「主砲全門一斉射!撃て!」
ドォォォォォン!!
先手を打ったのはモンタナだった。
モンタナの40cm砲9門が一斉に火を噴いた。
放たれた砲弾は羅號に向かって飛んできて、6発命中した。
羅號とモンタナには
その為、モンタナの砲弾は羅號にダメージを与えていた。
「右舷中央部に被弾!ですが第一装甲板で食い止めました!」
「艦長、照準完了!撃てるぞ!」
「よし、第一第二砲塔全門斉射!」
「了解!」
羅號も第一第二主砲を撃った。
モンタナに3発命中し、モンタナは大きく揺れた。
モンタナの艦内に悲鳴が上がる。
「くっ、なんて威力だ…流石20インチ(≒51cm)砲を積んだだけのことはある…」
現段階では羅號が有利だ。
羅號は45口径51cm砲に対51cm砲防御装甲を持っていたのに対してモンタナは50口径40cm砲と装甲も対40cm砲防御だった。
羅號はモンタナの砲弾が6発命中したが、対51cm砲防御装甲で食い止めた。
逆にモンタナは羅號の砲弾が3発しか命中しなかったが、対40cm砲防御装甲では51cm砲弾を防ぎ切ることが出来ず、モンタナの装甲に穴が空いた。
「第一装甲板貫通!第二装甲板で食い止めましたが、小破した模様!」
「第四、第六区画で火災発生!さらに衝撃で各所に被害が出ています!」
乗組員から被害の報告が次々と上がる。
だが、モンタナには
「フン、狼狽えるな!ロケットアンカー用意!」
すると斜め上を向いていたモンタナの艦首突起物が真正面を向き、モンタナが羅號に近づいて来た。
するとーーー
「ロケットアンカー射出!!」
すると、パシュン!!と音と共にワイヤー付きロケットアンカーが放たれ、そのまま羅號の艦首構造物に巻き付いた。
「ロケットアンカーだと!?」
「何をする気だ?」
有坂達は疑問に思うが次の瞬間、
「っ!艦長、モンタナが急速接近してきます!!」
「何っ!?」
有坂達は驚愕した。
モンタナがワイヤーに引き寄せられる形で羅號に急接近してきたのだ。
しかも、モンタナの艦首ドリルを回転させながら物凄い速度で羅號に迫ったのだ。
「ハハハハ!!くたばれ羅號!!」
モンタナが迫る中、
「まずい、艦首ドリル高速回転!!」
羅號も負けじと艦首ドリルを回転させ、遂にーーー
ズガガガガガガガガガ!!
両艦のドリルが火花を散らしてぶつかり合った。
両艦内に衝撃が響く。
「くっ、なんて衝撃だ…」
一進一退の攻防をしている中、
「まずい、ドリルの摩耗率が上昇!このままじゃドリルの駆動回路が焼き切れてしまう!」
羅號が押されていた。
羅號のドリルは一本なのに対しモンタナのドリルは二本と数においてモンタナの方が優っていた。
その為、ドリルの負荷は羅號の方が大きい。
このままだと羅號のドリルが摩耗熱で回路が焼き切れ、機能不全に陥ってしまう。
そんな中、有坂は指示を飛ばす。
「田ヶ谷さん、重力制御を20秒切って!その間主砲全砲門の照準をモンタナに固定して!」
「分かりました…では!」
田ヶ谷はレバーを勢いよく下すと、羅號は急降下した。
すると、モンタナも急降下した為慌ててスラスターを噴かせて踏み留まったが、羅號の重量に耐えきれずワイヤーが限界まで伸ばされた。
「くっ、やむ終えん。ワイヤーを切り離せ!」
これ以上落下するのを防ぐ為、ワイヤーを切り離す。
この時、ちょうど20秒経った。
重力制御をONにして姿勢を制御すると、
「…今だ、全門斉射!!」
12門の主砲が一斉に火を噴いた。
「いかん、急速回避!」
モンタナは急いで回避しようとするが、間に合わずに艦首に命中した。
艦首のドリルは右側が破壊され、左側はドリルの回転が止まった。
