「なっ・・・」
有坂はアネットの正体に驚きを隠せなかった。
「レムリア・・・王国?」
「分かりやすく言うなら太古の昔に栄えて一度滅んでしまった文明・・・と言えば分かるかな?」
「それって、アトランティスとかムウとかそういう感じ?」
「ええ、別名レムリア文明と言うわ。」
「そういえば、さっき“旧”レムリア王国っていってたけど今は違うの?」
「・・・今は『レムリア帝国』と名を変えているわ。」
「・・・詳しく教えてくれない?」
「分かったわ。まず、“レムリア人”について説明するわね。」
そう言うとアネットは説明を始めた。
まず『レムリア人』について地上人と同じ人型生命体だが、違う所をまとめると
・血が白い
・炭素と珪素で構成されている言わば『ハイブリッド生物』
・元はアメーバ状の珪素生物で、隕石に付着し地球に衝突したことにより地球に来訪、10万年前まで休眠していた
・10万年の年月を掛けた進化の過程でホモ・サピエンスの死体を取り込んだことにより人型の骨格と炭素の生成を覚えた為今のような形になった
・基本的に脳の機能が地上人よりも発達しており、特に『上位種』という個体は脳の発達度が凄まじく身体がそれに適応している為、長寿であり他の個体を統率できる
・その発達した脳で地上人よりも科学技術を発達させた
・地空人には互いの存在を知覚出来る能力がある(感応力という)
そのレムリア人が北極に存在した大陸で形成した文明、それが『レムリア文明』だった。
その超古代文明はより発達した科学技術により繁栄したが、一万二千年前に悲劇が訪れた。
当時、レムリア文明だけでなくムウ帝国とアトランティス帝国が存在していたのだが、そのムウ帝国とアトランティス帝国との全面戦争に巻き込まれたのだ。
10年間続いた戦争によってムウ帝国とアトランティス帝国は滅び、レムリア王国は辛うじて滅亡を免れたが5億人程いた人口も300万人程まで減ってしまった。
さらに悲劇は続く。
戦争終結から5年後に大規模な地殻変動が起き、その結果北極大陸が沈み人口も1万人まで減少した。
だが、運良く地下空洞に閉じ込められた生き残りはそこに都市を作り、一旦休眠状態に入った。
「・・・そして1910年頃に目覚めたわ。その後、必要最低限の軍備を整えて地上人とコンタクトを取ろうとしたけど・・・」
「けど?」
「地上人との交流を巡って『共存派』と『制圧派』・・・地上人と対等な立場で接するか、武力で制圧・支配するかで派閥争いが起きたの。」
「それでアネットは、どこの派閥に?」
「私の父、コルドバ国王は『共存派』のリーダーだわ。父自身も地上人との戦力差が開きすぎていることを分かっていたから『制圧派』の面々を説得していたのだけど・・・」
アネットは意を決して“あの時”のことを話す。
それは1930年のことだった。
突如制圧派の一人である『ゼノン=タイタニア』が他の制圧派の幹部を粛清した後、クーデターを起こした。
国軍の指揮権は既にゼノンが握っており、国王側についたのは近衛隊のみだった。
王宮は襲撃され国王やその側近達は死亡、生き残ったアネットはその双子の姉であるアブトゥーと共に近衛隊によって潜水艦『ブルーノア』があるドックまで避難した。
だが、既にゼノン率いる国軍がドックに襲いかかった。
アブトゥーはアネットだけでも逃すために殿を務めて逃すことに成功した。
アネットはしばらくの間潜伏していたが、ブルーノアのデータバンクに父が調査した制圧派の計画があった。
その計画はレムリア文明のテクノロジーの一つ『
アネットは居ても立っても居られず、地理的に近かった日本に向かった。
「列強各国によって作られたラ級戦艦は7隻、その内の1隻が日本が建造した大和型四番艦『羅號』。その艦長の名は『日向真鉄』貴方の祖父をあたる人よ。」
「なっ!?僕のおじいちゃん!?」
有坂は驚いた。
何故なら有坂の祖父は戦争末期に軍艦の艦長を務めていて戦死したと聞いたが、その軍艦の艦名が不明だったのだ。
「私は建造中のドックに向かいその関係者・・・艦長達に会ったわ。最初は警戒されていたのだけれど、艦長が取り直してくれたから真相を伝えたわ。その後羅號の遠隔操作装置を解除したけど、私は休眠カプセルに入り休眠したわ。」
「どうして?」
「一万年以上休眠していたから身体に不調をきたしていたの。だから一度休眠して調整する必要があったのよ。」
「なるほど。」
「けど・・・羅號が完成し1945年8月6日に出撃、そのままアメリカのラ級戦艦『モンタナ』に遭遇して戦闘の末相打ちの形で沈んだの。」
「・・・!!」
「私が再び目覚めたのは1954年、万が一に備えて搭載した自己修復機能である程度の航行が出来るようになったけど艦長は死亡、後から分かった事だけど脱出した乗組員達は内火艇諸共帝国の潜水艦により沈められたの・・・」
「・・・」
有坂は言葉を失う。
羅號の乗組員達は艦長を含めて悲惨な最期を遂げているのだ。
「帝国の手に落ちないようにとりあえず羅號を日本海に隠し、帝国の地上制圧に備えて羅號の修理・改修を続けながら帝国の動向を探っていたの。そして今、羅號の改修を終えて乗組員を探していた所。」
アネットは改めて言う。
「有坂君、羅號の艦長をやってくれる?もちろん強制はしないわ。何故なら帝国の戦力はあなた達が戦っている霧をも凌ぐ軍事力・科学力を備えているの。だから命の保障はないわ。それでも、やってくれる?」
アネットは頭を下げる。
有坂は考えた後、答えを出した。
「・・・アネットさん。僕、やるよ。」
「・・・えっ?」
「親友と世界に風穴を開けようと誓い合ったんだ。親友が奮闘しているのに自分は何も出来ずにいるのは耐えられないんだ。だから、それが危険な道でも僕はやるよ。」
「・・・分かった。貴方の意思を尊重するわ。それでは・・・」
そう言うと彼女はハンドベルトコンピュータに酷似した装置を操作すると、緑色のサークルが現れ潜水艦が実体化した。
「貴方には羅號艦長としてやってもらいたいことがあるわ。」
【メカニック解説】
潜水艦『ブルーノア』
全長:152m
全幅:45m
基準排水量:4万6千t
アネットが脱出の際に使った潜水艦。
今は羅號操作の練習艦として存在する。
アネットのハンドベルトコンピュータ内の電子データに内蔵されており、いざと言う時に実体化する。(レムリア文明の『電脳間物質変換技術』によるもの)