新海底軍艦〜アルス•ノヴァ〜   作:あーくこさいん

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更新が遅くなってしまい申し訳ございません。


第11話 帝国の事情

羅號出航から遡る事1ヶ月…

 

レムリア帝国国家元首ゼノン=タイタニアは海の中にいた。

 

否、正確には海の中にいる感覚だった。

 

何かの気配を察知しその方向を向くとそこには水上艦がいた。

彼はその方向に手をかざすと魚雷が放たれ、そのまま命中する。

 

すると今度は潜水艦が接近してきて魚雷を放つ。

魚雷は彼の元に向かってくるが、慌てる様子は無くまるで魚になったかのように魚雷を回避し、魚雷で返り討ちにする。

 

一通りの動作テストを終えると彼の意識は現実に引き戻される。

そう、彼が今まで見ていたのはシミュレーション。

だが、そこに操縦桿とかは無く周りに機械類とそれに接続されたヘッドギアが付けられており、ヘッドギアが外れると彼は立ち上がる。

 

そばには如何にも科学者と呼べる格好の男がいた。

 

「どうです?『思考制御装置』を使ってみた感想は?まるで自分が艦になった感覚が味わえますが…」

 

「ふむ…このシステムを用いれば一人で艦を制御出来るか。」

 

「はい、しかも反応速度はメンタルモデル並です。」

 

「作業は進んでいるのか?」

 

「すでに万能戦艦『インペロ』に取り付けており、後は調整を残すばかりとなっています。」

 

「なるほど…すると『インペロ』の出撃は既に可能なのか?」

 

「パイロットに合わせた調整に少々時間がかかります。ご存知の様にこのシステムは個人の脳波の特性に合わせる必要があります。」

 

「ではパイロットを…」

 

ゼノンがそう言いかけると向こうに誰かが見える。

それはゼノンと瓜二つの少年で違うところはマントを羽織っていない事と、ゼノン本人と比べて雰囲気的にやや幼い事だ。

 

「父上、その役目僕にやらせてください!」

 

少年はそう懇願する。

 

「ツヴァイ、私のことを父上と呼んでいいと言った覚えは無いぞ。」

 

「でも…!」

 

「ツヴァイ、お前は私の息子では無く複製品(レプリカ)…私の肉体に万が一の事があった時のための予備(スペア)に過ぎない。」

 

「そんな…僕は父上のお役に立ちたいと願うことも許されないのですか?」

 

「お前は()()()()()()()()()()()。それがお前の課せられた使命だ。」

 

ゼノンは少年…ツヴァイを冷たく突き離す。

ツヴァイがショックを受けていると、科学者…『ラヴナ=ドッペラー』が待ったをかける。

 

「お待ちください、ゼノン様!ツヴァイ様をインペロのパイロットにしていただけるのであればインペロは明日にでも出航可能です。」

 

「…理由を聞こう。」

 

「先程のシミュレーションの通り、この思考制御装置はゼノン様の脳波に合わせて調整されています。このを他人に合わせるのに時間が掛かります。ですが、ツヴァイ様であれば遺伝形質的にはゼノン様と同一の個体…思考波の形状は極めて近く、わずかな微調整だけで出撃が可能となるでしょう。」

 

科学者の提案にゼノンはしばらく考え…

 

「…分かった。ツヴァイ、お前をインペロのパイロットに任命する。任命された以上、使命を果たせ!」

 

「了解!」

 

そして現在に戻る…

 

ツヴァイはあの時の光景を思い出していた。

今の彼の使命は帝国に離反した万能戦艦『羅號』の破壊。

 

(父上の役に立つ為にも…羅號を必ず破壊する!)

 

そう決意した彼は、自分の存在意義を確立する為に艦隊に随伴する。

進路は勿論硫黄島だ。

 

そして硫黄島攻略艦隊に潜水隊がいる。

潜水隊はD型潜水艦『ティアマト』率いる第一潜水隊と万能戦艦『インペロ』の指揮下に入った第二潜水隊に分かれている。

 

第一潜水隊旗艦の『ティアマト』は乗組員の休憩を兼ねて現在浮上している。

最新鋭潜水艦のD型潜水艦は作戦用途によって自由にカスタマイズが可能であり、中でもティアマトは試作型拡張ユニットを搭載している。

 

D型潜水艦は全長170mとA型潜水艦より大きいがティアマトは全長220mとさらに大きく、後部にVLS等を搭載した武装ユニットと艦の各所に計4枚の翼型外部電磁推進体を備えた特殊推進・操艦ユニットを搭載している。

 

