主人公視点で始まります。
地点は……まぁ、過去?
「……んん、っ、んあ……」
耳から入って来るアラームの音に目を覚ます。
「あー……、朝か」
体を起こして目覚ましのアラームを止める。
「っと、起きて朝食に向かわないとな」
ベッドから出て体を伸ばし、カーテンを開ける。夏が終わり、秋へ近づいている為日に日に太陽の位置が変わってるように思える。
「あら、おはよう」
「おっ、起きて来たか。朝食はもう出来てるぞ」
「おはよー」
二階の部屋から降りてリビングへ出ると、3人分の朝食がテーブルに並べられており、父が新聞を読みながら既に座っており、キッチンの方で母がまだ何か準備をしていた。
「もうちょっと待ってね、こっちももう少しで終わるから」
「その位全然待つから急がなくても大丈夫」
「達也、そこのリモコンを取ってくれ」
「これ?はい」
「サンキュ。朝の占いがそろそろ始まるからな」
「いや、いい歳したおっさんが朝の占いを信じるとかどうなの?」
「甘いな。いつまでも少年の心を持つことは大事だぞ?若さの秘訣だ」
「いやー、それは幼稚って言うのが正しいかと思うのだが……?」
「この人は昔からそういうのを楽しめる人間だから諦めなさい」
父親の嫌な一面に呆れていると、用が済んだのかテーブルの席に3人が揃った。
「おっし、んじゃいただきます!」
「いただきまーす」
「はい、召し上がれ」
今日の朝食のメニューは白米に味噌汁、目玉焼きとベーコン、サラダも付いていた。
「一応トーストも作れるからそっちが良かった言ってね?」
家族で食卓を囲み、朝食を食べ始める。
「どうかしら、今日の朝食は?」
食べ進めている俺に味の評価を聞いてくる。
「いつも通りの美味しさと安定した朝食だと思う」
「そう、なら良かった」
俺が食べてる姿を嬉しそうに見ている。
「いやいや、俺の食べてる姿を見るより、そっちも食べないのか?」
「あら、そうだったわね」
「俺も当然、美味いと思ってるからなっ!」
「はいはい、いつも美味しそうに食べてくれてありがとね」
「あれ、若干俺には冷たくないか?」
「気のせいでしょ。ねー?達也?」
「……ノーコメントで」
「おいっ息子!同じ男だろ!?父の味方をしてくれないのかっ」
「相変わらず馬鹿ね、達也は私の味方に決まってるでしょ?」
「あー……俺は平等な人間だから」
「このヘタレめ」
父親からの訴えをスルーして飯を食べ進めた。
「それじゃあ、私はもう出るから最後に出る人はカギ閉めお願いね?」
「了解、いってらっしゃい」
病院勤めの為か、俺たちより一歩早めに家を出て行く。
「達也ー、そっちは何時からだ?」
「んー?今日は昼から入れてるから俺が一番最後だと思う」
「おっけー。俺ももう少ししたら出るから後はよろしく頼む」
「あいよ」
スマホを弄りながらてきとうに返事をする。昼まで何して時間を潰そうか……。
部屋に戻り動画サイトを見ていると、玄関の方で扉が開く音がした。多分仕事に行ったんだろう。
「どうせ時間があるなら、何かゲームでもしようかね……」
パソコンを起動し、ゲームサイトや購入済みの作品を見て回る。
「んー……買ってるのは大体夏で終わらせているしなぁ。新しく何か買うか?」
机に肘を付き、顎を乗せながら怠惰的に閲覧していく。すると、手元に置いてあるスマホから着信が鳴る。
「んあ?誰だ……?」
手に取って画面を見ると、そこには働き先である喫茶店の先輩からの電話であった。
「はいー、澤田ですがどうかしましたか?」
「あっ、達也くん?ごめんね!急に電話してっ」
「いえ、出勤まで暇だったので大丈夫ですよ?」
「ほんと?申し訳ないんだけど、今から出る事って可能?」
「今からですか?まぁ平気ですが何かあったんですか?」
「ちょっとマスターの方が急用で外す時間が出来ちゃってさー、私だけだと不安だし手伝ってほしくて……」
「ああー……そういうことですか。全然良いですよ。それならこれから準備して向かいますね」
「ごめんっ!ほっんと助かるっ!後でなんか奢るからね!」
「別に美咲さんが謝ることじゃありませんし、突発的に起こるのは仕方ないですよ」
申し訳なさそうに謝っている電話の相手は
「それじゃあ、すぐに向かいますのでまた後で」
「うん、ありがとね。急なお願い聞いてくれて……また後で!」
