状況説明中...
「と、ここまでがあの日から今日までの出来事ってことなんだけど……」
フロアの席に4人で座り、ワタシの方から3人に今日までのこと話した。
「えっと、その……お話は分かりましたが、少し頭の整理が追いついていないといいますか……」
次から次へと話が出て来た為、正面に座ってる明月さんが困った様に笑う。その隣に座ってる高嶺君も同じ様な表情をしていた。
「一応、ワタシ達も両方の記憶を持ってはいますが、これは……流石に情報過多かと」
「澤田達也の記憶を持っており、更に魂が混ざり合ってるなど……」
「つまりは、四季さんは澤田さんがしていた事をしてきたって解釈で良いのか?」
「うん。そう思って貰って大丈夫。澤田君が前の世界でしてきたのを代わり……とは言えないけど、ワタシがしてきた」
「そうか……。確かに四季さんから俺に話しかけて来た時が多々あったな」
自分の記憶を照らし合わせるのか、高嶺君が考えるように顎に指を当てながら目を閉じた。
「個人的に聞きたい事やツッコミたい事が山ほどありますが……一旦それは置いておきます。ナツメさん、先に確認したいのですが、今の話から……澤田さんを連れ戻す手立てがある。で良いのでしょうか?」
「一応ね。そこにいる神様の手を借りる必要があるけどね」
カウンター席からワタシ達の話を面白そうに聞いている神様に視線を向ける……が、只々ニヤニヤとこちらを見ているだけだった。
「その、具体的にはどの様な……?」
「明月さんと閣下が初めて澤田君と会った森って覚えてる?」
「え?あ、ええ……勿論覚えてますが」
「その場所に大量の蝶達が居るから、明月さんにした方法と同じやり方でもう一度澤田君を連れ戻すつもり」
「私と同じ方法で……。なるほど、澤田さんがどちらからあの数の蝶を集められたのか不思議でしたが、その場所からでしたか……」
「そう。今は蝶が外に漏れ出ない様に結界を張ってもらってるからどこかに行く心配は無いと思う」
「結界が……?」
「そ、今の状態では中に入れそうに無いから近くまで行ってから解いてもらう予定」
「……分かりました。既に方法は考えられてるのでしたらこちらとしても安心しました」
「一応聞いておくけど……3人も一緒に来るで良い?」
「当然だな。ここまで聞いて大人しく待っている訳にいかん」
「そうですね。あまり力になれるとは思いませんがナツメさん1人だけ行かせる選択肢はありませんし……良いですよね?」
「ああ、俺も栞那と同意見だ。せめて迎えに行くくらいはしておきたいもんな」
「うん、分かった。それじゃあ明月さん達も一緒ってことで」
話が一段落し、カウンターでこちらを見ている神様に視線を向ける。
「ん?もう話は終わりで良いのかい?」
「ええ、情報の共有は済んだから大丈夫」
「そっかそっか。それじゃあ僕から情報の修正をしておこうかな?」
「修正……?」
「そう。間違って認識している考えを正そうってことさ」
面白そうな物でも見つけた様な表情でこちらを見ているけど……嫌な予感しかしない。
「一つ、僕は確かにキミに協力すると言ったね。こちらとしても彼に戻って来て貰った方が都合が良い。だからほんの少し手を貸した……これは認めよう。けど、結界を解く事は許可出来ないね」
「……え?」
「うーん、やっぱりそう思っていたみたいだねぇ。話を聞いているとまるで僕があの場所に掛けている結界を解いてくれる。そんな風に言っている様に聞こえたからさ。確認して見て正解だったよぉ」
「そ、そうじゃないってこと?」
「当たり前じゃないか。そもそも、僕が一言でも言ったんかい?『時が来たらあの場所の結界を解いてあげる』だなんて話を」
「そんなの言ったにーーー」
いや、言ってない。確かに言って無い。あくまで澤田君が戻ってくるためにワタシに手を貸すとしか……。
「っ、けどっ!澤田君を助ける為に手を貸すって話だったはず。なら、結界を解くのにも手を貸す位しても……」
「勘違いしてもらっても困るけど、本来僕の様な存在が手を貸してあげること自体が間違ってるんだよ。今までが特例も良いとこさ」
「だけど!ここまで来てーーー」
「これまではキミの魂の負担具合と、経過観察という口実があったから何度も来れたのさ。けど、これ以上僕が出てくる必要も無さそうだからね」
「んん~、キミには申し訳ないと思うけど、これは神として仕方ない事なんだ。だから僕がこれ以上何かしてあげるつもりも無いから、残りは自分達だけで頑張ってねぇ~」
「ちょ、ちょっと……!」
こちらの制止を聞かずヒラヒラと手を振りながらお店を出て行った。
呆然としているワタシに明月さんが声をかける。
「ナ、ナツメさん……」
「どうするのだ。神が力を貸してくれないとなると結界の方の解決が……」
「ミカドの方から手を貸してくれってお願いとか出来ないのか?」
「無茶を言うな。それに、さっきも言っていたが……本来人に力を貸すなど異例中の異例なのだ」
「ちょっと待って、他に何かないか考えるから……」
澤田君の言っていた通り、最後の最後で嫌がらせを仕掛けてくる性格みたい。けど、ここまで来て諦める訳にはいかない。
それにしても、どうしてこのタイミングで結界の事を話したんだろう。ワタシに告げるタイミングは前にもあったはず……。
「何か、意味が……?」
額に手を当てて考える。
このタイミングに意味が……?今日になって何か変わった?となると……お店に入る前に自分が少し手を加えたって話と何か関係があるの?
