もう一度は世界蛇と   作:オクトモア

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宜しくお願いします。


砲金はまだ錆びていない

 某月某日、東欧

 

  街の大通りを見渡せるカフェで、私は雇い主である武器商人と待ち合わせていた。

 表通りのテラス席でもわかりやすい窓際でもなく、裏口に近い奥まった壁側の席にひっそりと。

 かれこれ十分、アイスミルクティをちびちび飲みながら周囲をそれとなく警戒する。

 店員は武装していないか、監視車両はないか、盗聴器は、狙撃手は、毒物はetc……。

 

 何故こんなところにいるのか、それは西アジア某国にて或る武器商人に取引を持ち掛け、家族―血は繋がっていない孤児達だ―の為に出稼ぎをすることにしたのだ。

 なんでも武器商人の妹―これもまた武器商人らしい―の護衛に欠員が出たらしく、腕を買われたのだ。「君の技術なら彼女も喜ぶ」のだそうな。

 

 

 それは前世で身につけた技術なのだが、等と言えるわけがない。

 

 

 前世―というのだろうか―では国の為に兵役に就き、200人の部下を率いて全世界を飛び回りテロリストを殺害した。

 正しくあの大統領が言ったように、どこまでも追いかけて。

 奴らには性別や年齢もなかった。子供が部下を爆弾で吹き飛ばそうとしていたし、女性がヒシャブの下にアサルトライフルを隠し持っていて国の高官を暗殺しようとしていたこともあった。

 

 私や部下たちは全て排除した。奴らは国家や秩序の明確な敵だったからだ。

 

 西側の連中が言う正義とは相容れないかもしれないが、そうしなければもっと酷いことになるからだ。

 そんな恐ろしい技術が今生でも必要とは──

 

「世界は罪深いな、全く」

 

 そう、ごちてしまった。

 

 

 

 少し物思いに耽りすぎたのか、氷が解けて薄くなったアイスティをまたちびちびしていると、店のドアベルが鳴った。ドアの方向へ目をやると色素が薄い銀髪の女性がキョロキョロと店内を見まわしながら入ってきた。

 店員を半ば無視して誰かを探しているらしい。

 

「いた」

 

 そうつぶやくなり私の席へズンズン歩いてきた。少し右足が引きつっているのかぎこちなく、左肩も痛めているようだ。彼女はこちらに歩いてきて開口一番に

 

「女性に迎えに来させるなんて、とんでもない色男だねキミィ?」

 

 といたずらっぽく笑った。だが、

 

「誰?」

 

 と私がつっけんどんに答えてしまったのでビキリ、と凍り付いてしまった。

 

 

 

「さて、改めて自己紹介を……。私はココ・ヘクマティアル。キャスパーからの紹介でキミの上司になる人間さ。話は聞いているよ、中々の使い手だって」

 

 カフェから出た我々―会計は注文時に済ませていた―はある建物へと向かっていた。どうやら

 同僚と顔合わせをするらしい。

 

「今までの八人の部下がここに集まっている。中々面白い人たちだよ、きっと気に入る。危険な職場だけど、遣り甲斐もあるしね」

 

 武器商人が危なくないことなぞあるのか甚だ疑問だ。そも遣り甲斐というのはあっていいのか。

 だが、人間関係は大切だ。同僚とギクシャクなぞ御免被る。後ろから撃たれないことが軍隊では一番大事だ。ただ会っていないから何とも言えないが。

 

 

「初の顔合わせなのに残念だけど、ゆっくりはしてられない。問題が起きてね……」

 

 そう彼女─ココ─はうんざりといった風に説明する。

 

「こんな東欧の片田舎に足止め食ってる理由なんだけどね。問題の解決を手伝ってもらう」

 

 するとココは拳銃を渡してきた。ブローニング・ハイパワーMarkⅢ。西側の銃では好きなほうだ。バランスも良いし、丈夫でよく当たる。紛争地域でも手に入りやすいので気に入っている。

 外国に潜入する際は長物よりこういったのが一番いいのだ。スライドやハンマーを少し触り、

異常はないか確認する。

 

「私の部隊の入隊儀式の一つ、そしてキミの性能テストでもある」

 

性能、ときたか。中々ハッキリという。だが、嫌いではない。

死ぬか死なないかは性能の違いだ。彼女は合理的であることが良く分かる。

 

そうこうしていると二人の男性が立っている部屋の前まで来た。どうやら部屋の中に同僚―あと6人―がいるらしい。

 

「マオ、ワイリ」

 

そうココが呼んだ二人が、怪訝な目を私に向けた。

 

 

「ココさん、その子は一体・・・?

 

そう、彼―ワイリ―が言った通りだ。

 

 

「皆、注目!!!」

 

思いっきりドアを開けるココ、何かがぶつかる音とグラスが割れる音、そして集まる怪訝な視線。

その中で彼女は皆に紹介する――

 

「彼がヨナだよ」

 

私の名前は、今生では「ジョナサン・マル」。少年兵である。

中身は85歳の爺なのだが、魔女の呪いか?

 

 

 

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