喫茶ステラ ―異邦人と蝶の残滓―   作:コクーン√

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前回の続きです。

※18禁シーンはありましぇん。





-新訳-第41話:幸福と降伏

 

「………」

 

さて、話はてきとうに一区切りついたわけだが、ここは俺から先に言い出すのが良いのだろうか?

 

さっきは来客で中断されたが、ふやむやにするのは良くないよな。……よし。

 

「ふぅー……」

 

話を始めるまでに深呼吸をして気合を入れる。

 

「四季さん、ちょっと良いか?」

 

「ん?どうしたの?」

 

背中に居る四季さんを一旦剥がして正面で向き合う。

 

「大事な話があるんだ。俺と、四季さんにとっての……」

 

「え?大事な……?」

 

「そう。さっきは来客が来たせいで話が途中で折れたと思うけど、俺から先に言っておきたいんだが……良いか?」

 

「あっ……」

 

俺がこれから何を言い出すのか察したのか、驚いた様に目を開き、次第にもじもじと恥ずかしそうに頬を赤らめる。

 

「う、うん……。そっちから、先にどうぞ……」

 

聞き入れる覚悟が出来たのか、目を閉じて口を堅く閉じる。

 

「……俺、四季さんの事が好きだ」

 

自分が思っていたよりも、すんなりとその言葉が口から出る。

 

「ッ!」

 

それを聞いて正面の四季さんが体を強張らせる。

 

「3度目の人生が来てようやく伝える事が出来るこの想いを、四季さんに受け止めてほしい」

 

「好きな人と、寄り添って生きて行きたい」

 

「俺と、付き合ってくれ」

 

なるべく簡潔にまとめようとしたが、割と心臓がやばい。そのせいでろくに頭が回っていない。

 

「………」

 

俺の告白を聞いて、ゆっくりと顔をあげる。

 

「長かった……」

 

ポツリと言葉を零す。

 

「今日までの3か月、すっごく長かった。会えない間に何度も好きな人の声を聞きたいって思った」

 

「また会いたい、話したいって何度も……。次会う時は、ちゃんとワタシから好きって言って、恋人にしてもらうって決めてた」

 

「けど、先に言われちゃったなぁ……」

 

「すまん。男の俺から言うべきかと思ってさ……」

 

「ううん。嬉しかった。両想いって分かってるから、返事なんて決まってるって考えてたけど……想像していた以上に嬉しくて、凄くドキドキしてる」

 

「もっと沢山、言いたいことはあるけど……うん。ワタシも澤田君の事が好き。だから、返事は付き合う」

 

「ごめん、随分と長く待たせた」

 

「謝らなくていい。今日の為に頑張ったんだから、お礼の方が嬉しい」

 

「……ありがとな。もう一度会いに来てくれて。俺を連れ戻してくれて」

 

「うん。けど、好きな人に会いたいって思うのは当たり前のこと。それよりも……隣、行っても良い?」

 

頬を赤く染め、恥ずかしそうに上目遣いでこちらを見てくる。

 

「あ、ああ……全然良いが……」

 

その破壊力に思考が停止しかける。

 

「ありがと」

 

もぞもぞと隣へ寄って来て、そのまま肩に頭を乗せてくる。

 

「なんか、やっとここまで来たって感じがして……今、凄く安心した」

 

「俺が居ない間の話がまだまだあるみたいだな」

 

「当然でしょ?お店でも話したけど、あんなの簡単に話しただけだからね?」

 

あれでっ!?結構詰め込まれてたと思ったんだが……?

 

「全然足りない。だから今日はとことん付き合って貰うからね?」

 

「お手柔らかにお願いします……」

 

「そこは澤田君の態度次第かなぁ?」

 

「何なりとお申し付けくださいませ」

 

「それじゃあ……、ワタシが今して欲しい事を当てたら、考えてあげても……良いかな?」

 

四季さんがして欲しい事?