電話を切って立ち上がる。
……ま、特にすることも無かったし、仕事に精でも出しますか。
服を着替え身支度を整えて家を出る。
「そろそろ服装を変えるのも考えないといけないかもな」
夏が終わり、日によって少し肌寒く感じてくる季節になって来ている。半袖だけでは心もとないかもしれない。
電車に乗り数駅隣で降りて働いている店に向かう。
「早く来たつもりだけど、大丈夫かね」
駅から徒歩10分程の場所に看板を見つける。叔父がやってる純喫茶『
俺が高校の時からバイトで入っていたが、特に辞める理由も無いのでそのまま続けている。
従業員用の入口から中へ入ると、丁度叔父……この店のマスターと出くわす。
「おはようございます」
「達也か、すまんな。出てくるのを頼んで」
「特に用とかも無かったんで良いですけど、何かあったんですか?」
「ちょっと急な予定が入ってな。夕方には戻るつもりだからそれまで山吹君と2人で頼みたい」
「分かりました。俺は明日休みだし多少残っても大丈夫なんで安心して下さい」
「すまんな。話は全部彼女に話してるから何かあれば聞いてくれ」
「了解です」
お店を出て行く叔父を見送って休憩室に入る。
「おお、来たね!救世主っ!待ってました!」
中から元気よく出迎えてくれたのがさっき電話を掛けて来た美咲さん。
「澤田達也、召喚に応じ、参上いたしました。何なりとご命令を」
「よっ、ナイスサーヴァントッ!性格的にアサシンかな!」
なんだか失礼な事を言われた気がしたが、ここは深く突っ込まないでおこう。
「それで、何か俺にして欲しい事とかあるんですか?」
「基本的にいつもと変わんないかな?珈琲とかの飲み物は私で淹れるから、料理面を担当してほしい。まぁ、ピーク時の保険って感じで!」
「お任せを。と言っても、普段常連さんしか来ないし、滅多に忙しくはならないと思いますけどね」
「はは……まぁね。マスターのお店はそういうコンセプトだし、店名からして心を休める場所にしたいんだと思う」
この店のマスター、
「私がこのお店を選んだのも、あまり忙しくなさそうって理由が大きいんだけどねー」
「午前中に2人、昼に1人から2人、その後疎らって感じですもんね……」
「常連さんと、たまに突如現れる新規さんって感じだよねーっと、そろそろ1人目が来る時間だし、私は先に出てくるから着替えちゃって」
「また前みたいに覗かないで下さいよ?」
「いやー、だってさぁ?20代前半の若い男の子の体をタダで見れる機会ってそうそうないしさー、良い刺激になると思って……ね?」
「なんの刺激か知らないですけど、覗きは軽犯罪ですよ。プライバシーの侵害です」
「いいじゃんよー、減るもんじゃないしさ。それにおなごに見られてそっちも興奮するでしょ?」
「してるのは美咲さんだけかと……」
「ま。それは否定しないけどね!んじゃお先っ」
都合が悪くなったからか、手を上げて去って行った。
「……着替えるか」
「結果論だけどさー……、わざわざ来てもらう必要なかったよねぇ」
「ですねー……、半分は備品の確認や掃除でしたし……」
「なんかごめんね?無駄足になっちゃって」
「別気にしてませんよ。家に居ても特にすることありませんでしたし」
「若いのに枯れてるのぅ……キミぐらいの歳ならやりたい事幾らでもあるでしょ」
「そっちだって大して変わらないでしょう」
「数歳、されど数歳……。女の数年は残酷よ……」
何だか遠い目をして明後日の方向を見つめる。しらんがな。
「そんじゃ休日の日は何してんのさ。明日休みじゃん?」
「休日の日、ですか……?特にこれと言っては……ゲームとか?」
「ネトゲ?」
「ですね。オンラインだったりソロでしたりとバラバラですが」
「そこで出会いとかが起きたり……?」
「はい?どうしたんですか急に……」
「いやほら、オンラインゲームしてたら女の子と知り合ったりとかさ。無いの?」
「ありませんねぇ。出会い厨とかでもありませんし」
「えぇーそんなんじゃどこで異性と出会うのさっ!現在の君の異性の知り合いだなんて私と君の母君しか居ないでしょ!?」
「いやいやいや、自分の母親を異性に入れるのは頭おかしいでしょ……。それに女性の知り合いなら美咲さん以外にもーーー」
特に考えずに喋っていたが、自分の言葉に違和感を覚える。
異性の……知り合い……?
