雷兎のヒーローアカデミア   作:羽織の夢

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騎馬戦〜証明〜

 ゴールした4人に続いて続々と残りの生徒もゴールしていき、第一種目は終了した。

 スクリーンに第二種目に出場可能な上位42名が映し出される。

 どうやらA組は無事全員予選を通過できたようだ。

 ある程度の確認が出来たと判断したミッドナイトは次の競技の発表に移る。

 

「残念ながら落ちちゃった人も見せ場はまだあるから安心しなさい!さあ、ここからが本番よ!第二種目はコレ!!」

 

 またもやミッドナイトの声に合わせスクリーンに次の競技が表示される。

 

──騎馬戦──

 

「参加者は2〜4人のチームを組んで騎馬を作ってもらいます!基本のルールは普通の騎馬戦と一緒だけど、大きく違う点が2つあるわ!」

 

 ミッドナイトが言うにはこの騎馬戦も勿論個性ありの競技だが、明確な騎馬を崩しにいくような攻撃は反則となるらしい。そしてもう1つ、この競技は()()()()()であること。

 第一種の順位に応じて個人にポイントが振り分けられ、競技終了時に持っているポイントの合計が高い4チームが本戦への出場権が獲得できる。

 

 ミッドナイトから順位の低い順にポイントが告げられていき、2位の私は205ポイントだった。なら1位のみどりんは210ポイントかなと思っていたが、私はまだ雄英の校風をちゃんと理解していなかった。

 

「そして、1位に与えられるポイントは1000万!!」

 

 ……なんて?1000万?桁が最後に跳ね上がったんだけど……。

 思わず、みどりんの方を向けば顔が真っ青になってるし、私だけじゃなくて全員が見ていた。

 

「上の者ほど狙われやすくなる下剋上サバイバルよ!!コレこそが雄英の校訓!Plus Ultra(プルスウルトラ)よ!!」

 

(……ぷるすうるとらって怖い)

 

 私は初めてそう思った。

 

 

 

 

 

 チーム決めに与えられた時間は15分。限られた時間で自分の能力にあった人選をしなければならない。誰と組むか悩んでいると葉隠が近付いてきた。

 透は意外に身体能力が高いし、何よりも仲が良いから信頼も出来る。早速チームに誘おうとしたが、何かを決意したような顔つきに思わず出しかけた言葉を飲み込んだ。

 

「透?」

 

「えっとね、最初は海兎と組もうかと思ったんだけど、それじゃまた海兎に頼りっぱなしになっちゃう……。守られるだけはもう嫌なの。だからこの騎馬戦で証明してみせるよ」

 

 恐らく、USJでのことを言っているのだろう。透の目は真剣だ。

 

「……うん、わかった。でも私も負けないよ」

 

 私の返答に一つ頷いて、透はチームを探しに離れていった。

 ……さて、カッコつけたはいいが、チームどうしよう。アレだけ言っておいてチーム組めませんでしたとかダサすぎるんだが……。

 しかし、そんなボッチの私に救いの手が差し伸ばされた。

 

「月下さん!僕達と組んでくれないかな?」

 

 みどりんだ。後ろにはお茶子と知らない女の子がいる。

 

「ホントッ!?良かった!誰とも組めて無くて困ってたんだ!」

 

「いいの!?」

 

「やったね、デクくん!」

 

「これで決まりましたね!」

 

 女の子の名前は発目明。サポート科の生徒らしい。サポート科は自分の発明品を持ち込めるのでうまく使いこなせればいろんな状況に対応出来るだろう。

 

 これで4人チームの完成だ。あとはそれぞれの役割だが……。

 

「……え?月下さんも騎手をやろうとしてたの?てっきりその脚を生かしてチームの機動力にって思ってたんだけど……」

 

「それも考えたけど、そうすると完全に雷の方が使えなくなっちゃうんだよね。騎手なら掌から出せるから大丈夫かなって……。というか機動力ならみどりんもできるじゃん」

 

「僕が?……えっと、僕の個性は【超パワー】だから一回使うと皆の足手まといになっちゃうし、何よりも腕が使えないと……」

 

 みどりんの言葉に私は疑問を覚える。ついでに今まで気になっていたことを聞いてみた。

 

「腕って、入試試験では0ポイントの頭上まで跳び上がってたじゃん。それに【超パワー】って体が壊れないレベルまで下げれたりしないの?」

 

 昔、私は個性に完全に振り回されていて、少しジャンプしたつもりが天井に頭をぶつけたり、走ろうとして体がついて行かず、よくすっ転んでいた。だから最初は低出力から慣らしていったのだが、0か100かしか出来ない個性なのだろうか?

