喫茶ステラ ―異邦人と蝶の残滓―   作:コクーン√

96 / 101

一応、本編の物語としては最終話になります。

ここまで読んで下さった皆様方、本当にありがとうございます!




-新訳-第45話:Epilogue

 

 

「皆で写真を撮りましょうよっ!」

 

この日、火打谷さんのそんな一声で朝から写真を撮ることとなった。

 

「ほら、新年が始まって達也さんも来たことですし、その紹介も兼ねてSNSに上げましょう!」

 

その提案を全員が賛成し、フロアで並び始める。

 

「男2人は後ろで、それ以外は前で大丈夫じゃない?」

 

「そうですね。昂晴さんと澤田さんは後ろでお願いします」

 

「ほら、ナツメ先輩は真ん中ですよっ」

 

「ワ、ワタシが真ん中?」

 

「当然です。お店の重要なポジションですから!ね?希ちゃん」

 

「そうですよ。その方が分かりやすいと思います」

 

「……そうかなぁ?」

 

少し納得いかない様子だが、言われるがままに真ん中に立つ。

 

「そんじゃ、男の俺たちは後ろに並ぶか」

 

「ですね」

 

前方でわいわいしてる女性陣を見ながら後ろに回る。

 

正面は左から涼音さん、明月さん、ナツメ、墨染さん、火打谷さんの順だ。端っこの火打谷さんはカメラのタイマーを設定する為に一旦離れているが……。

 

その後ろに高嶺、俺という感じで並んでいる。まぁ、オープニングの一コマ的な風景だな。

 

「……そうだ」

 

不意に思い出したので、少し離れてる場所からこちらを見守っているミカドさん(猫Ver)を手招きで呼ぶ。

 

「達也?何してるの?」

 

「いや、ミカドさんがタイミング悪く居ないからさ。代わりにこのお店の看板猫の閣下と一緒に撮ろうかと思ってさ」

 

「なるほど」

 

因みにミカドさんは事前に用事で席を外してることになっている。よく分からんが人型で映るのが嫌なのか?

 

「あっ、確かに閣下もよく上げてますもんね!」

 

スマホを持っている火打谷さんの目が輝いた気がした。

 

「と、いう事で……、カモン」

 

俺に呼ばれたミカドさんは一瞬嫌そうな顔をしたが、しぶしぶと此方に来る。

 

「んー……映りやすいように俺の肩にでも乗る?」

 

足元では見えないので姿勢を下げて肩を差し出す。

 

「……にゃー」

 

『……仕方ないか』と言ってるのか分からないが、背中に飛び乗り、そのまま肩まで登る。

 

「んん、ちょっと待ってよ……」

 

ミカドさんが乗りやすいように首や姿勢の位置調整をする。

 

「よし、こっちは何時でもおっけー」

 

結局、俺の右肩に座る様な位置で落ち着いた。

 

「おおっーー!映えますねそれ!良い感じですっ」

 

「やっぱり閣下ってお利口さんですね~」

 

良い1枚なのか、火打谷さんと墨染さんが盛り上がっている。

 

「それじゃあ、タイマーを10秒で設定しますんで!」

 

スマホを設置し、画面をタッチする。

 

「愛衣ちゃん、はやくはやくっ」

 

「うんっ」

 

火打谷さんが並んだのを見て、それぞれがレンズに向かってポーズを取る。

 

記憶の中にある光景と全く同じの皆を見て、自然と笑ってしまった。

 

 

 

 

 

「ふぅ……ようやく辿り着いたな」

 

「そうね……」

 

森の中、一際開けたとある場所。

 

今日、俺とナツメは例の森へ来ていた。

 

「ま、ちょっと時間が空いてしまったけどな」

 

俺が目覚めた場所に着き、足元に少し束ねた花を置く。

 

「随分と綺麗な青の花だけど、何か意味があるの?」

 

「ん?これか?……少しは?これ、胡蝶蘭って花なんだ」

 

「胡蝶蘭?」

 

「そ、胡蝶蘭。蝶が舞う様な見た目からその名前が入ってるらしい」

 

「言われてみれば、確かもそう見えるかも……」

 

「だろ?蝶だった両親にはピッタリ」

 

「そ、そう?」

 

「そう。これなら仲間が増えたと思うはずだ」

 

冗談を言うように笑う。

 

「まぁ……達也がそれで良いならいいんじゃない?」

 

