喫茶ステラ ―異邦人と蝶の残滓―   作:コクーン√

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12/29から

お店が今年最後の営業を無事終えました。つまりそう言う事です。




-新訳-第36話:Pre-established harmony

 

「さてと、無事ここまでキミの思惑通りに進める事が出来たね。よく出来たと褒めてあげよう」

 

澤田君の部屋でワタシの正面に座りながら、笑顔でこちらに称賛を送ってくる。それを見て隣の卯ノ花さんが深いため息を吐く。

 

「別に大したことじゃない。ワタシは彼のして来たことをなぞっただけだから」

 

「そうかもしれない。でも、それを成したのは間違いなくキミだからね。そこは勘違いしないように」

 

「……そうね」

 

記憶を持っていても、それを選んでここまで動いたのはワタシの意志。それについては確かに間違ってはいない。

 

「それで、このまま順調に過ごせばあの子は蝶に還って彼が奇跡を起こすことになるけど……、間違った選択を選ばないようにね?」

 

「大丈夫。過去に戻るのは高嶺君達3人だけ。ワタシはちゃんとここに残るつもり」

 

「それは僥倖。変な心配してごめんね~?」

 

まぁ、本音を言えば付いて行きたい気持ちがないわけでは無いけど……。

 

「折角ここまで無事に来たんだから、変な行動を取る気は無いから安心して」

 

「そっかそっか~。なら僕からはこれ以上いう事は無いかな?キミの健闘を願ってるよ」

 

用件が済んだのか、テーブルに手を付いて立ち上がる。

 

「帰るのか?」

 

「そうだね。後はこの子に任せるよ」

 

「そうか。ならばさっさと出るとしよう。すまんの、急に押しかけて来て」

 

「ううん。そっちには色々と助けて貰ってるから」

 

「それじゃあ、僕らは帰るよ。今度会う時はあの子が人間に成った時かな?」

 

「そう……かも?」

 

「じゃあね~」

 

こちらにひらひらと手を振りながら部屋を出て行き、その後を卯ノ花さんが続いて出て行った。

 

「……ふぅ」

 

未だに少し緊張してしまうけど、今回も何も起きずに終わった。ていうか、ワタシの様子を見て帰って行くのが大抵ではあるけど……。

 

「遂に、明日……かぁ」

 

高嶺君と明月さんが付き合って、5日程過ぎた。今年最後の営業を終えて明日、高嶺君は明月さんと遊園地へ行くことになっている。

 

「何となく、明日が最後って察している雰囲気……だったし」

 

明月さんとの別れがそう遠く無いことは彼も感じているだろう。お店が終わった後に、明月さんからワタシに明日の午前に話がしたいとメッセージが来ていた。十中八九、お別れの挨拶だろう。

 

「全部、高嶺君の幸せに為に……か」

 

 

 

 

 

「……で、わざわざ何度もナツメの様子を見に来てる理由は何なのだ?そろそろ答えても良かろう」

 

「ん?んん~、これと言って深い意味は無いよ?ただ彼女の魂の状態を見ておきたかっただけさ」

 

「魂の?」

 

「そ。とても珍しい……と言っても良いくらいの現象だからね。血の繋がりも無い赤の他人同士、しかも男女での魂の共存。いや、結合、融合と言っても良い。非常に興味が惹かれるよ」

 

「そうかの?それを言ったら昂晴とやらにも同じ事が起きてるのではないのか?」

 

「あれとは全然違うね。あれは魂を分けた事で起きた一時的な現象、副産物みたいなものだよ。単なる夢だからね」

 

「でも、彼と彼女のは違う。異なる魂が混じってる。言わば1人の人間の体に2人分の人間が入ってるようなものだよ。けど、それが不思議とお互いを受け入れている。単純に魂の一部が零れた事による出来事なのか、はたまた別の要因なのか気にならない?」

 

「そう言われると、確かに気にはなる」

 

「もしかすると、愛の力って奴なのかもしれないしね~」

 

「クサい台詞じゃのぅ……」

 

「一概に馬鹿には出来ないからね。強い感情はそれだけ人を変えるのさ。キミも誰かを好きになれば分かることさ」

 

