占い編第1回目です。一応ヒロイン何人かするつもりなので今回は第1回です。
主人公→明月栞那の視点で行こうかと思います。
「それじゃあ明月さん、何かお悩みとかあれば相談に乗りますよ?お力になれる範囲になりますが……」
手を広げ、歓迎の意を示す。
「そうですね……。では私が悩んでいることを言っていきますのでアドバイス出来ることはお答えしてください」
「お気遣いどうも……」
こうも気を使われると少し恥ずかしいというか気まずくなるな……。命に紐づけたのは軽率だったかもしれない。
「私が気になっている事なのですが、澤田さんもご存じの人になります……。高嶺さんの今後の人生がどうなっていくか、なのですが……」
ああ、やっぱり高嶺昂晴絡みかぁ……、いやそれ以外ないよな。知ってた。
「自分の事じゃなくて大丈夫なのか?先に聞くことが高嶺昂晴で……」
「はい。自分の事はある程度分かっていますから。それより大事なことなので相談をしています」
目を閉じ、納得している様な声で答える。
とは言ってもべらべらと喋るわけにはいかない。それを話すのは原作の直前にしておこう。それまでは軽く話し、後はお店のメニューや内装に軽く口を出しておこう。経験者の意見だから多少は聞いてくれるだろう。
「了解。彼の今後だけど、うーん。そうだな……、まず生活を安定かつ、継続出来る様にしていかないと……」
「現状、何か問題があるという事ですかっ?」
「いや、切羽詰まっている訳ではないから落ち着いてくれ。直ぐにとかじゃない。正確には家賃と生活費かなぁ……?」
「家賃ですか?確かに高嶺さんは一人暮らしですが確か和史さんがお支払いをしているはずでは……?」
明月栞那が不思議そうに聞いてくる。想像以上に向こうの生活を把握しているんだな。でも残念。
「まあ、確かに父親が納めることになっている筈だな。それがきちんと振り込まれていれば……の話だけど」
そう。確か今月で4ヶ月目に突入するはずだ。
「え……。まさか、それって和史さんが滞納しているって事じゃ……」
そうそのまさかなのですよ。まぁ高嶺昂晴本人も月末に幼馴染から聞かされて判明することだけど。
「そう言う事こと。けどこっちは催促されることは無いと思うから安心して良いかと思う。問題は生活費を稼ぐ宛てを見つけないといけない事かな?」
「ああ、それですね。確か前はコンビニのアルバイトをされていましたが辞められたのですよね」
「そうそう、店長が中々ダメな人でさ、ちゃんと連絡して休もうとしたら代わりを連れてこいとか言う人でさ。アルバイト生に社会人の責任を語ったりしたり……」
辞めた事情までは知らなかったのか、驚きと少し引いたような顔をしている。
「更にレジの金額が合わないと高嶺昂晴のせいにして来て、その分の補填を強制してこようとする人とかなんとか。何ともまぁブラックバイトブラックバイト」
呆れるように頷きながら辞めた理由を話す。改めて考えると辞めて正解だったな、そのコンビニ。
「そんなバイト先が存在するのですね……。高嶺さんは辞めて正解でしたね。それに高嶺さんがレジのお金を盗むなんてするわけ無いじゃないですか。店長の人は見る目が無い人ですね」
少し怒りが籠っている声で店長を貶していく。大切な人がそんな扱いされれば誰でもそうなる。寧ろ少ない方だろう、性格の良さが滲みでているなぁ……。
「まぁまぁ、辞めた店の事よりこれからが大事だから」
「そうですね。今後の生活のために今は次のバイト先を探しているという事ですか?」
「そんな感じだと思う。中々見つかってない様子だけれども……」
「幾つかのバイトを経験されていますし、直ぐに見つかりそうなものですが……」
「ま、それも心配はしなくて大丈夫そうかなぁ。次のバイト先は安定すると思うよ?」
「そうなのですか?それは良かったです。……因みにどの様な仕事に?」
「あー……、キッチンに立っている感じかな?……厨房?飲食系のバイトだと思うけど……」
喫茶店とは言わずにポジションだけ伝える。間違えでは無いしこれで良いだろう。
「また居酒屋とかでしょうか……?でも安定していただけるなら一安心出来そうです」
安堵の表情をして息を漏らす。そこまで心配だったのかと驚くが彼女にとってそれほどの存在なのだろう。自分の命を削る位の……。
「直近は大丈夫そうなのは分かりました、ありがとうございます」
