それに、まじこいの時系列が分かんねぇ。
あの金髪ジジイの呪縛から解放された俺の気分はいつも以上に最高だった。だから最近はあまりしていなかった夜のランニングに出ることにした。
夜のランニングと言っても、俺のランニングは他と少し違う。ただ走るんじゃなく、超加速思考領域を展開して超加速身体領域で街中を走るから、一瞬でランニングは終わる。
中学一年生くらいまでは毎日やっていたが、川神が化け物の巣窟ということを知って少し控えるようにした。だけど認識できるあの金髪ジジイに何も言われなかったから、嬉しさで走ることにした。
「ふうううううぅっ!」
こうやって言っていても誰にも聞こえないからこう言いながら超加速空間で走り抜ける。夜道を歩いている誰も彼もが動いているかどうかも分からないくらいの速さで動いている中で、走る。
俺はそこそこ走るのが好きだからこうして走る時はかなりのハイテンションになる。まぁ、川神百代や川神鉄心がいる場所に近づかないようにしながら走っているが。
「ふぅ」
川神周辺を走り回って一瞬で自室に戻ってきた。自室に戻る時に取っていたタオルで汗を拭きながら俺は椅子に座る。本当にこういう誰にも迷惑をかけずに自身のペースで色々なことができるのはこの能力の良いところだ。絶対に武道なんかやらねぇ。
「……フン、何が才能だ。才能、才能、うるせぇな」
俺は運動したことですっきりとした頭で金髪ジジイが言っていた言葉を思い出していた。何だよ、あの上から目線、今思い返したら超うぜぇ。
「あんなの負け惜しみだろ。今の俺の状態で付いてこれなかったくせに」
何も変わらない日常を望んでいる俺だが、今よりレベルを上げることに興味がないわけではなかった。誰も付いてこなかったからこれ以上必要ないと思っていた。今は金髪ジジイが辛うじてついて来れるくらいだが。
それでも自分がどれくらいまで走れるようになるのか気になってはいるが、いかんせん素人だからこれ以上どうしたらいいのか見当がつかない。俺にできることはせいぜい走ることだけだ。
「……クソっ」
俺が速さに加えて攻撃力があればあのむかつく金髪ジジイを黙らせることだってできるが、俺に攻撃力はない。できるのは加速をつけた攻撃だけだ。
「あぁっ……、腹立つぅ」
言われたままだとかなり腹が立つ。ただまぁ、俺の平穏は守られているからこれ以上考えているだけでも無駄だ。だけど俺が平穏を求めるのは、周りからとやかく言われるのが嫌だからだ。
「……うーん」
よく考えれば、それだと俺が周りの人間を気にしていることになる。俺は周りの人間なんて気にすることなくただ俺の道を歩んでいると思っていた。これだと矛盾が発生している。
俺が何も行動しなければ周りから俺に注目されることはない。だがそう考えている時点でダメなのではないかと思って俺は頭を横に振る。
「どうでもいい」
こんなどうでもいいことを考えるだけ無駄だと思って考えるのをやめた。でも、もし俺が誰かの元で修行を行えるのであれば興味がある。果たして、この状態が頭打ちなのか、金髪ジジイが言った通りまだまだ伸びるのか。気になるところだ。
昨日金髪ジジイに言われた言葉を考えていたら頭から離れなくなった。あんなことを言われて腹を立てているのか、それとも才能があると言われて嬉しく思っているのか。はたまたただ金髪ジジイの印象が強かっただけか。
「はぁ……」
放課後の屋上で俺は夕焼けを見ながらため息を吐く。こうして夕焼けを見ていると心が落ち着くからたまに屋上に来ている。
夕焼けに心洗われている時に屋上に来ているそこそこ強い気配を感じ取った。俺が知っている気配は、金髪ジジイ、川神百代、川神鉄心、それから後ろの席の黛だけで、前三人でなければ何もすることはない。
「先客がいたか。まさか組織の人間か⁉」
何やら変なことを言っているイケメンが屋上に入ってきた。だけど今の俺はそれが面倒だからどこかに行くという気力がなかった。
「心配ないですよ、とりあえず俺は少なくとも組織の人間じゃありませんから」
「フン、誰しもが自身は悪魔ではないと言い張るものだ」
この人絶対にメンドクサイ人だと思ったが、別に嫌悪を感じるわけではない。あの後ろの席の黛とかいう女子生徒みたいに。ただ、こういうノリに乗るのも気分転換としてアリだと思った。
「あなたは俺を組織の人間だと思うのですか? それほどまでに目が腐っているんですか? 冗談なら面白くないですよ」
「……そうだな、お前は組織の人間ではないな。疑ってすまなかった」
「分かってもらえたのなら何よりです。俺はここで夕焼けを見て気持ちを落ち着けていたところです」
「確かにここは良い。この汚れ切った世界でも、これほどまでに美しい景色を見れば、俺のすべきことを教えてくれる」
この人、悪い人ではなさそうだけど、こうなってしまって友達とかいない残念イケメンになった感じだな。だけど俺はこの人と友達になろうとは思わない。ていうかボッチの俺に友達とか笑える冗談だ。そんなこと言えるわけがない。
俺とイケメンは会話がなく並んで夕陽を見て黄昏ていた。こうしていれば落ち着けると思ったが、一向に金髪ジジイの言葉が頭から離れることはなかった。
「はぁ……」
「この景色を見ているのにもかかわらずため息とは、余程大きなカルマを与えられているようだな」
「……まぁ、そんなところです。人と関わっても良いことはないと思っていたんですけど、人から言われた言葉が頭の中に残っていて、腹立たしさがある反面、今の自分を変えるべきかどうかを悩んでいるんです」
「はっ! たかだか他人から言われた言葉で変えれるような自分は最初から自分ではないだろ」
「そうですね……。でも、変わらない強さも必要ですけど、変わる強さも、やっぱり必要だと思います。周りが変わっていく中で自分だけ変わらずに置いて行かれる。結局は、俺たちは世界に組み込まれている一部ということですから、変化を求められると思います」
