雷兎のヒーローアカデミア   作:羽織の夢

6 / 32
休みで書き上げたのは1話分じゃない。2話分だ。


戦闘訓練〜ただの兎ではありません〜

 あまりにも一瞬の出来事にモニター室の面々もすぐには反応できなかった。

 

「なんてことだ……仲間、核、建物も傷つけずに制圧するとは。これならば敵も弱体化できる!」

 

「無敵じゃねぇか!!」

 

「昨日のテストは凄かったけど流石にこれじゃ、勝負ありか?」

 

 個性把握テストで1位を取った海兎と推薦組である轟。この組み合わせに誰もが見応えのある訓練になるだろうと予想していたが、開始と同時にビルを丸ごと凍らせるとは夢にも思わなかった。

 その衝撃的な光景に誰もがヒーロー組の敗北を確信する。

 そして海兎たちが映っていたはずの核兵器のある部屋のカメラの映像に視線を戻すがーー

 

「あれ!?いない!?」

 

「嘘!?さっきまでそこにいたのに!てゆーかあれ、躱したの!?」

 

「どこ行った!?」

 

 てっきりビルごと凍りついて動けなくなっていると思っていたのにそこに二人の姿はなかった。これが葉隠だけなら見えていないだけなのだが、海兎もいないとなると二人共あの攻撃を回避したと考えるのが妥当だろう。

 

「あ!いた!!」

 

 一人が声を上げ、他の面々もようやく気付いた。

 ビルの4階の廊下。そこに海兎が一人で佇んでいた。

 

 

 

 海兎は一人、轟と障子の二人を待っていた。二人の位置は音で既に把握している。さっきの凍結で終わったと思われているのかゆっくりと歩いてきている。

 今は2階から3階への階段に向かっているようだ。するとインカムから透の声が聞こえてきた。

 

『いやー、それにしても凄かったね。あのときの海兎。』

 

「ギリギリだったけどね。」

 

 あの時、嫌な予感がした私はすぐに透の元に近付き、彼女を抱えてその場で跳び上がった。

 次の瞬間、視界が氷に覆われた。

 氷の個性ということは知っていたけど、まさかビルごと凍結させるとは思わなかった。一瞬でも判断が遅れていればどうなっていたことか。

 無理やり砕くこともできるかもしれないが、確実にダメージが残っただろう。特に脚へのダメージは私にとってかなり痛い。

 

「ん?……今二人が3階への階段を登り始めたみたい。ここからは打ち合わせ通りいこう。会話は緊急時以外はなしで。」

 

『りょーかい。』

 

 さてと、私の役目はヒーロー組の足止めと引き付け。隙をつくれば透が捕縛テープを巻いてくれる。

 耳を澄ませると階段を上がった二人が真っ直ぐに4階の階段に向かっている。よし、予定通りだ。4階の階段に向かうには必ず通ることになる通路がある。私がいるのはその通路の真上だ。

 しばらくして二人が海兎の下に来たタイミングで、海兎は天高く右足を振り上げ……。

――そのまま床を踏み砕いた。

 

 

「!?――上だ!!!」

 

 真っ直ぐ進みながらも索敵を続けていた障子が一瞬早く気付き、声を上げる。その瞬間、天井が崩れ落ちて来た。轟はそれを聞き、頭で考えるよりも先にその場から離脱する。

 なんとか間一髪瓦礫に埋もれることは回避できたが、油断せず、一緒に落ちてきた存在を睨みつける。

 

「……あれ?タイミングバッチリだったと思ったんだけど、よく避けれたね。」

 

 そこには真っ白な兎の耳を持つ少女がこちらを見て、首を傾げていた。

 

「それはこっちのセリフだ。どうやって防いだ?」

 

 正面からならともかく意識の外からの、それも開幕の一撃だ。炎熱系の個性持ちでもなければ終わると踏んでいたんだが……。

 

「それに透明の……葉隠だったか?彼女もいないな。どこかに隠れているのか?」

 