「おおっ?なんだぁ、実は居たの?無害そうな顔してやることやってるじゃないか!達也くんも隅に置けないなぁ」
「え、ええ……まぁそれなりに……」
誰の事だ?人と会うなんてこの店以外無いはず……。ゲームでか?
「あ、お客さん来たね」
入口のベルの音が鳴り、来店の知らせが店内に響く。
「あ……そうですね」
変な感覚だが、今は客の対応が優先なので気持ちを切り替えて仕事に取り掛かった。
昼が過ぎ、おやつの時間に差し掛かろうとした時、マスターが帰って来たので一旦俺と美咲さんが休憩に入った。
「おつかれさん」
「おつかれさまです」
「ほい、これまかない」
「ありがとうございます」
まかないを受け取り、席に座って食べ始める。
「さっきカウンターで話してた続きなんだけどー」
「ん?なんですか」
「達也君は彼女とか作らないの?」
「何ですか、その親がしてくるみたいな質問は……」
「いやね?さっき知り合いの女性が居るって言ってたからさ。気になっちゃって」
「あー……あれですか。なんか勘違いだったかもしれないです」
「キミ……勘違いとかそんな虚しいこと言わない。それとも照れ隠しとか?」
「どうなんでしょう?居たような……勘違いだった様な……。」
なんだかモヤモヤした気分である。
「なんて悲しきモンスターなんだ……お姉さん泣きたくなって来た」
「誰がモンスターですか」
「そんな悲しき達也君にワタシから叡智を授けようではないか」
「叡智……?」
「そうとも。叡智の結晶さ。いつか知り合いが出来た時にきっと役に立つ……はずっ!」
鞄から黒の包装がされた四角い何かを渡される。
「これは……何かのゲームですか?」
「まぁ、そんなとこ。シミュレーション的な奴さ。明日は休みだろ?家に帰ったらやってみて」
「ありがとうございます。わざわざ」
「今朝のお礼みたいなものだから気にしないで良いよ。それより、終わったら感想教えてね?楽しみにしてる」
「はぁ、分かりました……」
なんのゲームだろう。国作りとか村を発展させていく系のゲームかもしれないな。
「そんじゃ、これを食べたら残りも頑張ろー!」
「ですねー」
「ただいまー」
何事も無く終わり、家へと帰ってくる。
「おう、おかえり」
「あれ、母さんは?」
「今日はちょっと遅くなるらしい。だから今日の夕飯は俺の特製だ」
「因みに内容は?」
「チャーハンだ。冷蔵庫の中身を好きに使ってみた」
「後で怒られないと良いけどなぁ」
「大丈夫だ!なんやかんやで許してくれるさ」
「謎の余裕はどこから……」
手を洗い、荷物を部屋に置いて戻ってくると、丁度テーブルに夕食が並び始めていた。
「何か手伝う事とかある?」
「いーや、後はこれを盛る位だし特に無いな」
「了解、飲み物くらいは淹れとくよ」
冷蔵庫から麦茶を取り出してコップに淹れる。
「おおっ、ありがとな」
「この位大したことじゃないって」
2人分のコップをテーブルに置いて席に座る。
「男飯ですまんが、それではいただきます」
「いただきます」
スプーンを手に取り一口食べる。
「どうだ?親父の味は?」
「んー……なんか懐かしい味?久々に父親が作るチャーハンを食べたって感じ。普通に美味しいけどさ」
「そうかそうか、なら安心だな」
俺の回答を聞いて、腕を組んで満足そうに頷いている。
「ま、たまにしか作ってやれなかったし、こんなもんだなっ」
「たまに懐かしんで食べたくなるような感じかな?ほら、たまに無性にラーメンとかジャンクフードが食べたくなるあの感じ」
「それはあまり嬉しくない例えだな……」
がっくりとしながらも夕食を食べ進めていく。
「そうだ達也」
「ん?何?」
テレビを見ながらチャーハンを口に運んでいると、声をかけられる。
「お前、彼女とか居ないのか?」
「………」
口に入れようとしていたスプーンの手が止まる。
「なんだその呆れた様な顔は?」
「……いや、今日職場でも同じことを聞かれたからさ、またかって思っただけ」
「そうなのか?今は母さんも居なくて父と息子の2人だし、こういった話で盛り上がりたいと考えたんだが……」
「ノリが中学生の修学旅行なんだが……」
「まぁ、それは置いといて……どうなんだ?気になってる子とか、お付き合いしてる人とか居たりするのか?」