「妾が?面白い冗談じゃの」

 

「ははっ、そうかもしれないね。今更キミに神を辞めてもらうのは僕としても勘弁してほしいし」

 

「……?妾が恋愛をするのと、神を辞めるのに何の関係があるのだ?」

 

「さぁね。ありもしない可能性だし、気にしなくて良いよ」

 

「そうか?」

 

「それにしても、彼女が彼の存在した証拠を見つけたのはちょっと想定外だったな~」

 

「白々しい。ナツメがあやつの部屋に入れるように鍵を開けたのを貴様じゃろう」

 

「確かにそれは僕。けど、あくまで切っ掛けを作る為に用意していただけさ。なのに……まさか彼の電化製品を彼女経由で買っていたとはねぇ~。澤田達也としての情報や痕跡は完全に消したと考えていたから少し失敗したって思ってるだけさ」

 

「結果的にナツメは思い出したのじゃから、失敗したとは思わないが……?」

 

「まぁ、そうだけどさ。あくまで僕の矜持的な話さ。一応これでも偉い神だからね。お願いされた事を完璧に遂行し切れなかった。あくまで個人的な感想なのさ」

 

 

 

 

翌日、連絡を貰っていた通りにお店に行って明月さんと話をした。と言っても自分が居なくなる事と、その後の事についての話しだったので前の世界とあまり違いは無かった。

 

「明月さん、最後に一つ聞いても良い?」

 

話したい事を終えて少し雑談をした後に、最後に一つ聞いてみた。

 

「はい?なんでしょうか」

 

「明月さんは、高嶺君と出会って、一緒に働いて、恋人関係になる事が出来て、幸せだった?」

 

「……そうですね。幸せでした。死神の仕事をしていて、今回の様に深く関わるという事はありませんでしたし……、沢山の事を体験することが出来ました。昂晴さんとお付き合いするのは意外も意外でしたけど……にひひ」

 

目を閉じて、これまでのことを振り返りながら少し恥ずかしそうに笑った。

 

「ナツメさんの夢を手伝う事から始まって、昂晴さんが来て、愛衣さんと希さんが来て、涼音さんが来て、皆でお店をオープンさせてお客さんを笑顔にさてる事が出来て……凄く楽しかったです」

 

「……うん、ワタシも楽しかった」

 

「最初は後ろ向きなナツメさんも、今ではきちんと前向きになって笑えるようになりましたしね」

 

「まぁ、そうね。数ヶ月前のワタシとは大違いなのは自覚してる」

 

「お店の為にと様々な提案をされたり、もっと良くして行きたいって気持ちが凄く伝わっていましたよ」

 

「自分で言いだした夢だしね。それに、お店の事を完璧にこなして、問題無いってところを見せたかったから……」

 

「どなたかを招待されるのですか?」

 

「ちょっとね、今のお店を見せたい人が居るってだけだから。気にしないで」

 

「……分かりました」

 

今の言葉を聞いて、誰を想定したのだろうか?順当に行くのならワタシの両親とかだろうか?

 

「それじゃあ、ワタシはそろそろ帰ろうかな?高嶺君とのデート、楽しんで来て」

 

「はい。ありがとうございました」

 

「うん、湿っぽいのもなんだし……それじゃあね」

 

「はい。お元気で」

 

手を振りながらワタシを見送る明月さんに背を向けてお店を出る。

 

「……無理に笑っちゃって」

 

澤田君の記憶があるからか、明月さんの笑顔を見て違和感しか感じなかった。大人ぶってるってことなのだろう。最後まで笑顔でいるって約束を守らせる為に……。

 

「後は、3人が帰って来てからかな?」

 

過去に帰り、奥の休憩室で2人がキスをして……。最初のあの日に高嶺君が明月さんのマントを被って寝ていた原因がそれだと分かったと同時に、明月さんの言動も理解出来た。確かに高嶺君を回収しに行こうとしたらお店に居て、マントが無くなってるって混乱するよね。

 

澤田君は、2人が確実に接触する為に一緒に過去に飛んで、自分の目の前でキスをさせていたけど、この世界ではその必要は無いから過去に行くのは3人で変わらない。

 

