φ(゚▽゚*)カキカキ(*゚▽゚)ノ□ペタッ"
さぁ、やってまいりました初デート。
そこそこ絞ったはずなのに一万文字越えてる……。
「………」
……うむ、待ち合わせ時間より少し早く来てしまった。
お店の定休日、時刻は昼前、場所は駅中の時計台の下。
俺以外にも誰かを待っているであろうと思われる人が数人おり、スマホを見ながら時間を潰している様子。
どうして俺がここで人を待っているかと言うと……遂に今日、待ちに待った……いや、待ちに待たせてしまった恋人との初デートとなる日である!
以前に口約束をしていた時から考えていたが、どうしても同じ店で働いている関係上、定休日にしか予定は立てられない。
休日とかが良いのかと少し悩んだが、よくよく考えれば平日で人が少ないし変な人混みに巻き込まれる可能性が減らせると気づいた。ナツメ本人に聞いてみた時も『お店に合わせないといけないし……それに、平日の方が人が少なくて助かるかも?』と言っていたのでそのまま決行した。正直休日に二人で休みを取るのはほぼほぼ不可能だとは分かってはいた。
当日のプランは俺の方で立てている。
最初は駅で待ち合わせだ。電車で移動して数駅隣の街へ行き、目的地の近くで少しショッピングとかでも洒落込むか、そのまま最初の場所へ向かうかの二択を持ってはいる。
そこで今日の目的を伝えて……ナツメの反応を見つつ次へ移行していく。
どんな反応をするか楽しみだが、バレてそうな気もする。てかしてると思う。向こうも今日の初デートで俺が何をするのか察してる可能性が高い。
そう仮定した時、その期待と予想を思いっ切り外してやりたいと思うのは俺だけでしょうか……?流石に今回の様な大事な場面ではしないけどさ!
その後は良い感じの時間になったらナツメのお家へレッツゴーって感じだな。どうやら晩御飯をご馳走させてくれるらしい。
……俺には分かる。その後そのまま恋人もご馳走しちゃうんだきっと。こう言ったゲームに俺は詳しいんだ、マジで。
「………」
いかん、滾って来た。今から想像するだけでこう……ドキドキするね!男って単純。
一人脳内で思い浮かべていると、ポケットのスマホが震える。
「ん……?ナツメから?」
相手は今まさに考えていた想い人からだった。
「なるほどね」
どうやら、今家を出たらしい。時間まで後数分なので遅れる連絡という事だ。
取り敢えず『ゆっくりで良いから安心安全と車と怪しい人には気を付けてカモン』と返信した。変に急いで何かあったら嫌だしな。
それにしても、別に数分程度の遅れは気にしないが……まぁ、守った方が良いのは分かるけどね。あと初デートってのもあるだろう。
女性は色々と時間が掛かると良く聞くし、30分とかまでなら特に……いや、ナツメの為ならハチ公が如く待てますが?忠犬ですけど?
……まさか、俺を焦らす為にわざと?この数分の待ち時間で更に俺の待ち遠しさを盛り上げる為に……それなら策士過ぎて惚れ直してしまうわぁ。
「ゴメン!お待たせ!」
そんなどうでも良い事を妄想しつつ時間を潰していると、俺を見つけたナツメが少し駆け足で合流する。
「ううん、今来たところ」
「……いや、待ってたでしょ」
「ほら、待ち合わせデートの定番だろ?」
「それは、そうかもしれないけど……」
「何かあったのか?って言っても数分だが……」
「ちょっと夕食の準備とか服選びとかしてたらこんな時間になってて……」
「ほう、服選びと……」
口元に指を当て、俺の正面に立っているナツメの姿を見る。
「な、何……?どこか変だったり、する……?」
俺の視線を感じ、手を後ろに回して恥ずかしそうにこちらを見る。
「可愛すぎてどう褒めようか悩む位には素晴らしいと思います、はい」
「なっ……!」
今日のナツメの恰好は、一番見慣れていると言ってもいい姿だ。白シャツにタイトスカートって言うのか?サスペンダー付きの奴。その上から赤のコートを羽織っている。黒のストッキングを身に付け、仕上げに赤のハイヒールも履いて来ている。
……完全武装じゃん。
確実に狙ったコーディネートである。原作のゲームでは立ち絵の関係上、普段着とかはそれしかお披露目出来なかったが、この現実世界では当然毎日違う服装をする。当たり前である。
にもかかわらず、この服装をしてくるのは……しっかり髪飾りまで合わせて来てるし。
「ありがとうございます。これ以上の喜びはございません……」
心からの感謝の意を込めて手を合わせる。
「っ……、リアクションがオーバー過ぎでしょ……」
俺の回答に耐えられなかったのか、恥ずかしさに拗ねる様な表情で視線を横へ逸らす。
「いやいや、本心からでオーバーじゃない。全然足りないくらいだ」
「それが本心って分かってるから反応に困るの……」
ボソッと呟くように文句を言うが可愛いだけだぞ?
