他の先達の方々と比べればまだまだ拙い作品ではありますが、少しでも面白いと思って頂けるようにこれからも頑張っていこうと思います!
雄英体育祭から2日の休校を挟んだ登校日。
クラス内では雄英体育祭での周りの反応について盛り上がりを見せていた。
「超話しかけられたよ、来る途中!」
「私も凄い見られたよ!」
「俺も俺も!」
登校中に街の人達からたくさん声を掛けられ、恥ずかしい思いもあるが、それよりも嬉しさを隠しきれない様子で語り合う。
「海兎はどうだった?大活躍だったし、私達よりも凄かったんじゃない?」
「……え?あ、うん!私もたくさん声掛けられたよ!」
葉隠が海兎に話を振るが、何やら覇気のない戸惑ったような返事をする海兎。
しかし、その場にいるクラスメイトはそんな海兎の様子に疑問を抱くことはない。
海兎の斜め後ろ、そこにはこちらを睨み続ける爆豪がいた。
襲い掛かって来ることは無さそうだが、海兎が教室に入った瞬間から今まで一切視線を外す素振りがない。
(2日じゃ足りなかったぁ……)
時間が解決するだろうとそこまで深く考えていなかったのだが、どうやら甘い考えだったらしい。
周りのクラスメイトも同情するような視線を海兎に向ける。
「おはよう。さっさと席につけ」
どうしたものかと海兎が悩んでいると、チャイムが鳴り、相澤が教室に入ってくる。
それを見て、席を離れていた生徒たちが慌てて席に戻る。
幸い、海兎の席は爆豪よりも後ろだ。相澤が教壇に立っているのに後ろを睨み続けることはしないだろう。
(どうしたもんかなぁ……。謝った方がいいのかな?でも逆効果な気もするしなぁ……)
とりあえずホッと息をつくも、これからの対応に海兎は頭を悩ます。
そんな状態でも相澤は淡々と話を進めていく。
「今日のヒーロー基礎学はちょっと特別だ」
相澤の言葉に生徒たちは緊張で体を固くする。特別ということは抜き打ちでのテストもあり得る。
固唾を飲んで生徒たちが相澤の次の言葉を待つ。しかし、それはいい意味で裏切られた。
「『コードネーム』ヒーロー名の考案だ」
「「「夢ふくらむヤツきたぁぁぁ!!」」
今までの雰囲気から一転、それまでの重苦しい空気を吹き飛ばして歓声を上げる生徒たち。
しかし、相澤が睨みを利かせると一瞬で鎮圧する。普段からの教育の賜物である。
生徒たちが話の聞ける態勢になったのを確認した相澤は話を再開する。
「というのも、先日話したプロからのドラフト指名に関係してくる。指名が本格化するのは経験を積み、即戦力と判断される2年や3年から……。つまり今回来た指名は将来性に対する興味に近い。卒業までにその興味が削がれたら、一方的にキャンセルなんてこともよくある」
──で、その指名結果がこれだ。
相澤が手元のタブレットを操作すると、出てきたスクリーンに各生徒への指名件数がグラフで映し出された。
──A組指名件数
月下︰4019
轟︰3867
爆豪︰3382
常闇︰376
飯田︰290
八百万︰107
切島︰63
上鳴︰32
麗日︰27
瀬呂︰14
「例年はもっとバラけるんだが、今年は3人に偏った」
(4000も!?)