 

心を読めと言ってるのかと思って四季さんの方を見る。すると、そこには何かを期待するようにこちらを見つめている。

 

……なるほど、これは凄く解りやすい。心を読むまでもなかった。

 

いつかの忘れ物をしていた時と同じ目をしていた。

 

「四季さん……」

 

こちらも目を合わせて顔に手を添えると、ゆっくりとその目を閉じた。

 

「んっ……んんっ……」

 

そして、そのまま唇にキスをする。

 

「んむ……ん……んん……」

 

至近距離だからか、不思議な程いい匂いがする。さっきもくっついていた時にしていたが、それを遥かに上回る。

 

「ん、んちゅ……んっ」

 

「……ん、ぷはっ、はぁ、はあぁ……」

 

どのくらい続けるのか分からず、取り敢えず一旦離れる。

 

「……情状酌量の余地はありそうか?」

 

「んー……、残念だけど、まだ足りない……」

 

「なら、もっとしないといけないな」

 

「うん、その通り」

 

再度、四季さんの顔に手を添え、唇を重ねる。

 

「んっ……」

 

四季さんが嬉しそうな声を漏らす。今の声ヤバいな……。

 

「んんっ、んっつ……んんっ……すき、ん……んっ」

 

「俺も好きだ」

 

好きと言って来てくれた四季さんに返事をして再開する。

 

「っんん、ん……うれしぃ……んっ」

 

そのまま暫く、お互いが満足するまでキスを繰り返す。

 

「………」

 

「………」

 

そしてそれを終えて、少し気まずい空気が流れる。

 

「ね、ねぇ……澤田君」

 

「な、なんだ?」

 

「今日、ここに泊まっても良いかな……?」

 

「……それってさ」

 

「うん。澤田君が考えてる通りで当たってる」

 

「良いのか?」

 

「ワタシがそう望んでるの。好きな人としたいって……そっちは、したくないの……?」

 

そりゃ、滅茶苦茶したいに決まってますともっ!今の興奮でさいならとかお預けもいいとこだ。

 

「そう。なら良かった……」

 

「さらっと、心を読んで来ますなぁ……」

 

「ごめんごめん、なんかこっちの方が気持ちをハッキリと聞けるからつい……」

 

「まぁ、嫌じゃないから良いんだけどさ……」

 

「それに、澤田君はワタシが望んだことなら何でも手伝ってくれるんでしょ?」

 

あの日の事か。

 

「その言い方だと、ちょっと語弊があるな」

 

「語弊……?」

 

「今からすることは、四季さんだけじゃなくて俺も望んでるってこと。俺も四季さんと先に進みたいと思ってる」

 

「……口に出さないと思ったら、急に言い出すんだから……」

 

クリティカルヒットだったのか、もじもじと顔を伏せて声が小さくなっていく。

 

今、四季さんの心はどんな感じなんだろうか?

 

「……四季さん、今、読んでも良い?」

 

「ッ!?だ、だめっ!絶対駄目だからっ!!今は駄目っ!」

 

想像通りの反応が返ってきた。

 

「いや、俺ばかり見られるのは不平等だしさ、たまにはこっちも見てみたいなぁって……」

 

「待って、今はほんとに駄目だからっ!」

 

恥ずかしそうにこちらに手をブンブンと振る。それを見て、手をワキワキさせながら近寄る。

 

「ちょ、ちょっと!?」

 

正直、読まなくても今の反応だけで充分ご馳走様って感じである。恥ずかしそうにいやいやとしている四季さんがくっそ可愛いのである。

 

「うぅ……、そう来るなら……っ」

 

きゅっと目と口を閉じて何かを念じるように体を固める。

 

「……?」

 

なんか防御の態勢に入ったが……?

 

気になって試しに心の中を覗いて見る。。

 

『無っ!何も考えてないっ!心を落ち着かせないと……!読まれない様に……っ。何も考えてない……!』

 

……ははーん、なるほどね。そうやって妨害すると……確かに効果あるかも。

 

「四季さん……好きだよ」

 

顔を耳に近づけて囁くように呟く。

 

「ッ!??」

 

「大好き。愛してる……」

 

「ッ……!ッッ!?!」

 

俺にもいくらかダメージは入るが……どれどれ?

 

『み、耳元で……っ!?ずるい……!!で、でも、結構良いかも…?全身が痺れるみたいな感じ……頭がふわふわするぅ……はっ!!』

 

『だ、駄目っ。しっかりと気を持たないと……!さっきも急にワタシが嬉しくなるようなセリフを沢山言って来て……。そんなこと言われたら我慢とか出来なくなっちゃうでしょっ!!』

 

あー……なるほど、なるほどねぇ。これは想像以上にダイレクトに感情が伝わってくるな……。

 

言葉じゃなくて相手の感情を読んでるからか?取りあえず、四季さんが言ってた意味が理解出来た。これは危険だ。

 

なんせ相手の感情がこっちにまで来るんだから、当然それに感化される。

 