「それに、青色の胡蝶蘭の花言葉も丁度良かったからさ」

 

「へぇー、どんな花言葉なの?」

 

「『愛と尊敬』って意味があるらしいぞ?」

 

「それは……確かにピッタリ」

 

「そうだろそうだろ?」

 

特に手などは合わせずに立ち上がる。

 

「そんじゃあ、変だけど報告も済ませておくか……」

 

「うん」

 

「あー……今2人がどこに居るか分からないけど、最後に会ったここから報告させてもらう。まだ目覚めて1か月も経ってないけどな」

 

冬の冷たい空気が通り過ぎる。隣のナツメは目を閉じ、静かに俺の報告に耳を傾けていた。

 

「ここで新しく人間として生まれてから、また皆が居るあの喫茶店で働いてるよ。あの中で俺が一番新人だし、未だに打ち解けられてない子も居るけど、そこそこ楽しくさせて貰ってる」

 

ふふっ、っとナツメが小さく笑う。

 

「あと、好きな人……恋人が出来たんだ。既に知ってるかもしれないけど、お店で働いてる黒髪の四季ナツメって女の子。今、その子と一緒に来てる」

 

「あの時、夢の中で俺を助けてくれた2人のおかげで、今もこうしてナツメと一緒に歩んで行けてる。本当にありがとう」

 

「正直、小さい時の記憶しか無いからさ、2人の顔や声なんかあまり記憶に残って無くて、薄れてたんだ……」

 

「子供ながらに親が居ない現実を受け止めようと頑張ったりもした。それでもやっぱり寂しくて泣いた日もあった」

 

「そんな俺を叔父は色々と見てくれてたよ」

 

「でも、大人になって……、この世界に来て再び2人に会う事が出来た。顔が見れた、声が聞けた。そして、背中を押して貰った……」

 

「まぁ……その、なんだ。色々と言いたい事もあるけど……纏めると、俺は今幸せに生きていますって事だな」

 

「ちゃんと、母さんが言ってたように明るく、笑って行くよ。これからも……」

 

「だから、俺のことはもう大丈夫だから、2人も存分にイチャイチャでも転生でもして新しい人生を謳歌してくれ」

 

「……取りあえずは、こんなとこかな?」

 

「言いたい事は、言えた?」

 

「今日の所はな」

 

「それじゃ、ワタシからも良い?」

 

「どうぞどうぞ」

 

「……お久しぶりです。澤田達也さんとお付き合いしている、四季ナツメです」

 

「と言っても、お母様の方は夢の中で何度もお話していたんですけどね……。まさか達也さんの母親だったとは思いませんでしたが」

 

だよな。教えた時の慌てっぷりはめっちゃ可愛かった。

 

「……お二人のおかげで、今、彼と共に生きています。ここに来るまで、沢山助けて貰ったことについては幾ら感謝しても足りないぐらいです」

 

「ありがとうございます。あの日、ワタシの元に来てくれて……再び大切な人と会わせてくれて……」

 

「その恩返し……と言うのは恩着せがましいとは思いますが、息子さん……達也さんを幸せにしてみせます」

 

「ちょいちょい、ナツメさんー?それは聞き捨てならないなぁ?」

 

「ちょっと、今ワタシが話してる番でしょ?」

 

「いーや、ナツメを俺が幸せにする。これは譲れないね」

 

「ワタシだけ幸せになっても意味が無いでしょ?」

 

「ちっちっち、それはノンノン」

 

「え……急に何?ちょっとウザい……」

 

「ナツメが幸せなら俺も幸せ。つまり2人とも幸せってわけ。オーケー?」

 

「また訳のわから……いや、分かってしまう自分が居る……」

 

「ほほぅ、これまた珍しい返し方だな」

 

いつもなら『また訳の分からない事を……』って呆れ顔のはずだが。

 

「もしかしたら、達也に毒されたかもね」

 

「毒されたとはまたこれ辛辣な……せめて染まったとかオブラートにな……」

 

「でも、意外と悪く無いと思ってる自分も居るんだよねぇ……」

 

うーん、っと首を捻りながら苦笑する。

 

「それも毒された影響か?」

 

「……そうかも?」

 

肯定すんのかいっ。

 

「ま、そこに関してはしゃーない。魂が繋がってるとお互いの思考とかがクリアに伝わるしな」

 

「だよね……」

 