 そうみどりんに尋ねてみると、突然目を見開いてブツブツと呟き始めた。

 

「そうだ!何でそんな簡単な事に気が付かなかったんだ。僕は実際に脚に使ってるじゃないか。それに体が壊れてしまうなら壊れないレベルまで下げれば良いんだ。最初から100%を扱おうとするのが間違いだった。なら、10%……はまだ早い。まずは5%くらいか……?それを必殺技として使うんじゃなくて常に体に纏うようなイメージでいけば……」

 

「えーと、みどりん……?」

 

 何かに気付いたようだが、今の緑谷の様子は傍目から見れば怪しいことこの上ないだろう。

 海兎の声が聞こえたのか、緑谷はハッと我に返った。

 

「ご、ごめん!つい癖で……。」

 

 その後の話し合いで緑谷は試したいことがあるといい、海兎が騎手をやり、緑谷、麗日、発目で騎馬をやることになった。

 タイミング良く、制限時間も残り僅かのようだ。

 各チームが騎馬を組み、いつでも始められるように準備をする。

 

『15分のチーム決めと作戦タイムを経て、フィールドに11組の騎馬が並び立った!!さぁ上げてけ閧の声!!血で血を洗う雄英の合戦が今!!狼煙を上げる!!準備はいいかなんて聞かねぇぞ!!いくぜ!!残虐のバトルロイヤル、カウントダウン!!』

 

 スクリーンに映るタイマーは残り数秒……。

 相手は強敵ばかり。でも……

 

「麗日さん!発目さん!月下さん!」

 

「っはい!」「ええ!」「うん!」

 

「よろしく!!」

 

 負けるつもりは毛頭ない。

 

『START!!!』

 

 雄英高校体育祭 第二種目 騎馬戦 開幕

 

 

 

 

 

「実質、1000万(それ)の争奪戦だ!」

 

 開始と同時に海兎のチームに狙いが集中する。

 なんせ1000万だけでなく、2位の205ポイントもあるのだ。どちらかを取ればそれだけで本戦への出場が濃厚になる。

 

「月下さん!」

 

「任せて!」

 

 掌から雷を生み出して、騎馬には当たらないようにコントロールしながら周囲に放つ。

 

「うお!?雷も使えんのか!?」

 

「ぐっ!?体が……!」

 

『おぉーと!?月下、周囲に電撃を放って全チームを牽制!これじゃおいそれと近づくことも出来ねぇぞ!!』

 

『自チームの防衛と敵チームの妨害を同時にこなせる、実に合理的だ。ただそれだけで越せるほど簡単じゃねぇがな』

 

「地面が!?」

 

 みどりんたちの騎馬の足元を見ると地面が沼のように変化し、足が沈んでいっている。B組の生徒の個性だろうか。

 

「麗日さん!」

 

「もう触ったよ!」

 

「私のドッ可愛いベイビーの出番ですね!」

 

 麗日がチームのメンバーに個性を発動させたのを確認した緑谷が何かのボタンを押し込んだ。

 すると緑谷の背負っていたジェットパックが起動し、一気に空に舞い上がる。

 

『飛んだーッ!?月下チーム、サポート科のアイテムでこの窮地を脱出!!』

 

 残念ながら15分間ジェットパックで飛び続ける燃料は無いので、少し離れた場所に着地しようとするが、着地した瞬間を狙っていたのか、走り込んでいく人影が()()。……一人?

 

「あれ!?障子くん何で一人!?」

 

「違う!背中に誰かいるよ!」

 

 海兎の言葉に緑谷は障子の背中を良く見てみると、複製腕の隙間から誰かが覗いているのが見える。

 

「緑谷ぁ!!てめぇ絶対に許さんぞ!!」

 

 複製腕に覆われる形で峰田が障子の背に乗っていたのだが、何故か緑谷に対して激怒している。

 

「何でそんなに怒ってるの!?僕何かしたかな!?」

 

「何かしたかしたかだと……!麗日とサポート科の女子と手をつなぎながら、月下に乗られるなんて……!これは体育祭なんだぞ!?真面目にやれ!!羨ましいんだよ!?」

 

「ええ!?」

 

 ここに来て峰田の煩悩が爆発している。さっきまでテンションの上がっていた発目すら思わず無表情になるほどだ。騎馬をしている障子もマスク越しでわかるほど思いっきり顔を歪めているが、チーム戦故に落とすことも出来ない。

 

「欠くなる上はハチマキを奪う勢いに乗じて月下に抱きつ──ブヘッ!?」

 

「ちょっと黙ってて頂戴」

 

 流石にこれ以上は見逃せなかったのか、同じく障子の背にいた蛙吹に沈められた。

 海兎は他にもいることに気付いていたが、他のメンバーはそこで初めて蛙吹の存在に気付いたようだ。

 自らアドバンテージを捨てた蛙吹だが、ヒーロー科として、というか人として止めなくてはならないと判断したのだろう。

 仕切り直すつもりなのか障子たちは一度引いていった。

 

『峰田……。あとで覚えておけ』

 

 相澤先生のとてつもなく冷たい声が届く。間違いなく切れてるが誰も同情は出来なかった。

 

──BOOM!!!