そんなティアマトの甲板に一人の男と二人の少女がいた。

彼の名は『サナク=ターコイド』。

ティアマトの艦長であり、第一潜水隊を束ねる指揮官である。

 

彼の潜水艦乗りとしての腕は折り紙付きであり、数多くの霧の艦を沈めてきた優秀なサブマリナーである。

その為、彼の乗艦『ティアマト』に拡張ユニットを搭載する事を許された。

 

そして二人の少女の内の一人は前髪を切り揃えた黒髪に細いツインテールを垂らし赤いレインコートを羽織った少女…『ズイカク』と霧の重巡タカオを幼くしたような容姿の少女…『アタゴ』がいた。

三人はズイカクが釣り上げた魚を七輪で焼いて食べていた。

 

「うまいな。」

 

「でしょ?特に秋刀魚の塩焼きは!」

 

ズイカクがそう自慢する。

何故霧のメンタルモデルがティアマトに乗艦しているのかというと、それは数日前に遡る。

 

当時ズイカクとアタゴは霧の東洋方面第二巡航艦隊に所属していたが万能戦艦モンタナの襲撃により艦隊は壊滅しズイカク、アタゴも沈んでしまった。

幸いにもメンタルモデルだけは脱出できたのでしばらくの間救助が来るまで海底で待っていた。

そこに偶然通りかかったのがレムリア帝国海軍最新鋭潜水艦『ティアマト』だった。

 

拾った当初はこちらを憎んでいる懸念があったが、当の二人にそんな気は無くすぐに打ち解けていった。

 

特にズイカクの魚料理が美味かったので浮上した際に彼女が釣り上げた魚を焼いて食べている。

 

基本的に潜水艦の食事は遺伝子改良を施した食品を加工したもの(缶詰めなど)を食べている。

彼はたまに食べれる魚料理や和菓子等をいたく気に入っている。

 

レムリア帝国は芸術や食文化がそれほど豊かではない為、そういうのは地上人に作らせている。

霧との戦争において芸術家や職人など戦闘に関係の無い人達が真っ先に切り捨てられる所謂『棄民政策』により居場所を失った芸術家・職人達を帝国が保護し、その対価として芸術や食文化等を提供しているのだ。

無論、彼らの環境も整ってある。

 

三人が魚料理を堪能していると、副長から通信が入る。

 

「艦長、そろそろ…」

 

「ああ、分かった。お前らそろそろ潜るから艦内に戻るぞ。」

 

そう言うと三人はハッチから艦内に入り、ティアマトは潜航する。

もうすぐ硫黄島での戦いが始まる………




【メカニック解説】
思考制御装置
万能戦艦インペロに試験的に搭載された新基軸統合艦制御システム。
この装置はパイロットの思考で艦そのものを制御する、言わばメンタルモデルを擬似的に再現した代物。
さらに周囲の環境をソナーやレーダーの波長ではなく三次元の立体映像として映し出せるので標的の位置が手に取るように分かる画期的なシステム。

D型潜水艦『ティアマト』
全長:220m
全幅:47m
基準排水量:9万6千t
兵装:艦首魚雷発射管 6門
   砲塔型四連装魚雷発射管 8門
   武装ユニット
   他多数

レムリア帝国海軍の最新鋭潜水艦『D型潜水艦』の試作改良型。
高性能の潜水艦に拡張ユニットを搭載する事で更なる戦闘能力を得た。
武装ユニットによる制圧能力と特殊推進・操艦ユニットによる水中における立体機動格闘戦を行える。
尚武装ユニットの制御はズイカクが、特殊推進・操艦ユニットの制御はアタゴが担当している。

【登場人物紹介】
ツヴァイ
レムリア帝国国家元首ゼノン=タイタニアの遺伝子を元に造られたゼノンのクローン第二号。
容姿は少年の様に幼い。(ゼノン似)
ゼノンに万が一があった時の為に作られた存在であり、ゼノンには「ただ存在するだけで良い」と言われている。
またクローン第一号として『アイン』がいるが、性能面で優秀な為その事がコンプレックスとなっている。
父親であるゼノンの役に立ち自分の存在を認めてもらう為にインペロの乗艦を志願する。

サナク=ターコイド
D型潜水艦『ティアマト』の艦長。
優秀なサブマリナーであり、霧との戦いでは多数の霧を沈めた。
モンタナが暴れた海域を調査した際にズイカクとアタゴを発見し、拾った。
ズイカクの魚料理が美味かった為、すぐに仲良くなった。
因みに好物は和菓子であり、帝国が保護下に置いた菓子職人が作る羊羹をいたく気に入っている。
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