雷兎のヒーローアカデミア   作:羽織の夢

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不可解な事実

 時は少し遡る。海兎が緑谷達のお見舞いに行った次の日、ヒーロー殺しが逮捕されてから2日後にオールマイトは雄英高校の仮眠室である人物と話し合いをしていた。

 その人物の名は塚内直正(つかうちなおまさ)。警視庁の警部を努め、数少ないオールマイトの秘密を知っている信頼のできる友人だ。

 

「それで、確保された脳無はどうだったんだい?」

 

「結論から言うと、雄英に襲撃してきた奴と同じさ。何の反応もしないし、感じてもいないようだ。そして何より、現場の話によれば複数の個性を使用していた。これはもう決定的と見て間違いないだろう」

 

「オールフォーワン……!やはり奴が……!」

 

 先代のワンフォーオール継承者、オールマイトの師である志村菜奈を殺し、オールマイトが重症を負いながらも倒した存在。

 USJの時点で嫌な予感はあったが、ここに来て生存説が濃厚になってしまった。

 

「……それと、君に言われて月下さんのことも少し調べてみた」

 

「ッ!──何か分かったかい?」

 

 USJ襲撃の際にヴィラン連合は自分だけでなく海兎にも脳無を当ててきた。

 まだ可能性に過ぎないが、念の為にオールマイトは塚内に海兎のことを、特に三島事件について調べてもらうように頼んでおいたのだ。

 

「三島事件……当時はかなりニュースにもなってたから僕も概要だけは知ってたけど……。当時8歳の月下さんの個性が暴走し、ヒーローを含む多くの重軽傷者が出た事件。調べれば調べるほど不可解なことが出てきたんだ」

 

「というと?」

 

「元々は彼女の変身能力について調べていたようでね、事件当日もいつも通り実験が行われる筈だったんだが……急遽、今まで屋内で行っていた実験を屋外でやることになったらしいんだ」

 

「屋外で?……まさか!?」

 

「ああ、彼女の個性については聞いてると思うけど、ちょうどその日は満月だったらしい」

 

 なるほど、それが原因で彼女は暴走してしまったのか……と納得するオールマイトだったが、一つ疑問がある。

 

「なんというか……その……」

 

「都合が良すぎる、かい?」

 

「まあ……うん」

 

 突然今まで屋内で行っていた実験を屋外に変更し、その日が偶然にも満月だった。

 ありえない訳では無いが、偶然がすぎる気もする。

 

「その変更を決めたのは月下少女の個性の研究をしていた職員なのかい?」

 

「……記録上はね」

 

「記録上?」

 

 オールマイトは塚内の言葉に首を傾げる。

 彼のことだから直接職員に話しを聞きに行くくらいはしそうな気がするのだが……。

 

「僕も出来ることなら直接聞きたかったけどね、出来なかったんだ」

 

「なぜだい?」

 

「月下さんの個性の研究に携わっていた職員が、()()()()()()()()()()()()()()

 

「な、何だって!?だ、だがそんなことニュースでは!?」

 

 塚内の発言に目を見開いて驚きをあらわにするオールマイト。

 

「直接的にしろ、間接的にしろ、この研究に関わっていた職員は15名。その全員が事件発生から今日までの8年間で不慮の事故や病気で命を落としている」

 

 柄内の話によれば、最初に亡くなったのは70代の男性。元々高齢であったことや、事件の影響で心身共に衰弱していたようで、事件発生から一ヶ月後に病院で息を引き取った。

 最後に亡くなったのは30代の女性。車で仕事から帰宅途中に信号を無視し、左から直進してきた車と衝突。運び込まれた病院先で亡くなった。これがつい半年前になる。

 

「これが連続して起こっていたら、また違った対応だったかもしれないが、期間が長過ぎて誰も気付かなかった。何よりも未解決の事件ならともかく、終わった事件をわざわざぶり返すこともしないだろう」

 

 柄内の言葉はオールマイトにも理解できる。三島事件は事件と言われてはいるものの、不慮が重なったことによる事故、というのが警察の見解だ。

 事件後はそのまま研究者を続けた者もいれば、転職した者もいる。それら全員の動向を把握している者など存在しないだろう。

 

「しかも、ご丁寧に研究記録はごっそり無くなっている。研究員の誰かが持ち去った可能性もあるが……」

 

AFO()ならば、そのくらい簡単にやってのけるだろう」

 

 眉間に皺を寄せながら忌々しそうに呟くオールマイト。

 オールフォーワンならば、誰にも気付かれずに研究記録を盗み出すことも、研究員を事故に見せかけて殺すことも容易いだろう。

 柄内は手元のお茶を啜り、一息つく。

 

