雷兎のヒーローアカデミア   作:羽織の夢

14 / 32
プライベートが忙しくて、週3投稿から週2投稿になっちゃうかもです。なるべく週2は維持しつつ、ストックが出来れば週3の時も作ろうと思っています。


乗り越えなければいけない壁

「ヴィランについて……もしかして私が戦った脳が剥き出しの奴のことですか?」

 

 ヴィランについて──先生たちが知らなくて私が知っている可能性のある情報などそれぐらいだろう。案の定、すぐに頷いてきた。

 

「ああ、そのことについて詳しく聞きたくてな……」

 

 そう言って相澤先生は視線を管理人さんに移す。

 

「あ!難しそうなお話だから私少し出ていますね」

 

「ご配慮ありがとうございます」

 

「いえいえ。海兎ちゃん、ついでに何か欲しいものあったら買ってこようか?」

 

「え?うーん……今は良いかな。ありがとう管理人さん」

 

「そう?なら少し出てくるわね」

 

 相澤先生が口を開く前に察したのか管理人さんは病室から出て行った。確かにあまり聞かせて良い内容じゃないよね。

 

「さて、先程も言ったがお前が戦った男。名称は脳無と言うらしいがな……。そいつと戦って何か気付いたことはあるか?」

 

「気付いたこと?えっと……見た目が普通じゃなくて、個性を複数持ってて……そうだ、まるで"私対策"みたいな……」

 

「やはりお前も気付いたか。雷の無効化、そしてあまりにも戦闘音が無かったことから音を消すような個性も持ってたんだろう。見た目といい個性を複数持っている事といい、間違いなく広場に現れた奴と同じ存在」

 

「!?そ、そうだ。広場にもあれと同じ奴が居たんだった!大丈夫だったんですか!?皆は!?」

 

 自分の方で精一杯で忘れてた!?もしかしたら誰か怪我してたり……!?

 

「落ち着きなさい、月下少女。クラスの皆なら無事だ。緑谷少年が怪我を負ったが個性の反動によるもので君ほどじゃない。脳無も飯田少年の救援で駆けつけたオールマイトが倒した」

 

「よ、良かった」

 

 ……そっか。オールマイトが来てくれたんだ。私は倒せなかったけどオールマイトは……分かってはいたけど、やっぱりまだまだ遠いな……。

 

「そのオールマイトさんが倒した脳無だがこちらは【ショック吸収】と【超再生】の個性を持っていた。死柄木弔が言うにはオールマイトさんを殺すために調整された改造人間らしい」

 

「つまり、月下少女が戦った脳無も君に対抗して作られた可能性がある。だが、ヴィランが君を狙う理由が分からない。何か心当たりはないかい?」

 

 ヴィランに狙われる理由……。うーん、生まれてこの方、ヴィランに関わることなんかなかったし、全然思いつかない。

 

「……すみません。考えてはみたんですが、全く」

 

「まあ、だろうな」

 

「しかし、そうなると何故月下少女が狙われたのか……?」

 

 ……もしかして偶然だけとか……?いや、それにしては私に相性が良すぎる。オールマイトの方の【ショック吸収】や【超再生】ならともかく私の方は流石に偶然には無理がある。……あれ?

 

「あの、相澤先生?どうして私が戦っていた脳無の持っていた個性が何かを知っているんですか?」

 

 確か、雷の無効化を使ったのは透があの場を離れてから。だから透も知らないはず。それこそ雷の個性を使わなければ気付きもしないだろう。プロヒーローがいる中で上鳴が来るわけも無いし……。

 

「助けに来てくださった先生方の誰かが雷を使えたんですか?」

 

「いや、葉隠少女から話を聞いてすぐに教員が駆けつけたが、その場に脳無の姿はなかったらしい」

 

「え?倒れている私を放ってですか?」

 

 記憶は朧げだが、私は脳無を倒しきっていない。気を失っていたのなら多少ダメージを受けていても私にトドメを刺すことなど造作もないだろう。なのに何故……?