今となってはお互いに割と使いこなせる程度には制御可能だ。練習としてお店で活用したりして熟練度を上げた。

 

その成果もあり、伝達の距離とイメージの伝わり方の強弱も幅が広がった。これならもう大丈夫だろう。

 

「って、そっちに構ってたから報告の方が……」

 

「まぁまぁ、今日だけじゃなくてまた定期的に来るんだし、その時に沢山言えば大丈夫大丈夫」

 

「ご両親への挨拶なんだし、適当じゃダメでしょ?」

 

「と、言われてもなぁ……」

 

そこに居るかすら分からんし……。

 

「でも、ワタシも一応は言いたかった事は言えたかな?」

 

「満足?」

 

「んー……、少しスッキリした感じ?」

 

「なら大丈夫だな」

 

こういうのは、死んだ人間ではなくて、生きている人間の為に行うやつだからな。

 

「よし、それじゃあ、また来るよ」

 

「遅くならない様に、また来ますね」

 

最後に別れの言葉を告げて、振り返る。

 

「んじゃ、またでこぼこした道を歩いて帰りますかー」

 

「ん、エスコートはよろしく」

 

"危険だから"と、いつかの口実を思い出しながら腕を組んで、来た道を歩き始める。

 

「折角だし、どこかで食べてーーー」

 

『どこかで食べて行く?』そう提案しようとした時、1頭の青い蝶が正面を横切る。

 

「………」

 

一瞬、魂の残滓を疑ったが、よく見れば違った。

 

「ねぇ、あれって……」

 

「いや、蝶じゃないみたいだな」

 

「あ、そうなんだ……」

 

その蝶は、俺たちの横を通り過ぎて森の中へ消えていく。

 

「………」

 

「……今、何考えた?」

 

少し寂しそうな表情のナツメが俺を見る。

 

「いや、よくある話だと、今横切った蝶が、死んだ両親の生まれかわった姿的な暗示の展開かと思ったけどさ……」

 

「思ったけど?」

 

「流石に2度も蝶に生まれ変わりたくないだろうし、ありえないなって思っただけ」

 

「……なーんか、心配して損しちゃった」

 

「捻くれた考えなもので」

 

「ほんとね。でも、そっちの方が達也らしいって納得した」

 

「あれ?おかしいな。慰めの流れかと思ったら普通に貶されたんだが……?」

 

「こっちの方が、嬉しいんでしょ?」

 

「………」

 

これは……俺の癖が見抜かれてますねぇ。

 

「正解みたいね」

 

「……勘の良いガキは嫌いだよ」

 

「へぇ……、ふーん……そう返すんだ?ワタシの事嫌いなんだぁ?」

 

揶揄うようにこちらを見る。

 

嘘です、好きです。愛してますとも。

 

「ッ!?ちょっ……!いきなりはズルいでしょうがっ!」

 

俺の彼女、四季ナツメが世界一っ!誰よりも可愛いと断言できます!そうに決まってるっ。

 

「~~~ッ!分かったっ、分かったから!」

 

ギブアップとばかりの俺の腕を叩く。

 

「……はぁ、心臓に悪すぎでしょ……。冗談みたいな言い方なのに本音なのが、尚更質が悪いし……」

 

「伝わったか?」

 

「嫌と言う程……ねっ!」

 

仕返しと言わんばかりに俺の腕の関節を決めてくる。

 

「あれ?ちょっとっ!?ナツメさんっ?普通に決まってるんですが……!?ギブギブッ!」

 

「ふん、さっきのお返し」

 

気が済んだのか、腕を離して普通に組んで来る。

 

「てか、どこでそんな技を……?」

 

「どこって、達也の記憶からだけど……?」

 

マジかい。

 

「この前考え読んだ時に、なんか覚えた」

 

「えぇ……まぁ、良いか」

 

どっかのタイミングで覗かれたのだろう。

 

「あれ?怒った?」

 

「まさか。寧ろ良い情報を知れたと思う」

 

「そう?どの辺が?」

 

「もしかしたら、ナツメを強化出来るかもしれない……とか?」

 

「え?なにそれ。ワタシを?」

 

俺の技術を何か覚えれば、自衛とか出来たり?いや、そんな場面が無いのが一番だが……。

 

「……いや、やっぱり無しで」

 

それより、俺が覚えた経緯を見られたくない。流石にあの地獄の日々をナツメにも送るとかありえん。

 

「何、今の間?気になるでしょ?」

 