……もし、ワタシも一緒に飛べば、あの日のベンチに座ってる澤田君に会えるのでは?とも考えた。

 

あの日に消えようとしている彼を止めれば、また一緒にお店で働いていけるんじゃないかって……。けど、彼が居ること自体が負を呼ぶ可能性がある以上、また前の世界の様な事が起きるかもしれない。だから澤田君は消えることを選んだんだから。

 

「……そこが、唯一の問題点……なんだよね」

 

一応、策はあるのはあると言ってるけど……本当に上手く行くかは分からないしぶっつけ本番。

 

「それでも、やるしかないよね」

 

弱気でいたら成功する物もしなくなるし、必ず成功させる。その位の気持ちで行かないと。

 

「……よし、頑張ろ」

 

気合を入れ直してから、帰路へ着いた。

 

 

 

 

次の日、男性物の服やら一式を買いにショッピングモールへ来た帰りに高嶺君と遭遇をしたけど、案の定表情だけでは無く、纏う雰囲気までもが沈んでいた。

 

「高嶺君は……何か買い物に?」

 

「ああ、コーヒー豆を買おうかと思ってさ。お店のだとミカドに横領扱いされるからな」

 

「コーヒーか……。未だに良さが分からないなぁ。やっぱりどう考えても人間にコーヒーの苦みなんて必要ない味なはずなのに」

 

澤田君の記憶で味わっていたのを見てから、一度手を出して見たけどどうやっても美味しいとは思えなかった。

 

「コーヒーだけじゃなくて、ピーマンもだろ?」

 

「うるさいなー。分かってますよー、苦手だってことくらい」

 

人の記憶や体験を持っても、そう簡単に克服が出来るなんてことはないのだろう。

 

「ちなみに四季さんは、どの豆を買えば良いと思う?」

 

「飲めないワタシにそれを聞きます?」

 

「ほら、話の流れ的にさ」

 

「そうね……。やっぱり、高嶺君が今まで一番美味しいと感じた豆を買うとかが良いんじゃない?」

 

ブルーマウンテン、とかね。

 

「そうだな……やっぱブルマン、かな?」

 

「ああ。あの高いやつ」

 

「やっぱり味が違うんだよ」

 

それはきっと、値段以外にも美味しく感じた要素があると思うけどね。

 

「なら、それにしたら?ちょっとお高いとは思うけど、たまには良いと思うし」

 

「……そうだな。これぐらいの贅沢、たまにはいいよな」

 

「そうそう。ならワタシもたまには、ちょっとお高い紅茶の茶葉でも買ってみようかな?」

 

確か……駅近くにあったお店だったっけ?あと焼き菓子も。炬燵は……流石に止めておこう。

 

「それじゃあ、俺はそろそろ行くよ。また来年からよろしく」

 

「そうね。来年もよろしくね」

 

そのままコーヒーのお店へと向かう高嶺君を見送る。

 

『良いお年を』とか言った方が良いかと思ったけど、今の彼のそう言うのは流石に憚れると思って止めて置いた。

 

「っと、まだ買う物があるから急がないと……」

 

服は一通り買ったけど、最後にもう一つだけ買っておかないといけない物がある。

 

「色は……同じので良いかな?良いセンスって思ってくれてたみたいだし」

 

それに、あの時は気づかなかったけど……、ワタシの瞳の色と同じだって気に入ってくれたから。

 

 

 

 

 

必要な物を買い揃えてから一旦自分の部屋へ戻り、荷物を置いて一休憩をしつつ日も暮れ始めて来たので高嶺君のマンションへ向かった。

 

澤田君が見張っていた時と同じ場所に腰を下ろす。コンクリートのひんやりとした感触に一瞬体を強張らせた。

 

「んー……、暫くはここで待機かな」

 

スマホを取り出して時間を確認する。記憶にある時間まで20分程余りはあるけど、遅くなって危なくなるよりは良い。

 

無事に部屋から出てくるかの心配で少し緊張しつつも大丈夫と自分に言い聞かせて待っていると、マンションの入り口からお店の方へ走って行く人が見えた。

 

「あっ……高嶺君」

 

顔は見えなかったけど、走っている直ぐ後ろに飛んでいる蝶が見えた。高嶺君で間違い無いだろう。

 

「まぁ、こんなタイミングで蝶を連れてお店の方へ行く人なんて1人しかいないよね」

 

問題無く物事が進んだ事に安堵しながら立ち上がって歩き出す。

 

「……?」

 

お店とは逆の方角へ歩いていると、前方に見覚えのある人が立っていた。

 

「上手くいけたかの?」

 

卯ノ花さん……。わざわざ見に来たのだろうか?