 

「ああ、その点も不可解なんだが……個性を知っているのは監視カメラの映像を見たからだ」

 

「……え?」

 

 ……見た?アレを?見られた!?……そ、そうだ、あれだけ広い敷地にカメラが設置されてない訳がない。少し考えれば分かることだ。まさか、クラスの皆も……?

 まさか自分の姿を見られていたとは夢にも思わず、海兎の顔色もどんどん悪くなっていく。いつか見せなければいけないとは思っていた。でも……。

 

「落ち着け。見たと言っても俺たち雄英の教師だけだ。生徒たちは見ていない。それと、俺に関して言えばアレを見るのは2度目だ」

 

「……2度目?」

 

 良かった。クラスの皆に見られてないことには安心したが、相澤先生の2度目とはどういうことだろう?

 

「お前は覚えてなくても仕方が無いがな……7年前の三島事件、俺はあの日実際にその現場にいた」

 

「え!?そうなんですか!?」

 

「ああ、俺の個性は子供の個性の暴走を止めるのには最適だからな」

 

 なるほど。言われてみればそうかも。視るだけで個性を消せる相澤先生なら子供を無傷で保護するのも難しくはない。

 

「あ、ならあの日私を助けてくれたのも相澤先生なんですね。ありが──」

 

「違う」

 

「……違う?」

 

「確かにあの日俺はお前を視て個性を発動させた。それで終わってたらあんな騒ぎにはならなかっただろうな」

 

「それってどういう……」

 

「……()()()()()()んだよ。俺の【抹消】がな」

 

「……はい?」

 

「効かなかった?どういうことだい相澤くん。君の【抹消】は異形型以外の個性には有効な筈じゃ?」

 

 八木さんの言う通りだ。先生の個性なら私の兎の個性は消せなくても雷と変身は消せるはずでは……?

 

「その筈なんですがね。どう言う訳か月下に対しては一切効果を発揮しなかったんですよ。月下、ちょっと軽めに雷出してみろ」

 

 いきなりの相澤先生からの指示に首を傾げながらも、掌から小さく雷を発生させる。

 それを確認した相澤先生の髪が持ち上がる。恐らく個性を発動させたのだろう。しかし、それに反して雷が消える気配はない。本当に消えないや。

 

「ふむ、確かに消えないね」

 

 八木さんもその光景を見て不思議そうに首を傾げている。

 

「突然変異の個性には解明されて無いことも多いですから……話は変わるが月下、お前に確認しておくことがもう一つある」

 

 自分の個性に改めて疑問を持っていると相澤先生が話を切り替えて、もう一つ用事があると告げる。何だろう?もうこれ以上私から話せることはないと思うが……?

 

「お前の個性、いつまで隠しておくつもりだ?」

 

「!?──そ、それは……」

 

 言い淀む私に相澤先生は視線を鋭くさせ、さらに言葉を重ねてくる。

 

「お前の過去を知っている身としては同情はするよ。だが、ヒーローになると自分で決めたんだろ?だったら遅かれ早かれ覚悟は決めろ。いざ、現場で使うのを躊躇って助けられませんでしたじゃ話にならん」

 

 相澤先生の正論すぎる言葉が私の胸に突き刺さる。分かってる。自分でもこのままじゃダメだって……。

 

「あ、相澤くん。月下少女はまだ病み上がりだし、その……」

 

 八木がそれとなくフォローしようとしたが、それでも相澤が止まることはない。

 

「いえ、今言っておかなければならないと判断しました。今すぐ使えと言っている訳ではない。だが、今後俺が見込み無しと判断すれば容赦なくお前を除籍にする」

 

「!?」

 

「力があっても、その力に怯えてるようじゃ意味がない。何かあってからじゃ遅いんだ。死んだらそれで終わりだ」

 

 ……何でだろう?相澤先生の顔は怒っている筈なのに悲しいんでいるようにも見える。でも、相澤先生が本当に私のために言ってくれていることは伝わる。

 