「あー……四季さん?」

 

「っ!……な、なに?」

 

「するなら夜に……って考えていたんだが、その、今からしたいって言ったらどうする?」

 

「い、今から……?」

 

「ああ……」

 

「我慢、出来そうにない……?」

 

「残念ながら」

 

「そ、そう……。よ、夜まで我慢させるのは可哀そうだし、澤田君がそこまで言うなら……い、今からでも……っ」

 

「ありがとう……。それじゃあ、ちょっとそこのコンビニまで行ってくるよ」

 

「コンビニ?どうして?」

 

「いや、前の世界とは違って流石に避妊はしておかないといけないだろ?部屋に置いて無いし買ってこないと……」

 

「あっ、そういうことね。それなら心配要らない」

 

「……?どういう意味だ?もしかして四季さんが既に準備済み?」

 

「違う。その、ゴム……しなくても、ちゃんと対策はしてるって……こと」

 

「……別の方法を?」

 

「……う、うん。今日澤田君とするって決めてたから……」

 

事前に準備は済ませていたってことだったのか……。

 

「それじゃあ、今から……良いか?」

 

「そ、その前にっ、先にシャワー浴びて来てもいい?」

 

「全然大丈夫。それくらい余裕で待てるから行って来てくれ」

 

「ありがと……じゃあ、少し席外すね?」

 

そう言って立ち上がり風呂場へ向かって行った。

 

……なんか、俺の部屋だと思うのだが使い慣れてる感があるな。まぁ、当然か。

 

別の事を考えながら気を紛らわせる。

 

「……ふぅ、落ち着こう。気持ちを静め……はしないが冷静に……」

 

前の世界とは状況も違う。お互いに隔てる物が無いのだ。素直に求める……本来はそうあるべきだったんだろう。

 

「まさか、復活初日でこんなことになるとはな……」

 

しかも、四季さんに至っては最初から今日する気でいたらしい。気合の入り方が違う。

 

「滅茶苦茶嬉しいのは嬉しい……、まさか本当に四季さんとこんな関係になるとか、この世界に来た時は考えもしなかったが……」

 

風呂場からシャワーの音が聞こえ始める。

 

「いや、いやいや……。これはマズイ。色々と期待で心臓が持ちそうにないぞ……」

 

とにかく気を……。

 

「あっ、そういえばこいつどうしようか……」

 

目に付いたのは追及された一冊のノート。

 

「……話すべきか、このまま貫き通すべきか」

 

だが、流石に正直に話すのは気が引けるぞ?なんて言えば良い?ゲームの世界。しかもエロゲなど真面目な顔で言えるか?いや無理。

 

別の意味でドキドキが止まらなくなる。

 

このまま未来予知路線でやんわりと話すのが吉かもしれない。

 

「でもなぁ……」

 

その内誤魔化しが効かなくなるのは目に見えてるし……。

 

俺が居た前の世界ではこの世界はゲーム上の存在だった。その世界に迷い込んだからこれまでの出来事を事前に知っていたって流れで……。

 

……最悪、エロゲって事を隠せば、いけるか?仮にバレても一番危険がバレなければセーフ?

 

「ここは敢えて俺から言い出すことで、信用してもらう路線で……」

 

どこか落ち着いた時に真剣な空気で切り出そう。そうすればそれが真実として受け取ってもらえる。よし、これならいけそう。

 

「遅くても明日には話す方向で行こう。相手に変に感づかれるより話した方が都合が良いはず」

 

方針を決めて自分を納得させる。

 

気が付くと、シャワーの流れる音が止んでおり、人の動く気配がしている。となると、そろそろ四季さんが出てくることになる。

 

「……これは、なんて言うか……」

 

これからの事を考えると、本当に色々とヤバいな。

 

そうこうしている内に、遂に四季さんが部屋に戻って来る。よく分からない気を遣い、入口に背を向けておく。

 

「お、おかえり……」

 

「ただ、いま……」

 

これからどんな流れで進めようかと考えていると、部屋の電気が消される。

 

「電気、消しても大丈夫でしょ……?」

 

「どうぞどうぞ」

 

「消したけど、まだちょっと明るい……かな」

 

まぁ、完全に夜って訳では無いからな。夕暮れが過ぎて日が沈みかけてる程度だし。

 

「でも、結局そっちには見えるしあんまり意味は無いかも……」

 

それは……そう。でも雰囲気としては大事だと思います。はい。

 