「艦首に被弾!右舷ドリル大破、左舷ドリルは機能停止…」
「クソッ、ぬかったか…」
ロバートは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
さらにさっきの砲撃でモンタナは深刻な損害を被った。
「先程の被弾で艦底部に亀裂が発生!さらに船体各所にヒビが…」
そう、実はモンタナはラ級艦の中で装甲が脆弱であり、その理由として構造上の欠陥にある。
それは『何処か一箇所にダメージが入ると船体全体にダメージが伝わる』というものだった。
その為、モンタナは羅號の主砲があと2、3発当たったら爆散する危険性があった。
「敵艦の主砲があと2、3発当たったら、こちらの装甲が持ちません!」
「分かっている!ならばヤツの主砲を封じれば済むことだ。進路を北西に取れッ、両舷全速!」
するとモンタナは羅號から距離を取り、そのまま離れていった。
「見ろよ艦長!奴さん尻尾巻いて逃げてくぞ!」
(ん?妙だな…なんで距離を取って…)
有坂は疑問に思ったが、天羽が真意に気づく。
「…違う。こちらの主砲を封じるつもりよ。」
花島達は一瞬疑問に思ったが、有坂も真意に気づいた。
「まずい、今すぐ追うぞ!両舷全速!」
「えっ、り、了解!」
羅號も慌ててモンタナを追う。
モンタナと羅號は横須賀上空へと戦場を移した。
もちろん、横須賀の住民は先程の霧の襲撃に空飛ぶ戦艦同士の戦闘と経験したことのない光景に皆驚愕していた。
「フッ、これでこっちは撃ち放題だ、撃て!」
モンタナはここぞとばかりに主砲を撃ちまくる。
放たれた砲弾は羅號に次々命中する。
「ええい、応戦するぞ!」
応戦しようとするが、有坂が何かに気づく。
「っ!待て、射線をよく見ろ!」
花島は一瞬疑問に思ったが、有坂の言っている意味が分かった。
そう、モンタナの周りには居住区があり、もし外したらそこにいる民間人が巻き添えになる事を意味していた。
羅號の主砲を撃たせない為に横須賀上空に陣取り、羅號を誘き寄せたのだ。
「撃つ時は海側に向けて撃つ。山の手側に回り込め!」
羅號も有利な位置取りで応戦しようとしたが、モンタナも甘くはない。
モンタナも住民が群がる場所に移動して羅號の主砲を封じた。
そうこうしている間にもモンタナの砲弾が命中し続け、羅號の装甲板も歪み始めた。
「くそッ、好き放題撃ちやがって!!」
「いくら羅號の装甲が強靭でも持たないわよ!」
クルーから焦りが出てくる中、有坂は思案した。
(…そういえば、モンタナはこちらより低く飛んでいるが、まさか…)
「響さん。モンタナの船体をスキャニングできる?」
「えっ、ええ、やってみるわ。」
真瑠璃はコンソールを操作し、モンタナの船体をスキャニングする。
そしてその結果を有坂に見せる。
(やっぱり、さっきの砲撃で艦底部に亀裂が発生している。ようし、これなら…)
「花島さん、ちょっといい?」
「えっ?」
有坂は花島に
「…なるほど、そいつはいけそうですね。」
「できるか?」
「ええ、なんとか!」
有坂は頷く。
「よし、本艦はこれよりわざと隙を作ってモンタナに撃たせる!」
有坂の作戦にクルーは驚愕する。
「そ、そんな、危険過ぎます!もし装甲が破られたら…」
クルーの心配をよそに、有坂は述べた。
「その時はその時さ。羅號の装甲は僕達を守ってくれると信じよう。」
「…なるほど、賭けね。」
「…このままじゃ埒が開かないから仕掛けるって寸法か。いいぜ、一発仕掛けてやりましょう!!」
「この次モンタナが海を背にした時砲撃する。チャンスは一度きりだ、しくじるなよ!」
そう言うと羅號は動き出す。