明月さん達に記憶が戻った事が神様が手伝わなくなった原因?
『これ以上僕が出てくる必要も無さそうだからね』
自分が居なくても解決が可能……?って意味を含んでいると見て良いんだろうか。
考えなくちゃ。向こうも澤田君が助からないのは嫌なはず。それでも手を貸さないとなると、現状の手で何とか出来るって事だと仮定して……。
澤田君の記憶でも、あの神様は人を揶揄うのは好きでもちゃんとヒントや手を貸してくれていた。なら何か解決する道があるはず。
問題はあの森の結界をどうにかしないといけない……。どうにかして結界を無効化してーーー。
「……あっ、もしかして」
「ナツメさん?何か思いついたのですか?」
「え、あ、うん。ちょうど明月さんに確認しておきたい事があるの」
「私にですか?なんでしょう」
「明月さんって結界張れたりしたよね?ほら、澤田君と戦った時みたいに」
「え?あ、ああ……あの時ですか。すみません、今は死神では無くて人なので……」
「人の状態でもあの鎌が扱えるから、もしかしたらって思ったけど無理そう?」
「え?どういう意味ですか?死神じゃなくても使えるのですか?」
答えを知っていると思われる閣下に視線が集まる。
「可能だな。あれは人か死神かではなく、使い手が重要だからな。今の栞那にも問題無く扱える」
「そ、そうだったのですか……」
「一応、疑問に思っている結界の方も使う事は可能だ。多少我輩もサポートはするけどな」
「蝶をその場に留める事は可能ってことで良いの?」
「問題ない。行使可能だ」
「それならまだ可能性はあるかも……」
「嫌な予感しかしないのだが……何をする気だ?」
「ううん、まだ確証は無いから実際に現場に向かいたいんだけど……閣下や明月さんなら辿り着けると思うし」
「人払いの件か。確かに吾輩や栞那なら効果は無いだろうな」
「やっぱり。ならその先も大丈夫かも」
支度を済ませ、駅から電車に乗って目的の森までやって来た。
「ここから少し歩くことになるけど、大丈夫?」
「我輩たちの事は気にするな。高嶺昂晴も栞那もこの位平気だろう?」
「俺は特に何とも……」
「私の方もお気になさらず」
「ん、了解。それじゃあ途中までワタシが前を歩くね」
3人を引き連れて森の中へと歩みを進める。暫く歩くと、不意に変な感覚に包まれる。
「……多分、この先に結界があると思う」
「良く気付いたな。本来人には感知出来ぬと思うのだが……」
「それはきっと、ワタシじゃなくて彼の魂があるからだと思う」
「澤田達也の魂か……。それなら納得だな」
「では、ここからは私が先頭を歩きます。はぐれない様にしっかりと後を付いて来て下さいね?」
宙から鎌を出現させた明月さんと入れ替わり、距離を空けないように後ろを追っていく。
「なぁ、四季さん」
隣を歩く高嶺君が声をかけてくる。
「ん?なに?」
「四季さんが前に言ってた、その内俺に会わせる人……あれって澤田さんの事だったのか?」
「……うん、澤田君のことだった」
「なるほどな……、なんか色々と納得出来た」
何か合致したのか。納得するようにうんうんと頷いている。
「それなら、尚更絶対に助けないといけないな」
「ええ、必ず」
「皆さん、着きました。恐らくここが結界との境界です」
前へ視線を向ける明月さんにつられて前を見るが、これと言って特に見えない。
「それで、ナツメさん……案と言うのは?」
「私はこの先に行きたいけど、この結界が邪魔してる。だから、一度この結界を壊して中に入ったら明月さんにもう一度張り直して貰うって考えなんだけど……可能?」
「ええっ!?結界を……?」
「無理そうかな?」
「張るのなら平気ですが、神様が張られている物を私が壊すだなんて……。そもそも私で可能かどうか……」