 

「今の所は何とか行けた……のかな?この後がどうなるか見届けられないのが心配ではあるけどね」

 

「そこは仕方あるまい。戻って来たら妾がこっそり確認しといてやろう」

 

「ありがとうございます。それならワタシは明日に備えて大人しく帰ろうかな」

 

「うむ。お主にとっての本当の勝負は明日以降になる。今日はゆっくりと休んでおくと良い。そうじゃな……今日中にこちらから接触が無ければ問題無いと思ってくれてよい」

 

「わざわざそれを伝えに……?」

 

「それもあるが、その……なんじゃ。先に謝っておこうかと思ってな……」

 

ワタシに若干の申し訳なさを感じるような苦笑いを浮かべる。

 

「え、何かあったの……?」

 

「あったというか、これからあると言うか……」

 

「これから……?何があるの?」

 

「あー……、そのじゃな、上役のあやつが迷惑を掛けると思うからの。心構えくらいはさせておこうかなとな」

 

なんだか言い辛そうだけど、なんだろ。そんなに大変な事なの?

 

「妾の口からは言えんが、面倒事が来ると思っておいてくれ」

 

「え、あ、うん。よく分からないけど、分かった」

 

口止めされてたり……してるのだろうか?まぁ、あの上の神様のことだし色々と面倒事を仕掛けて来たりしても不思議じゃない……かも?

 

「それじゃあ、妾も行くとしよう。またの」

 

「う、うん」

 

こちらを一瞥してからくるりと身を返して去って行った。

 

「………」

 

このまますんなり行かないと暗に言っていたのだろう。

 

でも、彼に会う為に乗り越えなければいけない壁があるのなら、どんな手を使ってでも越えて見せる。

 

「一体、どんな面倒事が起こるんだろ……」

 

街灯に照らされてる夜道を歩きながら、何が来るのかを想像しながら帰路へ着いた。

 

 

 

 

次の日、アラームの音に目を覚まされながらも、ゆっくりと体を起こす。

 

「っん……、ふぁ……」

 

腕を大きく伸ばしながらあくびをしてスマホを手に取る。

 

「うん。特に問題は無さそう」

 

昨日は遅くまで起きていたから少し寝不足なのはあるけど、体調面は大丈夫そう。

 

「卯ノ花さんも来なかったし、2人の方は問題は無いってことで良いのかな」

 

一応、直接確かめる為にこの後お店に寄ることにしているけどね。

 

ベッドから起き上がり、身支度を済ませ朝食を食べてから家を出る。

 

「行ってきます」

 

誰かに対して言ったわけでは無いけど、玄関を出る前にそう呟いた。

 

言うならば、これからの自分に向けての決意に近いものかもしれない。

 

室内との温度差に体を小さくさせながらお店へ着くと、入口近くに白い服装をしている少女が居た。

 

こちらに気づくと、怪しそうなニコニコとした笑顔を浮かべて声を掛けて来た。

 

「やぁやぁ、グッドモーニング。今日も良い朝だねぇ」

 

その声を聞いて今が誰なのかすぐに分かった。

 

「おやぁ?何だかしかめっ面に見えるけど、何か嫌な事でもあったのかい?」

 

「今の所は特に無い……かな?昨日は特に何事も無く終えたの?」

 

高嶺君達が戻って来たであろう場所へ視線を移す。

 

「心配しなくても大丈夫。キミの望んだ通りに進んだと見て良いよ」

 

「そう。良かった」

 

大丈夫だとは思っていたけど、その言葉を聞いて安堵した。

 

「ま、僕がちょっと手は加えたけどね」

 

何だか、嫌な言葉が聞こえた気がした。

 

「手を加えた……?」

 

「そうそう。キミへのちょっとした褒美とでも言えば良いのかな?彼ら3人が味方になる事が出来るおまじないさ」

 

ワタシへの褒美?高嶺君達が協力してくれるようにってことなのだろうか?