「……ふう、まあ、職員に話しを聞けない以上、完全に手詰まりになってしまってね。どうしたものかと悩んでいた時に脳無の取り調べをしていた部下から連絡が来たんだが……」

 

「……何だい?」

 

 そういって目を閉じ、深く考え込む塚内に、彼をそこまでさせる情報に嫌な予感がするが、聞かないわけにはいかないと、続きを促す。

 

「確保した脳無が何の反応も示さないことは話したろ?だから、せめて素性だけでも分からないかとDNA検査をしていたらしいんだが……無理やり個性を組み込んで改造された影響か、複数のDNAが見つかってね、一つ一つの特定に苦労していたんだが……その中の一つが月下さんと血縁関係にあるとの結果が出てきたんだ」

 

「ッ!?──それは本当かい!?」

 

 予想もしなかった事実にオールマイトは思わず腰を上げて、追求する。

 そんな反応をするオールマイトを他所に塚内は話を続ける。

 USJが襲撃された後、警察が現場保存の為に、正確には海兎と戦闘を行った脳無の身元の特定の為、血痕や恐らく脳無の背中に生えていたと思われる棒の破片の回収を行っていたのだが、その過程で海兎の血液も一緒に回収していた。

 もちろん海兎のものと分かった時点でそれ以上の検査は行わなかったのだが、DNA照合の際に複数あるDNAの一つが彼女との血縁関係にあるとの結果が出てしまった。

 

「この事実に気付いてすぐ、彼女の親族の誰かが脳無の実験台にされた可能性を考えて調査したが、彼女の両親と叔父以外の親戚はすでに彼女が生まれる前に亡くなっている。もちろん、親や叔父に該当するDNAではなかった」

 

「ど、どういうことだい?DNA検査では彼女と脳無に血の繋がりがあると判断されたのだろう?それなのに……」

 

 DNA検査では確かに血縁関係にあるとの結果が出ている。にも関わらず、彼女の両親と叔父以外の親戚はすでに亡くなっており、とっくに葬儀も済んでいるそうだ。

 腰を下ろしながらも困惑の表情を浮かべるオールマイト。この件に関しては塚内も同意見らしく頭を悩ませているらしい。

 

「しかし、まさかオールフォーワンによって作られた脳無の1体と彼女にそんな繋がりがあったとは……」

 

「……いや、そうじゃないだ、オールマイト」

 

「え?そうじゃないって……」

 

()()じゃない……USJに現れた2体と保須に現れた3体、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なッ!?」

 

 塚内の口から語られた衝撃の事実に絶句するオールマイト。

 

「脳無からは複数人のDNAが検出されている。どれも前科持ちのチンピラばかりでバラバラだったが、全ての脳無に必ず月下さんと血縁が疑われるDNAが存在している。それも同一人物ではなく、それぞれが別人の……」

 

「……つまり、彼女と血の繋がりがある人物が、少なくとも4人は犠牲になっているということかい?」

 

「分からない……彼女の亡くなった親戚はすでに火葬まで行われている。遺骨からは完全にDNAが消失する筈だからお墓をあばいても意味はない。生前に接触していたのなら話は別だが……仮にそうだったとして、なぜ全ての脳無に彼女の血筋を使う必要がある?」

 

 もしこれが1体の脳無だけならば偶然の可能性も十分に考えられた。しかし、実際に5体全ての脳無から検出された。ここまで来れば唯の偶然で済ますことなど出来ない。

 

「USJで脳無を当ててきたのは彼女を拉致するのが目的だったとも考えられるが……」

 

「いや、それはないだろう。USJで月下少女は意識を失った状態で発見されたが、脳無は彼女を置いて黒霧の個性で撤退していった。拉致が目的ならば、あのときに連れ去られている。……私が不甲斐なかったせいで」

 

 塚内の言葉をすぐに否定するオールマイトの表情は硬い。

 あの時、もし海兎を攫うのが目的だった場合、教師陣の到着は到底間に合わず、連れ去られていただろう。

 結果的には無事だったものの、肝心な時に力を使い果たしていた自分の情けなさに腹が立つ。

 

「……ともかく、月下さんが狙われた理由、脳無との関係、どちらもはっきりとは分かっていない。すまない、力になれなくて……」

 

「いや、十分過ぎるよ。ありがとう、ここからは私の番さ」

 

 そう言って立ち上がり、窓の外から空を見上げるオールマイト。

 

(オールフォーワン……!貴様が何を考えていようと、これ以上好きにはさせない!次こそ必ず私が……!)

 

 オールフォーワンが生存しているのは最早確実。ワンフォーオール継承者として今度こそ自らの使命を果たすべく、決意を固めるオールマイトであった。




DNAの仕組みに関してはネットを見たりして、詳しくないなりに書いたものなので、専門の方から見ればおかしな点があるかもしれませんが、ご容赦ください。

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