決勝が情けない結果になってしまったことから指名にも影響があるんじゃないのかと思っていた海兎だが、その予想に反してこれほどの指名をもらえた事に嬉しさを覚える。
「上位陣がたくさん指名もらえるのは予想出来てたけど……」
「一位の爆豪が指名の多さでは3位なのな」
「まあ、あの表彰式見たらな……」
「決勝も不戦勝だったし、仕方ないか」
「ッ!?──ちょっ!?」
指名結果を見て、各々が色んな反応を示す中、やはり上位の3人の結果に注目が集まる。
1位の爆豪が3位であることに一瞬驚きを見せるもすぐにそれも仕方ないかと納得の様子を見せるクラスメイトたち。
しかし、不戦勝の話題を出すのは不味い。
慌てて海兎が止めようとするが、残念ながら爆豪の耳にも届いており、こちらを振り返って鬼の形相で睨みつけてくる。
顔を逸しながらも、わざわざ怒りをぶり返す様な発言をした瀬呂に恨みがましい視線を送る。
その先では自分の失言を悟ったのだろう。瀬呂がこちらに両手を合わせて「わりぃ」と謝っている。
「爆豪、話は終わってない。前を見ろ。……これを踏まえて指名の有無に関係なく職場体験に行ってもらう。プロの活動を実際に体験して実りのある訓練にしようってこった。体験っつってもヒーロー社会に出ることに変わりはない。つまり、お前らにもヒーロー名が必要になってくる。仮ではあるが適当なもんを付けたら──」
「地獄を見ちゃうよ!この時の名が世に認知されてそのままプロ名になってる人は多いからね!」
「ミッドナイト先生!?」
相澤の説明を遮り、扉から18禁ヒーロー・ミッドナイトが教室に入ってきた。そのまま教壇に立つミッドナイトを尻目に相澤は寝袋を取り出し始める。確実に寝る気だ。
「その辺のセンスはミッドナイトさんに査定してもらう。俺はそういうの出来んからな。将来、自分がどうなるのか。名を付けることで将来のイメージが固まり、そこに近付いていく。それが“名が体を表す“ってことだ。よく考えてヒーロー名を付けろよ」
ヒーロー名の考案というヒーローを目指す子供なら誰でも考えたことがあることにテンションが上っていた生徒たちだが、相澤の言葉に表情を変え、配られたボードを前に真剣に悩み始める。
海兎も他の生徒と同様、ボードを前に思案する。
ヒーロー名は子供の時から色々な名前を考えてきた。それでもこれが今後の自分の人生を左右する可能性があると考えるとペンが進まないのが普通だ。
しかし、海兎は少し悩んだだけでスラスラとボードにペンを走らせる。その動きに迷いはない。
「じゃあ、そろそろ出来た人から前に出て来て発表してね」
15分くらいたった頃、ミッドナイトの言葉に生徒たちがざわめき出す。
まさか、教卓に上がっての発表形式とは思ってもみなかった。
一番手という重圧に誰もが尻込みしていると、青山が率先して手を挙げた。
「行くよ。……輝きヒーロー“I can't not stop twinkling.“」
「「「短文!!」」」
もはや名前として成立していない彼のヒーロー名にクラスメイトからツッコミが入る。
しかし、ミッドナイトはじっと青山のヒーロー名を凝視すると判決を下す。
「……そこはIをとってCan'tに省略しなさい」
「「「ありなのこれ!?」」」
誰もが却下されるだろうと思っていたのだがまさかのありらしい。
続いて、芦戸が教壇に上がる。
「リドリーヒーロー“エイリアンクイーン“!」
「2!!血が強酸性のアレを目指してるの!?やめときな!?」
ヒーロー名にはあまり適しているとは思えない名前に流石のミッドナイトも却下する。
口を尖らせながら席に戻る芦戸だが、最初の二人がおかしな名前で来たせいで、大喜利のような流れになってしまい発表しづらくなってしまった。
しかし、そんな空気を蛙吹が変えてくれた。
彼女の考えたヒーロー名は“フロッピー“。可愛くて、親しみやすい名前にミッドナイトも生徒たちも絶賛する。
そこからは続々と発表が進んでいき、飯田と緑谷、爆豪以外がOKを貰った辺りでとうとう海兎も手を挙げた。
「はい!次は月下さんね!」
ミッドナイトに名前を呼ばれた海兎は教壇に上がり、持っていたボードをみんなに見せる。