こちらに頭を下げて感謝を伝えてくる。いや、大した情報では無いと思うけど……。それにまだ聞きたい事があるはず、今のはそれの前準備に過ぎない。本当に気になるのはその先の……幸せを今回は掴み取れるかどうかだろう。
「別に大した事じゃないしな、これはあくまで占いに過ぎないから過度な期待と感謝はしないでくれ。それに、まだ聞きたい事があるのでは?」
顔を上げた明月栞那が少し目を見開く。恐らく今から聞こうとしていたのだろう。
「はい……高嶺さんは、幸せになれるのでしょうか……?」
出会ってから一番の心配そうな、不安一杯の声で問いかけてくる。ああ、そんな顔されたら即答したくなる……。けど、それを証明するのは高嶺昂晴本人だ。此処で、はいと答えて大丈夫だと気を緩ませるわけにはいかない。原作にもバイトを断り死ぬエンドと、どのルートにも入らないノーマルエンドがあったはず。それは避けなければ……。個人的には明月栞那エンドが望ましいけど、そこは主人公の選択次第だろう。
「すまない、そこについては正直何とも言えない。様々な可能性があり、どうなるかは彼の頑張り次第になる。だから確証は出来ない」
「そうなのですか……。高嶺さん次第……」
不安を拭い切れない表情をしている。
ああもう。此処で元気付けないと男が廃りそうだ。ある程度安心させておかないと今後に影響しそうだしな!
「けれど、そこは不安にならなくて大丈夫だと思う……。今回は成人するまで過ごせているから前の様な結末には至らない、それに何より彼は頑張り屋だ。目標のためなら努力は惜しまない人だ。それは明月さんがよく知っているだろう?明月さんが望んでいる未来は彼自身が掴み取れるはずだ。こんな占いを聞かなくても分かっている結果だ」
不安げな顔をしている明月栞那の目を見てしっかりと伝える。寧ろ貴女が信じなくてどうする?何度もそう言ってきたのに……次こそはと。
「そうですね……。そうでした。高嶺さんなら大丈夫ですよね。なんせ諦めずに今回まで来ていますから。今回こそは幸せになってくれます」
「その意気その意気。自分もその手伝いをしていく予定だからサポートは任せてくれ。ビバ・高嶺昂晴ライフプランと行こうじゃないか」
「何ですかその計画は……。ビバってヨーロッパ辺りの言葉の気がしますが……」
細かい事は良いんだよ……。こういうのはノリと勢いが大事。空気を一変してくれるからな。それによく知っているなそんな事。詳しいのは車種だけだど思っていたが……。
「と、こんな感じで良かったか?結論は高嶺昂晴の頑張り次第って事だからこちらとしてはやれることは微々たる物だから」
「その通りですね、ありがとうございます。想像以上に悩みが解消した様な気がします。でも大丈夫なのですか……?澤田さんとしては……」
「そこは気にしないでくれ。ちゃんと自分の方で言える事とそうじゃないことは分けているつもりだから。ただ……、占いに過度に頼ったり、期待を寄せたりはしないで欲しい。勝手に期待して裏切られたなどの文句で問い詰めて来ることも。もしその様な空気を察した時点で二度としないと先に言わせてもらう。これは俺からのお願いだ」
少し思い詰めた表情と強い思いを込めた声で言う。
よくある作品だと、偉い人らが占いに頼り切り堕落する結末がほとんどだ。流石に二人がそうなるわけ無いがここは念のため、俺のせいで高嶺昂晴の人生が狂うとか目も当てられないしな。
「分かりました。それについては大丈夫です。澤田さん一人に頼り切るつもりはありませんから。ですよね?ミカドさん」
「ああ、あくまで相談程度に留めておこう。それだけに頼る人生など末路は見えているからな」
閣下はどうやら分かっているらしい。明月栞那も問題は無さそうだ。まぁ心配はしていないけど、こう言っておく意味はある。ミカドさん辺りは勝手に行きついてくれそうだな、今の言い方だと。
「ありがとう。二人なら心配ないとは思うが、俺の心の安寧のために確認しただけだから気にしないでくれ」
こうして人生初の人生相談もどきの時間は過ぎていくのであった。
「ちょっとお手洗いで席を外すから」
占いという名目(建前)の質問が終わり、しばらくするとそう言って彼はトイレに向かった。
さっきと今と席を外すタイミングが随分と間の良い時に言ってくる。ここまで露骨だと私達が情報を整理する為に態々トイレと言ってることに流石に気づいてしまう。
それにしても先ほどの占い……。私が思っていた以上に彼は高嶺さんの事を知っていた。それもかなり細かい事まで……まるでそれを見ていたかの様に……。