後ろから動く気配を感じ、そのままベッドへとたどり着く。

 

ギシリ……と軋む音が部屋に響く。

 

「えっと……、もう、こっち見ても大丈夫だから」

 

恥ずかしそうに呟く四季さんの声を聞いてゆっくりと顔を上げる。

 

立ち上がって視線を向けると、そこには下着姿でこちらを見つめている姿が目に入った。

 

「………」

 

ドクン、と心臓が跳ねたのが自分でもわかった。

 

淡い紫色の下着だけを身に纏い、恥ずかしそうに身を寄せながらもベッドに横たわっている四季さんが居た。

 

「な、何か言って貰わないと……こ、困るんだけど……?」

 

「す、すまん……あまりにも魅力的な姿に思考が止まってた……」

 

「そ、そう……?」

 

「ああ……というか、今の俺の思考を読んだら一発だと思うんだが……?」

 

「い、いま心を見たらっ、頭がどうにかなる自信しか無いから……!今でも限界なのに……」

 

確かに……。自分だけでもこうなのに、相手までのとなった時には……。うん、キャパ超えるな。

 

ベッドに乗り上がる。

 

改めて四季さんの姿を見る。……下着姿って滅茶苦茶エロいな。個人的には着衣状態からのチラ見とか結構クると思ってたけど、好きな人のなら何でもエロく見えるって本当だったんだな……。

 

肌とか裸姿とか宿屋で見ているが、それでも今が一番興奮していると思う。いや、ほんとエロいなっ!!

 

「ガン見し過ぎ……。目が血走ってない?」

 

「こんな姿を見せられて、見るなって言うのは無理があるのだが……」

 

「恥ずかしんだからあまり見ないで……」

 

ごめん、それは無理な願い。

 

でも、いつまでもそのままって訳にも行かないし、次に進まないとな。

 

「四季さん、それじゃあそろそろ……」

 

「う、うん……お願い」

 

まるで初めての様に恥じらう。いや、この世界では初めてだから正しいんだけどね。

 

「なんか、記憶では既に経験済みだけど、それでも凄く恥ずかしい……」

 

「分かる。今ちょうどそのこと考えてた」

 

「そうなんだ……ふふっ、ちょっと嬉しいかも」

 

相手の心を読まなくても同じ事を考えていたことに嬉しそうに微笑む。

 

……あー……、頑張って冷静になろうとしているのにさー、そんな可愛く笑って来るとか卑怯だろうが……。

 

「……ねぇ、澤田君」

 

「ん?どうした?」

 

少し困った様な表情でこちらを見る。

 

「そうやって無理に、冷静さを保とうとして我慢しなくていいから……」

 

「……いや、初めてだしさ、それなりに……な?」

 

「気持ちは嬉しいけど、変に気を遣われると、こう……なんか嫌。もやっとする」

 

「また、なんとも難題な問題を……」

 

「だから、したい様にして?ううん、してほしい」

 

「……分かった。善処する」

 

俺の事を想っての言い回し方……それなら、俺も変に抑えるのは失礼って物かもしれない。

 

「じゃ、じゃあ……進めるぞ?」

 

「うん……きて?」

 

期待するような瞳で俺を見る。

 

静かな部屋に聞こえる2人の息遣いを耳で感じ取りながら、ゆっくりとその肌に手を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

「………」

 

夜も遅くなり、互いに色々と落ち着いてきたタイミングで、無言で顔を合わせる。

 

「ねぇ……澤田君」

 

「……ああ、言いたい事は俺も多分同じだ」

 

現在、どちらとも完全に考えを読むのをシャットアウトしている。その原因はーーー。

 

「し、暫くはするの、止めといた方が良いかも……」

 

「少なくとも、この力を完全に制御出来るようになるまでは、なるべく控えた方が良いかもな……」

 

顔を合わせた四季さんはぐったりした姿勢で苦笑いをしている。俺も似たような表情だろう。

 

「まさか、俺もガバガバになってしまうとは……」

 

冷静に考えればそうなって当然だった。

 

体で接触した方が読みやすく、感情の高ぶりで伝わる強さとかが変動するなら、一番その条件が揃うのは……。

 

「なんか、もう……頭とか訳わかんなくなって大変だった……」

 

「本当にな……」

 

トリップ状態なのだろうか?お互いの思考が混じるが、相手を求めているのはどちらも同じ。さらに快感と来て何が何だか分からん感じだったなぁ……。

 

「まさに止まることの知らない獣って感じだったな」

 