 障子が周りを見渡し、海兎に問いかける。確かにいないな。常に周りを警戒する必要がある。

 

「ヒーローにペラペラ喋るヴィランはいないよ!」

 

 しかし、海兎は二人の問いには答えず、一気に轟に接近する。

 

「そりゃそうだ。」

 

 しかし、轟も焦らず足元から一気に氷結させる。そのまま海兎ごと凍らせるかと思われたが、すでにそこには誰もいなかった。轟の氷の影に隠れ、後ろに回り込んだ海兎はそのまま一撃を叩き込もうとするが……。

 

「俺を忘れてもらっては困る。」

 

 更に後ろから障子が腕を複製して海兎に襲いかかる。

 

「ちゃんと覚えてるよ!」

 

 障子に背を向けていたが海兎だが、そのまま後ろ回し蹴りをお見舞いする。

 

 胴に一撃をくらった障子は体をくの字にして吹き飛んでいく。手加減はしているから骨が折れたりはしていないだろう。すかさずまた氷結が迫って来たので余裕を持って躱す。

 

「障子、無事か?」

 

「ああ、すまない。油断した。……それと俺たちが通ってきた2階から3階への階段付近から微かに物音がした。恐らく葉隠だ。」

 

 後ろ?なるほど、どこかの部屋に隠れていて俺たちを挟み込むつもりだったか。単純だが一番有効な手だ。

 だが、その報告を聞いて一番驚愕したのは海兎だ。

 

「ええ!?障子って増強系の個性じゃないの!?」 

 

 腕を複製させて力を増す個性かと思っていたが、戦闘中に遠く離れた音を感知した辺り、それだけではないのだろう。

 

「ヴィランにペラペラ喋るヒーローはいない……そうだろう?」

 

 さっきの意趣返しなのか、蹴られた仕返しなのか、そんなことを言ってくる障子。

 

 これには海兎も思わず頬を膨らませて不機嫌になるが、バレてしまっては仕方がない。

 とりあえず透には位置がバレたこととそのまま待機してもらうようインカムで通信を入れる。音で把握されようとも姿が見えないだけでアドバンテージはまだある。

 

「まあ、私がここで二人共倒しちゃえばいい話だしね!」

 

 そう言ってまた轟に突撃する。それに対して轟は今度は分厚い氷壁を作り出した。

 

 この時、轟はてっきり先程と同じように後ろに回り込んで来ると予測していた。回り込んだ直後なら素早いあいつでも通路ごと氷結させれば避けられないだろう……と。

 

 その予測は一瞬で裏切られることになる。

 

「邪魔!!」

 

「なっ!?」

 

 飛び蹴りで氷壁をたやすく砕いてきた海兎に轟も目を見開く。そのまま蹴りの威力を殺さずに空中で体を回転させオーバーヘッドの要領で上から蹴り落とす。

 本来なら一撃目を囮に本命の二撃目を繰り出す空中での二連撃。

 

月双蹴(ムーンドッペル)!」

 

「がっ!?」

 

 海兎の蹴りが轟の肩に命中する。とてつもない衝撃にその場に崩れ落ちる轟。

 

「轟!?」

 

 慌てて障子が轟の援護に入る――が

 

「駄目だよ。これはチーム戦なんだから。」

 

 こちらを見て笑いかける海兎を見て、己の失敗を悟る。あまりの衝撃につい周りの警戒を緩めてしまった。気付いたときにはもう遅かった。

 

「しまっ――」

 

「障子君確保ぉ―――!!!」

 

 障子に把握されつつも向こうから手は出しづらい絶妙な距離。いままで待機し続けた葉隠は障子が警戒を緩めた瞬間を見逃さなかった。障子に飛び掛かり、捕縛テープを巻き付けた。

 

「ナイス!!透!」

 

「ううん!海兎が私の方に行かないようにしてくれてたからだよ!」

 