「ミカドさん……。どうやらミカドさんが言っていたことは本当の様ですね」
「そうだな。我輩も改めて確信に至った。奴は未来視の奇跡を持っているのだろう。奴自身は言ってなかったが、恐らく未来だけではなく過去の出来事も見ることが可能のはずだ」
……そう。占いと。先の事がわかると言っていたが、澤田さんは過去の出来事も話していた。『今回は前の様な結末には至らない』……と。この言い方は以前の高嶺さんの魂の終わりがどの様だったかを知っている話しぶりでした。ミカドさんもそこで気づいたと思われます。
「彼は、私以上に高嶺さんの事を……そして私の事を分かっていました。じゃなきゃあのような台詞は……」
高嶺さんの幸せを願っていた。何度も繰り返し生まれ直して、そして次こそはと諦めずに生きようとする高嶺さんの魂を見守って来た。そんな彼が努力の一つ二つ出来ないわけが無い。私の最初に言った言葉を信じてここまで来た彼を私が信じなくてどうするのですか。
澤田さんに言われて気づきました。彼は私が高嶺さんを信じれると、大丈夫だと知っているから強く伝えていた。
心の中にあった不安が減った気がします。澤田さんはもしかすると私が不安に思っていることを知っていたのかもしれない。
ここまで来ると、少し怖いですね……。
自然と苦笑いが出てしまいます。
「これ程の事が出来るとしたら……奴が命に関わると言うのも理解できる。知られれば権力者が放っておくわけ無いからな。もしかすると、我輩達は奴にかなり無茶をさせているのかもしれないな」
確かにあのような奇跡を持っていることを知られたら世界中から引っ張りだこ所じゃ無くなります。彼の表情からはそうは思えなかったのですが……。もしかすると本当に?
「分かっているとは思うが、奇跡を頼り過ぎないようにな。奴は我輩達が過去の二の舞にならないと信じて話したはずだ」
「過去の二の舞ですか?」
勿論頼り切りになるつもりはありませんが、澤田さんは過去に同じことがあったのでしょうか。
「澤田達也は恐らく、過去にこの奇跡が露見した事があったのだろう。そして命を狙われたことがあるはずだ。今思えば、森で出会った時に奴は此方に気づかれないように気配を殺していたが……あまりにも上手すぎる。少なくとも一般人レベルとは思えん」
「それに宿でも気になったが、体がやたら引き締まっていた。ある程度計算して鍛えないとあのような筋肉の付き方にはならないはずだ。推測するに……常に命を狙われていたのだ。逃走などの時の気配の消し方、接敵した時にそれを払えるように鍛えていたのだろう。生前奴はその様な日々を送っていた可能性がある」
ミカドさんの言葉に絶句してしまう。
そう言われれば確かに思い当たる節があり、納得できる部分もある。もしも、その様な人生を送っていたのなら自分以外の人を信用出来なくなってしまいます。そんな奇跡があるとしたら、人は欲に駆られ、求めてしまう。
「それでも我輩達に話したのは文字通り、現時点でこの世界に頼れるのが居なかったからだろう。どこのタイミングかは分からぬが、我輩と栞那の事を視たはずだ。本来なら言うつもりは無かったのかもしれないな……命を狙われる可能性があるのだから」
「私達を、信用してくれたのでしょうか……?」
「多少はそれもあるだろう。だが、自分の利用価値を出すことによって切り捨てられないようにしたのかもしれん。なにせ家族や知り合いが居るか分かっておらん状態だ。これは吾輩の憶測だがな」
「それはなんだか……澤田さんに物凄く申し訳ない事をしてしまったようですね……。頼れる人達から疑いの目を向けられてしまって、仕方なく話したことになります」
私は彼から高嶺さんの事を少しでも聞き出したいと思っていた事に今更ながら後悔する。
「起こしてしまった事は後戻りは出来ん。我輩も反省している。奴の秘密を無理に聞き出したのだ。その分可能な限り力になるしかあるまい」
「そう……ですね。彼の心配や不安を、今度はこっちが少しでも無くせるように頑張ります」
死神の仕事関係なく占いのお礼として返して行けるようにと、気持ちを入れなおした。
※勿論主人公にそんな便利な力はありません。ミカドさんの勘違いです。
どうして一般人レベルでは無いかは後でお話に出すつもりです。まぁそこまで大層な物語はありませんが……。
そろそろ次のヒロイン(最推し)を出して行こうかと思います。