「……言葉で言われると尚更恥ずかしいから」

 

「身体とか、色々大丈夫か?」

 

「あー……ちょっとは頭は戻って来たかも?身体の方は……もう暫くはダメかも。力入らない」

 

「……ほんとすまん。そのまま安静にしててくれ」

 

「気にしないで。好きって気持ちが伝わって凄く嬉しかったし……その、気持ち良かったから……」

 

「供給過多だったと思うけどなぁ……」

 

「それはほんとにそう。だから、次はもっと気を付けないとね……」

 

さらっと次の約束も取り付けているが……、多分まだ頭の中がふわふわした感じなのだろう。

 

「この後の予定とかあったりする?」

 

「この後?んー……特に考えて無かったなぁ。泊まるってことだけは確定させてたくらい」

 

「お腹とかは?空いて無いか?」

 

「あー……疲労で麻痺してるかもしれないけど、多分空いてると、思う」

 

「んじゃ、もう少しして何か買ってこようか?」

 

「あっ、待って。食材なら買ってあるから」

 

「まじか」

 

「また澤田君にご飯食べさせたかったからね。因みにですが、メニューは何でしょうか?」

 

挑戦的な笑みでこちらを見てくる。

 

内容か……。

 

「……前はハンバーグだったから、今回は唐揚げか?」

 

「うん、正解。ちゃんと覚えていて安心した」

 

「もしかして既に下準備は終えてたり……?」

 

「当然。後は粉でまぶして揚げるだけだからそんなに時間はかからないと思う」

 

「……でも、動けるか?」

 

「それが一番の問題なんだけどね……」

 

ここで、『俺が代わりにしようか?』って言うのは野暮だろう。折角用意してくれているんだから。

 

「それなら、四季さんが回復するまでこのまま横になっておこうかな」

 

「ありがと。てっきり、そっちが代わりにするとか言うかと思った」

 

「考えはしたけどな。でも今日の為に考えてくれたのを取るのは違うなって思ったからお任せします」

 

「ん、任されました。と言っても普通の唐揚げなんだけどね……」

 

「最初に口にするのが四季さんの手料理ってだけで人生最高の日だからなぁ」

 

「んな、大げさな……って言いたい所だけど、本気で考えてそう」

 

「本気だしな」

 

「ご期待に沿えるように作ってあげる」

 

「楽しみにしてる」

 

……さてさて、良い感じの雰囲気になった所で、そろそろ切り出すのも悪くないか?

 

「ところで四季さんや」

 

「ん?どうしたの?」

 

「少し真面目なお話をしても?」

 

「え、うん。良いけど……急に何?」

 

「いや、どこで話そうか迷ったけど、早めにしておいた方が良いかと思ってさ……俺が秘密にしている内容についてのことで」

 

「っていうと……、夕方の件?」

 

「そそ、それ。四季さんには話しておこうかなって思ってさ」

 

「それは……嬉しいけど。どうしてまた話す気になったの?」

 

「ぶっちゃけ、話して信じて貰えるかと……あまり話したくなかったからとかあったけど、その内露見しそうだしな」

 

「ワタシはああ言ったけど、無理に話さなくても大丈夫。それでも続ける?」

 

「そうだな。四季さんには言っておきたい。その方が今後役に立つかもしれないしな」

 

ここまでは順調だ。このまま乗り切って見せよう。

 

「……分かった。それじゃあ、聞かせて?」

 

「まずは……そうだな。これまで事あるごとに話してた未来視って言ってたことなんだけど……」

 

「うん、沢山助けて貰ったあれだよね」

 

「実は、未来視とかではないんだ」

 

「違うの?」

 

「見方によればそうとも言えるけど……俺としてはそんな便利な力とは思ってなくてな」

 

「それも何度も言ってたよね?頼り過ぎるなーって」

 

「実際は、視てるわけではなくて知ってただけなんだよ」

 

「知ってた……?」

 

「なんて言えば良いのか……、超能力とかそんなのじゃなくて、ただただお店や皆に起こる事を知っていただけと言いますか……」

 

「……それを、前の世界で知ってたの?」

 

「そういう事になるな」

 

「えっと、なんで知ってたの?って聞いてもいい?」

 

「当然の疑問だしな。ここからが本題なんだけど……」

 

「う、うん……」

 

俺の真剣そうな声を聞いて四季さんも息をのむ。

 