「どうした、ぐるぐるまわっているだけではつまらんぞ!」
ロバートは羅號が手を出せないのを知ってて挑発していた。
「まだだ、あと少し…」
羅號はタイミングを見計らって、遂にーーー
「今だ!!」
羅號の12門の砲が火を噴いた。
やがてモンタナに命中し、艦内が大きく揺れた。
「三番砲塔大破!」
「くっ、主砲が一基潰れたか…だが!」
次の瞬間、モンタナの二基の主砲が火を噴き、命中した瞬間羅號に大きな音が鳴った。
この時ロバートは勝利を確信した。
羅號の場合、次弾を撃つのに60秒のインターバルがあるが、モンタナの場合は20秒なのだ。
つまり、一分間に羅號は一発しか撃てないのに対してモンタナは三発撃てるのだ。
さらにモンタナは今まで羅號の右舷中央部を集中的に当て続けていた。
いくら羅號の装甲が強靭でも同じ箇所を撃たれ続けたら装甲が破壊されるのは目に見えていた。
そして先程の音は羅號の装甲板が破壊された音だ。
羅號の砲撃が当たった時は流石に冷や冷やしたが、モンタナはなんとか耐えていた。
その為、このまま畳み込めばいずれ羅號の心臓部『零式重力炉』に命中する…そう確信していた。
そう、その時だったーーー
「………えっ?」
ロバートは呆気に取られた。
何故なら、本来一斉射で上を向いている筈の砲が
それが何を意味するのか…ロバートは悟った。
(ま、まさか…斉射に見せかけて、一発だけ残しておいたのか…)
さっき有坂が花島に伝えていたのは【斉射に見せかけて一発だけ残して発砲する』いうものだった。
そして狙うは亀裂が発生しているモンタナの艦底部だ。
「…もう終わりにしよう。撃て!」
その瞬間、羅號から一発放たれた。
そのまま艦底部に命中し、モンタナ全体に亀裂が伝わる。
所々誘爆し艦内に悲鳴が上がる中、ロバートは一言…
「……見事だ。」
ドグァァァァ!!
モンタナは爆散した。
そのまま浮力を失い墜落しそうになるが、
「月野さん、全速前進!!モンタナの残骸を海に押し上げて!」
「よ、ヨーソロー!!」
モンタナの残骸を居住区に落ちないように残骸を押し上げて、そのまま海に投棄した。
モンタナは海に沈んでいく。
そしてーーー
ドガァァァァ!!
爆発した。
しばらくの静寂の後、
「モンタナ、撃沈…」
その瞬間、羅號艦内から喝采が上がった。
「しかし、ギリギリだったよ。何せさっきの砲撃で第一装甲板が貫通しているから…」
「…危なかったわね。」
「それでどうします?」
「……ちょっと群像に通信入れて。」
一方、群像達はーーー
「おいおい、こんなのありか…」
「凄まじい戦いでしたね…」
「………」
群像達も驚いていた。
無理もない。
自分達も霧との戦いを経験しているが、それが霞んで見える程羅號とモンタナの戦いは色んな意味で規格外だった。
「あっ、艦長。羅號から通信が…」
羅號から通信が入る。
『群像、モンタナとの戦いでこの艦も損傷してしまって…修理出来るドックってある?』
「あっ、ああ、一応大型艦船を収容する特別大型ドックがある。そこなら修理が可能だ。」
『ありがとう。でも、いきなり入港して現場混乱しないかな…」
「ああ、それなら俺が取りなしておく。」
『助かるよ。』
しばらくして入港許可が降りたので羅號は特別大型ドックに入っていった。
ーレムリア帝国 帝都ジオラビランスー
「…ロバートはしくじったようだな。」
国家元首ゼノンは羅號とモンタナとの戦いをリアルタイムで観ていた。
無論、羅號を倒すことは出来なかったが羅號の戦闘データが取れたのでさほど問題は無かった。
「まあいい、
そう、本命は羅號にあらず別にあり………