「おぉ〜いバン!いるか?!」
「なんだよぉ朝からうるさいなぁ」
「まったくだよ..」
化猫の宿〔ケットシェルター〕にある一軒家の中にまだ起きたばかりのバンとクーがいた
「一体どうしたんだよ、レイ」
「いくらウェンディが初めてクエストに出かけたからってうるさくしすぎじゃない?」
バンとクーの家に入ってきたレイに対して、二人は鬱陶しいそうに言う
「それは今は関係ないよクー...それより!マスターが二人に話があるから呼んでるっていうことを伝えに来たんだ」
「マスターがぁ?」
「一体なんだろうね」
今日はウェンディが初めて一人でクエストに向かった日
シャルルは文句を言っていたが、予定ならもう出かけている頃だろう
「まぁいいやぁ、すぐ行く。準備してぇ、クー」
「はぁい」
口ではすぐ行くと言っておきながら、なかなか行動に移せない二人
そんな所を見ていたレイが
「まったく、手伝ってあげるから...急いでね」
「あぁ、ありがとうレイ。やっぱり持つべきは親友だよな」
「調子がいいなぁ」
この二人、今ではこうして仲良くしているが、バンがまだ化猫の宿に入りたての頃はこんな感じではなく、どれだけバンが話しかけてもレイはすぐに隠れてしまって話すことさえ出来なかったのだが...これはまた別のお話
なんやかんやあって、ようやく化猫の宿のマスター、ローバウルのところに到着したバン達
「マスター、お話とはなんでしょう」
「おぉ、来たかバンよ」
マスターローバウルの所には、先程の三人に加えシャルルもいた
「そんなに堅苦しくなくていいんじゃぞバン」
「いいえそういう訳には...」
バンはマスターローバウルにだけは頭が上がらないようで、普段しないようなきっちりとした態度で話を聞こうとしていた
(いつもこういう姿勢でいればいいのに...はぁ)
レイは心の中で呟いた
「話というのはじゃな、ウェンディが行ったクエストにシャルルがどうしても付いて行きたいって聞かないんじゃ」
「あぁ、なるほどぉ」
「ワガママ言っちゃダメだよシャル」
「プイッ」
ローバウルが発した言葉に対して、クーがシャルルに注意するが聞く耳を持っていないようだ
「あのねシャルル、ウェンディだっていつまでも子供のままでいては行けないと思うんだ」
「あら何よレイ、あなただって人のことは言えないんじゃない?あなたがいっつも甘やかしてばっかりだからあんなふうに育ったんじゃないかしら?」
レイもシャルルに注意をするが、簡単にたしなめられてしまった。
「まぁのぉ、シャルルが心配するのも仕方が無いと思うんじゃ」
「じゃあどうなさるのですか?」
バンはローバウルに対して疑問をぶつけた
「なぶら、バンとクーとシャルルの三人でウェンディを手伝ってきてやってくれぬか」
「あら、わかってるじゃない」
「え...それって大丈夫なんですか?」
シャルルは喜んでいるが、いきなりのことにバンはまたも疑問をぶつけた
「それなら問題はありゃあせん、これを持っていってジュラに渡しなさい」
「いや...まだ行くなんて一言も言ってな...」
そう言いかけたが...
「早く行くわよバン、クー」
「え?ちょっ!おい待ってシャルル!」
「焦りすぎだよシャル...」
シャルルはすぐさま出発し、それを追うようにしてバンとクーは出ようとするが...
「ちょっと待ってバン」
「?どうしたんだよレイ」
それを止めるようにしてレイが呼びかける
レイは神妙な面持ちで話す
「何か嫌な予感がするんだ...ウェンディのこと、よろしく頼んだよ」
「はっ...当たり前だよレイ。約束しただろ?」
二人は拳を合わせる
「「ウェンディは俺たちが守る」」
二人は笑い合いながら口を揃えてそう言った
「じゃ、行ってくる」
「うん、行ってらっしゃい」
バンはシャルルを追うべく背を向けて走り出した
そんなやり取りを見ていたローバウルがレイの傍に寄り、声をかける
「...すまんの、レイ...辛い役を任せて...」
「そんなこと、いいんですマスター。それより、もうその時なんですか
...?」
「...なぶら」
ローバウルとレイは覚悟を決めたような、それでいて悲しそうな顔で二人を見送った
「...頑張れよ。バン」
レイはそよ風に流されるほどの小さな声で...そう呟いた
...僕がレイを贔屓になる理由が分かりましたでしょうか?
察しのいいみなさんなら分かりますよね?