 

「彼らには澤田達也が居た前の世界の記憶を持って貰っているってことさ」

 

「澤田君が居た世界の……記憶?えっ、どういうこと?」

 

「単純な話さ。今このお店に居る3人は、彼が居た世界の3人ってこと。だから澤田達也という存在を知っている」

 

……何をしたのかよく分からないけど、内容だけを信じれば今お店に居る高嶺君達は澤田君の事を覚えているってことなのだろう。

 

「ま、信じるかどうかはキミに任せるよ。僕はこれから彼らに話があるから上がらせてもらうよ」

 

そう言うと、お店の入口のドアを開けて中へ入る。それに続いて中へ入る。何を話すのだろ?

 

というか、神様って基本不干渉って覚えてるけど、こんなに関わって来て良いのだろか?ほんと今更だけど。

 

「それじゃあ、先に行かせてもらうよ。僕の用が済んだらここに向かわせるから大人しく座っておいてね」

 

「……分かった」

 

ワタシが椅子に座るのを見てそのまま奥へと向かって行った。

 

「んー……」

 

さっき言ってた話……どうして3人にも前の世界の記憶を持たせたのだろう?ワタシへの褒美って言ってたけど……。

 

卯ノ花さんが忠告してくれた面倒事への前置き?いやでも、ワタシ的には助かる事になりそうだしなぁ……。もっと変な事が起こると思ってたけど。

 

「何かの実験的な……?」

 

前にワタシへ手を貸すのはちょっとしたお試し的な意味があるって言ってたし、そういう何かをしていたとか?

 

「それとも……」

 

ほんとに特に意味は無くて、唯々ご褒美だった……。うーん、ちょっと考えにくいなぁ。

 

澤田君の記憶にあるあの偉い神様は中々良い性格をしているってことだし、何か理由があるはず。

 

「とまぁ、考えても仕方ないかな」

 

それより今は、この後の事だ。3人が澤田君の事を覚えてるのなら少し予定を変えても良いかもしれない。

 

高嶺君と明月さんが戻って来たのを確認次第、あの森へ神様と卯ノ花さん含めた3人で向かって、結界の中に入れて貰い澤田君を呼び起こす。その予定だったけど、高嶺君達も一緒の方が良いと思う。きっと2人も一緒に行くって言うと思うし……。

 

色々と説明は必要になると思う。それを知った明月さんは感謝とは別に怒るだろうなぁ。うん、澤田君には明月さんからの説教を沢山受けて貰おう。

 

「ふふっ……」

 

正座しながらシュンとして怒られる彼を想像してしまった。

 

それなら、第一声は3人の反応を確かめる言葉を使わないとね。澤田君の名前は勿論だけど、今の状況を把握出来てるかどうかも確かめておきたいし……。

 

「……ちょっとカッコつけすぎてるかも」

 

頭の中に思いついた言葉に対して多少の羞恥心を覚える。

 

「でもまぁ……そのくらいの台詞の方が雰囲気が出ると……思うし」

 

あの神様がどんな話をしてるのか知らないけど、多分ワタシが澤田君の記憶を持ってるとは思って無いだろうし……サプライズみたいな感じが出て良いかも。

 

雰囲気を出すための言葉は大事。ワタシの記憶の澤田君もそう言ってる。うん。

 

責任の半分をここには居ない彼に押し付けながらも最初の言葉を決める。

 

少しドキドキしながら待っていると、奥からこちらに向かって来る足音が聞こえて来た。

 

「……え?」

 

フロアに出て来た明月さんが、ワタシを見て驚きの表情で声を上げる。

 

「ああ、やっと来た。3人ちゃんと揃ってる……。さてと、それじゃあ早速で悪いけど、これからの事について話し合いを始めましょう?」

 

驚いたままワタシを見ているの対して真っ直ぐ視線をぶつける。

 

「彼ーーー澤田君を救う物語を」

 





話が追いつきました。

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