野中君事件が解決した後日からですね。
「それで、好きな人って?ワタシも知ってる人?」
この日、丁度朝に高嶺君から、『好きな人が出来た。』と、ぽろっと溢したので、講義が終わった後に食堂で集まった。
「まぁな」
「ふ~ん。なるほど。となると……明月さんか」
「気付いてたのか?」
「まあ、消去法で考えた結果かな」
「明月さんって、スマホを一緒に買いに行った子だよな?まあ、あれだけ可愛ければ……そういう気持ちにもなるよなぁ」
「………、~~~ッッ!」
明月さんのことを思い出したのか、高嶺君が悶え始める。
「何を急に悶えてるんだよ」
「相手のことを考えたらなんかこう……胸がドキドキするんだよぉ」
「乙女か」
おっと、つい勢いでツッコんでしまった。
「気持ち悪いな、お前……」
高嶺君の隣に座ってる汐山君がドン引きしている。
「仕方ないだろ、こんな気持ちになるのは初めてなんだから……」
「だから乙女か」
「頬赤らめても可愛くねーぞ」
「自分が一番驚いてるよ。まさか漫画みたいに自分が抑えられなくなるなんて……。それだけ、本気の恋なんだと、思う……」
……その気持ちに、共感してしまう自分がいる。
「昂晴……。うわっ、なんか恥ずかしい事を言い出した!背中痒っ!?」
「うるさいっ」
「茶化さない。それだけ本人は本気ってことなんでしょ?それで?告白とかするの?」
「いや……、流石にそれは先走りし過ぎだと思うから」
「けどよ、何かしら動いた方がいいんじゃないのか?野中君も頑張ったんだぞ?」
「それは……そうだけど、今後のお店の営業にも無関係では無いし……」
「理解は出来るが、そこを気にしちゃ始まらんぞ?」
「そうだけど……」
「いきなり告白するよりも、まずは明月さんと二人で出掛けるとかしてみたら?」
「それだ!クリスマスに出掛ければいいじゃん!」
「クリスマスは、限定商品のブッシュドノエルを販売するからなぁ……」
「なら、明日は?明日は定休日だしお店を気にする必要ないじゃない?」
「ん、んんー……でもなぁ」
「なんだよ?煮え切らないな」
「いや。いきなりそう言われても……プランとか立てる時間がないだろ?」
「クリスマスシーズンだから、イルミネーションを見るだけでもデートっぽくはなると思うけど」
「でもグダグダしない様に決めるべきことは決めておいた方が良いよな。因みになんだが、四季さんは予定とかは入ってたりしてる?もしくは、どんなクリスマスを過ごしたい?女の子代表としてさ」
「ワタシ?うーん、ワタシも高嶺君と同じでお店に居るし……。それに人が多いからあまり出歩きたくないかなぁ……?」
「あれ?予定とか入って無いの?ほら、彼氏さんとさ」
「彼氏?」
何の話だろうか?
「いや、先週から噂になっててさ。四季さんに恋人が居るって……。なぁ?」
「確かに少し噂になっている……かな?食堂で聞いたって」
「えっと……、どういった内容で……?」
「四季さんに、クリスマスのお誘いや付き合って欲しいって話をしたときに『どっちも先約があるから無理』って断られたって……」
「……あっ、ああー……あの時かぁ」
思い出した。あのチャラい陽キャ男の時か……。
「……本当だったのか」
高嶺君は妙に納得した様な表情をしてるけど、その隣は驚愕の表情を浮かべている。
「あー……、なんて言うか、まだ正式では無いと言うか……。(仮)みたいな……?」
「なるほど、四季さんの方で審査中ということなのか……」
「どちらかと言うと、ワタシの方じゃなくて、向こうの返事待ち……になるのかなぁ?」
「マジか……。一体どんな男なんだ……!四季さんの方を待たせるとか……!?」
「それは……って、今はワタシの話じゃなくて高嶺君の話でしょ」
「昂晴のことよりも、そっちの方が気になる。どうやって四季さんを射止めたのか……」
「それはまた機会があれば話すから。今は話を戻す」
危ない危ない。つい勢いで惚気そうになってしまった……気を付けないと。
「そんじゃ、また何かあったらいつでも言えよ」
「ああ、ありがとな」
食堂での話し合いが終わり、高嶺君と一緒にお店へ向かう。
「それで、今の所何か思いついた?」
悩み気味な隣の高嶺君へ声をかける。
「いやー、今の所はまだハッキリとは……」