「……そうだな、俺たちは神の手のひらで踊らされているピエロだ。だからこそ、俺たちはそんな舞台から飛び降りなければならない」
「そうなると、変化しないといけないわけですね。……ありがとうございます、少し心が軽くなりました」
適当に話していると、何だか本当に心が楽になった。このまま何もしないという選択肢はなくなった。
「ふっ、構わない。人とこうして話すのも悪くない」
「俺は一年C組の速水銀です。あなたは?」
「俺の名前を聞くのはやめておけ。お前も組織に狙われることになるぞ」
「今更ですよ。それに俺は十分に組織に狙われる理由がありますから」
「なに? お前も特異点だったのか⁉」
「特異点……? ま、まぁ、そうですね。俺は神すらも追い抜くことができる速さを持っていますから、組織から狙われる可能性があります」
流れで俺の秘密を話してしまったが、面白いから良いかなって思った。母親にも言っていないのに。まあでも何よりこの人は誰にも言わなさそうな感じがするから良いか。
俺は試しに加速領域に入ってイケメンから少し離れた場所に立ってから加速領域を解除する。
「ッ⁉ いつの間に……⁉」
「これが神すらも追い抜くことができる速さです。どうですか?」
「……確かに、組織もそんな能力があると知れば狙うことは間違いない。……それに、もう敵に俺と接触しているところを見られたようだな」
イケメンに近づいていく中でイケメンが羽ばたくカラスを見てそんなことを言っている。とりあえず痛いことだけは分かったけど、悪い人ではない。うん、悪い人ではない。
「俺は那須与一だ。特異点同士、よろしく頼む」
「那須与一……?」
そう言えば、最近武士道プランでクローンが入ってきたのを思い出した。それで那須与一と聞けば、武士道プランのクローンだと理解した。
「もしかして武士道プランのクローンですか?」
「そうだ。俺は那須与一のクローンだから組織から狙われている存在だ」
「へぇ、そうなんですね。まぁ、クローンだからと言って何か変わるわけでもありませんからどうでも良いですけど。これからよろしくお願いします、那須先輩」
「与一で構わない」
「それじゃあ……、与一先輩と呼ばせてもらいます」
「ふっ、今日の俺はついている。まさか同じ特異点が現れるとは思ってもみなかったからな。それとも、これもシュタインズ・ゲートの選択か……!」
「シュタゲやったことがあるんですね。俺も好きですよ」
変な人だけど、いい人ではあると思う。何気にこうして一対一で自己紹介をしたのは初めてだなと思いながら、与一先輩と連絡先を交換した。
アンケート、こんなにモモ先輩が強いんですか? それとも一番上だから? かなり驚いています。でもまぁ、モモ先輩はかなり接点が作りやすいキャラなので書きやすいと言えば書きやすいですね。
特に作者はヒロインを考えていないので、皆さんの要望で考えて行こうと思います。(ただし作者がこれからの話を書けるかどうかは分かりません)
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川神百代
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川神一子
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椎名京(絶対に無理、書けない)
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クリス
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黛由紀江
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松永燕
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九鬼紋白
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不死川心
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板垣辰子
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マルギッテ
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源義経
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武蔵坊弁慶
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葉桜清楚
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ステイシー・コナー
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李静初
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林冲
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橘天衣
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那須与一!
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その他