「それならいつもみたいに『はいはい、わかったから』って呆れる感じであしらっとくとか?」
「……ムリ。嬉しいから顔に出そうだし……」
……はぁー?可愛すぎんか!?何この生物。俺の恋人です、本当にありがとうございます。
初っ端からフルスロットが過ぎるだろ。この調子なら夜まで持ちそうに無いんだが?何?俺の耐久度テストでもしてるのですか?
「……神」
「ボソッと変な事を言わないっ!もう、良いからさっさと動く!」
「承知いたしました。お嬢様」
もうこのままナツメを褒め倒しまくるのも悪くないが、怒って帰られたら目も当てられない。……怒る姿も良いと思います。
「んじゃ、出発としますか」
「ん、早く行こ」
俺が差し出した手を見て、嬉しそうに握りながら体を密着させてくる。……腕組んだ方が良かったか?
「まずはどこに行くつもり?」
「電車で数駅隣の街だな」 (このままホテルに直行しようか)
おっと、爛れた色情が漏れ出るとこだった。危ない危ない。
「了解」
隣の彼女さんは特に気にした様子もなく納得する。……良かった。伝わって無かったみたいだ。
「さっきの話で気になったんだが……」
「ん?何?」
「今日の服装をそれにしたのって、何か意味があったり……?」
わざわざ聞くのは少しデリカシーに欠ける気もするが……今更か。
「あー……そこまで大層な意味って訳でも無いけど……、絶対外さないコーディネートって分かってたから……」
「それは確かにそうほんとにそう」
「一応、大切な初デートでしょ?だから服選びで失敗したくなかったし、それに達也と初めて会った時も確かこの恰好だったし……一番印象に残ってると思って」
「なるほどな、大正解」
「別のが良かったり、した……?」
……分かってて聞いてるのか、この小娘はっ!!
「さっきと同じやり取りを繰り返しても良いのなら、返答するが……どうする?」
にやりと笑ってからこちらを見上げるナツメの方へ顔を向ける。
「……いい。もうお腹いっぱい。……そっか、それなら安心、かな?」
「まずナツメはなに着ても可愛いからなぁ……。素材が天下一品だろ?ちょくちょく着ている別のスカートタイプも最高だし……今度はズボン?パンツスタイルって言うのか?ああいうのも似合いそうだよな。スラっとしててさ」
「私の話聞いてたっ!?」
いや、フリかと思って。
「そんなフリとか求めてないからっ、変な気を遣わないでくれる?」
「猛省しやす」
電車で移動をし、少し間目的地近くでショッピングをした。特に何かを買うとかは決めずに服やらアクセサリーやら靴やらと色々連なっている店らを見て行った。
改めて思ったが、やはり女性物の服の種類は多い。いや、服に限らずだったが……。
冬の季節と春に向けての少し軽めの服が店頭に並んでおり、セールをしている場所もあった。
最初はナツメに似合いそうな服を想像しながら冬服や春物の服を選んで楽しんでいたが、ある程度楽しむと『今度はワタシの番ね』と言って男性服の階層へと連れて行かれた。
……俺の服を楽しそうに選んでるナツメの姿を見ているだけこっちとしては幸せです。なるほど、ナツメはさっきまでこれを味わっていた訳か。
結果として、必要品として靴下と肌着を……それとナツメの反応が一番良かった春物の服を買った。いや、必要だからね?ほら、俺ってまだ冬物しか持って無かったから!
こちらが買ったのを見て『ワタシも一つくらい買っとけば良かったかなぁ……』と小さく呟いてた。後悔して少ししょぼくれる顔もプライスレス……ッ!。
ま、俺とは違って必要性がそこまで無かったし……いや、思わず買いたいってなってしまうくらいに俺のトークスキルがあれば別だったか……?