「そんな高嶺君へ、良い物を授けましょう」
「良い物……?」
「はい、これ」
バックからチケットを2枚取り出す。
「それって……近くの遊園地のチケット……、しかもプレミアム?」
「そ。これを高嶺君にあげるから、明月さんを誘ってみて」
「いや、それは四季さんのだろ?流石にそれは……」
「気にしないで。特に使う予定は無いから」
「例の恋人と……って、もしかして……その予定が無くなったのか?」
「あー……まぁ、そんな感じ?」
全然違うけど、そういった方が都合が良いか。
「使おうかと思ったけど、必要無くなったから高嶺君にあげる」
「……良いのか?」
「このままだと持て余しそうだし、勿体ないからね。はい」
「……ありがとう。四季さん」
ワタシが渡したチケットを大事そうに受け取る。
「因みに、幾ら?」
「別に売りつけるつもりは無いけど……」
「いや、流石にその分のお金はちゃんと払わせて欲しい。と言っても、今は手持ちが心許ないから後にしてもらえると助かるのだけど……」
「それなら、高嶺君が大丈夫な時にでも渡して?何時でも良いから」
「分かった。お金を下ろしたらすぐに連絡するよ」
「ん。お願い」
「……興味本位なんだが、四季さんが言ってた人ってどこで知り合ったんだ?」
「ん?どうしたの?急に」
「いや、四季さんってあまり他の人と話したり遊んだりしてるイメージが無いから気になってさ」
「どこで……そうだなぁ……。カフェで?」
「ナンパされたってことか?」
「ナンパじゃないけど……まぁ、色々とあって?」
「どこに惚れたんだ?何か切っ掛けでも?」
「それを聞いてどうするの……?」
「いや、男として少し参考に聞いておきたいなって……」
「んー……、そうだなぁ。どこなんだろ?普段は人を揶揄って反応を楽しむけど、いざとなったら頼りになるとこ……とか?ああ見えて人の事しっかり見てたりするし……」
「やっぱり頼りになるのは、重要なのか」
「どうだろ?人によると思う。元々喫茶店で働いてたから色々と相談にも乗ってくれたりしてたしね」
「結構な経験者だったのか?」
「まぁ、それなりに……?あとは……ワタシの事を助けたりしてくれたことに……思い知らされた、みたいな?」
「なんだが、紆余曲折あったみたいだな」
「色々とね」
「それなら是非ともお礼をしておきたいな。お店の事でお世話になったんだから」
「……うん、そうね。遠くない内に高嶺君にも紹介してあげる」
「それは楽しみだな」
「ま、高嶺君はそれよりも、そのチケットの件で明月さんをどう誘うかの方が先だけどね」
「そうなんだよなぁ……。それが問題なんだよなぁ」
「自力で頑張ってみて。どうしようも無かったら助けてあげるから」
「その時はよろしくお願いします……」
「いやー、それにしても驚きましたねー……」
お店の片付けが終わり、明月さんを除いた女子メンバーで先に着替えさせてもらった。
「ほんとだよねー。まさか昂晴君と栞那さんがあんな大声で……」
横に居る火打谷さんと墨染さんが苦笑いしながら話し合う。内容は……先ほどフロアまで聞こえて来た二人の告白の件以外ありえないか。
「昂晴があんな大声で叫ぶとはねぇ……」
「こっちが気まずいですよねー……」
ワタシ達に堂々と知られてしまい、顔向けが出来ないとか何とかで今は高嶺君と一緒にフロアで待っている。
「でも、何となくお似合いというか、そうなってもおかしくない雰囲気はあった気がする」
「そう?ワタシは驚いたなぁ……。昂晴君が栞那さんの事好きだったってのもそうだけど、あんな告白するとか」
「それだけ、本気だったってことでしょ。いいねぇ、若いってのは……」
皆で話してるが、後に高嶺君も居るので程々にしておく。
「あ、そういえばナツメ先輩。少し前から気になっていたんですが……」
着替えが終わり、部屋から出ようとすると火打谷さんから話かけられる。
「ん?どうしたの」
「昂晴先輩の隣のロッカーって、誰か使用されてるんですか?人数に対して使用されてるの1個多くないですか?」
「……ああ、そのこと?」
「はい。特に意味は無いですけど不思議だなぁって思ってて」
「ちょっとね。予定があるからキープしてるだけ」
「予定……?誰か新しい人でも来るんですか?」