 

 突然響き渡る爆音。

 付き合いの長い緑谷は誰よりも早くその正体に気がついた。

 

「調子に乗ってんじゃねーぞクソデクがぁ!!」

 

「かっちゃん!?」

 

 なんと爆豪が騎馬を離れ、単身爆破で空を飛んで突っ込んできた。

 

「死ねや!──っクソ!?」

 

「やらせないよ!」

 

 こちらに向けて爆破を放って来ようとするが、その前にその両腕を蹴り上げた。

 そのまま奇襲に失敗した爆豪は瀬呂のテープによって回収されていった。

 

「ナイス!月下さん!」

 

「ていうかアレありなん!?」

 

『騎馬を崩した訳じゃないからセーフ!だけど騎手の足が地面に着いたらアウトよ!気を付けなさい!』

 

 なんとか退けられたが、まだ5分も経ってない。他の相手をしながら爆豪の奇襲を警戒し続けるのはなかなか辛い。

 

「あれ?爆豪くん、他の騎馬と戦ってない?っていうかポイント取られてる!?」

 

「え!?あっホントだ!?」

 

 爆豪の方を見ると確かに他の騎馬と対峙している。どうやら隙を突かれてハチマキを取られたらしい。

 悪鬼のような表情で追っていることからしばらくはこちらには来ないだろう。

 

 その瞬間、後ろから何かが迫ってくる音が聞こえた。

 

「ッ!?」

 

 振り返らずに首だけそらしてそれを躱す。

 

(あれは……響香のプラグ!?っていうことは)

 

「貰うよ、海兎!」

 

「透!?」

 

 バランスを崩した私に見えない腕がのばされる

 しかし、その程度ならまだ躱せる。1000万のハチマキを左腕で守りながら、予測できる腕があるだろう場所を右腕で弾く。

 

──その瞬間、目の前が真っ白になった。

 

『まっぶしーッ!?何だこりゃ!?』

 

『葉隠か。USJの事件後からよく訓練室に籠もってたのはこれのためか……』

 

 どういう仕組みかは分からないが目がやられた。既にハチマキが取られる距離まで接近を許してしまっている。

 

「取った!!」

 

 葉隠の手が海兎のハチマキに届く──ことは無かった。

 

「フルカウル!!」

 

 緑谷の体に赤いラインが浮かび上がる。それは緑谷が個性を放つ前兆だ。そのまま地面を思いっきり踏み砕いた。

 その衝撃で騎馬がバランスを崩し、葉隠の手が海兎のハチマキを掠めた。

 

「あっぶな……ッ!?みどりん、脚は!?」

 

「大丈夫!動けるよ!!」

 

 私が確認するとすぐに無事だと答えが返ってくる。

 見た感じ、怪我もしてないし、やせ我慢でもなさそうだ。

 助言したのは私だけどさっきの今でものにするなんて……。

 

「あとちょっとだったのにー!?」

 

「今のはしゃーないって」

 

「流石に同じ手は効かねえだろ。一回引こうぜ」

 

 離れた位置で透が悔しがってるのが聞こえる。ホントに今のは危なかった。みどりんがいなかったら確実に取られてた。

 

「次は負けないからねぇー!!」

 

 一回限りの奇襲だったのだろう。すぐに透たちは離れていった。

 

──『守られるだけはもう嫌なの』

 

 言ってた通りだった。きっとこの2週間たくさん頑張ったんだろう。

 

「もう、足手まといなんて冗談でも言えないな……」

 

 そんなことを思っていると後ろから視線を感じた。

 

「月下さん!」

 

「うん、わかってる」

 

 騎馬が反対を向くとそこには冷たい瞳でこちらを睨みつける轟が。

 

「そろそろ取るぞ」

 

 ここが正念場だ。




騎馬戦書くのめっちゃむずいんですけど。今までは海兎メインで進めてたから、文字増やすとなんかダラダラしちゃうし、削ると表現しづらい……。改めて先達の皆様の凄さを実感しました。
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