新海底軍艦〜アルス•ノヴァ〜   作:あーくこさいん

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この話で第一章が完結します。


第9話 新たなる航路(たびじ)

ー日本陸軍前線指揮所ー

 

今現在、日本陸軍の特殊部隊は刑部邸を襲撃しメンタルモデル諸共刑部蒔絵を始末しようとしていた。

何故振動弾頭の開発者である蒔絵を始末しようとしているかというと、霧のメンタルモデルと接触していたからだ。

振動弾頭の開発者である刑部蒔絵を霧に奪われるならメンタルモデル諸共始末しようという魂胆だった。

 

「状況はどうだ?」

 

「岩蟹部隊は現在メンタルモデルと交戦中。順調に追い詰めています。」

 

ハルナを無人兵器『岩蟹』で追い詰め、作戦は順調かと思われた……

 

「よし!そのまま奴を追い詰めて……」ギュオン!!

 

その時だった。

指揮官と思わしき人物が喋っている途中、甲高い音が鳴った。

オペレーター達が何事かと振り返ると、指揮官の眉間に焦げ目がついていた。

そして指揮官が力無く倒れると、オペレーター達は後ろの存在に驚いた。

その兵は全身黒の装甲服に身を包み、シュタールヘルムを被り赤いメガネのようなガスマスクをつけた兵だ。

数秒の沈黙があった中、その兵が右手に持っていた変わった形のピストルを今度はオペレーター達に向けた。

次の瞬間、先程の甲高い音が複数鳴り響き前線指揮所は沈黙した。

指揮所を制圧し黒い箱を仕掛けた後、その男は通信を入れた。

 

「たった今敵の前線指揮所を制圧しました。」

 

『よくやった。これで敵軍は混乱するな。』

 

報告を終えるとその兵はホバーバイクに乗り、その場を離れた後前線指揮所は跡形もなく吹き飛んだ。

 

 

そして前線で戦っている兵士達も異変に気づいた。

 

「隊長!指揮所からの通信が途絶えました!」

 

「なんだと!?」

 

その時、何か音が聞こえた。

兵士達が振り返ると、一台の車両が向かってきた。

その車両は六輪の幅が広いバギー車で前面にシャークマウスのペイントと上部には変わった形の連装砲を装備し、物凄い速度で走破していた。

 

「なんだあれは!?」

 

周りの兵士が驚愕する中、何かの気配に気づいた。

そこには黒い装甲服を着た兵士がタイヤの無いバイクに乗り、勢いよく飛び降りた。

バイクは自動的に止まり、兵士は着地してブラスターライフルを構える。

驚いた日本軍兵士は銃を撃ちまくるが装甲服によって無効化された。

そしてその兵士が狙いをすませると、

 

ギュオン!! ギュオン!! ギュオン!!

 

銃口から赤い光弾が発射され、兵士達の体を貫通した。

難なく敵を倒すレムリア帝国陸軍兵士だが、そこに岩蟹が現れる。

岩蟹のガトリング砲やロケットランチャーで苦戦する中、1人の兵士が背中に担いであったバズーカを取り出し岩蟹に狙いを定める。

次の瞬間、キュイン!!と鳴り響き1秒後岩蟹に大きな穴が開き爆発した。

このような感じでレムリア軍兵士は次々と日本陸軍特殊部隊を殲滅していく………

 

一方、ハルナは蒔絵の始末の為に襲撃してきた陸軍特殊部隊と交戦していた。

新兵器『岩蟹』によって苦戦を強いられる中、ハルナも異変に気づいた。

 

(新たな反応…陸軍ではない?)

 

ハルナは襲撃してきた日本陸軍の兵士とは異なる反応を検知し、その反応の正体が何か分かると驚愕した。

 

(馬鹿な…核融合反応だと…!しかもかなり小型の核融合炉…なのか?)