「うん。あくまで予定だから気にしないで」
「へぇー、そうなんですかっ。男性ですか?女性ですか?」
「一応、男性かな?と言っても、まだ確定じゃ無いから他言はしないでね」
「了解です!決まったら教えて下さいね?」
「ん。その時は連絡する」
「はいっ。それじゃあ、お疲れ様でーす」
「お疲れさま」
火打谷さんがお店から出て行くのを見送る。これでお店には高嶺君と明月さんだけになる。一応閣下も居るけど。
「……あれ?四季さん、まだ帰って無かったのか?」
少し待っていると、奥から高嶺君がやってくる。
「まぁね。高嶺君を待ってた」
「俺を?」
「そ。無事明月さんと付き合えた事を祝っておこうかなって」
「あ、ああ。それか。無事成功出来たよ。ありがと、色々協力してくれて」
「ううん、好きでした事だから気にしなくていい。……これでようやく高嶺君もリア充になったウェイね?」
「なっ!?ち、違うんだ、それは……」
「ごめんごめん。陽キャになったウェイ、こっちだった」
「いやっ、そう言う意味じゃ無いからなっ!?」
ナイスツッコミ。
「頼むから、それを持ち出すのは止めて下さい。黒歴史なんだよ……」
「分かった。今度は明月さんが居る時に言ってみるね」
「更に事態が悪化してるんですけどっ!?」
「だって、ほら。最初の時かなり爆笑してたじゃない?」
「それは、確かにそうだったが……」
「高嶺君は明月さんの笑ってる顔が見たいんじゃないの?」
「そういった経緯での笑顔は勘弁願いたいなぁ……」
「好きな人の笑顔なんだから、そこで受け入れられるかどうかで、男の度量が試されるかも」
「そんなことで俺の器を試したくないな」
「それは残念」
「ってか、本題は何なんだ?」
「本題?ううん、特には。一応本人の口から聞いておこうかなって思っただけ。後はついでに面白そうだから揶揄ったくらい」
「さようで。心配どうも」
「それじゃ、ワタシは先に帰ろっかな。高嶺君は、明月さんと今後の2人の事で話し合ったりするんでしょ?」
「まぁな。この後時間作ってはいる」
「それなら、また明日。遅くならないようにね」
「ああ、お疲れ様」
「お疲れさま」
高嶺君と挨拶を済ませてお店を出る。
「ぅう~……寒いなぁ……」
室内と外の温度差を感じ、手の平を擦り、口から息を吹きかける。
「はぁ~……って、対した効果は無いけど」
無事に高嶺君の告白が成功した事に安心を覚えながら家へ向かう。
「今日が24日だから……、あと6日しかないのかぁ」
改めて考えると、近い内に自分の隣から居なくなってしまうと分かっているのに、それでもと明月さんに告白を通した高嶺君は凄いと思うし、素直に尊敬出来る。普通、後の事を考えれば傷口が浅い内に身を引くと思うけど……。
「そういった所も含めて、諦めが悪いってことなのかもしれない」
ワタシはどうだろ……?
以前の自分だったら、間違いなく引き下がると思う。けど、今は……多分だけど、高嶺君と同じ行動を取ってもおかしくは無い……かもしれない。それだけ、自分の中から出てくるこの気持ちを身体が制御出来る自信が無い。
「澤田君も、そんな状況でもワタシの事を受け入れてくれたし……」
実際、次の日には永遠に別れるとなっても、ワタシの為に恋人になって、体の関係まで……って、あれはワタシが無理やり迫ったんだった。
いや、冷静になって考えたらほんとあの時の自分はどうかしていた。別に後悔とかがあったわけじゃないけど、いきなり過ぎでしょ。
そりゃ澤田君も戸惑うわけだ。告白してそれを受け入れてもらって、即襲い掛かるって……とんでもないことをやってしまった。
「うわぁ……。言い訳出来ない位にすけべぇだ……」
で、でも、記憶の中の澤田君は喜んでくれていたしっ?結果オーライで良いよね?罪悪感マシマシだったけど……。
「それに……気持ち、良かったし……。って、何を思い出してるのだか」
あの宿での出来事を思い出してしまい、体温が上がる。
「……凄かったなぁ」
あんな……わけなかんなくなって、足腰に力が入らなくなるくらい良すぎるだなんて……。
「って、今はそれよりも今後の事を考えないとね」
ようやく最終局面に入ったのだから。
冬の夜道を、小さく微笑みながら家へ向かった。
-結論-
セックスは凄い