「“キャロット“──これが私のヒーロー名です!」
「キャロット?確か月下さんが人参好きなのは知ってるけど……それでいいの?」
人参を英語読みしただけの名前に本当にいいのかと海兎に確認を取るミッドナイト。
「大丈夫です。それに別に人参が好きだからって理由だけじゃないです」
「そうなの?何か他に意味が?」
「……自分でもよく分からないんです。他にも色々考えてたんですけど、これが一番私らしいって。そんな気がするんです……!」
海兎自身も何故ここまでこの名前が気に入ったのか分かっていないが、海兎の中の本能から浮かび上がってきた名前だ。
不思議とこの名前に親近感すら感じてくる。
真っ直ぐにミッドナイトを見つめて断言する海兎の瞳にはしっかりとした決意の色が伺える。
「……ふふふ、そこまで意志が固いなら止めないわ!それにキャロット……可愛くていいじゃない!」
「ありがとうございます!」
「さあ、残りの3人も決まったかしら!」
その後無事残りの生徒もヒーロー名が決まり(爆豪だけは再考につぐ再考で決まらなかった)、相澤がモゾモゾと寝袋から這い出てくる。
「職場体験は一週間。指名のあった者は個別に渡すリストから、指名の無かったものはこちらからオファーした中から選んでもらう。それぞれ活動地域や得意なジャンルが異なるからよく考えてから選べよ」
相澤がプリントを配っていくのだが、自分の机に置かれた分厚いリストを見て海兎は思わず顔が引き攣る。
事務所の名前を確認していくだけなのだが流石に4000を超えていたら確認するだけでも骨だろう。
そこで一限目終了のチャイムが鳴り、「今週末までに提出しろよ」と言い残してミッドナイトと共に教室から出ていった。
「うわぁ、やっぱり4000も越えてると厚さがやばいね!」
海兎がリストを確認していると葉隠が近付いてきて驚きの声を上げた。
「透?受け入れ先のリストの確認しなくていいの?」
「それならもう決まったよ。海兎みたいに数があるわけじゃないしさ、いい所があったんだよね!」
どうやら早々に葉隠は決まったらしい。
「それで海兎はどんなとこから来てるかなぁって気になってさ!」
「あ、俺も気になってたんだ!見してもらっていいか?」
「いいよー」
近くで話を聞いていた上鳴も興味を示してきたので海兎は二人にリストを渡した。
「サンキュー!……おお、すげぇ!エンデヴァーから来てんじゃん!」
「こっちにはホークスとエッジショットもあるよ!やっぱすごいね海兎!」
名だたるトップヒーローたちからの指名に思わず二人のテンションも上がっていく。
そんな二人の声が聞こえたのか呆れた表情をした耳郎が近付いてきた。
「全くあんたらは……。月下もちゃんと決めないといけないんだから、返してあげなよ」
「あ、そうか!わりぃ、月下!」
「ごめんね、海兎!」
これだけの数の指名、確認するだけでも一苦労だろう。しかも期限は今週末までだ。
自分たちが海兎の邪魔をしてしまったんじゃないかと慌てて謝罪する二人。
「ううん、全然大丈夫だよ。もう行く所は決まったし」
「「「……え?」」」
海兎の言葉に口を開けて放心する三人。
まだリストを配られてから10分も経ってないが、もう決まったという海兎に思わず固まる。
「ま、まじ?」
「早すぎない!?この量もう見終わったの!?」
「で、でも海兎、私が来た時まだリスト見てたじゃん!?」
「全部見終わった訳じゃないよ。元々行きたかった所があってさ、そこから指名来てたんだ。で、一応他にはどこから来てるのかなって確認してたの」
なるほど。それならもう場所が決まっててもおかしくはないか……と一応は納得する三人だが、そうなるとこの数の中で即決するほどのヒーローが誰なのかという疑問が出てくる。
「ちなみにどこにしたの?」
「えっとね……ここ」
葉隠が三人を代表して海兎に尋ねると受け取ったリストをパラパラとめくって、あるページを指差す。
海兎が指差した箇所を見た三人は一瞬目を見開くも、すぐに納得の表情を浮かべるのだった。
職場体験先どこにしましょう?
希望としては海兎と同じで機動力があって、脚力が凄くて、耳が良くて、出来れば海兎と気が合う明るい姉御肌の人がいいと思うんですがー(棒読み)