ー横須賀沖ー
(私は…私はまだ、死にたくない…!)
(そうか…これが、後悔…)
ハルナ、キリシマはイ401との戦いに敗れて、そのまま爆発した。
しばらく経ったのち、静かになった。
「ハルナ、キリシマ爆沈。反応、確認出来ず。」
「敵大戦艦撃沈、作戦成功です。」
「おいおい群像〜こういう博打打つの大概にしろよ〜」
杏平が愚痴をこぼす中、群像はイ401のメンタルモデル、イオナに声をかける。
「イオナ…その、大丈夫か?」
「ううん、私たちは兵器。命令に従うのは当然のこと。」
「そうか…」
その時だった。
突然イオナが驚いた反応をした。
「イオナ、どうしたんだ?」
イオナは外の映像を群像達に見せる。
その映像に群像達は驚愕する。
何故なら、かなり大きい緑色のリングが展開されていたからだ。
「なんだ、あのリングは…!?」
「分からない…膨大なエネルギー反応を検知。何か来る…」
次の瞬間、緑色のリングの中から大きな音を立てて巨大戦艦が出てきた。
その巨大さに群像達はまた驚愕した。
大和型の艦橋に酷似した構造から日本の戦艦だが、艦首の背びれのような構造物と巨大なドリルを搭載している異形の戦艦だ。
全長からして400mくらいあった。
「なんだあれは…!」
「おそらく霧の艦ではない。その証拠に重力子機関とは異なるエネルギー反応をしている…」
イ401クルーに動揺が走る中、静が羅號の通信をキャッチした。
「艦長、あの戦艦から電文です!『貴艦の艦長に話がある。浮上せよ』との事です!」
「ちょっとそれ、間違いなく危ないんじゃない?」
いおりが文句を言う中、群像は思案する。
(相手が何を企んでいるかは分からないが、対話を望んでいるなら好都合だ。戦っても現段階で勝てる可能性は低い…)
「お前ら落ち着け。イオナ、浮上させるんだ。」
「分かった。」
「お、おい、群像!?」
「弾薬を撃ち尽くした今、勝てる可能性は低い。むしろ対話を望んでいるのなら好都合だ。お前達はいざと言う時に備えてくれ。」
「「「「了解!」」」」
浮上したイ401に羅號をつける。
「アネットさん、ついてきてくれ。他の者は待機だ。」
そう言うと、有坂とアネットは左舷へと移動する。
そこには驚愕の表情をしたまま凍りついた群像と無表情なメンタルモデル、イオナがいた。
もちろん、静以外のクルーも有坂を見て凍りつく。
「ま、マジで…!?」
「えっと、皆さん、ご存じなんですか?」
「有坂鋼。学院時代の我々の友人です。艦長にとっては親友にあたります。」
「久しぶりだな、群像。」
「ご、鋼なのか…?」
「ああ、あの時の約束を果たす為に来た…と言っても話したいことがある。」
群像は気まずい顔をしているが、
「なんで置いて行った?僕の父さんが霧との戦いで殺されたからか?」
「…君の父親が霧との戦いで戦死して、霧に対していい感情を抱いてないと思ったから…」
そう言うと群像は目を背ける。
「…確かに霧に対していい感情を抱いてないと言えばそうだが、かと言って激しい憎悪は抱いてない。霧が人類を滅ぼす存在かどうかわからないが…このまま何もできないのはとても辛い。だから、一緒に風穴を開ける手伝いをしたいんだ!」
有坂は決意を表す。
群像も彼の決意を聞いて頷いた。
「…分かった。そこまで言うなら君の意志を尊重する。喜んで迎え入れよう。それとさっきから気になったのだが、隣にいる人は?」
「ああ、紹介しよう。アネットさんだよ。僕達に海底軍艦『羅號』のことを教えてくれたんだ。」
「ん?僕達だと…?」
「アネットさん、司令室を映してくれ。」
そう言うと、アネットはコンソールを動かして群像に映像を見せた。
『やっほ〜久しぶり、群像君♪』
「なっ!天羽琴乃!?」
『オレ達もいるぞ!』
『ええ、久しぶりね!』
「大介、それに真瑠璃まで…」
『ご無沙汰してます。』
『あっ、僕もいますよ。』
「凛に昴まで…」
「もちろん、みんな望んでこの羅號に搭乗したんだ。こうして再会して共に戦えるのだから。」
今度はイオナが質問してきた。
「ねぇ、この戦艦内にメンタルモデルの反応があるのは何故?」
「あ〜、なんというか…羅號を動かした際にコンゴウの艦隊と遭遇してしまって、兵装の試運転がてら沈めちゃったんだ。もちろん、コンゴウとマヤのメンタルモデルを回収して今は安静にしているよ。」
その言葉に群像とイオナは驚いた。
「驚くのも無理は無いわ。羅號含め万能戦艦ラ級は単艦で霧の方面艦隊を圧倒する戦闘力を秘めているの。」
アネットがそう説明する。
「なっ!?そんなに強いのか!?」
「ああ、信じられないかも知れないが、事実だ。」
そう言った次の瞬間、
ズドォォォン!