 

驚くのも無理はない。

レムリア軍兵士の装甲服『プロテクトギア』と先程のバギー型の装甲車『CB-39 バリアント』の動力源は常温核融合反応電池(パワーセル)だ。

パラジウムを用いて核融合反応を起こす電池であり、かなりの大出力を持つ代物で蓄電池故何度でも使えるのが利点だ。

その間に日本陸軍特殊部隊が襲い掛かってくる中、何やら音が聞こえた。

日本陸軍の兵士も音に気付き周囲を見渡したがその瞬間、何か大きな物体が現れその兵士達をそのまま引いた。

先程のバギー型装甲車バリアントが現れ、上部の連装砲をハルナに向けると甲高い音と共に緑色の光弾が放たれた。

ハルナはすかさずクラインフィールドで塞いだが、バリアントの連装式ブラスターキャノンはクラインフィールドに多大な負荷を与えた。

ハルナは今メンタルモデルのみとなっているのでクラインフィールドの強度は戦艦の時と比べて弱くなっているのだ。

さらにレムリア軍兵士達もハルナの周りに集まり始め、ブラスターライフルやバズーカを放ちハルナを着実に追い詰めた。

そしてハルナにとって起こってほしくないことが起きた。

 

「ハルハル!」

 

「なっ…蒔絵!?」

 

なんと戦闘中のハルナの所に蒔絵が来てしまったのだ。

これにはハルナはともかくレムリア軍兵士達も驚いていた。

ハルナはすかさず蒔絵の周囲にクラインフィールドを張り防衛の姿勢を取った。

 

「蒔絵、逃げろと言ったじゃないか。」

 

「イヤだ!!ハルハルは友達だから…ハルハルはアレを作ったことを許してくれなくても…それでも友達!友達を見捨てるなんて、そんなのできない!!」

 

「蒔絵…」

 

ハルナと蒔絵が話している中、レムリア軍兵士は銃を構えていた。

彼らは刑部蒔絵の確保を目的としている為、迂闊に撃てないのだ。

膠着状態が続いている中、レムリア軍に動きがあった。

 

『フン、まさかターゲットがやって来るとは…運がいいな、我々は。』

 

前線指揮車内にいた指揮官がそう呟く。

彼らは『切り札』を持っている為、余裕であった。

周りにいた兵士がコンソールを動かし準備を整えると、

 

『中尉殿、準備が整いました。』

 

『よし!電子戦兵器『ヤシオリ』起動。目標『ハルナ』『キリシマ』照射始め!』

 

指揮官の合図で兵士がエンターキーを押すと不気味な機械音が鳴り響く。

 

『極上の酒だ。酔い潰れるがいい。』

 

指揮官が不敵な笑みを浮かべる。

その数秒後、ハルナとキリシマに異変が起こる。

 

「な…何だ……!?」

 

「か…体が……!?」

 

ハルナとキリシマは痺れた感覚に陥り、膝をついて動けなくなった。

さらにクラインフィールドが展開出来なくなり、一気に弱体化した。

 

(馬鹿な…コンピュータウイルスだと…しかも私達を機能不全に陥る程の……)

 

電子戦兵器『ヤシオリ』は試作段階の電子戦兵器で威力はメンタルモデル単体に限定されるが行動不能にする事ができるコンピュータウイルスだ。

 

『今だ。ターゲットを確保しろ!』

 

周りにいた兵士が一斉に銃を構えながら近づき、蒔絵を確保しようとする。

クラインフィールドを展開出来なくなったとはいえ油断せず、ハルナとキリシマを破壊してから確保に乗り出す。

 

(クソ、動かない…このままでは……)

 

(仮に万全の姿でもこれじゃあ太刀打ち出来ない…このままじゃお荷物じゃないか!)

 

(守れないのか、私には…?誰でもいいから力を貸してくれ!誰か…助けてくれ!)

