雷兎のヒーローアカデミア   作:羽織の夢

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USJ編〜顕れる悪意〜

 マスコミ騒動から一日たった翌日。相澤先生が教壇に立ちこれからのヒーロー基礎学についての説明を始める。

 

「今日のヒーロー基礎学だが、俺とオールマイト、そしてもう一人の三人体制で見ることになった。内容は災害水難なんでもござれの人命救助(レスキュー)訓練だ」

 

 前回はオールマイト一人に対して今回は三人。先生(プロヒーロー)が三人で授業を見てくれることに興奮を隠せない生徒たちだが、海兎はそうなった理由に心当たりがあった。

 昨日のマスコミを囮に侵入した(ヴィラン)。その一人が【ワープ】系の個性を持っている可能性があるのだ。一概に【ワープ】と言ってもマーキングが必要だったり、転移先を視界に捉える必要があったりと、発動条件は様々だが脅威に変わりはない。そのための戦力増強だろう。

 

 コスチュームの着用は各自の自由。訓練場まではバスで移動するため、すぐに移動を始めるように告げ、教室を出ていった。海兎たちも急いで準備を済ませ、バスの待機場所へと向かっていった。

 

 

 

 

「バスの席順でスムーズにいくよう、番号順に二列に並ぼう!」

 

 飯田がクラスメイトを並べてバスに乗り込むが、対面するタイプの座席だったらしくて、『こういう作りだったか』と落ち込んでしまった。

 

「意味なかったなー」

 

「ぐおおおお!!」

 

 さらに三奈のさらっと呟いた一言により完全にダウンしてしまった。到着までに回復することを祈ろう。

 移動中のバス内では誰の個性が派手で人気が出そうや緑谷の個性がオールマイト似ているなど話題で盛り上がりを見せたが相澤先生に睨まれてからは流石の彼らも口を閉じて大人しく過ごした。

 

 

 

 

 

 大きなドーム状の建物の前でバスが止まる。

 相澤先生に引率されて中に入ると、そこにはアトラクションテーマパークのような光景が広がっていた。

 

「水難事故、土砂災害、火事、etc.……あらゆる事故や災害を想定し、僕が作った演習場です。その名も、ウソの災害や事故ルーム(USJ)!」

 

 そんな説明をしてくれたのは雄英教師であるスペースヒーロー・13号。

 どうやらお茶子が大ファンらしく13号の登場に歓声をあげていた。

 

「13号。オールマイトは?ここで待ち合わせる筈だが……」

 

「先輩。それが通勤時に()()ギリギリまで活動してしまったみたいで……」

 

「不合理の極みだなオイ」

 

 相澤先生と13号が小声で何か話していたが意識していたわけではないので断片的にしか聞き取れなかった。どうやらいるはずだったオールマイトがこの場にいないらしい。制限とは何のことだろう?

 

「えー、訓練を始める前にお小言を一つ二つ…三つ…四つ……」

 

 どんどん増えていく小言に困惑するが、13号は構わず話し続ける。

 13号の個性は【ブラックホール】。何でも吸い込みチリにしてしまう強力な個性だ。その能力で災害から何人もの人を救っているが、同時に簡単に人を殺めてしまう危険を持った個性であると彼女は語る。

 その言葉に生徒たちも思わず体が固まってしまう。

 例えばオールマイトは他の誰も寄せ付けない強さを持っているが、誰よりも強いということは誰でも殺せてしまう力があるということでもある。

 

「君たちの力は人を傷つける為にあるのでは無い。助けるためにあるのだと思ってください。以上、ご静聴ありがとうございました」

 

 そう言って締めくくり、周りからは大きな拍手が巻き起こる。

 力は人を傷つける為にあるのではない……か。確かにその通りだろう。分かってる。私の個性も簡単に人を殺せる。だからこそ完全にこの力を使いこなさなきゃならない。

 私はヒーローになるんだから……。

 

「よし、そんじゃまずは――」

 

 13号の話も終わり、相澤先生が授業を開始しようと声を掛けるが、突然広場の方を振り返る。他の生徒と一緒に私もそちらに視線を向けると、広場の噴水の前に黒いモヤが漂っていた。それを認識し、絶句した。

 そのモヤには見覚えがある。昨日、職員室で微かに見えたものと一致する。

 そんなバカな!?まだ一日しか経ってないのに!?いくらなんでも早すぎる!?(ヴィラン)の思考なんて分からないが、雄英に攻めるなら普通もっと準備に時間を掛けるんじゃないの!?

 海兎の考えとは裏腹に黒いモヤは人を包めるほどの大きさに膨れ上がっていき、そのモヤの中から悪意が顕れた。

 瞬間、相澤先生が叫んだ。

 

「一固まりになって動くな!13号!生徒を守れ!」

 

 モヤからは続々と人間が姿を現すが、とても真っ当な人間には見えない。

 しかし、私はその中から出てきた一人の人間から目を離せなかった。

 全身の皮膚が黒く、まるで鳥のような顔つきをしている。何よりその剥き出しの脳が例え、異形型だとしても異質さを感じさせる。

 私は動物系の異形型が故か野生の勘とも言えるものが備わっている。その勘があの存在を捉えてからずっと警鐘を鳴らしている。

――戦うな!殺されるぞ!逃げろ!