「俺が居た世界ではな、四季さん達が居るこの世界……正確にはあのお店でのこれまでの出来事が、その……ゲームとしてあったんだ……」

 

「ゲ、ゲーム……?」

 

「そう、あのゲーム。娯楽のな」

 

「え、えっと、澤田君が元々居た世界では……この世界がゲームとしてあったの?」

 

「ざっくり言えば……そうなる」

 

「突然のことで驚いたけど……、で、でも、なんか納得する部分も割と多いかも……」

 

「意外と、すんなり受け止めてるな……」

 

「だって、ワタシの中にある記憶では、確かにゲームみたいだなって思ってたし、本人の口から言われれば嫌でも納得もする」

 

「問い詰めて来た時も聞いてたしなぁ……」

 

「すっごく焦ってたしね」

 

「そりゃ焦りますとも……」

 

「それで?そのワタシ達が出てくるゲーム?をしたことがあったから起こる出来事を知っていたってことで良いの?」

 

「そうなります。だから、既に知っている事しか知らなかったんだ」

 

「……なるほどね。となると、前の世界での出来事って色々と想定外の連発だったんだ」

 

「ほんとそれ」

 

「それでも上手くあそこまで持って行ったんだからよく出来た方なんじゃないの?」

 

「そう言ってもらえると助かります……」

 

「あのノートに書かれてた内容は、ゲームで起きた出来事だったで良いんだよね?」

 

「そうなるな。100%書き込めてるかは怪しいけど」

 

「……ふーん。ってことは、あの内容は高嶺君がしていた感じかぁ」

 

「……やっぱり気づくよなぁ」

 

「今までの流れを考えれば流石にね。澤田君が高嶺君に色々として来たのはそういう意味も含んでいたってことね」

 

「その通りでございます」

 

「……だから、誰よりも不可思議な存在……ね」

 

「ん?」

 

「覚えてる?前に明月さんのベッドでワタシが寝る時に話した内容のこと」

 

「……ああ、あの件の翌日のことだよな?」

 

「うん。距離を置こうとしたワタシに対して、我儘や夢を叶えるのに協力するって最初に言ってくれた話」

 

「あったな……そんなことも」

 

確か変な遠慮させないように色々と言った気がするが……。

 

「あれは、本当なら自分が存在しない世界にいることに対して言っていたんだなぁって、今更ながら思ってね」

 

「まぁ、そうだなぁ」

 

その通りなんだけど、指摘されると少し恥ずかしいと言いますか……。カッコつけて言った感じだし。

 

「……今も、そんな風に考えてたり、する?」

 

「……正直、少しはな。前の世界は俺が存在したことで色々と面倒事を持ち込んでしまったわけだし、この世界でもそうとならない保証があるわけじゃない」

 

「そう……」

 

「……でも」

 

「でも?」

 

「少なくともこの世界では、死ぬその瞬間までは精一杯生きて行くつもりだ。望んだ世界で、好きな人と笑いながら……一緒にな」

 

「……へぇ、一体誰となんだろうね」

 

揶揄うように笑いながらこちらを見る。言わせたいって感じが出てて超可愛いのですがっ!?

 

「そりゃ、今一緒に横になりながらお喋りしている素敵な彼女とな。四季さん以外居ないだろ?」

 

「寧ろ、ここで他の名前とか出してたら冗談でも刺してたかも」

 

間違った選択肢でバッドエンド行きかよ。

 

「でも、少なくとも前向きに考えててちょっと安心した」

 

「以前のままならそう考えてたけど、約束したしな」

 

「約束?誰と?」

 

「母親とな」

 

「えっ?どういうこと?澤田君のお母さん?会ったの?どこで?」

 

「四季さんに起こされるまでの夢の中でちょっとな。まぁ、こっちも色々とあった感じだ」

 

「そうなんだ……。後で詳しく聞いても良い?」

 

「勿論。四季さんにも知る権利はあるしな。というか聞いて欲しいくらいだ」

 

多分驚きそうだしな。

 

と、話は結構逸れてしまってるが……まぁいいか。四季さんの方は割とすんなり受け入れてくれてるし、このまま流しても……。

 

「そうだ。ワタシからも聞きたい事があったんだけど……良い?」

 

「俺に答えられる範囲なら何でもどうぞ」

 

「ん。ありがと。それじゃあ遠慮なく」

 

目を閉じて一度頷いてからこちらを見る。

 

「恋愛シミュレーションゲームって、何の事を指してるの?」

 

 

 





続きまーす。

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