 

その時だった。

突如、前方のバリアントが鈍い爆発音が上がり破壊され、残り2台も瞬時に破壊された。

このことにハルナ達やレムリア軍兵士も驚く。

周囲を見渡すと上空からでかいバズーカを背負ったロボットが飛んできて、ハルナ達の元に着地した。

ロボットは紫色の機体で所々紋章が浮かび上がっていた。

兵士達はブラスターライフルやバズーカを撃ちまくったが、クラインフィールドを展開され無効化された。

また、『ヤシオリ』も試作段階の兵器故1発しか用意しておらず使うことは出来なかった。

そのロボットはハルナ達をやさしく抱えるとすかさず腹部の格納スペースへ収納した。

ハルナ達が困惑していると、

 

『無事か、お前達。』

 

「コンゴウ!?何故ここに!?」

 

『話は後だ。まずは蹴散らすぞ。』

 

そう言うと機体各所に格納してあった機銃を乱射し、兵士を薙ぎ倒していく。

あらかた片付いた後、ロボット…『清八』は背中のバーニアを噴かし飛び立った。

 

「コンゴウ…何故?」

 

『少し事情があって、お前達を助けにきた。』

 

「ねぇ、さっき何撃っていたの?」

 

『少し強めの麻酔弾だ。30分もすれば動けるようになる。』

 

一方、前線指揮車の車内では…

 

「くそっ、なんてことだ…!」

 

作戦は順調に進んでいたが、あのロボットの介入によりターゲットであった刑部蒔絵を取り逃す結果となってしまったのだ。

指揮官は怒りをあらわにしたが一旦落ち着くと、

 

「…作戦は失敗だ。すぐに倒れている奴らを収容して撤収するぞ。」

 

指揮官の指示で、後方に待機していた部隊が動き倒れていた兵士達を収容するとそのまま引き上げた。

 

 

 

ー羅號甲板ー

 

数時間後、ハルナ達は有坂とアネットと対面していた。

 

「どうして私達を助けてされたんだ?」

 

「どうしてって…助けてって声が聞こえたから。元々危なかったからね。」

 

「!…そうか…」

 

「フ…フン。有坂とやら、今回ばかりは礼を言わせてもらうぞ!」

 

「えっと…誰?」

 

「キリシマだ!!」

 

「ああ、そうだった。と言うか、この姿だとキリシマならぬ『キリクマ』だね。蒔絵ちゃんにも気に入ってくれたし。」

 

「んな!?」

 

「…それはさておき、どこへ向かうんだ?」

 

「硫黄島。群像達の本拠地だって。もちろん羅號も同行するよ。」

 

今回、羅號のワープ機能はモンタナとの戦闘にて故障してしまい、修理に時間がかかる為そのまま同行することになった。

無論、警戒しながらだが。

 

「艦長、各員準備良し。いつでも行けます。」

 

「群像、こちらはOKだ。」

 

『了解だ。進路は硫黄島に設定。出航する!』

 

そう言うとイ401と羅號は出航した。

彼らは硫黄島へと向かう………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー東南アジア海域ー

 

ここは東南アジア海域。

霧の東洋艦隊が封鎖を担当する海域である。

外洋に出ようものなら霧に沈められるのがオチだが、今はそうではなかった。

何故ならこの海域の封鎖を担当している霧の東洋艦隊は()()の戦艦の前に次々と海の藻屑になっていた。

霧の東洋艦隊旗艦のプリンス・オブ・ウェールズは驚愕していた。

今まで人類を海洋から駆逐してきた霧がたった一隻の戦艦に蹂躙されていることに………

その戦艦はイタリア戦艦ヴィットリオ・ヴェネトと同じ艦橋と前部に二基、後部二基の三連装砲を搭載していた。

そして特徴的なのは艦首の二本のドリルと何よりその戦艦が速すぎるのだ。

その速度はなんと90ktだ。

驚異的なスピードで霧を翻弄し、砲撃をし霧の艦艇を着実に沈めていた。

無論、霧側も反撃しビームや侵食魚雷を何本も命中させるが、全く効果が無かった。

 

「駄目です!効果が有りません!」

 

「くそッ!何なんだあの戦艦は!?」

 

プリンス・オブ・ウェールズは苛立ちを隠せなかった。

その戦艦によって東洋艦隊の8割が海の藻屑になっていた。

 

(くそッ、我らは偉大なるアドミラリティ・コードの使途……こんな不届き者如きに好き勝手されてたまるか!!)