 そんな言葉がずっと頭に浮かび続ける。

 しかし、突然の展開に他の生徒は呆けたままだ。中にはまた合図なしに訓練が始まったパターンなのかと口に出す生徒もいるが、相澤先生が一喝する。

 

「動くな!あれは(ヴィラン)だ!」

 

 (ヴィラン)。その言葉を聞いた全員が思わず体を固くする。

 

「どこだよ、オールマイト……。せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさ。子供を殺せば……来るのかな?」

 

 全身に手を貼り付けた男が不機嫌そうに呟くが、すぐに楽しそうに目を細めながらこちらに視線を向ける。その男から発せられる悪意を受けてようやく想定外のことが起きていると認識する。

 

「ヴィラン!?バカだろ!?ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!!」

 

「何にせよセンサーが反応してねえのならそういう事が出来る個性(ヤツ)がいるって事だ。バカだがアホじゃねぇ。これは何らかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ」

 

 轟が素早く状況を判断し、皆に共有する。こんな状況でも冷静さを失わないなんて流石はプロヒーローの息子といったところだろう。

 相澤先生も同じ判断なのか、すぐに13号や生徒に指示を飛ばし始める。

 

「13号避難開始!学校に連絡試せ!センサー対策も頭にあるヴィランだ。電波系の個性が妨害している可能性もある。月下、上鳴、お前らも個性で連絡試せ」

 

「はい!」「っス!」

 

 相澤先生の指示に従い、雷を利用し連絡を試すが、全く通じる気配がない。というかある程度進んだところで何か壁のようなものに当たって遮断されてしまう。やはり相澤先生の言う通り、電波系の個性で妨害をしているのだろう。上鳴の方に視線を向けるが、彼も繋がらないようだ。

 

「先生は!?一人で戦うんですか!?あの数じゃ、いくら個性を消すといっても……。イレイザーヘッドの戦闘スタイルは個性を消してからの捕縛だ。正面戦闘は……」

 

 一人で戦おうとする相澤先生をみどりんが引き止める。だがそれも当然だろう。個性を消す個性は強力だがヴィランの制圧には個性なしの身体能力で行わなければならない。それも多対一だとかなり不利だろう。何よりあの脳が剥き出しの男が……。

 

「一芸だけじゃヒーローは務まらん。13号、生徒を任せたぞ」

 

 しかし、相澤先生はみどりんに一言告げて大勢のヴィランへと突っ込んで行った。私達の心配を余所に個性を消されて困惑するヴィランを捕縛武器で絡め取り、次々と意識を奪っていく。

 

「すごい…!多対一こそ先生の得意分野だったんだ」

 

「……って分析してる場合じゃないって!早く避難するよみどりん!」

 

 私も一瞬見入っちゃったけど、慌ててみどりんを連れて13号の指示で避難を始める。先生のことは心配だがここは任せるしか無い。

 しかし、避難を始める私達の目の前に突然黒いモヤが広がった。

 

「初めまして。我々はヴィラン連合。僭越ながらこの度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは平和の象徴、オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして」

 

(オールマイトを!?)

 

 その言葉に思わず息を呑む。

 オールマイトは誰もが認めるNo.1ヒーローだが、ヴィランからしたら最も邪魔な存在だろう。だが、その圧倒的な強さ故に誰もオールマイトを狙うことなどなかった。しかし、このヴィランはあっさりと狙いはオールマイトだと語った。

 普通なら盲言だと流すところだがここまで計画性のある行動に、実際に雄英に侵入した手腕。さらにこの濃厚な悪意が冗談ではなく本気であると否が応でも感じさせる。

 

「まあ、それと関係なく私の役目はこれ」

 

 動き出したヴィラン――確か黒霧と呼ばれていたーーを見て13号が【ブラックホール】を発動させようとする。

――が13号が【ブラックホール】を発動させることはなかった。

 

「その前に俺たちにやられることは考えなかったのか!?」

 

「ダメだ!どきなさい二人共!」

 

 恐らく黒霧が油断していると判断したのだろう。爆豪と切島が飛び出して攻撃を仕掛けるが、そのせいで13号の射線に入り、邪魔をしてしまっている。

 二人の攻撃を受け、一瞬モヤが散ったが何事もなかったように再集合し姿を現す。

 

「危ない危ない。そう、生徒といえど優秀な金の卵。散らして、嬲り、殺す」

 

 黒霧は大量のモヤを周囲に展開させる。

 13号は【ブラックホール】で必死にモヤを吸い込むが、一向に消える気配は無く、ついには生徒たちを包み込んでしまった。

 海兎も例外ではなくモヤに包まれる。そのまま視界すら黒く塗りつぶされていく中、海兎は何故か黒霧と目が合った気がした。

 

――月下海兎。あなただけは特別です。

 

 そう呟いた黒霧の声は残念ながら海兎には届かなかった……。




相澤先生から個性で連絡を取るよう言われ、正直自分でも【雷兎】でどうやればいいんだ?と思いますが、上鳴が出来るなら海兎に出来ないはずが無い!とやらせました。
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