ナツメの為にと思って寄ったが、終わってみれば俺が買っていたという結果になってしまった。ナツメ本人はご満悦のホクホク顔であるので良いでしょう。『今度、着た姿見せてね?』とも言ってたし。
寄り道してから本命のお店へと向かい、店内へ入る。
「ここが……」
入口の扉が閉まるベルの音が店内に響き、店員さんに案内され席へと座る。
「へぇー……、すっごく雰囲気良いお店……」
メニュー表を見ながら店内をサッと見渡す。
「何か飲む?小腹空いてたりするなら昼食とかもあるぞ?」
「あ、うん……ちょっと空いてるかも」
「なら軽く食べ物も頼むか。そうだな……このアフタヌーンティーセットとかどうだ?丁度二人前で注文出来るし」
メニューに書かれている欄をナツメが見えるように向けながら提案する。
「飲み物とセットで……?それじゃあ、それにしよっかな」
「おっけ、何飲む?色々とあるけど……」
「んー……、ふーん、一応キャンディもあるんだ」
ズラッと並んでいる紅茶のページを見つつそう呟く。
……これは、分かっておられますね。まぁ、想定内だけどさ。
「私はダージリンにしておこっかな、そっちは?」
「あー……ならアールグレイ……いや、折角だしブレンドティーなるものでも飲んでみるか」
コーヒーなどではよく見るが、紅茶の方はあまり見た事が無い。俺がこういった場所に行く機会が無いってのもあるが……。
「決まったし頼むか」
軽く手を上げると直ぐに待機中の店員さんが来てくれたので注文を済ませる。
「……それで?何が目的なのか一応聞いておいた方が良い?」
注文した品が来るまでの空き時間に一息つくと、ナツメの方から少し揶揄う感じで聞いてくる。
「目的て……そりゃ、この初デートを一緒に楽しむことだろ?」
「それは当然分かってる。既に充分楽しんでるし……でも、こういうお店に来たって事は意味があるんでしょ?」
「まぁまぁまぁ、物事には順序と言う物がありましてね?まずはここの雰囲気とか味を楽しもうじゃないか」
「順序……まぁ、達也がそう言うなら後ほどにしておく」
「……このお店には男の人しか居ないんだな」
「内装からして結構凝ってる感じだし、マスターの拘りが出てると思う」
「マスターって多分あのカウンター奥でコーヒー淹れてる人だよな」
「間違いない、オーラが凄い」
初老一歩手前ぐらいのダンディなお方。店内もちょっとした会話が聞こえるがうるさく無く、全体的に落ち着いた雰囲気だ。音楽もそれに合わせて流している。
お店でもアフタヌーンティーの時間には音楽をそれっぽいのに変えた方が分かり易いかもな……。
後はやはり、店員の佇まいがより一層お店の雰囲気を仕上げているのがよく分かる。
「参考になるなぁ……」
「ね、こういった視察ってやっぱり大事かも……」
店内は全体的に少し暗め……明るさを落としている調整だけど、音楽がそれの良さを引き出してる。
「これは味にも期待するしかねぇな……クックック」
「はいはい、楽しみなのは分かるけど変なキャラしなくて良いから」
雑談を交わしつつ待っていると、お楽しみのセットが届く。
「これは……映えるな」
「ええ……ものすっごく」
スタンドと紅茶のセット……、下段からサンドイッチ類、中段にスコーンだと思われる物とジャムか?これは……、一番上にはケーキ類が乗せられていた。
「写真撮って後で皆にも共有しよっと」
ナツメがスマホで写真を撮ってる間に、念のため膝上にナプキンを敷いておく。
「……んじゃ、頂くとしましょうか」
「そうする。ずっと見てたい気持ちもあるけど、見てるとお腹空いて来たしね」
「ではでは、まずはサンドイッチから行くとしましょうか……」
お互いに下段のサンドイッチを自分の皿に移して食べ始める。
「……かなりシンプルなタイプだな」
普通にめっちゃ美味しいのは間違いない。スタンダードなサンドイッチでクセも無く食べやすい。この後他のもあるし当然と言えば当然か。
「美味しい……こっちはレタスとトマト……後はベーコンが入ってるけど、もう一つはシンプルにタマゴだけみたい」
「この辺はお店で使ってる物を使いまわしても問題無さそうだけど……少しひと手間加えても良いかもな」
通常メニューと全く同じ物を出されると特別感が減る人が居るかもしれないし。
「例えば?」
「んー……楽なのはある具材で組み合わせるだが、調味料で味を変えるのも手だし……いっそのことサンドイッチにフルーツでも入れてみるか?」
「フルーツ?コンビニとかで売ってるみたいなのを?」
「そそ、そんな感じのやつ」
「……一考の余地はありかも」
「涼音さんのスウィーツは人気だし、相談して試して……ん?そうなると下段から甘いものになるな」
「別にアフタヌーンティーだけって訳じゃないし、通常メニューに追加って形でも実現は可能だから構想を練っておくだけでも役立つと思う」
「だな」
後、サラッと計画がバレてるけど……今更か。
半ば諦めつつも紅茶で小休憩を挟む。
「お次はスコーン、だなこれは」
「いい匂い……」
中段の皿から一つ取り、半分に割ってから片方を食べる。……っく、やはりこのタイプの食べ物はサクサク過ぎて破片を落としそうで怖い……!
