新海底軍艦〜アルス•ノヴァ〜   作:あーくこさいん

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この話から第二章が始まります。


第二章 激動編 明かされた真実
第10話 硫黄島


ーレムリア帝国 帝都ジオラビランスー

 

執務室にレムリア帝国国家元首『ゼノン=タイタニア』とレムリア帝国軍情報局局長『パルサー=オーヴェント』がいた。

局長は先の刑部蒔絵捕獲作戦の結果を国家元首に報告した。

無論、作戦は失敗に終わった。

 

「…刑部蒔絵が奴らの手に渡りました。いささか厄介かと…」

 

局長が陳謝をする。

だが当のゼノン国家元首は特に不機嫌そうな表情をしなかった。

 

「まぁそう暗い表情をするな。何も悪いニュースばかりではない。」

 

「…と、申されますと?」

 

「ドックより連絡があった。四隻全ての改修が完了したと。」

 

局長が驚いた表情をする。

つまり、改修中であった四隻の万能戦艦が実戦に投入できる事を意味していた。

 

「単艦で霧の方面艦隊を圧倒する戦闘力を持つ万能戦艦が一気に四隻も投入されるのだ。地上人はもちろんのこと、霧の驚く顔を見てみたいものだ…」

 

「それで艦長は誰が?」

 

ゼノンは四隻の艦長をそれぞれ誰が務めるか局長に伝えた。

 

「局長、そろそろ下がっていいぞ。しばらくは諜報・工作活動に専念してくれ。」

 

「はっ。」

 

そう言うと局長は執務室から出ていく。

ゼノンは艦長達に通信を開く。

 

「諸君、万能戦艦の乗り心地はいかがかな?」

 

『フッ、誠に光栄の極み…』

 

『へぇ、なかなかいいじゃんこの(フネ)。』

 

『貴方様に賜ったこの(フネ)、必ずや使いこなしてみせます!』

 

『…悪くないな。』

 

「諸君らにはこの万能戦艦を用いて世界各地の霧を殲滅してもらう。出し惜しみはするな。無論、補給ポイントを設置する。」

 

すると艦長の一人が質問する。

 

『…よろしいのですか、霧を殲滅しても?』

 

「構わん、兵器としての宿命だ。かつて国力の象徴と謳われた戦艦とやらも航空機の台頭によって無用の長物になった事例がある。兵器がより進化した兵器に取って代わるのは自明の理だからな。」

 

ゼノンは各艦長にそう説明する。

 

(まぁ、()()が年内に完成する目処が立った以上、(奴ら)はお役御免だからな…)

 

「万能戦艦発進せよ!(奴ら)を殲滅するのだ!」

 

『『『『了解!!』』』』

 

ゼノンは艦長達を鼓舞した後、今度はインペロの艦長とレムリア帝国海軍太平洋艦隊提督に通信を入れた………

 

 

 

レムリア帝国の特殊ドックから四隻の万能戦艦が出てきた。

 

一隻目は緑色の船体にシールドマシン状のドリルを持ち、四連装砲を三基すべて前部に集中配置している万能戦艦『インヴィンシブル』

 

二隻目は下部に三門、上部にニ門備えた所謂五連装砲を二基、左右非対称のアンテナ、艦尾にドリルを持つ万能戦艦『ガスコーニュ』

 

三隻目は真紅の船体に三連装砲、連装砲二基ずつ搭載し、艦尾にロケットエンジンを装備した万能戦艦『ソビエツキー・ソユーズ』

 

そして四隻目はグレー色の船体に羅號と同口径の連装砲を四基八門備えた万能戦艦『フリードリヒ・デア・グロッセ』

 

四隻の万能戦艦はしばらく進んだ後、潜航していく。

いよいよ帝国が動き出した………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー小笠原諸島近海ー

 

一方、羅號とイ401の二隻は蒼き鋼の拠点硫黄島に迫っていた。

硫黄島からの管制により、二隻はそれぞれ別のドックに入っていく。

しばらく進んだ後、二隻共浮上し船体はアームで固定され入港が完了した。

 

「艦長、本艦及びイ401入港完了。港湾システムとのリンク、オールグリーン。」

 

「ふぅ、これで一安心だな。」

 

各クルーが一息つく中、イオナが異変に気付く。

 

「どうしたイオナ?」

 

「…妙なのがいる。」

 

「妙なの?」

 