「取り敢えず、一度試してみてくれない?きっと大丈夫だから」
「えっと……、はい、わかりました。見るだけ見てみますね」
不安そうな表情で恐る恐る前へ手を伸ばす。
「えー……っと、あれ?この結界……」
「どう?行けそう?」
「あっ、はい。なんか行けそうですね。というよりか……かなり弱い結界を張っている様です。これなら私でも大丈夫ですが……」
「良かった。これで駄目だったらあの神様に文句言わないといけないとこだった」
今頃ワタシ達が自分の思惑通りに事を進めてるのを見て愉快そうに笑ってるんだろうなぁ……。
「それに、この規模でしたら予め私ので上から覆えば蝶達が逃げ出す心配も無さそうです」
「……うむ、わざわざ神がこの程度の結界で維持しているのは確かに不自然だな。それに、これからそれを破壊しようとしているのに止めに入ってくる気配もない。本当に織り込み済みという事なのか?」
「ミカドさん、どうしましょうか……?」
「どの道、ここまで来て引き返す選択肢などありえんからな。何かあれば責任は我輩が取ろう。栞那、始めてくれ」
「……分かりました。では、行きますね?」
すると、明月さんが静かに声を発する。
聞いた事のない言語……結界の為の呪文みたいなものだろうか?
「―--。はい、これで大丈夫です。……大丈夫ですよね?」
「そう心配そうにこっちを見るでない。大丈夫だ」
「だって、本当に行けるか不安でしたし……。でも、何事も無く出来て安心しました」
「では、次に移るぞ?」
「……はい。結界の破壊、ですね」
今度は手を前に突き出し、ゆっくりと息を吸う。
「……ッ!」
力を込めるように息を吐いて目を開く。すると、周囲を覆っていた何かが無くなった気がした。
「これで一応は無くなりましたが……、本当に良かったのでしょうか?」
「ふむ、何かが起こるのなら今の時点で動きがあると考えられるが……特には無さそうだな」
「それなら良いのですが……。ナツメさん、取りあえず結界の方は問題無く済みました」
「うん。ありがとね。これでようやく……あの場所に行ける」
意を決して前を歩く。少し歩くと周囲に蝶が飛んでいるのが見え始める。
「こんなに多くの蝶達がここから発生していたのですね……」
先に進むたびに増えて行く蝶を見て明月さんが驚きの声をあげる。
「多分、目的地は目の前だと思う」
木々を抜け、少し開けた場所に出る。するとそこには、前の世界で見た時以上の蝶達が飛んでいた。
「これらが全て、澤田達也が原因だと言うのか……?」
「どうでしょうか……。ですが、ここに蝶を発生させる何かがあるのは間違いないですね」
「ワタシが知っている話だと、元々澤田君が居た世界とこちらの世界を繋ぐ門?みたいのがあって、それを通ってこちらに流れて来てしまってるらしいけど……」
「奴が居た世界からだと……!?」
「これだけの蝶が流れてきているとなると……、澤田さんが居られた世界で一体何が起きているのですか……?」
「それについては結局分からず仕舞いみたい。良くない事が起きてるのは確実だけど……」
それよりも今は……。
「ようやく……ようやくここまで来れた。後は、彼を呼び戻すだけ……」
あの日、澤田君が生まれた場所まで向かい、手を前へ出す。
「それじゃあ、残りはお願いね」
呼びかけるように声を出すと、手の平から1頭の蝶が出てくる。
その蝶がその場をひらひらと飛ぶと、周囲に居る蝶達が集まり始める。
「蝶達が……集まってる……?」
「四季ナツメから出て来た蝶に呼び寄せられているのか?」
その光景に驚きを隠せない様子。意志を持つ蝶に呼び寄せられる……だっけ?
すると、ワタシ達の周りを飛んでいた全ての蝶が、一斉に目の前の蝶へ向かって集まり出した。
次から主人公視点で話を進めようかと思います。