細心の注意を払いながらも食べる。ま、ナプキンあるから大丈夫だけどな!
味の方は少し薄味……かも?ジャムを付ける前提で調整をしているか。
中段に乗ってあるクリームと思われる物とジャムを掬って自分の皿へ移し、それをスコーンに塗ってから口へ運ぶ。
イケる、味変した感じが非常に良い。二度楽しめるなこれは。ジャムとかを付ける事でスコーンだけの美味しさを実感できるのもデカい。
「どうだった?」
俺がジャムやクリームを食べるのを見てから気になって聞いてくる。
「想定以上に美味しかった。ジャム系が苦手なら勧めないけどな」
「ほんと?それなら私も試してみよっかな……」
ナツメも同じようにスコーンに付けて食べる。
「あ、美味しい。合うかも……」
「思ったより美味しいよな」
「ほんとそれ、驚いた」
想像していたよりもずっと美味しかった中段に盛り上がりつつも、一番上のケーキへ移る。
「やっぱりどこも今はイチゴが定番だな」
「旬だしね、お店でもやってるし」
一口サイズのイチゴタルトとショートケーキをデザートとして食べ、紅茶を飲んで落ち着く。
「美味しかったな」
「ね、正直こういうのって少し敷居が高いイメージがあったけど、意外とそうでもなかった……って、喫茶店の店員が何を言ってるって話だけどね」
「言いたい事は超理解出来る」
お高い雰囲気で萎縮しそうな感じ。
「達也的には、このお店みたいな感じをイメージしてるの?」
「ん?あー、ここまで厳格って感じでは無いなぁ……多少コンセプトは寄せたいけどさ」
「ふーん、人員は閣下だけ?」
「メインはそうなる予定。一応厨房から俺も……後余裕があれば高嶺にもお願いしてだな。女性側は今の所ナツメだけを考えてる」
原作ではナツメのみだったが……ここでは俺が居るし、明月さんとかにもお願いするのも面白いかもしれないな。
「とはいっても、俺の方はさっさとお店に馴染めるようにしておかないとなぁ……まだ一ヶ月も経って無いからしゃーないけど」
「寧ろ既にかなり馴染んでると思うけど?」
「そうか?」
自分ではよく分からんが……。
「そう。休憩室で墨染さんや火打谷さんと一緒になった時普通に話してたでしょ?」
「まぁ……前の経験があるからな」
「火打谷さんもちょくちょく達也に冗談言ったりする程度には気を許してると思うし、墨染さんも同じくらい打ち解けてるはず。こっちは高嶺君経由で話を聞いてるのもありそうだけどね」
「言われてみれば確かに……」
火打谷さんの件に関しては俺から積極的に言ってるから向こうも遠慮が無くなって来た感じだろう。如何せん、前の世界の記憶や原作の記憶があるからそんなもんだと思ってしまう場面が多々ある。
そもそも高校生組二人は良い子過ぎるんだよなぁ……。思い返して見てもこの世界でも初めから態度良いし、少し遠慮はしていたけど直ぐにそれも無くなってたし……。
「二人ともほんとイイ子過ぎるよなぁ……マジで」
「理解は出来るけど、どこ目線なの……?あと……ちょっとキモイ」
遠い目をしている俺に苦笑いで返される。しっかりとお褒めの言葉も頂けた。
「っと、まぁ、俺の脳内の計画では二月の……中頃辺りからお試しとして出来れば良いかなって考えてる」
「開始時期を頑張って達也のと同じ様に合わせなくても大丈夫じゃないの?」
「どうだろうなぁ……少なくともバレンタイン前にはスタートさせておかないと、色々とズレるかもしれないし……」
原作ではバレンタイン前に始めていたし、同じ人達を集めるなら同時期が確実だろうし……。
「因みにだけど、涼音さんの方にメニューとかこういうのやってみたいって話はもう出したりしてる?」
