宿の浴衣という構図だ。最高ではないか。

 

少しソワソワするような気分を味わいながらスマホで動画を見ていると、部屋の入口で人の気配がした。

 

「……ん?」

 

更に控えめにノックが入る。……誰だ?

 

少し怪しく思いながらも部屋のドアを開けると、そこには竜胆ルリがこちらを見上げていた。

 

「来ているのは分かっていたが……何かあったのか?」

 

もしかしてお菓子でも要求してくるつもりだろうか?だが、残念ながら今は持って無い。

 

俺の目を見ながら笑顔を浮かべて話しかけてくる。

 

「やぁやぁ、中々ユニークなことになってるようだね?」

 

笑いかけながら、普段聞かないしゃべり方で俺に話しかけて来た。

 

 

 





遂に登場!性格悪い上位神。

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