イオナは両艦のモニターに映像を映す。

するとドックに赤い船体の軍艦がいた。

その光景に皆驚愕する。

 

「なっ!?」

 

「重巡タカオ…」

 

「いつの間にドックに入り込んでやがったのか!?」

 

「先回りされたのか…どうするか!?」

 

突然の事に皆困惑する中、群像と有坂は落ち着いた表情で注視する。

 

「重巡タカオ…消息不明だったが、貴様らに拿捕されていたとは…!」

 

「知らない。」

 

イオナがすかさず否定する。

 

「じゃあ、なんでここに…?」

 

「群像、まさかとは思うが留守の間に基地が制圧された…なんて事はないよな?」

 

「…イオナ、ヒュウガは健在なんだろう?」

 

「ヒュウガ…?大戦艦ヒュウガか?」

 

イオナはサークルを展開し確認する。

 

「…いる。下まで来てる。」

 

「ヒュウガが制圧されていないのなら大丈夫だ。上陸して事情を聞いた方が早い。」

 

群像の意見を受けて皆(フネ)から降りてくる。

すると突然卵型の何かが現れた。

 

『お帰りなさいませ、艦長。遅いご帰還でした。』

 

「ヒュウガ、ご苦労様。半年間このドックを守ってくれた。ありがとう。」

 

群像はヒュウガにお礼を言う。

 

『いえ、これも自身の課した役目ですから……ハァァァ!?』

 

ヒュウガはイオナの方を向くと、声を荒げる。

 

い…い……イオナ姉様〜〜〜〜❤️❤️

 

なんと卵が開き中から女の人が飛び出してきた。

突然の事に皆驚く中、ヒュウガはイオナに抱きつきそのまま押し倒す。

 

「…何これ?」

 

「ヒュウガなのか…?」

 

イオナはヒュウガから離れようとするが、ヒュウガが激しく抱きつき離れる事が出来ない。

 

「思えば一年前…姉様に次々と魚雷を叩き込まれたあの日よりこの大戦艦ヒュウガ、お姉様無しでは生きていけぬ身体に…ああどうにかなってしまいそう…」

 

「どうにかなってしまったのですね。」

 

「本当にヒュウガのようですね…」

 

「そのようだな…」

 

ヒュウガは一旦落ち着き、群像達の方に向いた。

 

「貴方達人間の思考を理解するにはこうするのが良いと思い当たりまして…身体を創造(クリエイト)しました。」

 

「メンタルモデル“ヒュウガ”か…」

 

「ええ、以後お見知り置きを……ハッ!身体といえば……」

 

そう言うとヒュウガはイオナのセーラー服を捲り上げる。

彼女は何処かに怪我をしてないか確認する名目でイオナの身体をジロジロ見たり、スカートを下げようとしたがイオナに蹴っ飛ばされ壁に激突した。

 

「ヒュウガ、侵食魚雷の補給と超重力砲の修理を。次の出航に向けて完全修復したい。」

 

「い…イエッサー…」

 

「ヒュウガ、貴官が401に後ろ盾していたとはな…」

 

「大戦艦ハルナ、キリシマそれにコンゴウ、重巡マヤまで…事情は確認している。貴方達が同行してくるとは、面白い事になっているわね。」

 

「…成り行きだ。」

 

するとヒュウガは蒔絵を見る。

 

「(デザインチャイルド……)その子の為なのね。」

 

図星だったのか、ハルナは少し驚く。

 

「賑やかになっていいわ。歓迎するわよ。同じ大戦艦のよしみであるものね。」

 

ヒュウガは少し微笑む。

 

「ヒュウガ!お前こそ人類に与するとはなんだ!」

 

キリシマが突っかかるが、コンゴウが止める。

 

「よせキリシマ、我々も負けた以上何を言っても負け犬の遠吠えだ。」

 

「んな!?」

 

「…それよりアレはどうゆう事だ?」

 

「ああ、アレは…」

 

ヒュウガは重巡タカオの船体の方を向く。

そこには一人の少女が立っていた。

 

「お久しぶりね、401クルーの皆さん。」

 

タカオは高圧的な態度で接するが、群像がタカオを凝視すると、

 

「ハッ!?群像様!?」

 

まるで恋する乙女のような反応をする。

 

「あの〜どちら様で…ズガガガガガガガガガ!!うわわ!思い出す!今思い出します!」

 

「フン、仕方ない。」

 