「軽くはね。人も増えた事だし、もうちょっと特別感を出した物とかに手を出してみたいのですがどうですか?って感じだけど。アフタヌーンティーの話も小出しにはしている」
「なるほどなるほど。それじゃあ、明日辺りにでもミカドさん交えて話してみるか?」
「そうする?それなら撮った写真が役に立ちそう」
「現場視察に行って来ましたって感じで本気度が伺えるな」
「良い説得材料になるかもね」
二人で笑いながら紅茶を飲む。
「そうなると、練習が必要になるのと……メニューだな。ま、そっちについては大体固まってるから良いけど」
「道具とか食器も用意しないと……」
「ならこの後、実際に売ってる店に下見しにいく?近くに専門店があるけど……」
「そうなの?ちょっと気になるかも……」
「もう少しゆっくりしたらここを出て向かうとしよう」
「うん、……ふふ」
この後の予定が決まったと思っていたら、俺を見て嬉しそうに笑う。
「ん?どうかしたのか?」
「ううん、なんでもない」
「……そうか?」
なんでも無いようには見えないが……。
そう思いながらも紅茶に口を付けていると、テーブルの下……自分の足を俺の足に軽く絡めて来た。
『ありがと』
「………」
たった一言だけ、それだけだったが……その言葉に込められた感情に対して動きを止めてしまう。
「んー?どうかしたのぉ?」
こちらの反応を見て、面白そうに足で俺の足をつつく。
「……それは卑怯かと思います」
「しらなーい、……ふふ」
更に嬉しそうに笑う。
……俺が色々と進めている事に対して変に言葉にせず感情をぶつけて来るとは……手強い彼女さんだよ全く。
それと、こう言った厳かな雰囲気の場所で見えないテーブル下という秘密のスペースで足を絡めて来るという背徳的な行為って……なんかものすっごくすけべぇだよねっ!流石は四季ナツメ!恐れ入るっす!
「………」
俺の脳内を覗いてしまったのか、はたまた伝わってしまったのか、さっきまで笑っていたナツメが呆れるような視線を俺に向けていた。
良い感じに落ち着いた辺りでお店を出てから二人で道具などのお店を見て回った。用語や知識、マナーとかルールとか色々とあったが割と盛り上がった。
事前にネットとかで軽く調べてはいたが、店員にアフタヌーンティーの歴史の話をされたのは流石にビビった。好きすぎだろあの人……。
日が暮れ始める頃に帰り始め、最後はナツメの部屋に上がらせてもらった。
「ご飯の準備してくるから、達也はゆっくり寛いでて?」
「了解。楽しみに待ってる」
言葉に従って大人しく部屋で座って待つ。
ナツメの家でご飯を食べる時、手伝おうと思っているが毎回大丈夫と言われる。どうやらそれも一つの楽しみらしい。必要になったら呼ぶし、俺の家の時は一緒に作ったりもしてるから問題は無いと思う。
さて、本日の晩御飯は何でしょうか……昼過ぎに食べたアフタヌーンティーは既に消化しているから普通に腹は減っている。
……初デートだし、少し豪勢な物が出てくる可能性は高いな。
何やら準備に時間が掛かったのか遅れてしまっていたのだ。いつもとは違う料理が出て来てもおかしくない。それで新しい料理に挑戦していた……とか?
慣れないメニューに多少失敗しているとか……なにそれめっちゃいじらしいぞ。それだけでご飯数杯はいけるな!!
「……これは?」
微かに香りが漂って来る。……濃い目のソースか何かか?
それと扉の向こうからステンレス鍋と思われる音もしたので……汁物もあるのかもしれない。
楽しみにするためにナツメの考えを読まなかったが、一体何が来るんだろうか?
予想しつつ楽しみにして待っていると、完成した料理を持って部屋へと戻って来た。
「お待たせ。あと味噌汁ともう一品持ってくるからちょっと待ってね?」
テーブルの上に置かれたのは……丼。そして中身は―――鰻っ!!