大きな音が鳴り響いた。
「何事だ!!」
『防護壁が砲撃を受けました!通信によると正体不明の巨大戦艦が襲撃してきた模様です!』
「群像、あれ…」
イオナが指差したところを見ると、そこには一隻の戦艦がいた。
その戦艦は壁を破壊した後、こちらに接近してきた。
その為、有坂や群像達は艦内に戻る。
艦内の司令室に入ると、状況を確認した。
「響さん、敵艦の映像出せる?」
「今出すわ!」
モニターに敵艦が映し出される。
敵艦の映像を見て有坂とアネットは驚愕する。
その戦艦は三連装砲三基に二本のドリル、煙突部に八本のパイプを接続し、艦橋の構造もアメリカ型な戦艦だった。
この戦艦の名を有坂とアネットは知っている。
「「万能戦艦…モンタナ…!」」
一方、群像達もその戦艦を映像で見た。
「おいおい、なんだよありゃ…」
「艦橋や主砲の形状から大戦時の米戦艦に酷似していますが…」
イ401副長織部僧が冷静に思考している中、
「っ!艦長、あの戦艦から通信が入ってきます!」
その瞬間、双方のモニターに一人の男が映った。
男は中年でアメリカ海軍士官服を着ているが、特徴的なのは右眼辺りが機械化されていたことだ。
『フン、顔を合わせるのは初めてだな、イ401と羅號のクルー諸君。』
男がそう話す。
「もしかしなくても…モンタナの艦長ですか?」
『いかにも、モンタナ艦長ロバート=マッケンゼン大佐だ。103年ぶりに羅號と戦えるとは、俺も中々ついているな。』
「っ!まさか…大戦時の軍人!?」
『そうだ!あの時…羅號と相打ちとなってモンタナが沈む中私は冷凍睡眠カプセルの中に入りなんとか助かった!だが、冷凍保存される中で傷口が腐り始めて、結果このような姿になったのだ!!』
男はこれでもかと激怒しながら語る。
『この痛み、決して忘れん!!必ず羅號に復讐してやる…その為にこの私とモンタナは海の底から蘇ったのだからな!!』
男はそう言い放つ。
これには群像達も怯むが…
「…そうか。なら、生きているだけ幸運だな。」
『何…?』
「羅號の生命維持装置はアネットのみしか動かなかった。当時の艦長は艦と運命を共にし、脱出させた乗組員は帝国軍の潜水艦によって内火艇諸共海へ消えた。」
『なんだと…!?』
「だから、当時のことを僕達に教えてくれたのはアネットさんしかいなかった…」
『フン…では、貴様は?』
「僕は二代目…二代羅號艦長有坂鋼!!先代の…おじいちゃんたちの犠牲は無駄にしない!!」
有坂はそう言い返す。
しばらくの沈黙があったのち、
『フン、ほざけ!なら、ここ横須賀を貴様らの墓標としてくれるわ!!』
そう言い放つと、通信が切れ、モンタナは動き出す。
「敵艦、動き始めました…っ!敵艦の重力炉、出力臨界点を突破!」
「…来るか!」
群像達も慌ただしかった。
「艦長!モンタナから膨大なエネルギー反応が!」
「…何が起きている!?」
モンタナの周りに水飛沫が立ち始め、機械音が鳴り響く。
『今度はあの時のようにはいかんぞ!全力で貴様らを打ち砕く!』
次の瞬間、群像達は驚愕することになる。
何故ならーーー
バシュゥゥゥゥゥゥ!!
大きな音を立てながら、モンタナは宙に浮かび上がったからだ。
そう、
「と、飛んだぁぁぁぁ!?」
「おいおい、こんなのありか!?」
「一体どういう原理で浮かんでいるのかが分かりませんね。」
「群像、あの戦艦おそらく重力そのものを制御して浮かんでいると思う…」
「何だと!」
驚く群像達をよそに、ロバートは豪語する。
『見たか!モンタナはあらゆる機能を発揮出来るぞ!』
だが、有坂達は臆することなく、
「それがどうした!モンタナに出来て羅號に出来ないことは無い!!」
そう言い返す。
「田ヶ谷さん!重力炉の状態は!?」
「安心して、重力炉は正常。問題なく重力制御飛行が出来るよ!」
有坂は頷く。
「よし!重力制御開始!」
その瞬間、羅號にも機械音が鳴り響く。
「…準備完了!離水始め!」
有坂の合図で羅號も大きな音を立てて、そのまま宙に浮かび上がった。
羅號もまた飛んだのだ。
「離水完了!花島さん!」
「安心しろ!主砲及び副砲の各種システムに異常は無い!いけるぞ!」
「目標、敵艦『モンタナ』!砲撃戦用意!」
羅號の第一、第二主砲がモンタナに向けられる。
一方、モンタナも羅號に照準を合わせていた。
『羅號も飛んだか…なら、叩き落とすまでよ!砲撃戦用意!』
その瞬間、モンタナの全砲門が羅號に向けられた。
『さぁ、103年前の続きを始めようぜ!!』
「ここは日本だ…亡霊が偉そうに居座るな!!」
ここ横須賀で103年ぶりの
遂に万能戦艦同士の戦いです。
乞うご期待ください。