 さて、これであとは轟に捕縛テープを巻くだけである。そう思い、轟に視線を戻し――

 

――ゾワリと悪寒が駆け巡った。

 

「透!!ごめん!!」

 

「きゃあ!?」

 

 すぐに透を蹴り飛ばす。蹴ると言っても膝をクッションに押し出すようにしたので受け身さえしっかり取ればダメージはないだろう。

 間髪入れず、轟から氷結が放たれた。まともに喰らった海兎は腰から下が完全に凍結してしまった。これでは流石に力ずくでの脱出は不可能だろう。

 

「……これで終わりだ。」

 

 肩を押さえたまま轟が立ち上がり、一言呟いた。

 

「まだ透がいるよ?私も捕縛テープ巻かれたわけじゃないし。」

 

「強がんな。それじゃもう動けやしないだろう。透明なやつは逃したが、またビルごと凍結させちまえば良い。」

 

 轟の言う通りだ。私は動けないし、透も一人であれは回避できないだろう。

 

「確かにその通りだけど……万策尽きたわけじゃないよ?」

 

「何?」

 

 眉を顰める轟を他所に海兎は両手を頭の上に上げる。轟がその行動に対し、何のマネだ?と問いかけるもすぐに目を見開くこととなる。

 海兎の両手に雷が纏いだしたかと思うと、次の瞬間にはその手の中に雷球が生み出されていた。

 

(!?――あいつの個性は増強系じゃないのか!?)

 

「奥の手は最後まで取っておくものだよ!!」

 

 そのまま雷球を地面に叩きつける。

 

雷珠散月(エレクトリカル・ルナ)!!」

 

「ぐああああ!!!」

 

 叩きつけた雷球が周囲に拡散し、轟を襲う。その威力に思わず膝をつく。

 本来なら間違いなく気絶するほどの威力。しかし、轟はギリギリ意識を保っていた。

 

(ふざけんな!!俺は()だけで一番になって、あいつを全否定してやるって決めたんだ!こんなところで……。)

 

 しかし、思いとは裏腹に体が麻痺して指一本動かすこともできない。そしてこの場にはまだ自由に動ける人物が一人残っている。

 

「轟君も確保ぉ―――!!!」

 

 痺れて身動きできない轟の体に葉隠が捕縛テープを巻き付けた。

 

『ヴィランチーム……WIN!!』

 

 オールマイトの声が建物に響き渡った。その声を聞きながら轟は今度こそ意識を失った。

 

 

 

「やったよ!海兎!私たちの勝ちだよ!!」

 

「まさか雷も使えるとはな……完敗だ。」

 

 オールマイトのアナウンスを聞き、戦闘態勢を解いた透と障子が近づいてくる。片や嬉しそうに、片や悔しそうに話しかけて来るが、正直私はそれどころではなくなっていた。

 

「海兎?どうしたの?なんか元気ないけど……。」

 

「もしや、どこか怪我でもしたか?」

 

「いや、怪我はしてないんだけど……この氷から出られなくて……。」

 

「「あっ」」

 

 そうなのだ。勝ったのは良いが、私の腰から下は絶賛氷に捕らわれているのだ。マズイ。本当にマズイ。

 

「ヤバイよ!脚が!脚の感覚がなくなって来たんだけど!!」

 

「ええええ!!どうしたらいいの!?引っ張ればいいのかな!?」

 

「イタタタタタ!!無理無理無理!!ちぎれちゃう!!」

 

「二人共落ち着け!酷だが轟を起こすしか――」

 

「なんで轟!?まさかいっそのこと頭の先まで凍らせようと――」

 

「違う!!」

 

 その後、なんとか轟を起こして(透が叩き起こした)氷を溶かしてもらうことで、事なきを得たが、なんとも締まらない終わりになってしまった。

 ていうか、轟、炎使えたんだ。なんで使って来なかったんだろう?




雷珠散月(エレクトリカル・ルナ)ーーキャロットが実際に使っている技で、漢字はオリジナルです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。