そう言うとタカオは服装を変え、白いワンピース姿になる。

 

「これでどうよ。貴方達に会う為に先回りしてここを占拠していたのよ。」

 

タカオはそう言うが、

 

「いいや、返り討ちに遭って捕まっていたのよ貴方は。」

 

「そうなんだ…」

 

ヒュウガの説明にいおりは苦笑する。

すると群像が質問する。

 

「俺達に会うだと?」

 

タカオは少しドキッとして、

 

「えっ、ええ、そうよ。」

 

と、肯定する。

そしてイオナを凝視すると拗ねたかのようにそっぽを向く。

 

「用件を伺おう、重巡タカオ。」

 

「ハッ!用件…?え、えっと…私の用件は…」

 

群像に質問されたタカオは動揺して顔を赤らめながらもじもじする。

そんな中、ヒュウガは何かを企んでいた。

 

(さぁ、言えタカオ!事前に二人で立てた作戦通り『私の艦長になって下さい❤️』と!そうしてその男を連れ去るのだ!そうすれば…イオナ姉様は晴れて私だけの…ジュルリ…私だけのものよ〜〜❤️)

 

ヒュウガの口元から涎が出る。

彼女の脳内には産まれたままの姿で抱き合うイオナとヒュウガのビジョンが……

(※ヒュウガの身勝手な妄想です。)

 

するとアネットが若干引き気味な表情をする。

 

「どうした…?」

 

「いや、あの…ヒュウガさんから何か邪な気配が……」

 

(…絶対良からぬ事を考えているな。)

 

コンゴウがそう思っていると、タカオが口を開く。

 

「私の…わ、わた…(さぁ、言えタカオ!)渡して貰おうか!(言え!“千早群像を渡せ!”と!)ち…ち……振動弾頭とそのデータを!!

 

全然違う要求にヒュウガは驚き、タカオはハッと口元を手で押さえる。

 

「テメェ…やっぱりそれが目的か!」

 

「タカオ!振動弾頭を渡す訳には…」

 

その瞬間、ヒュウガが目にも止まらぬスピードでタカオに詰め寄る。

 

「お前、ばっかじゃねぇの!?計画と違うじゃん!何だよ今の!?」

 

「え…だって、そんな告白みたいな事いきなりは…」

 

「いきなり押しかけてきて今更恥じらってんじゃないわよ!」

 

「お…乙女にも色々あるのよ…」

 

「“乙女プラグイン”なんか実装してんじゃねーよコラッ!」

 

すると二人はクラインフィールドを展開し、お互いのフィールドがぶつかり合い火花を散らしていた。

 

「あーうるさいな!こっちこそ何してたのよ!?こんなところで管理人!?あんたこそ大戦艦としての誇りはどこ言ったのよ!?」

 

「うっさい!お前に何が分かる!?あのイオナ姉様の軍神の様な神々しさ…❤️避けても避けても次々と当ててくる圧倒的な攻撃力…❤️ああ、イオナ姉様〜足耐え申し上げております〜❤️」

 

ヒュウガの脳内に()()()思い出補正が掛かった回想が浮かぶ。

 

「あんたの告白なんか聞いちゃいないわよ!」

 

そんな中、キリシマが水を刺す。

 

「おい。」

 

「「何よ!?」」

 

「みんな行ったぞ。」

 

「イオナ姉様!?」

「群像様!?」

 

二人が壮絶な喧嘩をしている間、群像達はドックを後にしていた。

 

「って、それはそれとして…あんた識別反応ではキリシマだけど……」

 

「わわわ、訳は聞くな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーマリアナ諸島沖ー

 

ここはマリアナ諸島沖。

そこには万能戦艦『インペロ』が待機していた。

待機している所、右舷の方向に“何か”が接近してきた。

 

接近してきたのは七隻の潜水艦だ。

内六隻は二基四門の40cm連装砲を備え重厚な装甲を持つ潜水艦『B型潜水艦』

そして最後の一隻はB型潜水艦より重厚な装甲を持ち、全長330mという原子力空母並の大きさを誇る潜水艦『C型潜水艦』だ。

 

尚、この七隻以外にも全長150mの潜水艦『A型潜水艦』が16隻、そして最新鋭潜水艦『D型潜水艦』が一隻待機していた。

 

合流すると計26隻の艦隊は蒼き鋼の拠点『硫黄島』に進路を定め進軍する。

激闘の日も近い………

 


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