 

するとプリンス・オブ・ウェールズは切り札を出す。

そう、超重力砲を撃つために船体の上下を展開させ、海を割り敵艦に照準を固定した。

敵戦艦は何を血迷ったのか、なんと艦首をプリンス・オブ・ウェールズの真正面に向けたのだ。

その間にエネルギーのチャージを完了する。

 

「超重力砲、撃て!!」

 

ドゴォォォォォォ!!

 

その瞬間、霧の最大の切り札『超重力砲』を放ち、青白い光が敵戦艦を包み込んだ。

この時、プリンス・オブ・ウェールズはほくそ笑んだ。

超重力砲の直撃を受けて無事であるはずが無い…そう認識していた。

だが………

 

「なっ……なんだと………」

 

彼女達は絶句した。

何故なら光が収まった後、そこには()()()()()()()()戦艦がいた。

あろうことか超重力砲の直撃にも耐えたどころか傷一つ付いていない光景に彼女達は絶望した。

 

「馬鹿な…あり得ない…こんな事が……」

 

その時だ。

突如として敵戦艦から駆動音が鳴り響いた後、水しぶきを上げながら中に浮かび上がった。

その事に驚くが、さらにその後度肝を抜かれる事になる。

この戦艦は艦首の二本のドリルに艦底部にもう二本のドリルが付いている戦艦である。

そして数秒間の沈黙があった後、艦底部の二本のドリルが切り離された。

その後ーーー

 

ガコン!  ゴオォォォォォォ!!

 

なんと切り離されたドリルがミサイルのように飛んできたのだ。

驚かない方がおかしい。

彼女達はドリルを撃ち落とそうと弾幕を張ったが、二本のドリルは弾幕をものともせずに突き進み、プリンス・オブ・ウェールズ以外の艦に風穴を開け、沈んでしまった。

さらに敵艦の艦尾からミサイルのようなものが飛んできて、霧の駆逐艦を次々沈めた。

気づけば残っているのはプリンス・オブ・ウェールズのみとなっていた。

飛んでいたドリルはそのままウェールズの所に向かった。

 

「…何なのだ、何なのだお前は…くそッ、くそォォォォォォ!!」

 

その瞬間、二本のドリルが船体に突き刺さり抉り取った後爆沈した。

プリンス・オブ・ウェールズを撃沈した後、二本のドリルは母艦の方に戻って行き、姿勢を整えるとーーー

 

ジジジジ…   ガコン!

 

そのまま磁石のように引っ付き、元通りになった。

この戦艦の名は『インペロ』。

今までインド洋で霧を殲滅していたが、モンタナがやられた事を受けて東南アジア海域を通って太平洋へと向かっていた。

その道中霧の東洋艦隊と遭遇した為、蹂躙したのだ。

 

「…弱いな。」

 

インペロの艦内にかなり広い空間があった。

その空間には無数の機械類が置いてあり、その空間の中心には人一人分座れるシートがあった。

そこに一人の少年がいた。

頭部には機械類に接続されたヘッドギアを付けており、艦内にその少年以外の乗組員はいなかった。

そう、このラ級戦艦インペロは試験的に一人での操艦・運用を可能にする『思考制御装置』を搭載していた。

 

「まぁいい、目標は羅號だ…前進‼︎」

 

彼の掛け声に応じてインペロは北東に向かって進んでいた。

その少年は何を思うのか、それを知る術はない。

 

 

【第一章 完】

 




【第二章 予告】

本拠地硫黄島に到着した有坂達。

だが、レムリア帝国の次なる魔の手が襲いかかる。

刺客として襲いかかるラ級戦艦インペロ、レムリア帝国太平洋艦隊……

さらに改修中であった四隻のラ級戦艦が起動し、霧に襲いかかる。

果たして蒼き鋼の運命は………

そしてこの章で明かされる真実とは………

【第二章 激動編 明かされた真実】

お楽しみください。

尚、この話で登場したレムリア帝国軍の兵器は別の機会に紹介します。
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