「残念だけど、気配すらしてないから。そもそも知り合いに居ないし……」
「荘周のお店で一緒に働いている美咲ちゃんとかはどうだ?文学系女子って感じの子」
「美咲さん?いやぁ……そんな気は特に無いけど」
「お前が人と出会うタイミングとか働いてる喫茶店ぐらいだろ?少ないチャンスを生かさないとあっという間に時間は過ぎてくぞ?」
「んなこと言われてもなぁ……」
俺に恋人とか、夢のまた夢だろうし……。
「なら、どんな子がタイプとかはどうだ?」
「グイグイ来るなぁ……圧が強い」
「一人息子が女っ気も無いとなれば親として心配するもんよ。澤田家の存続が掛かってるんだ」
「まぁ……それはそうだが」
「んでだ、どんな子がタイプだ?」
「タイプ……タイプねぇ」
しつこい父親をあしらおうと思いついた事を口に出す。
「そうだなぁ……黒髪ロングとか?」
「性格より先に見た目を言う辺り、我が息子ながら中々歪んでるな」
「……確かに」
「黒髪でロングか……大和撫子みたいなお淑やかな子か?」
「いや、どちらかというとクール系?」
「なるほど、クーデレ……という奴か?」
「ま、そんな感じかな」
……俺は親と何を話しているのだろう?
「まっ、好みも良いが、いざという時はしっかりと自分から動かないと駄目だからな?」
「あー……ソウデスネ」
「てきとうだなおい。俺の時は母さんを射止める為にな……」
「ストップッ!!親の馴れ初めとか一番聞きたくない話だからな?親族の恋愛とか聞きたくないからなっ!?」
「そうか?それは残念」
その後は何事も無く夕食を食べ終えて部屋へと戻った。
「……そういえば、美咲さんから借りたゲームがあったな」
中身はまだ確認していないが、人に勧めてくるくらいだ。期待して良いかもしれない。
「取り敢えず封を開けるか」
なるべく破らない様に丁寧に開け、中身を確認する。
「……これは」
出て来た中身のパッケージにはなんとも可愛らしい女の子たちが写っているゲームだった。
「まさか……」
裏返して内容を見て行くと、CG絵と思われるのと、端っこに小さく『R-18』の注意書きが記載されていた。
「シミュレーションゲームって、エロゲじゃねーかっ!!」
シミュレーションと言っても恋愛シミュレーションで、作るのは国や村じゃなくて子供だった。
「なんつーものを人に勧めてんだあの人は……」
しかもプレイ後の感想まで求めている始末。
「けどまぁ、可愛いのは認めるけど……」
パッケージに居るヒロインと思われる4人は間違いなく可愛い。
「見た感じ、死神が出てくる話か?」
身長程の大きな鎌を持ってる子とタイトルからしてそうだろ。となると、喫茶ステラと書いてるし、喫茶店が舞台なのか?トレイ持ってる子やウェイトレスの服と思われる服装の子も居るし……。
「一体俺に何を求めてこれを渡したんだ……?」
もしかすると、ゲーム内に出てくるっぽい喫茶店の事を体験して勉強しろとかか?いや、遠回り過ぎでしょ。
「あー……感想求められてるし、一応やってみようかな?」
まさか職場の先輩からエロゲを勧められるとは思わなんだ……しかも女性から。
「取り敢えず、インストールをしておくか」
ディスクを取り出して淹れる。
「喫茶ステラと死神の蝶ね……」
中央に飛んでいる青い蝶の事だろう。多分だが、この蝶が死神に関わる何かで、主人公はそれをきっかけに死神のっぽいこの子と、喫茶店の子らと関わっていく……。そんな感じのストーリーに違いない。そういうのに詳しいんだ俺は。
「青い蝶となると、人の魂とか、生まれ変わりを示唆する何かだし大きく外れてないはず」
海外のどっかでは神の化身とか見た事あるし、きっとそう。
「今の内、飲み物とか取ってこよ」
一度始めると長丁場になるかもしれないし、水分くらいは手元に置いておこうか。
冷蔵庫から飲み物を取って戻り、パソコンの前に座った。
「そんじゃ、始まるとしましょうか」
特に内容を知らない作品だけど、何故かやる気があることに不思議に思いながらもゲームを起動した。
職場の先輩からエロゲを勧められる主人公……うーん。
次で今の話は終わりに向かって行くと思いますので、もう暫くお付き合いを……。