「世の中には、知らなくて良い事もあるんだ……」

 

「うわぁ……何その遠い目」

 

「そんなことより、帰りに何か食べて行かないか?」

 

「んー……それなりにお腹空いてるし、賛成」

 

「よし来た。あの宿の近くに美味しそうな和食屋っぽいのと定食屋があったから、一先ずそこを見てみないか?」

 

「ん。了解。何があるか楽しみ」

 

ぎゅっ、と組んでいる腕を更に強く抱きしめてくる。

 

「俺も来る時に気になってたし、割と腹も空いてるから期待大だなっ」

 

お昼の内容を楽しみにしながら、森の出口へ向かって進んでいく。

 

ーーーこの森から始まった、不思議な世界、不思議な物語。異なる世界からやって来た1人の人間。

 

1人で突き進んだ物語だったが、今はもう、1人じゃない。

 

最愛の人と一緒に、笑い合って歩んでいるその後ろ姿が、そこにはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………あーあー、どう?僕の声が聞こえてるかい?……うんうん、どうやらしっかりと意識はあるみたいで安心したよ。

 

ん?僕かい?僕はえらぁい神様さ。そう、キミ達の子供に手を貸した、あのありがたい神さ。

 

ーーーさて、僕がキミ達2人に声を掛けたのには幾つか理由があるけど……そうだね、まずは労いの言葉でも送ろうかな?

 

これまでの頑張り、実に見事だったよ。お陰で僕が直接手を出すことなく彼を連れ戻すことが出来た。感謝するよ。

 

それと、彼と同じ様にこの世界に来てしまったとこについての、せめてもの罪滅ぼしとして、何か1つくらいお願いを聞いても良いかなって思ってさ。

 

あ、かと言ってあまり欲深い事は無理だから、そこは受け入れてほしい。

 

……ふむふむ、確認するけど、そんな願いで良いのかい?もっと自分達の為に使っても罰は当たらないと思うんだけどなぁ……。

 

……どうやら、2人とも意志は固いみたいだね。うん、それならその願い、この僕が責任もって叶えてあげようじゃないか。

 

え?いやいや、お礼なんて要らないよ。元はと言えばこちらの管理が甘かったせいでもあるからね。

 

まぁ確かに、そのおかげで大事な息子さんが前向きに生きることが出来たと言えば聞こえは良いけどね。

 

それじゃあ、僕はそろそろ行くよ。こう見えても僕は忙しいからね。

 

キミ達ももうすぐ次がやって来る頃かな?ま、来世を楽しんで来て。それじゃあね~。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、取りあえずは、これで僕の方も一段落かなぁ?」

 

疲れた様な仕草で腕を伸ばす。

 

「まだ問題は残っておる。それを解決しないことには完全に安心は出来ん」

 

煌びやかな巫女の衣装を纏った卯花之佐久夜姫が呆れたように後ろから声をかける。

 

「冗談だって、ちゃんと分かってるよ。それで?どうだった?」

 

「相変わらずじゃな。魂が門から出て来ておる」

 

「だよねぇ……。ちょっと困ったなぁ。また彼らの様な人が流れてくるのは手間だから、すぐにでも塞ぎたいけど……」

 

「何を言っておる。可能じゃろうが」

 

「まぁね。だが……原因を見つけずに塞ぐのは、今後の為にも勿体ないのさ」

 

「今回の様な件が、何度も起こるとは思えないのじゃが?」

 

「そう言われるとそうなんだよねぇ……」

 

うーむ、と首を傾げて少し悩む。

 

「今話しても仕方ないし、取りあえず塞いでおこうか。もし何か分かれば、その時に改めて調べれば良いだけだしね」

 

「それが一番安全じゃな」

 

「それと、変に藪を突いて問題が起こるのも嫌だしね」

 

「達也たちもたまったもんじゃないだろうな……」

 

「そうと決まれば早速閉じに行こうかな?後回しにすると面倒だし」

 

「ルリを使うのか?」

 

「それが手っ取り早いからね」

 

「分かった。なら、現地へ向かわせよう」

 

「よろしく~」

 

 





本編自体はここで一区切りですが、続きます。

後日談、おまけ的なのを入れて、次を描こうかと思います。

現時点では

次に火打谷さんの話。その後に、墨染さんやその他色々++でごちゃまぜで書いて行こうかと考えています。

その次も構想してますが、上が書けてから固めます……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。