「焦れよ、月下」

 

「……はい!」

 

 私が頷いたのを見た相澤先生は納得したのかすぐに私に背を向けた。

 

「聞くことは聞いたので今日は帰る。お前はしっかりと体を休めろ。」

 

「あ、はい。分かりました。すみません、あまり役に立てなくて……」

 

「ハハハ、君が気にすることではないさ。でももし、何か思い出すことがあったら教えてくれるかい?」

 

「はい、もちろんです」

 

 

 

 

 

 病院を出て、雄英への帰り道。相澤と八木──オールマイトは今後の対応について話し合っていた。

 

「結局、何故月下少女が狙われたかは分からなかったね」

 

「まあ、元々期待はしていませんよ」

 

 実際、相澤は少しでも何か知っていれば儲けものぐらいでそこまで重要視していたわけではない。どちらかと言えば海兎の個性に関しての忠告の方が本題とも思っていた。

 二人はこれからの雄英での対策について話を進めるが、次第に話の話題は海兎のことに移っていった。

 

「しかし、彼女は何故あそこまで変身能力を見せるのを躊躇うんだい?やっぱり暴走してしまったことを気にしてるのかい?」

 

 オールマイトからの質問に相澤は眉を潜めながらも答える。

 

「確かにきっかけはあの事件ですが、あいつのトラウマになっているのは暴走したことよりも両親から拒絶されたことでしょう」

 

「……え?」

 

 相澤も聞いた話だが、事件前までは普通に仲のいい家族だったらしい。父親は仕事が忙しいのか、不在にすることが多かったが、時折家族3人で出掛けていたようだ。

 それが、たった一晩で変わってしまった。暴走した海兎の姿を見た母親は自分の娘に恐怖を覚え、あろうことか”バケモノ”と罵った。父親は現場にこそいなかったが、事件後マンションを一部屋購入し、海兎を自分たちから隔離した。

 それが親のやることかと怒りが湧いた相澤だが、当時は何故か不自然なまでに事件についての詳細が伏せられ、暴走した海兎のその後のことを知るものは限られていた。当の相澤もつい最近知ったことだった。

 

 あまりにも悲惨な海兎の過去にオールマイトは絶句したまま動けない。

 ついさっきまで仲のいい家族だったのに突然拒絶され、バケモノ扱いされる。そんなことを8歳の少女が耐えられる訳がない。変身した姿を見せるのに否定的になるのも納得してしまった。

 

「幼少期のトラウマというのは根が深い。乗り越えるのは簡単ではないでしょう。それでもあいつはヒーローになる道を選んだ。なら乗り越えるしかありません」

 

 相澤の言葉にオールマイトも頷き、自分に出来ることがあれば必ず力になろうと決意する。

 

(……だが、問題はそれだけじゃない)

 

 今回、周りに誰もいないがために変身した海兎だが、その姿を見て相澤が思ったことが1つ……。

 

──()()()()

 

 相澤は7年前に満月の夜に変身した海兎を見ている。そのときの方が明らかに速かった。

 当時、海兎はまだ8歳。いくら満月の夜に能力が上昇するといっても、満足に体の出来ていない子供に劣るなど普通はありえない。だが、実際に自分の目で確認している以上、認めるしか無いだろう。

 問題は今のあいつが満月の夜に変身した場合どうなるか……。

 今回の変身でのスピードも遅いといっても俺ですら捉えるのは至難だろう。

 ならもし、あいつが今後暴走することがあったら、果たしてあいつを止められる奴がいるだろうか。

 間違いなく、7年前より強化されている。

 もしかすれば、オールマイトさんですら……。

 

(あいつの個性の制御に関しては人一倍注意して当たる必要があるな)

 

 今後の訓練内容に頭を悩ませながら、残った仕事を片付けるべく雄英に足を進めた。




間話が3話も続いて申し訳ないです。次から雄英体育祭が始まります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。