第1話 出会い
ー西暦2048年 海洋技術総合学院ー
羅號に乗り込む一ヶ月前ーーー
一人の学生がつまらなさそうな表情をしながら、講義を受けていた。
その学生の名は有坂鋼。
つまらなさそうな表情をしていたのは、二年前に旅立った親友のことを思い浮かべていたからだ。
(群像・・・今頃どうしているのかな・・・)
そう考えていると、横からデコピンが飛んできた。
「痛ッ」
「こーら、何ボサッとしているのよ。」
そこにいたのは二年前に旅立った親友である千早群像の幼馴染である天羽琴乃の姿があった。
「いてて、天羽さん・・・」
「もう、また群像くんの考えているでしょ。群像くん達、海に出て“霧の艦隊”相手に戦っているわ。私も気になるけど、切り替えた方がいいわよ。」
「うん・・・」
その後チャイムが鳴り、二人は食堂に向かった。
「日替わりでお願いします。」
「私も。」
定食メニューの乗ったトレーを持って、いつも通りのメンバーを探す。
「おっ、いたいた。こっちこっちー!」
「席とっておきましたよ。」
そこには四人の男女がいた。
その内の二人、響真瑠璃と月野凛が二人を呼んでいた。
「ありがとう響さん、月野さん。」
「まったく、少し遅くないか?」
「ははは、ごめん。」
「とりあえず食べますよ。」
「「「いただきます。」」」
花島大介と田ヶ谷昴がそう言うと六人は昼食を食べ始める。
「そーいや、アイツ今頃どうしているんかな?」
「アイツって・・・群像のこと?」
「そういえば今頃どうしているでしょうか・・・?」
「あれから二年か・・・」
有坂はそう言うと天を仰いだ。
親友である千早群像は霧によって衰退していく世界をただ見ているのが我慢出来なくなって霧の潜水艦イ401と他のクルーと共に海に出たのだろう。
有坂鋼はそれをただ見届けることしか出来なかった。
有坂自身も霧によって唯一の家族である父親が死んでしまった為、群像は有坂が霧を恨んでいると思っていて誘わなかったのだろうと考えていた。
確かに有坂の父親は霧との戦いで命を落としたが、有坂自身は根が善人であるため霧を恨むに恨めなかった。
また、彼は霧の行動について疑問を持っていた。
もし霧が人類を滅ぼす存在であれば、陸地を攻撃する方が手っ取り早いのに、海上封鎖を行い続ける行動に矛盾を感じていたのだ。
だが、群像とはこの閉塞した世界に風穴を開けようって誓い合った為この二年間味気ない毎日を送っていた。
午後の講義を終えて帰るときに今日もあの場所に行く。
横須賀近郊にある小高い丘であり、そこでは横須賀軍港が一望できる。
そう、二年前ここから海に出て行く群像を見届けていた。
しかし、その日は丘の上に白衣を着た女性がいた。
「あの、貴方は・・・」
そう言うとその女性は振り返った。
茶髪のサイドテールに青い瞳をしていた。
「私はアネット。貴方は?」
「ああ、僕は有坂鋼。」
「そういえば・・・貴方はどうしてここに来たの?」
「えっ、ああ、海が好きだからこうやって毎日眺めるのが日課になっているんだ。そういえば、アネットさんも海が好きなの?」
「ええ、遠くから引っ越して来たけど私も海を眺めるのは好きよ。」
それ以来、有坂とアネットはこの丘で会い毎日話すようになった。
それから一週間経った頃、アネットがこう切り出した。
「有坂君、初めて会ったあの時、海が好きだからって言ったよね?」
「うん。それがどうしたの?」
「・・・あなた、それとは別の理由があるよね?」
「えっ?」
「だって、あの時海を目の前にしていたのに嬉しそうな顔じゃなかったから、何か理由があるんじゃないかなって・・・」
「・・・アネットさん、鋭いですね。確かに海が好きなのも理由ですが、他にも理由があります。」
そう言うと彼は語った。
閉塞した世界に風穴を開けようと意気込んだ親友との誓い、二年前の別れ、親友が奮闘している中何もできない状況での葛藤、霧の行動に疑問を持っていることなどすべて打ち明けた。
「・・・それなら群像達に会えたら何したい?」
「そうだな・・・まず、取り敢えず聞きたいことをすべて聞いた後、誓い合った仲だから一緒に戦いたいって言うかな。もちろん出来ればだけど・・・」
「合格よ。」
「・・・えっ?」
「貴方なら艦長として『羅號』を預けられるわ。」
有坂はアネットの言っている意味が分からず、
「えっと、アネットさん?」
「・・・先に見せた方が早いわね。」
そう言うとアネットの姿が変わった。
白衣から何やら神秘的な服装になった。
あまりの綺麗さに有坂は思わず見惚れてしまった。
「貴方は・・・」
「改めて紹介するわ。私は旧レムリア王国第一王女『アネット=イコン=エピファネス』有坂君、どうか私の祖国を・・・世界を救って。」