……ほう?鰻と申すか。
だが、これだけではまだ早い。鰻と言えば特別感があるのは正論だ。ナツメの退院時にも一緒に食べに行ったしおかしくはないぞ?うん。
まだ二品も判断材料があるのだ、早まるな澤田達也。
続いてテーブルに置かれたのは味噌汁。そして中身は―――あさりっ!!
ほほぅ……?アサリ汁と来ましたか……。これは……いや、まだ早いかもしれないぞ?たまたまスーパーで特売とかしていたのかもしれない。そこで『安いし丁度良いかも……』って買った可能性もあるしな!……いや、なんだよ丁度良いってさ……!
そして最後に投入されたのは―――ん?刺身?
サラダ風の少しオシャレな感じで一瞬意外な物が来たと思ったが、よくよく内容物を確認する。
―――っ!?こ、これは……!!カツオやないか……!?しかも、他にもアボカドも……!?
更に更に、スライスされた玉ねぎや小さくて気づきにくかったが、ニンニクのチップと思われる物も入っている。
いや、普通に料理上手だな……スキル高すぎない?良いお嫁さんになるんだろうなぁ……。
って、違う!!こんなん役満だろっ!確実で絶対じゃんっ!狙ってるじゃん!俺はとうに檻の中に誘い込まれていたってわけかよ!
「それじゃあ、食べよっか?」
「あ、ああ……滅茶苦茶豪華だな」
精一杯の虚勢で出た言葉はそれだった。
「特別な日でしょ?少しは喜んで貰えるように色々頑張って作ってみたの」
「俺が思ってたより料理スキル上がっていませんか?」
「まぁ、美味しいって思われたいからそれなりに練習はしてる。だから沢山食べてね?」
「よろこんで」
その食べた俺はナツメが美味しく頂くと……最高かよっ!!
とは言っても料理が美味しいのは本当だし、全部余裕で食べてしまう。
俺が食べるのを嬉しそうに見ていたが……俺は知っている、その瞳の奥に肉食獣の様な眼差しで俺を見ている事を……!
何?俺も6回致されるの……?殺す気ですか?なるほど、高嶺はこんな気持ちだったわけか。
……ナツメは自分のルートの事を知ってると思うし、こうやって精のつく料理をわざわざ狙い撃ちしてくる理由は……?
結論は……今夜は盛り上がるのは確実だろうな。明日も普通に仕事なのによぉ……!
無事出された料理を全て食し、ナツメが皿洗いに台所へ行った。
……ぶっちゃけ、興奮なら現時点でしてるが、効果って出るんだろうか?ゲームだと高嶺は6回致していたが効果があったからなのかよく分からんし……。
てか、それなら0.01mmと0.02mm問題が勃発するのか……?そんな素振りは無かったが……。
この後の展開を想像するだけでそりゃ滾りますよ。待ち時間である今でもソワソワしちゃう……!
台所の水の流れる音が鳴り止んだ事にドクンと心臓が跳ねる。もうその時が来るって分かってしまった事に期待してしまったのだろう。
「………」
洗い物を終え、部屋へ戻ってきたナツメと目が合う。
「……食べものとか、要らなかったかも、ね?」
ふっ、と笑って俺の隣に座る。
「もしかして……ワタシが洗い物してる間に出来上がっちゃったの?」
肩と肩がお互いにくっつき、俺の首筋に息を吐きかけてから耳元で囁く。
「ま、まぁ……それなりに……?」
「ふーん、それなり、なんだぁ?」
こちらに体を寄せ、片手を太ももに置いたかと思うと、それを少しずつ内側へと這わせていく。
これは……やばいな。
「あっ、その前に……」
このまま始まるのだと思っていると、何かを思い出したかの様にいきなり立ち上がった。
「ナ、ナツメ……?」
「そんな顔しないの。折角だしちょっとした物を選ばせようかなってだけだから」
「ちょっとした物……?」
不思議に思っていると、クローゼットを開け、とんでもない物を出して来た。
「今日デートしたままのこの恰好か、こっちに着替えるか。達也は……どっちが良い?」
微笑みながら妖しい眼差しで俺を見つめるその手には、真っ赤なチャイナドレスがあった。
Q. 0.01mmと0.02mm、どっちが良いでしょうか?
A.「だって……無い方が……気持ちいい、でしょ……?」
~事後~
「これは……体力を付ける必要がありそうだな……ふぅ」